CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

明けない夜を越えて 2 Last

2016年03月09日
DESTINY 0






12月に入って行われた事務所の忘年パーティーはそれなりに楽しかった。
しかし、事務所の二大柱のヨンファとホンギがステージの前に出て余興をやり始めて、ジョンシンの気分は少しずつ悪くなってきた。


二人は本当に仲が良くて羨ましいほどお似合いで、悔しいけどホンギには勝てないと改めて感じた。
常に自分に自信を持ち、実力を兼ね備えているからこその堂々とした立ち居振る舞い。
ヨンファが魅かれるのも無理はない。自分とは全然違う。


この日のヨンファは終始楽しそうで、ジョンシンの前ではすっかり見せなくなった顔でホンギに笑いかけている。
心臓に針を刺されたかのようにシクシク痛んだが、周りに合わせてジョンシンも無理に愛想笑いをしてその場をやり過ごした。


そしてジョンシンは、戻ってきた二人に声をかけて席を譲った。
自分でも馬鹿だと思うが、ヨンファが幸せならそれでいいと思った。










その帰りだった。
ヨンファ、ホンギ、ミニョク、ジョンシンの四人でタクシーに乗り合わせたのだが、酒に酔ったヨンファが車中で眠ってしまった。
皆で何度か声を掛けたが一向に起きず、途方に暮れているとホンギが突拍子もないことを言い出した。


「……ジョンシナ、お前が送ってやれ」
「え?……俺が…ですか?」
「お前が一番デカイんだから、おんぶでも抱っこでもできるだろ」
「…ホンギヒョンが送らなくていいんですか?」
「俺ぇ?ヨンファの方が背ぇ高いから無理に決まってんだろー。どう考えても」


そこまで言われて、ジョンシンに断ることはできなかった。


「ヒョンを落とさずにちゃんと送れよ」


ミニョクにもそう釘を刺され、二人は先にタクシーを降りて帰って行った。





スヤスヤと眠っているヨンファの寝顔を見て、胸がツキンと痛む。ジョンシンはこの想いがまだ吹っ切れていないことを悟った。
ジョンシンは運転手に降りる場所をわざと間違えて伝えた。
少しでも長くヨンファと一緒にいたかったからだ。


「ヒョン、着いたから降りよう」


無駄とは思いつつ一応声は掛けてみるが、案の定ヨンファは起きない。
仕方なく運転手に頼んで、ヨンファを背中に負ぶさるように手伝ってもらった。


ゆっくりと歩きながらヨンファのマンションを目指していると、突然背中の重みがモゾモゾと動き出した。


「ヒョン、起きた?」
「…ジョンシナ?」
「そう」
「何で俺、負ぶさってんの?」


ジョンシンが一通り説明してやると、ヨンファが申し訳なさそうに下りようとするからそれを制した。わざと冷たい言い方をして。
でなければ、自分の気持ちがポロッと口をついて出そうになるから。


神様のご褒美かと思った。
もう二度と触れることはないと思っていたヨンファの重みを背中に感じて、このまま連れ去りたいと思った。
CNBLUEも何もない、自分たちのことを誰にも知られていない世界に行って、どこか二人で……。
そんな馬鹿げた考えが思い浮かんでしまったことに呆れて、ジョンシンは可笑しくなった。


そうこうしているうちに、ヨンファのマンションに辿り着いた。


「……寄ってくか?」
「いや、明日も早いから帰るよ。ヒョン、臍出して寝て風邪引かないようにな」
「うっせー、それはお前だろ?」


気を遣って声を掛けてくれたのが分かったので、ヨンファの誘いに首を横に振った。
寒い中、ヨンファを背負ったジョンシンを労ってのことだろう。優しいヨンファのことだから。
でも、ヨンファの部屋に上がってしまったら、また同じことの繰り返しになるだろうと思い、断って一人で夜道を歩いて帰った。







**************************************************************







年が明けて、ヨンファはソロ活動が忙しくてほとんど会えない日々が続いた。


「ヨンファヒョンのお祝いでもするか」


いつもと同じように練習室で三人が練習していると、ジョンヒョンが突然提案してきた。


「ソロデビューのお祝いな。最近なかなかヒョンに会えないし、日程を決めてやらないか?」
「いいね、それ!」
「ジョンシナ、お前はどう思う?」
「いいよ」


ジョンヒョンとミニョクはもうやる気満々で、ジョンシンも異論はまったくなかった。


「ヒョンは手料理が好きだから、ジョンシナの家で何か作るってのはどう?」


ミニョクのアイデアに二人はすぐ賛同し、やる内容は決まった。
それは良いのだが、結局一番大変だったのはジョンシンだった。
メニュー決めや買い物もそうだし、他の二人も料理は多少できるが、やはりジョンシンには敵わず助手に回っていた方が多かったかもしれない。




それでも、ヨンファが喜んでくれて、久々の四人揃っての食事は楽しかった。
ただ、ジョンヒョンとミニョクが途中から、思いもよらない方向に暴走し始めたのには驚いた。


「ヒョンはさ、何でもできる器用な子が合ってるんだよ。例えば……ジョンシナとか。だって、ジョンシナはヒョンの彼女みたいなもんだからな」
「そうそう」
「一緒に住んでいた時も、甲斐甲斐しく世話を焼いてたし」
「見てて涙ぐましかったよね」


ヨンファに対するジョンシンの気持ちを知っていて、明らかにわざと発言しているとしか思えなかった。
それにヨンファは驚いてビールに噎せていたが、ジョンシンは特に何も感じなかった。


もう何とも思っていないのだからそんなに焦らなくてもいいのにと、ヨンファを見ながら思った。
だから、代わりにヨンファが想いを寄せている人がいるという爆弾発言を投下してやった。
ジョンヒョンとミニョクは笑えるほど驚いた顔をしていたが。


でも、本当は完全にその気持ちがなくなったわけではなかった。







**************************************************************







「ジョンシナ、悪いんだけど今からヨンファのマンションに来れるか?」


突然マネージャーから電話があった。話を聞くと、ヨンファが熱を出して家で寝込んでいるらしい。
マネージャーが買い物をして側についていたようだが、事務所からの呼び出してヨンファを一人にしてしまうとのことだ。
ヨンファのマンションのすぐ近くに住んでいるミニョクが仕事でいないらしく、代わりにジョンシンに頼んできた。


「分かった。すぐ行くから」


ジョンシンは急いで支度をして、ヨンファのマンションに向かった。


「疲れているところ悪いな。さっき熱が出始めたみたいで」


ヨンファはぐったりとして、苦しそうに息を吐いていた。
マネージャーに訊いて洗面所の棚からタオルを二枚出して冷たい水で濡らすと、一枚はヨンファの額に載せた。
もう一枚はパジャマのボタンをいくつか外し、熱を発してる首から胸にかけて拭いていく。


マネージャーが帰った後、家中の電気はすべて消した。
ヨンファが起きた時にジョンシンと二人きりだと分かり動揺させないためと、月明かりでも十分見えたからだ。
あと、部屋が明るいとヨンファの細部にまで視線がいき、変なことにならないよう抑制するためでもあった。


身体を冷やしてやるとそれが気持ち良いのか、またヨンファは寝てしまったようで静かになる。
ヨンファの手に触れるとかなり熱くなっていて、ジョンシンの大きな手で包み込んで冷やしてやる。
ぐったりと力が抜けた手は、いつも以上にほっそりとしていて頼りなく感じた。


一般人と違い、自分たちは急に病気になってもなかなか休むことはできない。
日頃から定期的にオフを取ることもままならないし、身体が資本の仕事だから仕方がないことなのだ。
だから、ヨンファもソロ活動が加わりいつも以上に多忙を極め、熱を出してしまったのだろう。
親元から離れて暮らしている自分たちはメンバーが家族みたいなものだから、自然とお互いを助け合うようになっていた。


ジョンシンはヨンファの額のタオルを何度か冷たくし直し、頃合いを見て身体も拭いてやった。
まるで病気の子どもを看病しているような錯覚に陥り、不謹慎だが少し可笑しくなった。
ジョンシンは満更でもないようにヨンファの世話をした。







**************************************************************







1月下旬の「GAON CHART K-POP AWARDS 2014」で驚くべきことが起こった。


出番までまだ少し時間があったので、ジョンシンは他のグループのいる控室に顔を出して雑談をし、タイミングを計って部屋から出た時だった。
ホンギの後姿が見え、人気のない奥の方へと歩いて行く。


何だかあまり良い予感がせず、こっそり後をつけてみると、角を曲がったところで話し声がする。
あまり近寄ると気付かれるので手前で耳を澄ませていると、もう一人の声はヨンファではなかった。
それにホッとして離れようとした時、微かな布擦れの音とくぐもった声が聞こえ、そっと角の向こうを覗くと、ホンギがヒチョルと抱き合ってキスをしていた。


予想外の出来事にジョンシンは思わず声を出しそうになり、慌てて自分の口を手で塞いだ。
ジョンシンは動揺を押し隠しながらその場を離れて元の場所まで歩いていると、タイミングの悪いことに前方からヨンファが早歩きでこちらに向かってきた。


「ホンギを探しているんだが、見なかったか?」


ジャストすぎる問いに咄嗟に上手いことが言えず言葉を濁すと、ヨンファが畳み掛けるように尋ねながら奥へ行こうとする。


「あっ…ちょっと、そっちは行かない方が……」
「もういい」


ジョンシンの忠告を無視してホンギを見つけたヨンファの動きが止まった。その背中からかなり動揺していることが窺い知れる。
ジョンシンは軽く溜息をつくと、呆然と立ち竦んでいるヨンファの腕を引き、その場から離れた。


「だから、行くなって言ったのに」
「……別に平気だから」


自分と同じようにヒチョルとホンギのキスシーンを目撃したヨンファはかなり混乱していた。心配して話しかけても心ここに非ずだった。
自分が想いを寄せている相手が別の人間とキスをしているところに出くわしたのだから無理もない。
ショックを受けて泣きそうなヨンファを見ていたら、ジョンシンは堪らなくなった。
何とかして慰めてやりたい衝動に駆られた。


「無理すんなよ」
「無理なんか…してない」
「だって、泣きそうな顔してるだろ」
「そ…んなわけない…っ」


これ以上、ホンギのことで傷付いたヨンファの顔を見ていたくなかったから、その綺麗な瞳を手で覆い隠した。


「ちょっ…何すんだよ。前、見えない」
「涙腺を止めるおまじない」
「だから、泣いてないって……」


そして、抗議してくるほんのりと紅い唇に軽く触れるだけのキスをした。
無意識のうちに、ホンギから奪い去りたいという気持ちもあったのかもしれない。
頭で考えるよりも、先に身体が動いていた。





ヨンファは大きな瞳を見開き、驚いた顔をしてジョンシンをまじろぎもせず見つめる。
その可愛い顔にもっと口付けたいと気持ちが突き動かされたが、それを理性で抑え付けてヨンファに先に戻るように言う。
代わりにジョンシンが、まだヒチョルと抱き合っていたホンギに控えめに声をかけ、何とか事態を収拾することができた。


ヨンファから追って何かリアクションがあるかと少し期待したが、何もなかった。
やはり自分ではホンギの代わりにはなれないのだと、ジョンシンは改めて思い知らされた。







********************************************************************







2月に入り、ヨンファの様子がおかしくなった。


今まで見たこともないほど顔色が悪くゲッソリ痩せて、かなり疲れているように見える。
ソロ活動が大きな重圧と負担になっていることは、目に見えて分かった。
真面目で前向きなヨンファは次に続く者のためにも必死になって成功させようと、いつも以上に頑張りすぎているのだろう。


日に日に状態がひどくなっていくヨンファを、このままにしてはおけなかった。
マネージャーが説得して病院に連れて行こうとするのを頑なに拒否し続けるヨンファに、ジョンヒョンとミニョクが優しく声を掛けるが、一向に首を縦に振らなかった。
ジョンシンには分かっていた。ヨンファは周りが気を遣って心配しても絶対に言うことを聞かない。逆に言わないと。
だから、ジョンシンはわざと手厳しい調子で大声を出し、突き放すように言い放った。


「それが逆に俺たちにとって迷惑なんだって!リーダーなら分かれよ、そのくらい!
今、体調を崩してコンサートをやれなくなったらどうするんだよ?折角チケットを買って楽しみにしてくれてるファンを失望させたいのか!」


ヨンファは驚愕の表情でジョンシンを見ると、借りてきた猫みたいに急に大人しくなって、マネージャーに付き添われて病院へ行った。





「このままヒョンのことを放っておけない。どうすればいいんだ」


ヨンファの作業室には三人が残され、ジョンヒョンが深刻な顔をして頭を抱えるのに、先程から考えていたことをジョンシンは口にした。


「俺が悪者になる。代表の命令だからと言って、ヒョンを俺のとこに連れて行く」
「ジョンシナ、正気で言ってるのか?」


横からミニョクが咎めるような口調で言ってくるが、ジョンシンはそれを一蹴した。


「ミニョクが心配するようなことにはならない。俺も純粋にヒョンが心配だから、俺が食事を作ってゆっくり寝させる」
「…ジョンシナだって忙しいのに、そんなことができるのか?」
「できる。俺にやらせてくれ。今までヒョンに助けてもらっていた恩を返したいんだ」


そう言い切るジョンシンに、ミニョクはジョンヒョンへと不安そうに視線を投げかける。
ジョンヒョンは渋い顔をして何か考えていたようだったが、少ししてようやく口を開いた。


「……分かった。俺たちに手伝えることがあったら言ってくれ」
「ありがとう。俺は代表と理事に会って、このことを話しておく」


そして、ジョンシンは代表と理事に会ってこの件を伝えて、ヨンファを一週間自分の家で寝泊まりさせることを許可してもらった。










ヨンファがスタッフと一緒に飲みに出ていることは、マネージャーから事前に聞いていた。
本人には一切知らせず、マネージャーの代わりにヨンファを車で迎えに行き、拉致るようにして自分の家へと連れてきた。
とにかくひどい有様のヨンファを何とか元に戻そうと、ジョンシンの頭の中にはそれしかなかった。


シンバはヨンファを見て、すぐに誰だかピンときたようだった。
初対面じゃないこともあるが、ヨンファが一人で出演した番組をシンバとよく観ていたから、ジョンシンの思っていた通り いつの間にか顔を覚えてしまったようだ。


このまま穏便に一週間が過ぎてくれればいいと思っていたが、そう簡単にはいかなかった。
ある程度予想をしていたとはいえ、やはりヨンファは一筋縄ではいかず、ジョンシンに反抗心を剥き出しにしてきた。


「どうせ俺なんか事務所にとってはただの商売道具だよ。俺の意思を無視して勝手に裏でコソコソ動いて、一体何なんだよ! 俺は子供じゃないんだぞっ。お節介なんだよっ。俺が頼んだわけでもないのに。お前もこんな割に合わないことをよく引き受けたよな。暇なのか?こんなことしてないで、もっと他にすることあるだろ?俺の守りなんかやっても何の得にもならないのにっ。お前だって本当は俺のこと、情けないリーダーだと思ってんだろっ?」


出るわ出るわ。次から次へと。
ジョンシンはヨンファの性格を知り尽くしていたので、本人の気の済むまま言いたいだけ言わせてやった。


「思ってるよ。今のアンタはね」
「………っ」
「自分はリーダーだから弱音を吐いたらいけない。我慢しないといけない。自分が一人でやらないといけない。 何でも自分が自分がって、自らかんじがらめになってる。もっと頼れよ。俺たちを!」
「お前に何が分かるっ。偉そうな口を聞くなよ。俺がどういう気持ちでいるか、マンネのお前に分かるはずがないだろっ!」


ヨンファにここまで言われても、ジョンシンはまったく腹が立たなかった。
今まで胸の内にいろいろなものを溜め込んでいたんだと、逆に不憫に思った。
どうしても一番年上でリーダーというしがらみがあるからなのか、今まで自分たちに愚痴を零したことがなかったのだ。


「マンネでも分かるよ、ちゃんと。ずっと側でアンタを見てきたんだから」
「………っ」


ようやく大人しくなったヨンファを先にバスルームへ向かわせ、早々に寝てもらうことにした。


ジョンシンのベッドで寝息を立てているヨンファのやつれた顔を見て、ジョンシンは胸が痛くなった。
これほどまでに自分を追い込むほど、初めてのソロ活動はヨンファにとって大変なものなのだろう。
責任感が人一倍強くて絶対に弱音を吐かないから、身体がそれについていけず変調をきたしたのだ。
ここにいる間だけでも、リラックスしてゆっくり休んでほしいとジョンシンは願わずにいられなかった。





ヨンファと過ごした一週間は、ジョンシンにとってかけがえのないものだった。
もう二度とこういう機会はないだろうから、ジョンシンのできる範囲内でヨンファをサポートした。





「何を食べても美味いな。お前、料理研究家にでもなるつもりか?」


ヨンファはジョンシンの作った食事を何でも喜んで食べてくれた。


「CNBLUEやりながらでもいいなら、オファーが来たら考えるかも」
「音楽もやれて料理も作れてって出来すぎだろ。お前、嫌味なくらいいい婿になるな」
「じゃあ、ヒョンが嫁になってくれたら、いつでも婿入りするよ」


ジョンシンは笑いながら答えたが、半分本気だった。
ホンギへ片想いを清算し、自分へ傾いてくれないかと淡い期待もした。
しかし、表向きはジョンシンがもうヨンファのことを何とも思っていないと、本気で思っている鈍感なヨンファにそれが通じるわけもない。
適当に躱され、プッと笑われてしまった。


―――やはり自分では無理なのか……。と少し落ち込んでしまった。










ヨンファが身を寄せるようになって5日目の朝、突然出て行くとヨンファが言い出した。
どうやらジョンシンの身体を気遣ってのことのようだが、そんなものは無用だった。
予定より早くヨンファがいなくなるなんて、そんなことは絶対に嫌だった。


「ヒョンは、本音ではホンギヒョンに頼る方が良かったんだろ?そんなのは分かってるよ。でも、俺だって弟として何かしたかったんだっ」


決してこんな言い方はしたくはなかった。弟なんて自分では更々思ってもいない。
それなのに、堂々と『好きだから何かしたかった』と言えない自分が歯痒い。
今、ヨンファに精神的な負担をかけるわけにはいかなかった。自分の気持ちは隠し通してでも……。


「本当に大丈夫なのか?」
「ああ。このくらい何てことない」
「じゃあ、悪いけどやっぱり日曜日まで世話になるよ」
「…ああ」


ジョンシンの説得に応じ最後までいてくれることになって、心からホッとした。










そして、とうとうヨンファがジョンシンの家を出て行く日になった。
二人で朝食を摂った後、ヨンファがいきなり思ってもみないことを話し始めた。


それは、この一週間のお礼と、以前一緒に共同生活を送っていた時のことだ。


正直驚いた。ヨンファはあまり自分の思っていることをすべて曝け出したりはしない。
それなのに、本音を包み隠さず言ってくれた。
……これで十分だと思った。本当にジョンシンが欲しい言葉がその口から決して告げられることはなくても。
初めてヨンファにこれほど感謝されて、ものすごく嬉しいはずなのに、何故か悲しかった。










ヨンファのいなくなったリビングは、いつもより広く感じた。
またシンバと元の生活に戻っただけなのに、以前とは全然違う。
ヨンファが側にいたことが当たり前になってしまって、いつの間にかこんなにも自分の生活に入り込んでいたのだ。


結局、合鍵は返されてしまった。それも当然のことだ。一緒に住んでいないのなら、ヨンファにとって無用の長物なのだから。
それでも、ジョンシンは持っていてもらいたかったのだ。最後の望みのように。
本当に未練がましいと自分でも思う。
何度もヨンファへの想いを断ち切ろうとした。でも、同じグループにいて、顔を合わせ続ける限りそれは決してできないのだ。
側で見ているだけでヨンファに魅かれずにいられない。すべてが眩しくて虜にされてしまう。


それは、ジョンシンにとって絶望だった。
もっと違う立場で出会っていたなら、こんな苦しい思いをしなくて済んだのだろうか……。







********************************************************************







今日は、ヨンファのソウル公演最終日だった。


今頃、打ち上げでもやっている最中だろう。
そんなことを考えてみても仕方がないのに、ジョンシンの頭の中には常にヨンファがいる。
一体どれだけ惚れ込んでいるんだと自嘲する。


初日、観に行った時、ジョンシンは驚愕した。あれだけの内容をあの忙しい最中にやっていたとは、思わず目を疑ってしまった。
今まで知らなかったヨンファをこれでもかと見せつけられて、呆然として言葉が出なかった。観客と一緒になって2時間もの間、魅了され続けた。
ヨンファが体調を崩してフラフラになっていた理由がようやく分かったのだ。


惚れ直した。
また新たな側面を発見し、改めてヨンファに心を奪われ、今まで以上に想いが一層強くなった。
本当に才能のあるすごい人なのだと感銘を受けた。そして、どこまで俺を惚れさせたら気が済むのだろうかと。
一生片思いでもいいと思えるほどに、ジョンシンはヨンファに心酔しきっていた。










シャワーでも浴びて寝ようかと思った時、突然スマホからメールの着信音が鳴った。
見ると、ヨンファからだった。
信じられなかった。こんな遅い時刻にヨンファから連絡が入るなんて。


『今から3分以内に下りてこないと絶交』


「………は?何だこれ?……絶…交!?」


一瞬、意味が分からなかった。
何かのいたずらかと思ったが発信は間違いなくヨンファだし、こんなふざけたことをヨンファが本気でするとも思えないが、 取り敢えず表示されている通りに急いで階下へと下りた。
エントランスに姿がなかったので、外に出てみるとマンションの側に立っていた。この寒空の下、ダウンジャケットを着て若干震えている最愛の人が。


「遅い」


猛スピードで下りてきたのに、いきなりな一言に耳を疑った。


―――はぁ?


ますますもって意味不明だった。
ふざけんなよ!
心の中でそう思ったが、可愛げのない口調に反して、その瞳は今まで見たこともないほど慈愛に満ちていてジョンシンは戸惑う。


「ってね…。これでも全速力で下りてきたんだぞ。何だよ、ヒョン。打ち上げやってるんじゃないのか?
こんな子供みたいないたずらするために抜け出してきたのかよ。俺、さっき帰ったばっかりで疲れてんのに、もう勘弁しろよ」


ヨンファに会えて嬉しいくせに、それを悟られたくなくてわざとうんざりした口調で言い返すが、ヨンファはどんな時でもキラキラと輝いていてジョンシンを魅了する。
結局、惚れた弱味なのだ。





「好きだよ」
「へ?」


すると、ヨンファが何か言葉を発したが、突然すぎてよく聞き取れなかった。


「お前が好きだ。ジョンシナ」


今度は聞こえた。でも、その言葉の意味にジョンシンは絶句した。


―――俺の耳はどうかしてしまったのか?願望が強すぎて、ついに幻聴まで聞こえるようになったのか?


「メンバーや弟としてじゃなく、一人の人間として」


嘘だと思った。信じられない。こんな都合の良いことがあっていいのか。
でも、ヨンファは嘘をつくような人間ではない。


「俺にはお前が必要なんだ」


ヨンファが凛とした表情で真っ直ぐにジョンシン見つめてくる。
突然降って湧いた事態にジョンシンは身体中が震えた。
こんなことって…こんなことって……。


心臓がバクバクと音を立てて、緊張して頭の中が真っ白になってしまった。
ヨンファの姿を視界に捉えたまま、一歩ずつ距離を縮めていく。じっとこちらを見つめるヨンファは、本当に綺麗だった。
信じられなくてジョンシンがヨンファの瞳を食い入るように見つめ返すと、澄んだ双眸に自分だけが映りだされていて、そこには少し照れたような色が混じっていた。
確かにジョンシンに対する愛情が感じられたのだ。


それを見た瞬間、もう我慢できなかった。ホンギの身代わりでも何でもいい。
ジョンシンは目の前の愛しい人を思い切り強く抱き締めていた。
白い首筋に顔を埋め、強く引き寄せる。


「……ヨンファ、愛してる」


ジョンシンが積年の想いを絞り出すように口にすると、ヨンファの腕が背中に回ってきて、ギュッとしがみついてきた。
絶対に手に入らないと諦めていたのに、何の前触れもなく一番欲しかった人がふわっと飛び込んできてくれたことに目頭が熱くなる。
ジョンシンは重なった胸から伝わる鼓動に強く目を閉じた。





このまま帰したくない。今すぐ自分のものにしたい。
急に、今までずっと抑え込んできた欲望がジョンシンの全身を支配した。
ヨンファの腕を掴むと、有無を言わせずエレベーターに乗り込む。


あまりの興奮に身体中の血が滾り心臓がドクドクと痛いほど鳴り響いて、握った手からヨンファに伝わってしまうんじゃないかと危惧するほどだった。
ジョンシンの頭の中には、ヨンファを抱くことしか考えていなかった。
自分のことを好きだと言ってくれるのなら、もう遠慮はしない。二度と逃さない。


ドアを開けて中に入ると、ヨンファを壁に押し付けて唇を重ねた。驚いて一瞬たじろいだヨンファを腕の中に閉じ込めて、その魅惑的な唇を貪っていく。
ヨンファの唇は甘くて蕩けそうで、キスだけでジョンシンは酩酊しそうになった。
深く呼吸を奪うと、息苦しくなったのか、ヨンファが身を捩じった。
細い顎を掴んで舌先を絡め取ると、ジョンシンの腕に触れていた指に力がこもるのが分かる。


制止しようとするヨンファに聞く耳を持たず、ベッドルームへと強引に連れてきた。
ダウンジャケットとセーターを剥ぎ取り、シャツのボタンを外してはだけたところにキスの雨を降らせる。
仰け反るヨンファに一層興奮度が増し、飢えた獣のように上から圧し掛かるようにして、ヨンファをベッドに押し倒す。


ヨンファはジョンシンが今まで付き合ってきた相手とは全然違う。
決して遊びではなく、自分がいかに本気なのかを知ってほしいから、ヨンファの目を真っすぐに見つめて自分の想いを吐露する。


「これより先はもう引き返せない。一度手に入れたら誰にも渡さない。ヨンファが泣いて嫌がっても絶対に離さない。それでもいい?」


確信があったわけではない。もしかすると、嫌だと拒否されるかもしれない。
CNBLUEに入る前までは付き合う女性に不自由したことはなかったし、自信満々で周りを振り回していた自分がこんなに臆病になるなんて、 当時付き合っていた相手が知ったらさぞ驚くだろう。それでも、言わずにはいられなかった。


「いいよ……お前なら」


静かな決意を持ったような響きの声に、ジョンシンは目を見張る。


堪らなかった。ヨンファの言葉から何だかひどく愛されているような気がした。そう解釈してもいいのだろうか。
ジョンシンはヨンファの左手を取り、結婚指輪をつける場所にそっと口付けをした。
男同士だからきちんとした形で誓い合うことはできない。せめてその代わりに、自分の気持ちだけははっきりと表わしたいと思った。


今、口にするとヨンファが重いと感じるかもしれないから、自分の心の中でだけ。


―――生涯、俺はヨンファだけを愛し続けると誓うよ。





左手の指にまで隅々と愛撫をほどこしていくとヨンファが吐息を漏らし、それを奪うかのように噛みつく勢いでキスを仕掛ける。
お互いに舌を絡めて貪り合ううちにヨンファの息が上がってきて、一度解放する。


ヨンファが呼吸を整えている間にジョンシンは服を脱ぎ、ヨンファのシャツにも手をかける。
隠すもののなくなったヨンファの上半身は月明かりに照らされ、妖艶な雰囲気をまとって見惚れるほど綺麗だった。
ずっと長年想い続けていた相手を今から自分のものにできる喜びに、身体の奥が熱くなってくる。


電気をつけたいと言っただけで、恥ずかしがるヨンファが愛しい。自分よりももっと経験豊富で、遊び慣れていると思っていた。
いつだったか、ジョンシンがヨンファの家を訪ねた時、シャワーを浴びたヨンファがバスタオル一枚で出てきたことがあった。
ヨンファの様子からてっきり誰かに抱かれていたと確信したのだが、ただの勘違いだったのだろうか。
こんな可愛い反応をされるとは想定外だった。





ジョンシンはヨンファに覆いかぶさると、本格的に攻略しにかかった。
ヨンファの肌は滑らかで触り心地が良く、まるで手に吸いつくようにしっとりと馴染んでくる。
感度が良くて、どこに口付けても敏感に反応が返ってくるのに気を良くして、ジョンシンはヨンファの隅々まで暴いていく。


「あ……やっ……ジョン…シ…ナ……」


壮絶に艶っぽい声で名前を呼ばれて、ジョンシンは頭がクラクラしそうになった。
ヨンファの形を変えつつあるものに手を添えて刺激を与え始める。
どこが感じるのかヨンファを見ながら動かしていくと、いちいち反応が可愛くて、ジョンシンの欲望を刺激する。


包み込んだジョンシンの手がヨンファから滲み出たもので濡れてくる。
その感触を愛しげに擦ると、ヨンファは気持ち良さそうにジョンシンの胸に頭を擦り付けてくる。堪らなかった。


掠れた喘ぎ声を聞きながら頃合いを見てジョンシンが指先を埋めると、ヨンファはビクンッと身体を震わせた。
今まで異物を入れたことがないのだろうと思うほど中は固そうだった。


ヨンファから濡れ出たもので少しずつ入口を探り中に指を入れると、温かい粘膜に包まれた。
中は驚くほど狭くこのままでは繋がることも難しいと判断して、ゆっくりと時間をかけて解していく。
少しずつその動きに慣れてきたのかヨンファの身体から力が抜け、スムーズに出入りしやすいようになってきた。
眉間にしわを寄せて辛そうだったヨンファの表情が一変した。


ヨンファは普段からライブで全身汗だくになって歌っている姿が、まるで情交の最中のようだと錯覚してしまうくらい色気を出しまくっていて、ジョンシンは何度も顔が赤くなりかけたことがあるが、今のヨンファはそれとは比較ができないほどの壮絶な色香を放ち出した。
ジョンシンはその顔に目が釘付けで、思わずゴクリと喉が鳴る。


―――もっとヨンファを啼かせて、気持ち良くさせてやりたい。


ジョンシンの剥き出しの欲望は留まることを知らなかった。
指の本数を増やし辛抱強く中を掻きまわしていると、コリッとした突起物のようなものに触れた。その瞬間、ヨンファの腰が大きく揺れた。


「……ここが感じるの?」


恐らく前立腺だろうと確信して、長い指で何度もそこをしつこいくらいに擦っていく。
ヨンファがガクガクと震え出し、半開きの口から淫らな声が立て続けに漏れる。
今まで手付かずだったのが信じられないくらい、ヨンファは感度が良すぎた。


「ちょっ…と、嫌だっ……ジョンシナッ」


言葉でそうは言うものの、どう見ても嫌がっている素振りではなかった。
腰が揺れだしたのを見て、ジョンシンはもう我慢できなかった。
ヨンファを逃さぬようにして、指の代わりに限界まで高まった自分自身を押し当てる。
ゆっくりと狭い中に潜り込みヨンファの身体を少しずつ開かせていくと、その唇から苦しげな嬌声が漏れた。


「あ、……っ、イッ……」


中の粘膜がジョンシンをギチギチに締め付けてきて、いきなり持って行かれそうになった。
大きく息を吐き何とかそれに耐えると、痛がるヨンファを宥めながら時間をかけて最奥まで突き入れた。
溶けてしまいそうな熱くて柔らかい体内に包まれた瞬間、言葉にできないほどの感動がジョンシンの全身を駆け巡った。


「ずっと…アンタが欲しかった……っ」


初めてヨンファに出会って5年以上の時が流れ、ずっと恋焦がれて欲しいと願い続けてきた存在をようやく手に入れることができた。
ジョンシンは身も心も震えるほどの喜びを感じ、目の前の晒された白い喉元に吸い付き、同時にヨンファの左右の赤く膨れた突起を愛撫する。


ヨンファの反応から察するに、やはり抱かれるのは初めてのようだった。きつく絡みついてくる内壁に道はついていなかった。
誰も知らないところまで挿入したのが自分だけなのだということに興奮を抑えきれず、奥深いところまで強く腰を打ちつける。
……もっともっと深くつながりたい。


「んっ……、ん、ぁ、アッ、あ……っ…」


ヨンファの感じる箇所に狙いを定めて浅く深く繰り返し擦り上げるようにすると、ヨンファの唇から堪えきれない艶やかな声がこぼれ落ちた。
閉じられたままの影を落とした長い睫毛と、目元に浮かび始めた官能の色に思わず見惚れてしまう。
普段からはまったく想像ができない姿に、眩暈がしそうになった。


どうしてもヨンファに自分を見てほしくてジョンシンが促すと、ゆっくりと瞼が持ち上がり潤んだ眼差しが現れる。
ヨンファの凄まじい色気に打ち抜かれて、もっと啼かせてしまいたい衝動に駆られた。
この顔を見ていいのは自分だけだと思った瞬間、どす黒い独占欲に支配され、腰を掴む手に力が入る。


「もう誰にも渡さないっ。この顔も身体も心も……全部俺のものだっ」
「あっ、……ん、ンッ……」



快楽の波に呑まれながら強くしがみついてくるヨンファが何とも言えず愛しくて、ジョンシンはますます夢中になっていた。
すっかり蕩けきった熱い内部を味わうように抽挿を繰り返し、二人で快楽の階段を駆け上る。
浅いところを刺激するように腰を回すと、ヨンファが身悶えながら気持ち良よさそうな声を上げた。


「アァッ……や…………っ」
「ヨン…ファ……っ」



そして、二人ほぼ同時に達してお互いを抱き締め合った。










電気を消して目を閉じると、程なくして隣からヨンファの安らかな寝息が聞こえてきた。
ジョンシンはゆっくりと身体を起こして、その寝顔を覗き込んだ。


コンサートと打ち上げで相当疲れていただろうに、わざわざ会いに来てくれて、その上こんな無茶をさせてしまった。
でも、どうしても今すぐヨンファが欲しかったのだ。


愛しさが込み上げてきて、柔らかい髪の毛に覆われた額に口付けを落とす。


ジョンシンは今まで以上にこの何ものにも代え難い大切な存在を支えて見守っていこうと決意を新たにした。
これからどんな困難が待ち受けているのかわからない。災難が降りかかるかもしれない。
でも、ヨンファと一緒なら何でも乗り越えていけそうな気がする。





ヨンファが側にいてくれさえすれば、他には何もいらない。


幸福感に満たされて、ジョンシンは静かに目を閉じた。





End





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(0)

There are no comments yet.