CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 2

2016年10月29日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 8






休み明けの月曜日は、一週間で一番きつい。
特にこの週末は十分な睡眠がとれなかったため、余計に疲れが残っているのかもしれない。
その原因は、分かりすぎるほどよく分かっている。
揃って外食に行く同僚たちの誘いを断り、ヨンファは道向かいにあるコンビニで適当に昼食を買うと、再びディーリングルームに戻った。


「今日は外じゃないのか?」


サンドイッチを無理矢理胃に収めて、多画面モニターを見ながらコーヒーを飲んでいると、後ろから声がかかる。振り返ると、出先からたった今帰ってきたらしい同期のグァンヒが「めずらしいな」と、いつもの人懐こい笑みを浮かべて近づいてきた。
ヨンファたちが勤務するK銀行本店営業部は永登浦区のオフィス街にあり、リーズナブルな飲食店にも事欠かないことから、外食する行員が圧倒的に多い。


「なんか食欲ないし、かったるくてさ。お前は?」
「朝からハン課長と得意先へ行ってたから、その帰りに食べてきた」


脱いだ上着を腕にかけて、スマートフォンを片手に、ちょうど昼休憩で空席だったヨンファの隣に座った。
白いドレスシャツにブラウン系のネクタイを合わせた好青年が、もうひとつ残っているサンドイッチの入った袋を見て、怪訝そうな顔をする。


「おい、それっぽっちで足りるのか?もう少し肉をつけた方がいいぞ」
「お袋みたいなことを言うなって」
「ヨンファを見てると、何か心配になるんだよな。倒れない程度には食べろよ」


お前に言われたくないなと思いつつ、「夏バテかもな」と、食の進まないヨンファは曖昧に笑っておいた。


「ところで、例の合コンの話な。日程が決まったぞ」
「いつ?」
「今週の木曜日」


思わず耳を疑った。その日はジョンシンの誕生日だ。


「なんで平日なんだ?週末じゃないのか?」


翌日も仕事なのに冗談じゃないと、ヨンファは眉を顰める。
すると、グァンヒは困惑気味に「さっきメールが届いたばっかりでさ……」と言いながら、スマートフォンを差し出してきた。


「皆の都合がつくのが、その日しかないらしくてな。気を悪くしないでくれ」


ヨンファが溜息混じりに画面を覗き込むと、確かにそのようなメール内容だ。
取引先であるW証券の男性社員から合コンの話を持ちかけられていることは、前もってグァンヒから聞いていた。
昨年の十二月、恋人たちの一大イベントであるクリスマスを目前に、付き合っていた彼女と別れたヨンファが未だにフリーだと思って誘ってくれたことにも感謝している。


実際の事情は違うのだが、それだけは絶対に口が裂けても言えない。
以前、ヨンファに新しい彼女ができたとグァンヒに勘違いされた時に全否定したから、仕方がないと言えば仕方がないのだろうが。
確か、その数時間後にあの男と―――。
あらぬ方向に考えがいきそうになり、ヨンファは小さく息を吐いた。


「どういう面子なんだよ?」
「俺も詳しくは知らないんだが、男女ともにどうやら取引先の寄せ集めらしい。うちからは俺とヨンファだけ。四対四だって」


意見の相違から諍いになって以来、あの下半身暴走男とは顔を合わせていない。
昨日も、前日の埋め合わせをするでもなく、連絡すら取り合わなかった。
チラッと不遜な顔が思い浮かんだが、ジョンシンなら説明すれば分かってくれるだろう。
同じ金融業界で仕事をしている身なのだから、こういう付き合いは突発的に出てくる。
それに対して、文句を言うような器の小さい男ではないはずだ。


それに、たまには気分転換がてら合コンに参加するのも悪くないかもしれない。
取引先からの誘いだから仕事の一環だし……と言い訳するように決断したところで時計を見ると、そろそろ後場が開く時間になる頃だ。
グァンヒが椅子から立ち上がるのと同時に、ヨンファもコーヒーを飲み干して、空き缶をダストボックスに入れるために席を立った。
同僚たちも慌ただしく戻ってきて、それぞれがデスクについて準備を始めている。


「じゃあ、木曜日よろしくな。場所と時間はまた知らせるよ」
「……了解。予定に入れておくよ」


片手を上げて自分の部署へと戻るグァンヒを見送ると、ヨンファも席に座って午後の取引を再開する。
発注銘柄、マーケット動向、株価の動きを気にかけながら、売り買いを始めていく。
いつの間にかヨンファは仕事モードになり、目の前の画面に集中していた。










翌朝、寝ぼけまなこでエレベーターを待っていると、ドアを開閉する音が聞こえた。
反射的にそちらに顔を向けると、一番奥の角部屋から長身の男が出てくるのが見える。
ヨンファは咄嗟にギョッと身を硬くして、顔を正面に戻した。


朝はジョンシンの方がヨンファより三十分ほど早く出勤するらしく、今まで一度も一緒になったことはない。
それが今朝に限ってどういうことなのだろうか。
間が悪いというか、こんなところで鉢合わせるとは、タイミングが悪いにも程がある。


遠くからでもすぐヨンファに気づいたのか、一定のリズムを刻んでいた男の足音が一瞬ピタリと止む。
そして、再びこちらに近づいてきた。
頑なに前を向いていると、声をかけることすらなく、斜め後ろにそっと立つ。
全身に突き刺さるような視線を感じて、じっと見つめられているのが分かった。
非常に居心地が悪い。


天気が良く、爽やかなはずの朝が一気に重い空気に変貌して、落ち着かない気分になった。
口の中に何とも言えない苦々しさが広がってきて、どうにもならない。
背後の男は話をするつもりがまったくないらしい。ずっと無言を貫いたままだ。
仕方がないので、気まずさに耐えきれなくなったヨンファが、正面から視線を逸らさずに口を開く。


「いつもより遅いじゃないか」
「……寝過ごした」


黙っていた割には、ちゃんと返事はしてきた。
しかし、機嫌の悪そうな冷ややかな口調に、未だにセフレ発言を根に持っているのだと思った。
確かにあれは言いすぎだったかもしれないが、ジョンシンもかなり失礼なことを並べ立てたのは事実だ。
裸エプロンや乙女に加えて、お高くてクソ真面目で融通が利かないとまで言われたのだ。
それを思い出すと、またムカッ腹が立つ。
無愛想な物言いにそれ以上、口を開く気が失せていると、ようやくエレベーターが到着した。


中に乗り込むと、ジョンシンが長い指で一階の表示を押す。
狭い密室にふたりきりだと、余計に居たたまれなくなった。
ヨンファよりも頭ひとつ分近く背が高いジョンシンがいると、いつもよりエレベーターの天井が低く、四角い空間もより狭く感じられるから不思議だ。


後ろから男の服装を見ると、相変わらず質のいいものを身に着けている。
夏場はクールビズだったが、今月より一斉にスーツに切り替わった。
職種によってはまだ半袖を着用している人たちも多く見受けられるが、金融業界となると見た目も重視されるため、身なりはきちんとするように上司からも指導されている。


ジョンシンのスーツ姿は数えるほどしか目にしていないが、ヨンファの着用しているものとは明らかにランクは格上で、生地からしてすでに違う。
オーダーメイドで作ったと思われる細いラインの入ったダークグレーのスーツを見事に着こなしていて、仕立てのいいものだということは一目見れば分かる。
本革のビジネスシューズはリーガルだが、中でも一番値段のいい品を履いていることは窺い知れた。
まるで、年収の違いをまざまざと見せつけられているようだ。


そんなことをひけらかす男ではないが、細身のヨンファと違い、190センチ近くある長身のため、腰の位置が高くて嫌味なほど脚が長い。バランスの取れた体躯は、いかにもエリート然として見えた。
勤務先を知っているだけにより納得してしまうのかもしれないが、ヨンファも価格では及ばないものの、遜色のない格好はしているつもりだ。
でも、あまり隣には並びたくないなと胡乱な目で見てしまう。


すでに仕事モードに入っているのか、ふたつ年下とは思えないほど大人の雰囲気を全身から放っていて、あり得ないほど意識してしまう。
至近距離から男の体温が伝わってきそうだ。
ヨンファは心の中で何度も深呼吸しながらどうにか平静を装うと、早く一階に着かないかと、下がっていく階数表示ばかり眺めていた。


エレベーターのドアが開いた瞬間、何も言わずに歩き出す男のあとについて、ヨンファも外へ出る。
その時、ふと十五日の件を思い出した。
足早に去ろうとする背中に、慌てて声をかける。


「あのさ――」


ヨンファの方から切り出すと、振り返ったジョンシンの深い眼差しと目が合った。
数日ぶりに重なった視線に、ドクンッと心臓が跳ねる。
そんなヨンファにジョンシンは軽く目を眇め、悠然とこちらに向き直った。


「……何だよ」
「十五日だけど、予定が入ってしまって……」


それ以上、言葉が続かなかったのは、男の表情がいつもとまったく違って見えたせいだ。
しばらく無言のままヨンファを見つめていたジョンシンは、大きく息を吐いた。


「……その日なら、俺も予定が入った」
「あっ、そうなのか?じゃあ、ちょうど良かったな」


ずっと気になっていたので、お互い様だと分かり、心なしかホッとした。
すると、ヨンファの何が気に入らなかったのか、ジョンシンが片眉を上げる。
ひとまず当たり障りのないことを言ったつもりだったのだが、どうやら本人はお気に召さなかったらしい。
言葉の選択を誤ったかと、「また日を改めて……」と取ってつけたように言うと、これ見よがしに大袈裟な溜息をつかれた。


「別にいい。端から期待なんかしてねぇし」


ジョンシンは傲然とした態度で、皮肉げに言い放った。
一応気を使って提案してやったのに、嫌味ったらしい台詞で素気無く一刀両断されて、ヨンファの頭に血が上る。
このぎくしゃくした雰囲気を何とかしたいと思っていたが、肩透かしを食らい、もうどうでもよくなった。


「何なんだ、その言い方」


再び、土曜日の件を思い出し、怒りが沸々と込み上げてくる。
瞳に力を込めて見返すと、ジョンシンは不快げに眉根を寄せた。


「本当のことだろ」


逆に苛立った低音で凄まれ、一気に険悪な空気に包まれる。
この男と一緒にいて、ここまで気詰まりなのは初めてだ。
やや離れて立つ男は数秒間、何かを思案するように無言でヨンファを見下ろしていたが、深い嘆息を零すと、もう話は済んだと言わんばかりに踵を返した。


広い背中から尖った気配を撒き散らして、隣接している駐車場へと歩き出す。
大股でシルバーの車に乗り込む男を視界の端で捉えながら、ヨンファは何とも言えない気分で愛車にキーレスエントリーを向けた。










それぞれが仕事を終えた木曜日の夜、ヨンファはグァンヒと連れ立って明洞へと繰り出した。
指定された店は雑居ビルの地階にある隠れ家的な創作居酒屋で、集合時間の十九時五分前に到着すると、すでに取りまとめ役をしているW証券の男だけが来ていた。


店内はいくつかの個室に分かれていて、間接照明の柔らかい光が落ち着いた雰囲気を醸し出している。
名刺交換をして簡単な挨拶を済ませると、取り敢えず言われた席に座った。
もうひとりの男性についてグァンヒが尋ねると、仕事で少し遅れて来るとのことだ。


人数が集まるまで三人で取り留めのない会話をしていると、「こんばんは」という複数の声とともにぞろぞろと女性たちが到着した。
目の前に現れたのはかなりハイレベルな綺麗どころばかりで、グァンヒともうひとりの男がデレーッと嬉しそうな顔をしている。
ヨンファはその四人の中に、ショートカットの見知った顔を見つけた。


「ちょっと、ヨンファじゃない!なんでこんなところにいるのよ!?」


笑顔で隣に座ってきた美人は、同じ大学で、学部もゼミも一緒だったパク・チョアだ。
現在は、ヨンファの勤務先とはライバルと言われているS銀行の窓口係をしている。


「お前こそ、彼氏はどうした?」
「先月、別れたばっかりなのよ。そういうヨンファはまだ独り身なわけ?」
「悪かったな。ほっとけよ」


正確には違うのだが、男と付き合っているとも言えず、取り敢えず話を合わせておく。
チョアは大学二年の時、ヨンファの友人の彼女でよく一緒につるむ仲だったため、男女の関係なしで付き合える友人のひとりだ。


女性陣が合流したことで、その場は一気に華やかになり、まずひとりずつ簡単な自己紹介をした。
そのあと、W証券の男がひとり遅れることを彼女たちに話し、いろいろと仕切り始める。
それぞれが注文したドリンクや料理が運ばれてくると、早速、七人で乾杯して、共通の話題である仕事のことで盛り上がった。
チョアを含めた四人は皆、知的で聡明なタイプで話が上手く、楽しい雰囲気の中で美味しい料理を食べながら、自然と会話も弾んでいく。


こういう感覚を忘れかけていた。
彼女がいる時は気が引けて、誘いがあっても断っていたが、ヨンファはもともと合コンは嫌いではない。
特定の相手と別れて、次を見つけるまでの切れ間には、それなりに夜遊びもしてきたのだ。
明日が仕事なのは憂鬱だが、断らなくて正解だったなと思いながら、ヨンファがビールを飲んでいた時だった。


「遅くなりました。チャンの代理で来たんですが」


どこかで聞いたような低音に、視線を向けたヨンファは呼吸が止まった。
モデルのような長身の男が高級そうな濃紺のスーツに身を包んで、目の前に立っている。
思いがけないイケメン登場に、女性たちの顔つきが突如変わり、控えめな歓声が上がった。
チョアまでうっとりしたような顔で見ている。


店員に案内されて、遅れてやってきた四人目の男は、あろうことかヨンファの隣人だった。
すぐさまこちらに気づいたジョンシンは、虚を衝かれたように目を見開いている。
ヨンファはこのドラマのような展開を嘘だと思いたかった。





To be continued





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(8)

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/29 (Sat) 17:42

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/29 (Sat) 18:18

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/30 (Sun) 10:24

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/30 (Sun) 11:51

haru

t*******さん

こんにちは♡
ばったり出くわすって設定が大好物なんですよ(≧ω≦)
ジョンシンのこと、どうもありがとうございます♪
強気なタイプが好きなので、ついついこんな感じで書いてしまいます。
あれこれ書き散らしていますが、頑張って進めていきますね(*´ω`*)

2016/10/30 (Sun) 16:41

haru

は*さん

こんにちは♡
合コン設定が大好きなので、書いてみました。
リーマンやスーツも好きだし、ばったり出会って気まずい思いをするとか、そういう何気ないシチュエーションに萌えちゃうんですよ♪
些細なことで行き違ってこんがらがるのが堪らないので、いろいろとやってみますね(*´ω`*)

2016/10/30 (Sun) 16:51

haru

i*****さん

こんにちは♡
スーツ、リーマン、もう大好物なんです(≧ω≦)
ジョンシンは断然カッコイイ派ですね!!
私にとっては完全攻め男なので、可愛い系の彼はスルーして、男っぽいジョンシンで妄想しています。
前髪を上げて、ハードめな衣装を着てくれると、本当に最高です♡♡

ヨンはノンケ設定なので、こんな感じにしています。
裸エプロンはどうだろう…( ̄ω ̄;) ヨン次第というところでしょうか(笑)
すったもんだが大好きなので、いろいろとやってみますね。
どうなっていくかはその時の気分になるかもしれませんが、頑張ります♪

2016/10/30 (Sun) 17:11

haru

h*******さん

こんにちは♡
読みに来て下さり、どうもありがとうございます♪
こういうドタバタ展開が大好物なので、いろいろとやってみますね(*´ω`*)
少しでも萌えていただけるように、頑張ります♡♡

2016/10/30 (Sun) 17:19