CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 31

2016年10月09日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 8






不意に外が騒がしくなり、コンクリートの床に跪いていたヨンファの全身にも振動が伝わってきた。そばに立つチルソン組の若頭の目には、残忍な色が滲んでいる。
バンッと派手な音が響き、ドアが大きく開け放たれたと思うや否や、複数の乱れた足音とともに一群が飛び込んできた。
ピンと張り詰めた空気の中、ダークスーツを身に着けたスラリとした男を見て、ヨンファは目を瞠る。


「若……っ、ご無事で!」


いつになく切迫した声で、グンソクが安堵の表情を浮かべた。
その肩越しに私服姿のジョンシン、ミニョク、組事務所で会ったばかりのスンヒョンが見え、チルソン組の舎弟らが慌てて若頭の周りをザッと取り囲む。
ヨンファは予想外の急展開に、思考がついていかなかった。


「――お前たち……」


呆然と呟くと、四人は厳しい顔つきを緩めることなく、鋭い視線を奥の集団に据え、いつでも動けるように身構える。
どういう手段を使ったのか、その労力は計り知れないが、チルソン組が送信した写メからこの場所を短時間で突き止めてくれたのだろう。


その時、ドア付近からドガッと鈍い音が響き、何者かに後ろから蹴りを入れられた鼻ピアスの男が勢い余って床の上に転がった。
容赦ない一撃を喰らわせた相手を見て、ヨンファは息を呑む。


「!」


床に膝をついた格好のまま、ヨンファはジョンシンの斜め後ろに、彫りの深い精悍な面立ちを見つけた。
濃紺のスーツに身を包んだ愛しい男が、乱れた前髪を掻き上げている。
前に進み出てきて、眦の吊り上がった瞳を正面から視界に捉えた瞬間、ヨンファの心臓がドクンッと大きく波打った。


辛うじてその衝動を抑え平常心を保つと、男の目がヨンファの姿を認めて、一気に見開かれる。
視線が絡み合った瞬間、ジョンヒョンの双眸がじわりと細められ、ほんの一瞬だけ微かに揺らいだ。
手の届く距離にいるのに、駆け寄ることさえできない。
それが、こんなにももどかしい。


ヨンファは目の前の見慣れた面々の姿に、全身の力が抜け落ちるかと思うくらい緊張が解けかけたが、安心している場合ではなかった。
チルソン組の不穏な空気に、皮膚が粟立つ。
一番避けたかった状況に陥ってしまったからこそ、自分が何とかしなければならない。
喉元までせり上がってきた激情を我慢しきれず、ヨンファは弾かれたように叫んだ。


「今すぐここから出ろ……っ。これは罠だ!」
「んなこたぁ、分かってるって」


長身の男に、別段驚く気配すらないリアクションをされて絶句する。
粗野な口調とは裏腹で、ジョンシンの表情は包み込むようにひどく温かかった。


「分かってるなら、どうして来たんだ!?みすみす危険を冒してまで助けることはない!俺のことはいいから、早く逃げろっ!」
「若……っ」
「放っておけるはずねぇだろ。アンタは俺たちにとって、命以上に大事な存在だ。それに、敵を前にして尻尾を巻いて逃げるなんざ、俺らの流儀に反するし、組の沽券にも関わってくる」
「………っ」


戸惑うような素振りをしているグンソクの横できっぱりと言い切られ、ヨンファは声を失った。
何も言えずにいると、端整な顔立ちは真剣そのもので、熱い眼差しのジョンシンに見つめ返される。
黒々とした真っ直ぐな瞳は慈しむような色を帯びて、見ているだけで切なくなりそうだ。
一途な想いがそこかしこから溢れていて、心が締めつけられるようにヨンファは急に息苦しくなった。


とても受け止めきれなくて他の四人に視線を移すと、すべて承知しているといわんばかりの表情にやりきれなくなる。
ジョンヒョンの揺るぎない双眸は大丈夫だから安心しろと、雄弁に物語っているようだった。


不可抗力とはいえ攫われたばかりに、組に迷惑をかける羽目になってしまった。
自分のせいで皆を危険に晒すことになり、どうしようもなく居たたまれない気持ちになる。
捨て身でここを探り当ててくれた五人の想いをひしひしと感じて、ヨンファは後ろ手に縛られている手のひらに、爪が食い込むほど強く拳を握り締めた。


「お前たちを巻き添えにして、すまない……」


苦いものを押し殺して、絞り出すように言葉を紡ぐ。
胸がキリキリと締めつけられたように痛むのをこらえて、唇が傷つきそうなくらいきつく噛み締めた。


「それは違う。巻き込んだのは、こちらです」


チルソン組の連中に脇目も振らず、ジョンヒョンは座り込んでいるヨンファにだけ視線を向けて、大股で真っ直ぐ近づいてくる。
傍らまで距離を詰めてきた男を見上げると、両手を縛られた状態のヨンファを見て、想像していた通り痛ましげに眉を顰めた。
なぜかヨンファの口許の辺りを探るように凝視している。
頬は未だに熱を持っているが、無精髭の男に殴られた時の痕跡でも残っているのだろうか。


「……ヨンファさん、怪我を?」
「おい、それ以上は近寄るんやないで」


いかにも愉しげに傍観していたチルソン組の若頭が制止すると、数人の舎弟たちがふたりの間に割り込む。
ジョンヒョンはきつく眉根を寄せ、敵に射るような視線を向けた。


「誰の仕業だ?」


対峙している連中がたじろぐほど眼光が鋭くなり、低く押し殺した声に背中がぞくりとした。


「さっき逃げようとしたからな。ぶん殴ってやったんや」
「あの時の外道か」


ヘラヘラと笑う無精髭の男に凄みを増した低音で呟くと、その整った顔に尋常ではない気配が漂い始める。
屋敷の駐車場で襲われた時の相手だと、すぐに思い出したようだ。
ジョンヒョンは表情ひとつ変えずに近づくと、次の瞬間、無精髭は床に頽れた。
ほんの一瞬の出来事で、何が起こったのかよく分からなかった。


男は声にならない呻きを上げて、その場でのたうち回っている。
早すぎて見えなかったが、どうやら鳩尾に拳をめり込ませたらしい。
ジョンヒョンの目には周囲を圧倒するほどの獰猛な光が宿り、全身から殺気を漲らせていた。
まったく無駄のない動きに、チルソン組の舎弟たちが一斉に息を呑む。


「兄ちゃん、そこまでにしとけや。ようやく役者が揃ったよおやな。待っとったで」
「お前がボスか?キム・チュンギル…だな。ただの闇ブローカーと思っていたが、チルソン組の幹部とはな」


ついにチュンギルが均衡を破った。
グンソクは落ち着き払って、目の前のずんぐりとした男を睨み据える。


「そおや。チルソン組の若頭をしとる。青龍組の若頭、チャン・グンソクやな。噂はよぉ耳に入ってくるで」
「よくもまぁ、次から次へと汚い手が思いつくもんだな」


偉そうな態度を崩さず、チュンギルはニヤリと不気味に嗤う。
唸るような低音で忌々しげに睨みつけるグンソクをものともせず、愉快でたまらないといった様子だ。
次いで、ジョンヒョンも眉間に縦皺を刻んだ険しい表情で言い放つ。


「お前たちの望み通りここに来た。早くヨンファさんの縄をほどけ」


チュンギルはフンッと鼻を鳴らすと、舎弟に目配せした。
ヨンファはそばに控えていた男に手荒く引っ立てられると、ナイフのようなものでロープが切られ始めるのが分かる。
完全に解けると、ようやく両手の自由が利きホッとしたのも束の間、今度はふたりの男が挟み込むようにして、強い力で両腕を拘束された。


「お前が若頭補佐のイ・ジョンヒョンか。江南のキャバクラに行った時、お前らの話題が出てな。キャバ嬢がキャーキャー騒いどったで。客のこと無視して、ほんまムカつくわ」
「男の嫉妬は醜いな。俺たちを逆恨みするのはお門違いだろう。文句は女どもに言え」
「何やと、コラァ!」
「ちーとばかしモテるからて、ええ気になるな!」


吐き捨てるようなジョンヒョンの挑発めいた声音に、チュンギルの舎弟らが顔を真っ赤にしていきり立つ。


「お前んとこの組は、顔で選んどんのか?イケメン揃いで名を轟かせとるやろが」


聞くだけ自分たちが惨めになるのは明白なのに、分かっているのかいないのか、チュンギルはこの話題をやめようとしなかった。


「なんだ。羨ましいのか?まぁ、何人かは俺が人選したから、そう言われて当然といえば当然だが」
「おい、舐めとんのかっ。調子に乗るなや!」
「いてこましたろか!」


他の四人の顔をまじまじと見ながら悪びれずにしれっと言ってのけるグンソクに対して、血気盛んな舎弟らが口々に恫喝する中、一石を投じた男がいた。


「でも、例外もいますよね……」
「ああっ!?いたか、そんな奴?」


スンヒョンがぼそりと呟くと、即座に長身の男が反応して、腕を組んで首を捻りながらミニョクを横目で見る。
すると、無言を貫いていたミニョクが言いにくそうに「……顧問」と漏らすと、ああ~!と全員が同調して、納得顔で頷いた。


「どういう経緯で顧問はうちに入ったんですか?」
「さあな。俺もよくは知らない」
「私も詳しくは……」


余程興味があるのか、怖いもの知らずなのか、さらに畳みかけるように尋ねるスンヒョンに、グンソクは肩をすくめて首を振ると、ジョンヒョンと目を見合わせる。


「親父さんに見込まれたとか?ヨンファヒョンなら何か知ってんじゃねーの?」


言いたい放題な五人の掛け合いを離れたところで静観していると、いきなりジョンシンから話を振られた。
全員の注視が自分に集中しているのを感じ、ヨンファは思いっきり戸惑う。


「えっと……確か自分から志願してきたはずだが……。俺が三歳くらいの時の話だからな……」
「あの見てくれじゃ、そうだろうな。若頭がスカウトするようになってからっしょ?うちがイケメン組って呼ばれるようになったの。俺もそのひとりだし」
「まぁ、勧誘するなら、腕が立つ奴で容姿が良いに越したことはないからな」


ジョンシンとグンソクの会話を聞きながら、この緊迫した雰囲気の中、一体何の話をしているんだと、ヨンファは目眩がしそうになった。


「おいおい、内輪ネタで盛り上がってんやないで」
「てめぇが先に振ってきたんだろうがっ」
「人のアジトに乗り込んどいて、随分と威勢がええやないか。無事帰れるとは思てないやろな?」


蚊帳の外になっていたチュンギルが堪りかねていかつい顔を醜く歪ませると、ジョンシンが全身から剣呑なオーラを立ち上らせる。
再び、密室は一気に緊迫した空気に包まれた。


「俺らもそんなに無体なわけやない。一応チャンスは与えてやる。うちの傘下に入る気ないか?」


チュンギルはグンソクに視線を戻し、唐突に言い出した。
真の目的を隠して、こちらを油断させるつもりなのだろうか。
未だにひとりも怪我人の出ていない青龍組が、いかに相当腕に覚えがある集団であることは証明済みだ。そのため、案外慎重になっているのかもしれない。
ヨンファは相手の出方を必死に探りながら、様子を窺うことにした。


「……傘下?汚い手を使って呼び出しておいて、よくこんな話ができるな。礼儀を知らんのか。第一、俺の一存で決められる話でもない」
「それやったら、今ここで組長に連絡せえ」
「断ると言ったら?」


冷やかな声とともに、グンソクは切れ長の双眸を細めた。


「そおか。これでも気ぃ変わらへんか?」


チュンギルが振り返って不敵な笑みを浮かべると、ガチャッと金属の音がして、ヨンファのこめかみに鉄の塊が押し当てられる。
その冷たい感触に、ヨンファの全身に緊張が走った。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(8)

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2016/10/10 (Mon) 10:56

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2016/10/10 (Mon) 13:34

hoshi

haruさーーーーーん。

緊迫した空気。途中までは、彼らが負けるわけがないとか、言葉のやりとりに、きゅん♡♡としてましたが。
最後の最後で!!!!!!
私、感想全部吹き飛びました。

金属音。
ヨンファの表情
それから、ジョンヒョンたちの顔も浮かび……。

呼吸がーーーー、です。

もうもうもうもうもう←
続きも楽しみにさせてくださいませ♡♡

でも、そぎ♡♡←ん•́ω•̀)?

2016/10/10 (Mon) 22:52

haru

i*****さん

こんばんは♡はじめまして♪
コメント、どうもありがとうございます。
極道を気に入って下さり、とても嬉しいです(〃ω〃)
私は皆さんに比べてペン歴が短いため(昨年の夏からなので)、CNくんに対するイメージや見方がちょっと特殊なのかな?と思っております。
ライブの舞台裏で、ジョンシンがヨンに対して無遠慮な態度を取っているのを見たり、あとは自分の願望で性格を俺様っぽくしているのですが、そう言っていただいてとても光栄です♡♡
ヨンシンの話は私も読んだことがありまして、お好きな方も多かったのでしょうね。
デビューの頃に比べて、三人が肉体的にとても逞しくなってくれたのは、私としてはホクホクです。特にジョンシンの二の腕と胸板には、よくぞ筋肉をつけてくれたとニヤニヤが止まりません(///ω///)
ヨンはですね、あの身体を見るとショックで倒れそうになるので、できるだけスルーして昔の細身の体型で妄想しています。攻めよりゴツい受けは生理的に無理なんです(TωT)
i*****さんは釜山ズがお好きなんですか♡また、いろいろな話を書いていきたいと思っておりますので、いつでもお気軽に読みにいらっしゃって下さい。
心温まるお言葉をいただき、本当にありがとうございます(*´ω`*)

2016/10/10 (Mon) 23:12

haru

は*さん

こんばんは♡
相変わらずゴチャゴチャとした場面が続いていて、シリアスなシーンに緊張感のないやり取りを入れてしまいましたが、そう言ってもらって嬉しいです(///ω///)
最後があんなので、「ふざけるなっ」って声が聞こえてきそうで、本当に自分でもそう思います(-ω-;)
いつも楽しい感想をありがとうございます♡♡プレッシャー大好きです♪
決してマゾではないですが、叱咤、催促とか、甘やかされない方がシャキッとして真面目に取り組もうって気になります。元が面倒くさがり屋なもので…。
続き、頑張ります(*´ω`*)

2016/10/10 (Mon) 23:43

haru

hoshiさん

こんばんは♡
最後の最後にドーンみたいな。いい加減にしろと自分でも思います( ̄ω ̄;)
中途半端なところで終わったので、続き、頑張ります♪
それと、グンですね♡♡これもいつ書こうかなと思ってまして。
顔を引き攣らせながら話を読み返して、何とか年内には形にしますね(*´ω`*)

2016/10/11 (Tue) 00:06

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2016/10/11 (Tue) 14:50

haru

t*******さん

こんばんは♡
ど、どうでしょうね~~(´・ω・`;)
本当にそうなってほしいと思います(。>ω<。)
あまりお待たせしないように書きますので、見届けてやって下さい♪

2016/10/11 (Tue) 20:48