CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 30

2016年09月24日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 2






夜も更けた頃、二台の車に分かれて梨泰院の歓楽街に到着した五人は『BIT』へと急行した。
梨泰院は米軍基地のちょうど北側に位置するため、在韓米軍兵や日本人駐在員が多く暮らしている。
また、周辺には各国の大使館や領事館が集まっていることも関係し、ソウルでも特に外国人が集まる街として知られていた。


そのため、彼ら御用達のカフェやバー、レストランなど飲食店が立ち並ぶ通りには、異国情緒の雰囲気が漂っていて、観光客にも人気のスポットとして有名だ。
韓国でありながら、まるで外国に来たかのような錯覚を起こさせ、平日の夜にもかかわらず結構な人手に驚く。


行き交う人波を避けるようにして通りを歩いていると、不意にバイブ音が鳴り響いた。
ダークスーツの内ポケットから携帯電話を取り出したグンソクは、発信者を確認して耳に押し当てる。
敬語で話している様子から、かけてきたのは最高顧問かドンゴンのどちらかだろう。


「そうですか。分かりました」


グンソクは早々に携帯電話を切ると、四人に視線を送る。


「顧問からだ。五ヶ所のアジトはもぬけの殻だったそうだ」
「では、急ぎましょう」


結論が出たことでジョンヒョンが促すと、全員の行動は早かった。
近道のため、足を速めて路地裏を突っ切ると、大通りに面した雑居ビル群の中に目指す店がある。
「あの店です」と呟くミニョクの視線の先には、派手なネオンに彩られた『BIT』が存在感を放っていた。


広々とした敷地から規模の大きさが窺え、外観はスタイリッシュなデザインをモチーフにしており、そこかしこにハイクオリティーな佇まいを見せている。
雑居ビルの一階フロアを占めるのはカフェスタイルのスタンディングバーで、地下一階がメインフロア、地下二階はVIP専用ラウンジという三フロアで構成されていた。
多くの芸能人がお忍びで遊びに来るという触れ込みらしい。


確かに今流行りの洗練されたデザインの造りになっているが、どこか不気味さを醸し出していた。それは目には見えず、裏社会で生きている者にしか分からない得体の知れない何かが感じられる。
階段を使って地下一階へと下りると、エントランスの先に黒服のスタッフが二名立っていた。
妙に目が鋭くて、とても堅気の人間には見えない。


「この手の店は、入る時に必ずIDチェックをされますよね」
「あっ、そうだね。身分証のこと、すっかり忘れてたよ」


五人の中で一番若いスンヒョンが小声で囁くと、ミニョクがしまったとばかりに、ばつの悪い顔をする。
全員、プライベートでクラブに来ることはあるが、今日はそこまで気が回っていなかった。
黙って耳を傾けていたジョンシンが、ひょいと肩を竦めて呟く。


「んなもんクソ喰らえだろ。客で来てねーんだし」


大雑把なように見えて、妙に冷静な面を兼ね備えている男の台詞に、グンソクが同意した。


「その通りだな。いちいち提示してやる必要はない」
「じゃあ、ここは私が……」


ジョンヒョンが自ら名乗り出ると、任せるといったふうにグンソクが目配せしてくる。
それに頷き、上等な濃紺のスーツを見事に着こなしているバランスのいい体躯をさっと反転させ、大股で黒服に近づいた。


「身分を証するものをお見せいただけますか?」


能面のような無表情で、男はマニュアル通りの台詞を吐く。


「そんなものはない」
「でしたら、中にお入れすることはできません」


常にはないほど相当気が短くなっていたジョンヒョンは、フロントカウンター越しに男の胸倉を引っ掴むと、地を這うような殺気の籠った低音で囁いた。


「青龍組だ。お前らのボスに会わせろ」
「………っ」


息を呑んで固まる男を、ジョンヒョンは鋭い眼光で睨み据える。
ずっと我慢を強いられていた分、凄まじい怒りが一気に噴き出すと、黒服はみるみる顔面蒼白になった。


「今すぐ案内しないと、ここにいる客全員を退避させる事態になるぞ」


威嚇しながら、いとも簡単に身体をカウンターに引っ張り上げると、慌てた様子で「し、します…っ」とバタバタと足を動かす。
パッと手を離すと、へなへなと何歩か後ずさり、「こちらです」と怯えた表情でフロントから出てきた。


黒いドアを押し開ける男のあとについて五人が店内に入った途端、眩いほどの光が目に飛び込んできて、騒々しいオールミックスサウンドが鼓膜を襲い、音の洪水に呑み込まれた。
最先端のムービングライトやフルカラーのレーザープロジェクターが華やかさを演出し、天井には巨大LEDボールやシャンデリアが随所で輝き、ラグジュアリーな雰囲気も漂わせている。


グローバルな街に立地しているだけあり多彩な人種が蠢き、至るところで英語が飛び交っているので、海外のクラブに来たような錯覚に陥ってしまう。
客の大半は二十代の男女で、ものすごい熱気の中、一体感のある盛り上がりを見せて賑わっている。騒いだり踊り狂うパーティーピーポーにとって、格好の遊び場なのだろう。
ミニョクによると、収容客数は最大1000人で、有名DJが来ることもあり、表向きはちゃんとしたクラブのようだ。


そのまま奥の突き当たりまで進み、『STAFF ONLY』のプレートが貼られたドアのところまで来ると、男はポケットから鍵を取り出した。
ドアを開けると、目の前には階段があり、やや足早に下り始める男のあとに続く。
地下二階では止まらず、さらに下へと下りる。
どうやら、表向きには知られていない地下三階が存在するようだ。


階段を下りきったところに、またドアがあった。
何に対してなのか、随分と用心深い構造になっている。
重い鉄製のドアが開くと、中に入るよう黒服に促され、周りを見渡した。
先ほどまでの煌びやかな喧騒とは打って変わり、全体的に薄暗い印象の空間が目の前に広がっている。
さながら地獄への入口といったところだろうか。


店内とは違い、壁で細かく複数の部屋が仕切られており、天井や壁伝いに上階の音と振動が漏れ聞こえる。
それに気を取られていると、背後でガチャッとドアに鍵をかける音が響いた。
振り返ると、いつの間にか案内をした男の姿が消えていて、急いで階段を駆け上がる気配がする。


人気のないフロアには、自分たちだけが取り残されていた。
チッとジョンシンが舌打ちすると、グンソクは「捨て置け」と言い放つ。


「ボスとやらが、この中のどこかにいるってことだな」
「さぁて、何が出てくっかな」


渋い顔つきのグンソクに、ジョンシンは飄々とした物言いをした。


「しらみつぶしに探すぞ」


グンソクを先頭に、周囲に視線を配りながら迷路のような通路を歩いていくが、どこにも人の姿はなく、それが余計奇妙に感じられた。
どこかで自分たちの様子をそっと窺っているような、不気味な気配が身体に纏わりついてくる。


声を張り上げて口々にヨンファの名を呼びかけながら順番にドアを開けて回ると、スタッフルームや倉庫、秘密部屋らしき怪しい雰囲気の空間まであった。
案外、今でもこの地下の部屋を使って、ドラッグパーティーなどの違法行為を平然と行っているのかもしれない。


奥へ奥へと進んでいくと、突き当たりがT字になっている。
ゆっくりと歩きながら付近に差しかかったところで、ジョンヒョンは足をピタッと止めると、露骨に眉根を寄せた。
いつもより感覚が研ぎ澄まされているせいか、異様な空気を察知したのだ。


「若頭……」
「ああ、おいでなすったようだ。皆、油断するなよ」


グンソクの言葉に四人は力強く頷き、その場の空気が一気に引き締まる。
立ち止まっていると、突如、複数の足音が聞こえてきた。
歩を進めて左右を確認した刹那、視線の先に見るからにその筋と分かる男たちが姿を現し、目の前に立ち塞がる。


右に四人、左に三人。全員見たことがない顔ぶれだが、チルソン組に間違いない。
どれもこれも目つきがすこぶる悪く、殺気を漂わせていて、手にナイフや鉄パイプを握っている男もいる。
いかにも極道といった風体で、ジョンヒョンたちは進路を阻まれ、両側からちょうど挟み込まれた状態になった。


「チルソン組だな」
「意外と早かったやないか」


双眸から剣呑な光を放ち、静かな低音でグンソクが確かめると、濁声の釜山弁とともに、ジョンシンよりも遥かに長身で横幅もある大男がぬっと前に出てきて仁王立ちになる。


「随分と舐めた真似をしてくれたもんだな。若はどこだ?」
「……若?ああ、あの医者か。気ぃ強すぎて手こずっとるわ」
「何だと?」


その言い方が含みを帯びているように感じられ、ヨンファの身に何かが起こったのだと直感する。


「貴様……っ。何をしやがった……っ!」


ジョンヒョンがドスの利いた低音で怒気を漲らせると、背後の男たちも一瞬身じろいだ。
大男は頑強な肉体で五人を威圧しながら、挑戦的な態度でフンと鼻で嗤う。
それを見たジョンシンが先陣を切って、男に向かって足を踏み出した。


「てめーら雑魚に用はねぇ。邪魔だ、どけ」


散れというように顎をしゃくって吐き捨てた声はいつになく低く、背後からでもジョンシンの全身から殺気が迸っているのが分かる。


「青龍組がいかほどのもんか、ちょっと小手調べしたろ思てな」


大男がずんぐりとした両手を組み、指をボキボキと鳴らした。
余程腕に自信があるのか、もったいぶった仕草を見せつける男に業を煮やし、瞬時にジョンシンの闘争本能にスイッチが入る。


「どけっつってんだろーが!」


言うが早いか、弧を描いた長い脚が凄まじい勢いで大男の鳩尾に回し蹴りを決めた。


「うおおぉぉっ……」


その衝撃で巨躯が後ろに吹っ飛び、周りの連中は驚愕の表情を浮かべて竦み上がった。
すぐさま我に返ったスキンヘッドが奇声を上げ、鉄パイプを振り回しながらこちらに突っ込んでくる。
気後れしていた男らも、それを合図に一斉に襲いかかってきた。


ジョンヒョンは鉄パイプをひらりと躱すと、勢いよくつんのめってバランスを崩したスキンヘッドの背後に回り込む。
勢いをつけて猛然と蹴りをお見舞いすると、頭から壁に激突した。
フラフラしながらも立ち上がる男の腹に拳をめり込ませ、さらに胸倉を掴んで床に強く叩きつける。


「ぐ……うっ」


ひとりを片づけて周囲を見ると、他の皆は残る五人とやり合っていた。
ミニョクとスンヒョンは見た目から想像できないくらいあまり顔色を変えることなく、戦闘モードに入って、トレッドヘアと鼻ピアスの男相手に重いパンチを繰り出している。


グンソクは色黒の男が繰り出すナイフを優雅な動きで避け続け、苛立ちを増した相手に笑みさえ浮かべ、どこか愉しんでいるように見えた。
男は痺れを切らして飛び込んでいくと、グンソクはナイフを持った腕を捻り上げ、すかさず膝蹴りを入れる。


その時、背後で加勢しようとしていた金髪の男が懐に手を入れたのを、ジョンヒョンは見逃さなかった。
男に向かって走ると、取り出すのとほぼ同時に利き手を蹴り上げ、拳銃が音を立てて床に落ちる。


「ぐあ……っ」
「お前の相手は俺だ」


不意をつかれた金髪は、ジョンヒョンが普段よりもさらに凄みを利かせた険のある顔でじわじわと距離を縮めると、その迫力に圧倒されたのか、ヒクッと頬が引き攣っている。
捨て身の覚悟で突進してくると、ジョンヒョン目がけて殴りかかってきた。
素早く身を翻して男の顎に右拳をヒットさせると、もんどり打って床に転がる。
頽れたものの必死で起き上がろうともがいているのを見て、ジョンヒョンは攻撃を緩めず胸を蹴り上げた。


「――ぐっ……っ!」


小さな呻き声とともに金髪は通路に倒れる。
その姿を一瞥してから、ジョンヒョンは転がっていた敵の拳銃を拾い上げた。
チルソン組の何人かはその場に完全に伸びて、残りは微かに動いている状態だ。


「あまりにも呆気なさすぎるな」
「そうですね」


グンソクの言う通り、若干肩透かしを食らった気がしないでもない。
すると、隙を見て、ひとりが突然起き上がって逃げるように走り出した。
それに気づいたスンヒョンが「あっ、待て!」といち早く追いかける。
周りに神経を張り巡らせながら、四人は猛スピードでふたりのあとに続くように、さらに奥へと突き進んでいった。










無力な自分に打ちひしがれていると、突然、目の前で呼び出し音が鳴った。
唇を強く噛み締めていたヨンファから視線を外すと、紫煙を悠々と吹かしていた若頭が、煙草を口から離して携帯電話に出る。


「そうか。待ちかねとったで」


ニヤリと嗤いながら目の奥でギラリと宿った凶暴な光に、ヨンファは言い知れぬ不安感に襲われた。
男は短くなった煙草を床に落とし、靴の裏で踏みつける。
嫌な予感がして、動揺のあまり心臓が不穏なリズムを刻み始めた。


「ようやくお客さんらが来たようや」


男は勝ち誇ったように声高々に言うと、周りの舎弟らが一斉に勢いづく。
不気味な声色に眉を顰めたヨンファは、遠くから複数の足音のような重低音が近づいてくるのが聞こえた。


そして、次の瞬間―――。
バンッ、と激しい音を立てて、鉄製のドアが勢いよく開いた。


「………っ!」


ガヤガヤと荒々しく室内に踏み込んできた集団に、思わず息を呑む。
苦境に立たされていた最中、目の前に現れたのは、ヨンファがよく知る男たちの姿だった。





To be continued





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(2)

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/09/25 (Sun) 09:02

haru

は*さん

こんばんは♡
いいえ!どうもありがとうございます♪
皆の格好いいシーンを書けるのはとても楽しいのですが、私の拙い描写でちゃんと様子が伝わっているか、とても心配です。多くの人物が登場するシーンはごちゃごちゃとしてしまい、本当に難しくて…(TωT)
こちらがこんな感じなので、もう一つの話で愛を補給します♡♡

2016/09/25 (Sun) 20:45