CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

明けない夜を越えて 1

2016年03月09日
DESTINY 0


『DESTINY』 ジョンシンVer.



「ジョン・ヨンファです。よろしく」


そう言って差し出され手は色が白く、細くて長い指をしていた。
まるでピアニストのような手だと、ジョンシンは思った。





ジョンシンがヨンファと初めて出会ったのは、練習生としてFNCエンターテイメントに入った時だった。
スカウトされたばかりで右も左も分からず緊張していたジョンシンに、笑顔で気さくに話しかけてきてくれたのがヨンファだった。


向かい合ってみると、自分より少し背が低く、驚くほど綺麗な顔をしている。
色白で、涙袋がぷっくりとした黒目がちの大きな瞳、赤みを帯びた唇から覗く白い歯。
そのどれもが見る者を魅きつけてやまないだろう。
ジョンシンはまるで吸い寄せられてしまったかのように、ヨンファから目が離せなかった。


「あっ、はじめまして。イ・ジョンシンです。よろしくお願いします」


握手を求められその手に触れると、人柄を表しているかのようにとても温かかった。
ヨンファは話し好きなようで、ファッションから始まり、自分のスカウトされた経緯や出身地のことなどを話してきて、逆にジョンシンのことも訊かれた。
初対面なのにとても喋りやすくて、先生が来るまで話が中断することはなかった。


ヨンファは完璧な容姿に加え、目に見えないオーラのようなものがあり、既にスターとしての資質を兼ね備えた選ばれし人なのだと感じた。
でも、本人は気取ったり、まったくそんな素振りを見せることもなく、とても自然体だ。


ジョンシンは高校生でありながら高身長で抜群のルックスの持ち主だったため、地元ではかなり有名な存在として知られていた。
女に不自由することがないくらいモテて、告白をされることも多かったし、実際、練習生になる前から彼女がいた。
同性に興味があるわけでもないのに、目の前にいる柔らかな笑顔で話しかけてくる年上の男から不思議と目が離せないのだ。
ジョンシンは何故か急にギュッと心臓を鷲掴みにされたような痛みに襲われた。


それが恋だと自覚するのに、そんなに時間はかからなかった。





その後、ジョンシンは事務所の要請により、グァンジンの代わりにCNBLUEの一員となった。
友人であるグァンジンと交代しなければならない事態にジョンシンは散々悩み、一時は体重がかなり激減した。


決定が下されてから環境は一変し、ジョンシンの周辺は急に慌ただしくなった。
高校三年生なので、表向きは日本に留学するという理由での長期休学という形を取り、周りを巻き込んで様々な手続や準備で忙殺されていた。
それらを短期間で済ませ、ジョンシンは日本で武者修行をしていたメンバーたちに合流した。





ジョンシンがCNBLUEに加入して、まだ間もない頃だった。
路上ライブを終え宿舎に戻って四人でくつろいでいた時に、ヨンファから突然、『話がある』と切り出された。


「実は俺、以前ミニョクと一緒にオーディションを受けていたドラマの出演が決まったんだ。それで撮影のために帰国しないといけないことになって。
しばらくの間、三人での活動になるけど、大丈夫か?」


これには全員驚いたが、ヨンファだけでも先に俳優デビューできることをまるで自分たちのことのように喜んだ。
リーダーのヨンファがいなくなるのは痛いが、代わりにジョンヒョンがリーダーを務めることになり、ヨンファが戻ってくるまでの間三人で頑張ろうと誓い合った。


「ジョンシナ、側にいてやれないけどごめんな。急に環境が変わりすぎていろいろ大変だと思うけど、やっていけそう?」
「うん、大丈夫。ヨンファヒョンはこっちのことは気にしないで、ドラマの方を頑張ってきて」
「そっか。それを聞いて安心したよ」


ホッとした表情のヨンファに、ジョンシンの心境は複雑だった。
ヨンファには『大丈夫』と言ったが、内心はものすごく動揺していた。


―――ヨンファヒョンがいなくなるなんて絶対に嫌だ。


途中から加入したのと高校生でマンネということもあるのだろうが、ヨンファはジョンシンに優しくて何かと気にかけてくれていた。
そして、ジョンシンもそんなヨンファに好意を抱いていた。異性を好きになるのと同じ意味で。


ヨンファのいない時は三人でライブ活動を継続し何かと大変だったけど、それと同じようにヨンファは一人自国で忙しくしていたようだ。


再びヨンファが日本に戻ってきた時、メンバー一同驚いた。ヨンファはかなり痩せていて青白い顔をしていた。
ますます美しさに磨きがかかったようにも見えたが、相当忙しくて大変だったことが伺える。
ヨンファの単独の仕事で得た収入はメンバー全員に分配されると、少し経ってから聞いた。
思わず耳を疑って三人でヨンファに申し訳なくて頭を下げたが、本人は微笑むだけで自分たちに嫌味や恨み節などを一切言わなかった。


ヨンファという人間は外見だけでなく中身までも超越していて、本当に叶わないと思った。
ヨンファの様々な顔を知るたびに、ジョンシンはますます魅かれていったが、男同士と同じグループのメンバーという壁がジョンシンの前に立ちはだかり、どうすることもできなかった。ただ側でずっと想い続けるしかなかった。







********************************************************************







それから年月が経ち、ジョンシンとヨンファの関係が大きく変わったのは、あの日がきっかけだった。


バラエティー番組の収録でやったゲームを再現しようと、ジョンシンがヨンファを誘ったのだ。
ゲームをやること自体が目的だったわけではなく、当然下心はあったが、何も知らないヨンファは嫌々ながらもジョンシンに付き合ってくれた。
番組でやった時よりもスムーズにできたが、その時以上に身体が密着して、ジョンシンは理性がガラガラと音を立てて崩れ落ちるのを聞いた。


「ほら、終わったぞ。もう離れろよ。これで気が済んだろ?」


腕の中のヨンファが身体を離そうともがくのを、両腕でがっちりと抱き込んでそれを許さなかった。
伏せていた長い睫毛がゆっくりと動き、こちらを見上げ、視線が絡み合う。
疑うことを知らないような無防備な顔にジョンシンは息苦しくなる。


「ジョンシ…ナ…?」


不思議そうな顔をして、ヨンファが下からじっと見つめてくる。
黒く濡れたような瞳に誘われるように、ジョンシンはこれ以上言葉を発しないようにヨンファの唇をそっと人差指でなぞる。
……もう限界だった。


「黙って」


自分がこれから何をされるのか、まったく疑いもしない唇を塞いだ。
初めて触れたヨンファの唇は、驚くほど柔らかくて甘美だった。
今まで何度も想像したり夢の中でなら経験もしたが、そのどれとも違っていた。


ヨンファに胸を押されて唇が一旦離れたが、もう一度味わい尽くすためにジョンシンは再び激しく口付けた。
そのうち唇だけでは飽き足らず、喉や胸にまで愛撫の領域を広げていく。
肌は白くてきめ細かくて、ジョンシンは興奮して止まりなくなり、どんどん行為がエスカレートしそうになった矢先、突然ドアがノックされた。
それは、ミニョクだった。


「ごめん…」


ハッと我に返ったジョンシンは、慌ててヨンファの部屋から出た。
心臓が早鐘を打ち、熱いものが身体中を満たしていくのを感じる。
欲望に駆られてとんでもないことをしてしまった。すぐ側にジョンヒョンとミニョクがいたにもかかわらず、大胆なことをしたと自分でも思う。


もしミニョクに呼ばれなかったら、どうなっていたのだろう。
歯止めがきかなくて、それ以上の行為をしていたかもしれない。










ヨンファは結局あのあと、部屋から出てこなかった。
夕飯の準備が整い、ミニョクが部屋まで呼びに行くとすぐさま戻ってきた。


「ヨンファヒョン、寝てるよ。どうしよう」


ジョンシンが部屋まで行くと、ヨンファは雑誌を再び読んでいたのか、胸の上にページが開かれた状態で眠っていた。
長い睫毛に縁どられた瞳は閉じていても憂いがあり、その唇は誰かの口付けを待っているような錯覚に陥る。
ジョンシンは雑誌を元の場所に戻して、ヨンファの身体に毛布をかけてやった。


三人で夕飯を食べ終わっても、リビングでテレビを観ていても、ヨンファが部屋から出てくることはなかった。


なかなか寝付けなかったジョンシンは、夜中、ヨンファの部屋のドアが開く音を聞いた。ようやく起きたのだろう。
ジョンシンが部屋からそっと出ると、ヨンファの姿はなかった。
もしかしてと思いバスルームに行くと、中でシャワーを浴びているヨンファの姿があった。
ジョンシンはその光景と水音にカッと身体が熱くなり、取り返しがつかなくなる前に自室へと戻っていった。










その二日後。


ジョンシンはドラマで親しくなったユン・エギョンやその他の友人複数で飲みに出かけていた。
エギョンの車で宿舎まで送ってもらった時、ヨンファとホンギが一緒に歩いているのが見えた。
恐らく二人で飲みに行った帰りなのだろう。ヨンファと顔を合わすのはあの日以来だった。
良く見ると、ヨンファの腰にホンギの手が回っていて抱き寄せている。
それをジョンシンは何とも言えない気持ちで見つめた。


二人は親友のように仲が良かった。同じ事務所所属ということもあるし、ドラマで共演して以来ずっと親交を温めているようだ。
ジョンシンが妬けるほど、ホンギの前でのヨンファは自然体でいつも楽しそうに見えた。


ホンギが酔ったヨンファを自分に託し帰って行ったあと、ジョンシンはそのフラフラする身体を支えようと背中に触れたが、躱されてしまった。
思い切って口を開いたが、ヨンファはいつにもなく酔っていて、結局何も言えなかった。


それからヨンファと顔を合わせても、ジョンシンに対して普段通り接してきて、問い詰められることも文句を言われることもなかった。
忘れているはずはないのに、ずっと不思議に思っていたジョンシンだったが、ある時ふと気付いた。
あの日のことは完全に『なかったこと』にされたのだと。


男女問わず誰からもモテるヨンファからすると、あの程度のキスなどし慣れていて、取るに足らないことだったのかもしれない。
ジョンシンは何のリアクションもなくスルーされたことにショックを受けていた。
罵倒されたり殴られたりした方が余程マシだった。
それとも自分は、それすらする価値のない相手と思われているのだろうか。考えれば考えるほど惨めになった。


それでも、ジョンシンには為すすべがなく、表面上はヨンファの望んでいるマンネを演じ続けた。







********************************************************************







一緒に住んでいると、心臓に悪い場面に遭遇することは幾度となくあった。





仕事のあとマネージャーに宿舎近くのコンビニまで送ってもらい、買い物をして帰る途中、ジョンシンは突然の豪雨に見舞われた。
走ったもののかなり濡れてしまい、鍵を開けて中に入ると玄関にはヨンファの靴があり、至る所に水滴が落ちている。
ジョンシンと同じ目に遭ったようで、姿が見えなかったから、てっきり自室にいるとばかり思っていた。


洗面所のドアを開けた途端、目に飛び込んできた光景に息を呑んだ。
ヨンファは濡れた服をちょうど脱いでいるところだった。


「―――あ。ごめん」
「あっ…いや、参ったよなぁ。いきなりゲリラ豪雨だろ。すぐ入ってくるから、ちょっと待てるか?」
「ああ…平気。待つから、先に入ってきて」


あんまりなタイミングに思わず天を仰ぎたくなった。
心の動揺を知られたくないので、ヨンファの裸を見ないようにスマホをタップして、素知らぬフリをした。


バスルームでシャワーを浴びているヨンファの姿がぼんやりと見える。ジョンシンは必死に別のことを考えて、何とか欲望を押さえ込んでいた。
他の部屋で待っても良かったのだが、ここから離れたくなかった。
手に入れることも、側で指を咥えて見ているだけしかできないのに、それでもヨンファの近くにいたかった。


急いで髪の毛と身体を洗ったのだろう。通常よりもかなり早い時間でヨンファはバスルームから出てきた。
白くてしなやから身体はシャワーのお湯でほんのりと上気し、濡れた全身は何とも言えない色気を醸し出していた。
ジョンシンはすぐさま自分の下半身の異変に気付いた。


スマホをイジるフリをして盗み見ると、艶めかしい身体にゴクリと喉が上下する。
突如、バスタオルを奪い取り、ヨンファを押し倒して思う存分貪り尽くしたい衝動に駆られた。
それをわずかな理性で辛うじて抑えるが、未練がましくチラ見してしまい、気付いたら触れていた。


「色…白いよね。羨ましいな…。……ここ、まだ濡れてる」


ヨンファの髪と身体から漂うシャンプーとボディソープの香りに加えて、クラクラするような色香が立ち上っていて、余計に下半身を刺激する。
ジョンシンは我慢ができなくなって、無駄な肉がついていない肩甲骨の辺りにも触れてしまった。
ヨンファはそれを気にも留めずに出て行って、ジョンシンの欲望は燻ったままだった。










その日の夜、ジョンシンが寝ていると、夢の中にヨンファが出てきた。
恐らく脱衣所での一件が原因だったのかもしれない。日頃から、ジョンシンの願望が夢となって出ることがあるのだ。


夢の中のヨンファは現実の本人とは真逆で、いつもとても淫らで従順だ。


バスルームでジョンシンがシャワーを浴びていると、何も身に着けていないヨンファがいきなり入ってきた。


「ジョンシナ…早…く…。身体が熱いんだ……」
「もうちょっとしたら出るから、ベッドで待ってて」
「嫌だ…。もう待てない。早く欲しい…」


シャワーを止めたヨンファが潤んだ瞳をしてこちらを見上げてきて、赤い唇がジョンシンを誘う。
呼吸ごと奪うように激しく唇を重ね、舌を絡ませて濃厚な口付けを交わす。


それだけで下半身に熱が集まってきていきなり臨戦態勢に入ると、ヨンファを壁に押し付けて腰を突き出さすと、背後からジョンシンが重なっていく。
限界まで開いて深く腰を押し込むと、ヨンファの背中がビクビクと跳ねる。


「あ、あぁ……っ!ん……んっ」


ヨンファの中は火傷しそうに熱くて、潤滑剤を使わなくてもいつもトロトロの状態ですぐに抜き差しできる。
繰り返し奥まで突くと、蕩けそうなそこは強弱をつけて締め付けてきた。
何度も持っていかれそうになり、その都度ギリギリまで引き抜き、前に回した手で熱く昂ぶったヨンファを握り込み上下に動かす。


「…シナ……ジョ…シナ……っ、もっと……あ、んっ、あっ」
「ヨンファ…っ…。くっ……きっつ……っ」


波が去ってから、また長大なもので何度も突き上げ擦り上げると、目の前のほっそりとした腰が欲しがるように揺れる。
ヨンファは腕を壁に突っ張らせると、喉を反らして引っ切り無しに嬌声を上げる。
それに気を良くして、ジョンシンは手と腰の動きを合わせるようにして、二人でラストスパートを駆け上がっていった。





そして目が覚めると、それが夢だと分かり、いつもジョンシンは落胆する。
ベッドから起き上がり、側に置いてあったミネラルウォーターを一口飲む。


―――末期症状だな……。


いくら好きだからと言って、男でリーダーのヨンファを夜のオカズにするなんて、狂気の沙汰以外の何でもない。
自分でもこの気持ちが尋常じゃないことは自覚していた。ヨンファへの想いが募るほど、それに比例して欲望が膨れる一方であることも。


だからといって、どうすることもできないのもちゃんと分かっていた。







********************************************************************







ある日、宿舎のリビングでミニョクと一緒にテレビを観ていたジョンシンは、仕事から帰ってきたヨンファに部屋に来るように言われた。


ミニョクの前で言えないようなことなのかと多少構えていると、どこで聞いたのかは知らないが、エギョンとのことを尋ねられた。


「AHエンターテインメントの女優と付き合ってるって話を聞いたんだが、本当か?」


ヨンファの訊き方は一方的で、分かりきっていることひと通り忠告された。
エギョンはただの友人で付き合っているわけではない。そう答えたのに、付き合うことに反対はしないと言われた。
その言い方があまりにも淡々としていて、ジョンシンはカチンときた。


ジョンシンが何をしてでもこちらを振り向かせたい、そのすべてを独占したいと思う相手は目の前にいるのに、ヨンファはまったく気づいてくれないし、
自分の思い通りになってもくれない。


「ヨンファヒョンはこの話を聞いた時、どう思った?」
「どうって…お前がスクープされたらバンドや事務所に影響が出るし、イメージも悪くなるから心配だなって…」


結局、ジョンシンのことを心配しているのではなく、事務所とグループのことしか頭にないのだ。
それが気に入らなくてイライラし始めた時、ジョンシンにとって一番聞きたくない言葉を用いられて、何かがキレた。


「それって有難迷惑なんだよね」
「迷…惑…?」
「二言目にはすぐ弟って言うけど、実の兄弟でも何でもないじゃないか」
「血は繋がっていなくても、お前は俺にとって弟だしマンネだ。ジョンヒョンやミニョクと同様に可愛いと思ってる。それが迷惑なのか?」
「マンネ、マンネってもううんざりなんだよっ!俺を子ども扱いしないでくれっ。アンタとはたった二歳しか違わないじゃないか!」


いつも二言目には弟だマンネだと言われ、もういい加減うんざりしていた。そんな括りで見てほしいわけじゃないのに。
ついに均衡を破って激高したジョンシンに対して、ヨンファは呆然としていた。


そして、あの日のことも持ち出した。
わざと忘れたフリをして何もなかったことにしていたヨンファと今向き合わなければ、一生後悔すると思った。


「俺はあの時、酔ってなんかいない。自分がそうしたくてしただけだ。それをアンタが無かったことにしたがってたから、合わせただけで…」
「…無かったことにするしかないだろ。成り行きなんだから……」
「っ……成り行きって…なんだよっ」
「だって、そうじゃないか」
「勝手に決めつけるのはやめてくれっ。俺の気持ちを知りもしないくせに!」
「お前の気持ちなんて分かるはずないだろっ。何にも言わずにあんなことをしたのは、お前の方じゃないか!」


『成り行き』という言葉に、ジョンシンの頭の中がパンッと弾けた音がした。
もう黙っておくことはできなかった。今までどれだけ自分が悩んで眠れない夜を過ごしてきたか、目の前のつれない男は知りもしない。
その上、軽い気持ちでキスをしたのだと勘違いされたままでいるのは嫌だった。


「俺は5年前、初めてアンタに会った時から……」


もう止まらなかった。出会ってからヨンファに対して抱き続けていた想いが、次から次へと口から迸るように出ていった。
その間、ヨンファは何度も聞きたくないと言い、それでもジョンシンは自分の心情を吐露し続けた。
そして―――。


「俺はアンタのことを兄貴だと思ったことは一度もない。性別なんて関係ない。アンタが好きだ。愛してる」


とうとう取り返しのつかないことを言ってしまった。
ヨンファは泣きそうな顔になってかなり混乱しているようで、その場に倒れそうになった。
その身体を支えながら、ジョンシンの続けて言い放った言葉にヨンファの顔は青ざめ、ついには頬を叩かれてしまった。


「そんなことは二度と言うなっ。迷惑だ!」


ヨンファが出て行ったあとのドアを見つめ、ジョンシンはやるせない気持ちになった。


―――完全に拒否された。……心が痛かった。


分かっていることを改めて言われるとショックだったが、同じグループのメンバーで男同士なのだから、当然の結果だった。










ヨンファの部屋を出ると、リビングのソファーに座っていたミニョクが突然立ち上がった。
誰とも話をしたくなかったから、そのまま自室に入ろうとしたら、呼び止められた。


「ちょっと待てよ。お前……ついに言ったんだな、ヒョンに」
「……………」
「……中の会話が聞こえたから」


ミニョクが深刻そうな顔をして、気まずそうに言葉を吐き出す。


「僕はずっと心配してた。お前のヒョンに対する気持ちがいつかは爆発するんじゃないかって」
「……………」
「…これからどうするつもりだ?」
「……んなこと、俺にだって分かんねぇよ」
「ヒョンは男だし、リーダーなんだぞっ」
「分かってる。そんなことお前に言われなくてもっ」


ジョンシンは顔を横に向け、唇を噛み締める。


―――そんなことは分かりすぎるほど分かっている。今まで数えきれないほど自分で反芻してきた言葉だ。
男でもリーダーでも好きになってしまったものは仕方がないじゃないか!


「ジョンシナがヒョンのことを好きなのはずっと前から知ってたよ。お前、分かりすぎるからさ。でも、何で突然告白なんかしたんだ?
ヒョンを困らせるだけじゃないか」
「俺だってそうしたくてしたんじゃねぇっ」
「お前の辛い気持ちは分からなくもないが、ヒョンに迷惑をかけるのだけはやめろ。そんなことは僕が許さない。
僕たちのために今までどれだけヒョンが苦労してきたのかお前だって分かってるだろ?これ以上、ヒョンに負担をかけるんじゃない!」


ミニョクが言っていることはもっともだった。
それは分かる。だから今までこの想いを表に出さないように、決して知られないようにしていた。
でも、自分の気持ちをヨンファに決めつけられて、黙っていられなくなったのだ。
ジョンシンはもう頭を抱えるしかなかった。










しかし、その翌日、ヨンファの口から告げられた言葉にジョンシンは完全に固まってしまった。


「実はさっき代表と話をして決まったことなんだが、来月、引っ越しをすることになった」


まったく言葉が出なかった。ジョンヒョンとミニョクも突然のことに呆けたようになっている。
引っ越しの話など今まで一度も出たことはない。自分のことが原因なのだとすぐに分かった。
ヨンファはジョンシンと離れたいがために、この決断をしたのだ。それが分かり、ジョンシンはギリッと強く奥歯を噛んだ。


練習室を出て行くヨンファを追いかけて、ジョンシンは問い質した。


「ヒョンから代表に話をしたのか?」
「ああ…そうだ…」
「俺が昨日あんなことを言ったから?」
「……そうじゃない。前々から考えていたことだ」
「そんなことを突然言われても、俺は嫌だ」
「もう決まったことなんだから、仕方がないだろ」


自分が原因でないと言われても、そんなこと信じられるはずがなかった。
今まで四人で上手くやってきたのに、急に一人暮らしをしろと言われても納得できなかった。


「ジョンシナ、俺はどうしてもお前のことを仲間か弟としか見れないんだ。だから、頼むからこういう話はしないでくれ」


終いにはそこまではっきり拒絶されたが、ジョンシンに諦めることなどできなかった。










結局、7月の終わり頃に皆それぞれ引っ越しをして、5年足らずの共同生活に終止符が打たれた。


ジョンシンは一人暮らしを始めてから、すぐに子犬を飼った。
元々犬好きなのと、一人暮らしの寂しさを埋めるためと、……ヨンファへの愛情の持って行き場がなかったから。


一人になって目に浮かぶのは、ヨンファと一緒に暮らしていた時のことばかりだった。
ジョンシンが想いを告げる前までは、本当に楽しかった。
お互いの部屋を行き来したり、ジョンシンの作った料理を美味しそうに食べてくれたり、いっぱいふざけ合ったりもした。
本当に数えきれないほどの思い出がある。


あまり考えていると涙が出そうになり、どうしようもなく胸が軋んだ。
だから、もう過去は振り返らないようにと、ジョンシンは自分に言い聞かせた。







********************************************************************







それは、前触れもなく突然起きた。


ジョンシンがエギョンと一緒にいるところを写真週刊誌に撮られた。
二人きりではなく他にも友人がいたのに、勘違いされそうなアングルで故意としか思えなかった。


出版社が発売前に事務所に確認の連絡を入れたことによりこの事実が発覚し、代表と理事を始め、大勢の人たちに迷惑をかけてしまった。
そして、ヨンファにも。


結果的には代表たちのお陰で週刊誌に掲載されることはなかったが、ヨンファが本気になってジョンシンを叱り飛ばし、 泣くほどジョンシンのことを心配してくれていたとは思ってもみなかった。


「良かっ…た……」
「えっ?」
「解散することにならなくて、ほんと…良かった……」
「心配…してくれた?」
「当たり前だろっ!もしお前が活動自粛とかになってみろっ。もう一緒にバンドやれなくなるんじゃないかっ…て…ずっとそう…思っ…て……」


ヨンファの涙を見た途端、衝動を抑えることができず、ジョンシンは思わず強く抱き締めていた。


いつもそうだ。ヨンファへの気持ちを思い切ろうとしても、新たな一面を見てまた魅かれてしまう。
もうどうしようもないほどの悪循環だった。
でも、それでもいいと思っていた。
まだこの時までは―――。










そして、あの日。


久しぶりのオフでジョンシンは実家に立ち寄った。
仕事中の父親と兄には会えなかったが、母親がとても喜んでくれて手料理を食べながら近況報告をした。
ジョンシンの話を聞くごとに頷きながら嬉しそうな顔をしてくれて、家族の有難味をひしひしと感じる。


翌日が仕事だったため、あまり長居ができず帰ろうとしたジョンシンに、母親がいろいろと持たせてくれた。
袋の中を見るとタッパーに入った母親お手製の惣菜が何種類も入っていた。


「母さん、これ俺一人じゃ食べきれないかもしれないよ」
「ジョンシナの分だけじゃないの。いつもお世話になっているヨンファにも届けてあげて。昔から貴方のことをとても可愛がってくれているもの」


数年前、ヨンファはここに遊びに来たことがあり、うちの家族ととても意気投合して、それ以来ヨンファのことを本当の息子のように思っているようだ。
母親の好意は嬉しかったが、ヨンファとの関係が大きく変わってしまった今では、喜んでもらえるかどうかは分からない。


別れ際、『頑張りなさい』としっかり抱き締めてくれた母親に礼を言って、実家をあとにした。
今日はヨンファもオフだから、運が良ければ自宅にいるかもしれない。
近くまで帰ってきたところでヨンファのスマホに電話をかけたが、何回鳴らしても出る気配がない。
仕方がないからそろそろ切ろうと思ったところでようやく繋がった。


「あっ、ヨンファヒョン、今、家?昨日はいろいろと迷惑かけてごめん」


……おかしい。何も声が聞こえない。
ちゃんとヨンファの名前が表示されているので、間違えて他にかけたわけでもない。


「……ヒョン、どうかした?寝てるの?」


何も答えないヨンファに、ジョンシンは心配になって声をかける。
すると、


「……ジョ…シ…ナ……」





脳味噌が沸騰するかと思った。
今まで一度も聞いたことのないヨンファの声。
それは、まるで情事の真っ最中のような情欲に濡れた声だった。


すぐさま電話を切り、急いでヨンファのマンションへ向かうと、エントランスで他の住人と一緒になったお陰ですぐ中に入れることができた。
メンバーと一緒に訪れたことはあるが、一人で来るのは初めてだった。


ヨンファの家の前まで来てインターフォンを鳴らすと、しばらくしてからドアが開いた。
その姿に驚愕した。ヨンファはバスタオルを巻いたままの姿で、たった今シャワーを浴びたばかりという感じだった。


ヨンファはバツの悪そうな顔ですぐさま目を伏せたが、ジョンシンは見逃さなかった。その瞳は少し潤んでいた。
普通にシャワーを浴びた状態ではない。たった今の今まで、ここで誰かに抱かれていたのだ。
しかも、告白をした相手の前に出てくる格好だろうか。わざと挑発して誘っているのか。
ヨンファに誰かいたのかと聞くと一人だと答えたが、ジョンシンは俄かに信じられなかった。


目の前に獲物がありながら何もせずにいることなどできなかった。
ヨンファを抱きたい。
目の前のしどけなく晒された身体の奥に自分の欲望を突き入れて、思いっきり掻き回して啼かせたいという気持ちだけに支配されていた。
この身体を一度でも抱けるのなら、CNBLUEをやめてもいいとさえ思った。


「寝室…どこ?」
「え……ちょっ……」


無理矢理ヨンファを引きずって寝室に入ると、ベッドに突き飛ばして圧し掛かる。
黒い瞳にじっと見つめられた時、喉の奥がカッと熱くなるのを感じた。


「さっき、ここで誰かに抱かれてただろ?違う?電話の声、そんな感じだった」
「……………」


「俺の前でこんな姿を見せて、平気なの?」
「お、お前が…早く来たから…着替えられなかった…んだろ……」
「本当はいろんな相手とやってるんじゃないのか?ホンギヒョンとか」
「!」


「俺とも一回ぐらい試してみてもいいんじゃない?」
「何、言ってん…だよ…。ふざけんなっ」


「乳首勃ってるの、自分で分かってる?」
「よせよ!」


「いいよね。一回ぐらい。やらせてよ」
「冗談じゃ…ないっ」


ジョンシンが手を変え品を変え誘ってみても、ヨンファは一向に乗ってこなかった。


「お前とは絶対に寝ない。お前だけとは……」


泣きたくなった。
こんなにもヨンファのことが欲しいと思っているのに、全く相手にされていない。
自分のどこがいけないのか。
ヨンファは同性ということに拒否反応を示しているわけではないようだった。必ず繰り返されるのは、『仲間』『弟』という言葉だった。
では、それから外れたら自分のことを見てもらえるのか。


それを口にすると、それまで大人しかったヨンファが突然怒り出した。
ジョンシンは絶望の淵に立たされながらも、ヨンファを欲しいと思う気持ちは収まりそうもなかった。
しかし、キスをしようとすると拒まれてしまい、その身体に手を伸ばして愛撫を仕掛けようとした途端、信じられない言葉がヨンファの口から告げられた。


「ホンギのことが好きなんだっ。だから、お前なんかとは御免だ。二度とこんなことはしないでくれ。もう何度も言ってるだろ。何で分かんないんだよ!」





完全に頭の中が真っ白になってしまい、言われた台詞がジョンシンの胸に次々と突き刺さっていく。
二人が仲が良いのは純粋に友情からだと思っていたが、ヨンファの口から初めて聞く事実に愕然とした。
相手がホンギなら、到底勝ち目などない。


ジョンシンはその場から自分がどうやって戻ってきたのか、あまり覚えていなかった。







********************************************************************







それからのジョンシンはしばらくもぬけの殻のようになっていた。


日本でのアリーナツアーに向けて、いつもの如く練習室で三人が練習をしていると、ジョンシンが何度かミスをした。
それをジョンヒョンは聞き逃さなかった。


「ちょっと休憩しよう」


ジョンヒョンが声をかけると、ミニョクが三人分の飲み物を買いに出て行った。


「ジョンシナ、一体どうしたっていうんだ?お前がミスするなんて…」
「……ごめん」
「…ヒョンと何かあったのか?」
「……え、何で………」
「お前には悪いが、以前ヒョンとの間にあったことは、ミニョクから聞いてる」
「……………」


練習でミスをして、メンバーにも心配をかけるほどジョンシンの精神状態はボロボロだった。
ヨンファとホンギのことがショックで集中力を欠き、何も手につかないのだ。


「……完全にフラれたよ。だから…もう諦める。ごめん……ミスしないようにちゃんとやるから」
「……………」


大きな身体を丸めて項垂れるジョンシンに、ジョンヒョンは何も言葉を掛けてやることができなかった。
ジョンシンヒョンが自分でそう決めたのなら、側で見守るしかない。
一度ヨンファと話をした方がいいのかもしれないと、ジョンヒョンは横で両手に顔を埋めているマンネを見ながらそう思った。










それから数日後。
あの日以来初めて顔を合わせたヨンファに、ジョンシンは重い口を開いた。


「俺、いろいろ考えたんだけど、もうヒョンのこと好きでいるのやめるから」


この時は本当にそう思った。もう五年も片思いを続けてきたが、この想いがこの先報われることはないのだとようやく分かった。
仕事に支障をきたすくらいなら他の恋を探そうと、本来同性に興味があるわけではないのだから、また彼女でも作ればいいと簡単に考えていた。
先日実家に帰った時も、母親から良い話はないのかと散々聞かれ、適当に言葉を濁すしかなかったことを思い返す。
ジョンシンはかなり疲れ切っていて、もうどうでもよくなっていた。


「良かったよ。俺もお前のこと仲間として大好きだから」


清々しい顔で言われて、ジョンシンは自嘲の笑みを浮かべた。
所詮、最初から自分はヨンファにとってこの程度の存在だったのだ。
ヨンファはいつもそうだった。どんなことをされても次に会った時は何事もなかったかのように上辺だけの顔をして、何でも上手いこと取り繕ってしまう。
ホンギにしか興味がないのなら、鬱陶しく纏わりついていた弟が離れてさぞ気分が良かろうと、皮肉なことばかり頭の中を駆け巡る。


「ヒョンはいつからホンギヒョンのことが好きなの?」
「…ドラマで共演してから…かな」
「そんな前からなんだ。気持ちは伝えてる?」
「アイツは俺のことダチとしてしか見てないから……」


面白半分に訊いてやろうと、ジョンシンが自分の傷を更に抉るような真似をすると、ヨンファは辛そうに顔を歪めながらそう言った。
てっきり両想いで付き合っているとばかり思っていたから、片思いだと知って驚いた。
ヨンファも自分と同じように辛い恋をしているのかと思うと、やるせなくて憎み切れなかった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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