CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 29

2016年09月20日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 6






両手を後ろ手に縛られたまま、どのくらい経っただろう。
すでに時間の感覚は完全に狂ってしまっている。
不気味な静寂の中、ヨンファは自由を奪われた不安定な格好で、冷たいコンクリートの壁に寄りかかるようにして座っていた。


ざっと見渡して70㎡くらいの広さがあるだろうか。
窓がない無機質な空間は陰湿な雰囲気が漂っていて、どこか病的なものを感じさせた。
言わば、チルソン組の監禁部屋といったところかもしれない。


未だにここがどこか皆目見当がつかなかった。
何かヒントになるような音が拾えないかと耳を澄ましてみるが、場所を特定できるようなものは一切聞こえない。


密室全体の空気はひんやりとしていて、まるで牢獄にでも繋がれているような気分になる。
ひとつ違うことは、そばに見張り役がいることだ。
余程暇なのか、無精髭の男は部屋の隅のパイプ椅子に座って、面倒くさそうに先ほどからずっと携帯電話をいじっている。
その立ち居振る舞いから、品性の無さと頭の程度が知れた。


若頭と呼ばれた男が、ヨンファのスマートフォンで写メを撮って送信したらしいことは分かっている。
送信先は恐らく青龍組の者に違いない。
ヨンファがアドレスを知っているのは、あのふたりの男だけだ。ジョンヒョンとジョンシン。
どちらかに送ったとしたら、何らかの行動を起こしている可能性がある。
かといって、この場所がどこか探し当てられるとも思えない。


こんなことで、組の皆に迷惑をかけるわけにはいかなかった。
両手さえ縛られていなければ何とかなりようがあるかもしれないのに、どうしたものか。
結び目を左右に引っ張ってみるが、そう簡単には緩みはしない。
それでもヨンファは諦めず、あれこれと思案しながら背後で両手を動かし続けた。


楽観視できない状況にもかかわらず、自然と冷静でいられる。
過去何度か危険な目に遭遇してきた経験が、こんな時に役に立つとは思わなかった。
極道の息子として生を受けてから、初めて絶体絶命の危機に直面しているのに、不思議と恐怖心が湧いてこないのだ。
若頭と呼ばれた男の言葉どおり、血は争えないということなのか。
ずっと極道を忌み嫌っていた自分が他所の組織に狙われても肝が据わっているなんて、笑えやしない。


この姿を見れば、あの男は精悍な顔を誰よりも痛ましげに歪めるだろう。
何度振り払っても、どうしても眦の切れ上がった面影が浮かんでしまう。
愛おしむように繰り返し触れてきた硬い指先や柔らかい唇の感触は、未だに消えていない。
低くて深い声色とともに広い胸にきつく抱き込まれたのは、今朝のことだった。
身も心も委ねたくなるようなスーツ越しの温もりを思い出し、どうしようもないくらい切ない感情が込み上げてくる。


組の将来を背負う者のひとりとして、ただでさえ忙しい身の上なのだ。
こんなことに巻き込んで、ジョンヒョンの手を煩わせたくない。
言葉にできないほどの強い想いを抑え込み、ヨンファは無意識のうちに小さな溜息をついていた。


「なんや、気弱になっとるんか?」


ヨンファは声のする方をちらりと見ると、無精髭の男が粘りつくような視線を向けてくる。
その細い目を、気丈にもきつい眼差しでギッと睨み返すと、椅子から立ち上がり間合いを詰めてきた。


「そんなわけないだろう。手が痛いだけだ」


顔色ひとつ変えず怠惰な物言いをすると、男は馬鹿にしたような表情で口元を歪める。


「負け惜しみか」
「黙れっ。極道の風上にも置けない下劣集団が!」


高ぶる感情のままに言葉をぶつけ、ヨンファは挑むような目で正面の男を見据えた。
わざと挑発的な台詞を吐いても、男は少しも気分を害した様子はなく、面白がるように嫌な笑みを浮かべるだけだ。
青龍組をチルソン組の傘下に入れたいような発言をしていたが、ヨンファは端から信じてはいなかった。
そこで、何か探ることができればと、鎌をかけてみる。


「うちの組を傘下に入れたとして、内部分裂する可能性は考えていないのか?」
「そないなことは気にせんでええ。もうすぐカタがつくんやからな」


無視されるかと思ったが、意外にも食いついてきて、ちゃんとした答えが返ってきた。


「……どういう意味だ?」
「取引を持ちかけたって、突っぱねるんは目に見えとる。今のうちに潰して、ソウル中の組織に俺らの名を知らしめるんや。お前もろとも全員皆殺しでな」


すでに自分たちが優位に立ったと安心してか、呆気ないほど簡単に答えが出た。
内情をペラペラとよく喋る、もっとも信用がおけないタイプといえる。
ヨンファの懸念していたとおりで、初めから全員の命とシマを根こそぎ奪うつもりなのだ。
とことん反吐が出る連中だ。


卑劣な行為が許せなくて、強い憎悪が心の中に燃え広がっていく。
チルソン組の真の目的を聞いて、ヨンファの腹は決まった。
自分のせいでシマを奪われ、ソウルにおける裏社会の秩序を乱すことだけは絶対に避けなければならない。
もはや青龍組だけの問題ではなく、南部洞組や他の組織にも関わってくるからだ。


このままだと、最悪の事態を免れないのは明白だった。
何もしないよりは足掻いて模索した方が余程マシだと、ヨンファは男との距離を計り、すぐに立ち上がれる体勢を整える。
そして、チャンスを窺い、隙ができるのを待った。
わざと悲嘆に暮れた様子で黙り込むと、身動きの取れないヨンファの前まで近づいてくる。
男が得意げな顔で、じっと見下ろしながら身を屈めた時だ。


前のめりに体重をかけて男の懐に勢いよく突っ込み、仰け反ったところに頭突きを食らわせると、男は派手に引っくり返った。
すかさず立ち上がって腹部めがけて蹴りを入れると、一気にドアまで走る。
後ろ向きになり、縛られた状態の手でノブを回そうとするが、なかなか上手くいかない。


「畜生っ、ふざけた真似しくさって!」


男はカッと目を剥き、まずいと思った時にはガツンと頬に衝撃が走った。
まともに喰らってしまい、痺れるような痛みと目眩を感じながら床に膝をつく。
口の中にじんわりと血の味が広がった。


「ええ度胸しとるやないか、コラッ」


胸倉を強く引っ張られ、身を捩って逃れようとしたが、両手の自由がきかない状態ではどうすることもできない。
無理矢理引っ張り上げられて立たされると、いきなり首に手を掛けられて、ヨンファは低く呻いた。


「ぐ、う……っ……」


男が両手に力を加えてヨンファの喉を締め上げてくる。
頸動脈が圧迫されて、息苦しさのあまり視界が赤く染まっていく中、唇を歪めてヨンファを見つめる醜い顔が視界に入った。


死というものは、案外あっさりと身近に起こりうるものなのだなと、他人事のように思った。
このまま運命に逆らわずに、身を任せるべきなのかもしれない。
頭はぼんやりと霞がかかった状態になり、ヨンファは少しずつ意識が遠のくのを感じて、ゆっくりと力を抜くとともに目を閉じた。
皆を巻き込んで危険に晒すくらいなら、ここで終わらせた方がいい。


あの男を悲しませることになるかもしれないが、きっと分かってくれるだろう。
こんな不器用な生き方しかできなかった愚かな自分を。
覚悟を決めても、死に対する恐怖など微塵も感じなかった。
薄らいでいく感覚の中、完全に身を委ねたヨンファが引きずり込まれようとしたその瞬間、ドアの開く音がした。


「兄貴……っ、何やってんすか。死にまっせ!」


慌てたような声が耳に飛び込んできた。
どうやら弟分が無精髭の行動を見咎めて、やめさせようと腕を掴んでいるようだ。
そばで言い争っている男たちの会話が、やけに遠くに聞こえた。


不意に喉を押さえつけていた両手が離れ、ヨンファの身体がその場に崩れ落ちる。
一気に空気が入り込んできて、たまらずヨンファはゲホゲホと激しく咳き込んだ。
一縷の望みをかけたのに、それすら邪魔されて、無様な姿を晒しただけの自分が情けなくて仕方がない。
このまま片がつけばよかったのに、結局、願いは叶わなかった。


「今すぐ、殺せっ。それがお前らの望みだろう……っ!」


絶望の中、苦しい呼吸を厭わず、ヨンファは叫んだ。
持って行き場のないやるせない憤りを、闘志を剝き出しにしてぶつける。
大声を出すと、後頭部や喉が疼くように痛み、目眩がした。


「おい、大事な餌に勝手なことをするんやない」


騒ぎを聞きつけたのか、野太い声とともにでっぷりとした若頭が、数人の舎弟らを引き連れて入ってきた。
咥え煙草のまま、肩で息をするヨンファを愉しげに見下ろす。


「ここまで気骨のある兄ちゃんもめずらしいな。殺すには惜しいわ」


ヤニ臭い指に顎を掴まれて上を向かされるが、あまりの気持ち悪さに吐き気がする。
ヨンファの目が吊り上がったかと思うと、怒りが弾けるように爆発した。


「触るなっ!」


顔を動かして手を振り払うと、若頭は愉快でたまらないとばかりにニヤリと笑う。
その表情は、残忍極まりないものだった。


「ええ加減諦めぇ。暴れても無駄や。ほんま、とんだじゃじゃ馬やな」
「すんません。コイツが逃げようとしたんで」
「焦らんと、お楽しみはとっとけ。奴らの前で披露した方が効果的やろ」
「確かに。アイツらの泣きそうなツラが目に浮かびますわ」


無精髭の男が相槌を打って揶揄すると、ドッと下卑た嗤いが部屋中に響き渡り、込み上げる怒りに後ろで握り締めた拳が震える。
ヨンファはあまりの屈辱に、血が滲みそうなほど唇を強く噛んだ。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2016/09/20 (Tue) 18:32

haru

h*******さん

こんばんは♡お久しぶりです♪
いつもご訪問下さり、どうもありがとうございます(*´ω`*)
本当に焦れ焦れ&スロー展開でごめんなさい。
一話ずつ読んでいただくとそう感じるのは必至だと思いますが、お優しいお言葉をありがとうございます♡♡
今、続きを書いていますので、近日中にはアップできればと思っています♪

2016/09/21 (Wed) 03:07

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2016/09/21 (Wed) 06:32

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2016/09/21 (Wed) 07:09

haru

t*******さん

こんばんは♡
いつも読みに来て下さり、どうもありがとうございます(*´ω`*)
お前が言うな!って話ですが、チルソンには本当に困ったもので…。
私はのんびりマイペースで好きに進めていますが、こんな不安定な展開が一年も続いたら、読んで下さる皆さんはたまったもんじゃないだろうなと申し訳なく思っています( ̄ω ̄;)
何とか年内完結を目指します♪

2016/09/21 (Wed) 19:43

haru

は*さん

こんばんは♡
は*さん、いつもありがとうございます(≧ω≦)
自分を見失わず、どんな困難にも立ち向かっていく強靭な精神力を持つヨンという設定で書いているんですが、エールを送って下さって嬉しいです♪
チルソン(というか私)がもう本当にひどいですよね…( ̄ω ̄;)
情景描写って難しくて、いつもうんうん呻っちゃうんですが、身に余るお言葉をどうもありがとうございます♡♡その上、読み返して下さって感激です。
続き、頑張ります(*´ω`*)

2016/09/21 (Wed) 20:19