CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 1

2016年09月14日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 6


『奇跡のチカラ』 続編



穏やかな陽光が差し込む明るいリビングで、黙々とスプーンを動かしていたヨンファは、まったく同じ動作をしているジョンシンとローテーブルに向かい合って座っていた。
湯気を立てていた皿の中身は半分ほど減っていて、ペースはヨンファの方がやや早く、脇目も振らず食べることに専念している。
それに対して、目の前の男は自分の作った昼飯を口にしながら、時折顔を上げてこちらの様子を窺ってきた。


「どう?」
「めちゃめちゃ旨いよ」


ヨンファが素直に感想を言うと、ジョンシンは軽く口の端を上げ、満更でもなさそうな表情をした。
短い黒髪を軽く立たせたシャープな顔立ちは、すっきりと整っていて男らしい。
ふたつ年下とは思えないほど大人びた風格を漂わせ、どっしりと構えたような落ち着きぶりだ。


鶏肉と玉ねぎをバターでじっくりと炒め、トマトケチャップや塩こしょうなどの調味料で味付けしたところにご飯を加えてよく混ぜ、それをトロトロフワフワの卵で包み込んだオムライスは、まるでお店で食べているような完成度の高さだった。
それに野菜サラダとコンソメスープまで添えてあって、歴代の彼女も真っ青の出来栄えに驚きつつ、ヨンファは夢中になって食べ進めていく。


「もっと多めに作れば良かったな。足りなかったら、俺の分、食うか?」
「いや、割と量があるから、これで十分」


意外というか、さりげない優しさをごく自然に向けられて、ヨンファは悪い気はしなかった。
押しつけがましくなくてさらっとしているところが、この男らしいと思ってしまう。
どれも予想以上に美味しかったせいで、ヨンファは話そっちのけでひたすら口を動かし、皿を綺麗に平らげてスプーンを置いたのだった。


「ご馳走様」


笑みを浮かべて言うと、眇めた目を向かいから投げられる。
ヨンファは七分袖のボーダーカットソーにジーンズという休日らしいラフな格好で、うーんと伸びをして姿勢を崩す。
遅れること一分、ジョンシンもようやく食べ終わった。
ざっくりとしたグレーの半袖ニットとブラックデニムを無造作に合わせただけだが、背が高くて手足がスラリと長いせいか妙に決まっている。


「いいよ、俺がやるから」
「じゃあ、頼む」


ヨンファはいつもよりはるかに上機嫌で、ふたり分の食器を洗おうと、自ら進んでシンクの前に立った。
自分の部屋のキッチンなのに、食事の支度をしてくれるのは大抵ジョンシンであることが多い。
手際がよくて、短時間で出来上がった料理は、どれもヨンファの口に合うからだ。


「なぁ、このあとどうする?」


食器を洗いながら声をかけると、気配を殺していつの間にか背後にいたジョンシンの腕がヨンファの腰に絡まってきた。
驚いて振り返ると、野性的な面立ちが柔らかな眼差しを向けたまま、長身を屈めてヨンファの耳許に囁く。


「ちょっと休憩して、買い物にでも出るか」


そのまま耳朶に温かい唇が触れてきて、擽ったさに首を竦めた。


「休憩?今からすぐ出かけるんじゃなくて?」
「そっ。デザートを食ってから」


腰骨のラインを手のひらで撫でてくるのを気にしながら、そんなもの冷蔵庫の中にあったか?とヨンファが訝しむ。
洗い物が終わり蛇口のレバーを下げると、タイミングを計っていたのか、顎を掴まれて強引に後ろを向かされると、奪うように唇が重なってきた。
不意打ちのキスに驚いていると、いきなり歯列を割って入ってきた舌先に奥まで探られる。


「ン、……っ」


口腔内をなぞるように這いまわる感覚に、このままキスだけでは終わらない予感がして、背筋にぞくりと震えが走った。
長い両腕でぎゅっと強く抱き締められ、繰り返し角度を変える口づけはどんどん深くなり、抵抗する間もない速さですぐ隣にある寝室のベッドの上に転がされる。


「俺はデザートなんかじゃないぞ」
「どこもかしこも甘いし、白くて柔らかいだろ?」


「違う」と、ヨンファが息を乱しながら抗議すると、「まんまじゃねぇか」と言いながら、ジョンシンが半袖ニットを脱いだ。
ギシッとスプリングが弾み、シーツの上に沈められたヨンファの上に覆いかぶさるようにして、再び唇を塞がれる。


「う、ん……っ」


ジョンシンの身体の熱と重みがダイレクトに伝わってきて、不思議と安らぎを感じた。
巧みに動き回る舌があまりにも心地よくて、ヨンファが自分から両腕をジョンシンの首にまわして応えると、キスは一段と激しさを増す。
その合間に、たくし上げられたカットソーの裾から大きな手が滑り込んできて、目的をもって肌をまさぐってきた。


ジョンシンはキスがすごく上手い。
恐らくヨンファの比ではないくらい経験値が高いからなのだろうが、濃厚な口づけは瞬く間に理性を失わせる。
唇から伝染したように身体中へと熱が広がり、首筋から胸元へと舌を這わされるだけで息が弾んだ。


「……っ、あ、――」


散々指先で弄られて尖りきった乳首にキスが落とされる。
脇から腰のラインを辿られる手の動きを感じながら、軽く歯を立てられてくすぐるように舐められると、肩が跳ね上がった。
普段とは違う響きを含んだ低音に名を呼ばれて、全身に痺れたような感覚が走る。
たまらなくなったヨンファは、ジョンシンの広い背中に回していた指に力を込めた。










強引に迫られて、成行きで初めて男とセックスをしてから、三ヶ月近く経つ。
その時のことは、今でもリアルに覚えている。
何の因果か中高生時代の後輩と同じマンションの隣人として再会し、あることがきっかけで、毎日のように一緒に夕食を共にする仲になった。


自分勝手でマイペースのジョンシンには随分と振り回されることもあったが、過去にヨンファが付き合ってきた誰よりも料理が上手で、今思うと、知らず知らずのうちに餌付けされていたのかもしれない。
そのうち、不遜でとらえどころのない男の中にぶっきらぼうな優しさがあることに気づき、堂々と自信に満ち溢れたジョンシンにいつの間にか惹かれていて、勢いに呑まれるような形で付き合うことになってしまった。


現在はジョンシンが有給休暇を消化中だったあの頃のようにほぼ毎日ということはないが、お互いの仕事やそれに付随する付き合いがあったとしても、週の半分ほどは会うようにしている。
休日は一緒に過ごすことが多く、ジョンシンの手料理を食べてまったりと部屋で過ごすこともあれば、ぶらっとドライブがてら外出する時もあった。


ひとりでいる時には感じなかったが、大柄な男がそばにいるだけで部屋が狭く感じられて、突如、大型犬を飼い始めたような錯覚に陥ってしまう。
本人に言うといい顔をしないだろうから内緒だが、それは決して不快なものではなかった。


そんなジョンシンと一緒にこんなふうに過ごしているのが、今更ながら不思議な感じがする。
実際、自分の身に起きていることなのに、何だか現実味が感じられなかった。
なぜならば、未だに職場の可愛い女性にはつい目が行ってしまうし、取引先の美人担当者と顔を合わせるとドキドキするからだ。


確かにジョンシンとはキスもセックスもしているが、だからと言って、ヨンファは決してゲイになったのではない。
同性の上司や同僚にときめくわけでもなく、男友達らに恋心を抱くこともないのだから、間違いなく今でもヘテロなのだ。


それなのに、ジョンシンとの関係が続いているということは、強いて挙げれば身体の相性がいいという理由に他ならないような気がする。
食欲も性欲も満たされ、付き合っている相手としては申し分ないのだが、それが自分と同じ男ということに躊躇しているのもまた事実だ。


今でも、ベッドで散々痴態を晒してしまった悪夢の誕生日を思い出すだけで、顔から火が出そうになる。
初めて男と肌を触れ合わせたのに、拒絶するどころかジョンシンをより奥まで咥え込もうと、腰が勝手に暴走を始めたのだ。
長大なものを深いところまで迎え入れ、逃さないように締めつけ、かつて経験したことのないほどの愉悦に溺れた自分の振舞いは、狂気の沙汰としか思えない。


揺さぶられるたびに濡れた嬌声を上げ、止めどない欲望に支配され、普段のヨンファからは考えられないような姿を露わにして幾度となく吐精した。
もはや人生最大の汚点と言ってもいいだろう。
今まで女性としか経験したことがなかったのに、二ヶ月以上も男とこんな関係を築いているなんて、我ながら信じられなかった。


そんなことを考えながら、ジョンシンをすべて呑み込まされて、荒い息をゆっくりと整える。
休日の真昼間から男と交歓に耽るなんてどうかしていると思いつつ、ヨンファは目の前の浅黒い顔をやや上目遣いに見た。


軽音楽部でベースを弾いていた長身のひょろっとした後輩は、知らない間にガッチリとした体躯の持ち主になっていて、胸板や二の腕は当時よりも厚みを増している。
それに加えて顔のつくりもいいのだから、ヨンファの男としてのコンプレックスを良くも悪くも刺激してきて、完全に負けていると認めざるを得ない。


無意識のうちに溜息をつくと、誰からも羨望の眼差しで見られるような肉体を惜しげもなく晒してヨンファの身体をひたすら貪っていたジョンシンに、いきなり強く突き上げられた。


「あっ……やっ……」


その衝撃に我に返ると、ジョンシンが身を屈めるようにしてヨンファを覗き込んでくる。
不快そうに表情を歪めていて、吐息が触れそうな距離から苛立ったように尋ねてきた。


「さっきまで、何を考えてた?」
「な…にも……」


正直に言うと、不遜な男を喜ばせるだけで図に乗るのは目に見えているので、適当にはぐらかす。
すると、ヨンファのすらりとした太腿を更に大きく広げ、窘めるようにグッと身を割り込ませて、先ほどよりも深々と中に入ってくる。


「あ、――ん、……っ」
「俺以外のことを考えるのは、金輪際なしだからな」


そのお前のことを考えていたんだと心の中で呟いてみるが、相手に伝わるはずもない。
感じるところを硬いもので擦られて、間断なく与えられる快感に全身で身悶えた。
そんなヨンファの反応を確かめるように、ジョンシンがじっと真顔で見下ろしてくる。


「すげー気持ちよさそうな顔してる」
「見、るな……」
「見るよ。アンタの表情ひとつひとつ全部」
「悪趣味……っ」


食い入るような視線に居心地が悪くなり、ヨンファは顔を隠すように横を向いた。
ジョンシンが愛しげにこめかみから首筋へとキスの雨を降らせてきて、動かれるたびに中の質量が増していく。


揺さぶられながらジョンシンを横目で見ると、精悍な貌がいつもより余裕をなくしていて、額にうっすらと汗をかいている。
躍動的に隆起する浅黒い肌が挑発的に見えて、卑猥な腰の動きに鳥肌が立った。


「…んっ、んっ……、あぁ……っ」


理性の箍が外れたのか、次第に激しくなっていく抽挿に翻弄されて、何も考えられなくなる。
だんだんと追い詰められて最後を迎えるのに、そんなに時間はかからなかった。
逐情して、逞しい肩にしがみついたまま全身を震わせているヨンファを、ジョンシンは待つどころか再び抉るような動きを開始する。


「あっ……だ、め……んっ……まだ、中が……っ」


制止しても、聞く耳を持たない男はその感触を楽しむように腰を抱え直して、最奥まで突き入れてきた。
電流のような甘い痺れが身体中を駆け抜けて、ヨンファは弓なりに背を反らせる。


「……く……っ。キュッて絡みついてきて、すっげ……」


男らしい眉が顰められ、漆黒の双眸には欲情が滲んでいた。
吐精したことで、内壁がまだビクビクと痙攣しているにも関わらず、ジョンシンはお構いなしに抜き差しを繰り返す。
敏感になっているところを容赦なく擦られて、再びヨンファ自身が力を取り戻していくのが分かった。


「やだ……っ、もう……」
「これだけ締めつけといて……イイの間違いだろ?こんなに感度が良すぎて……どうすんだよ」


濡れた音を立てるように強靭な腰で責められながら、感心した口調で呟かれる。
汗を滴らせ、雄そのものの色香を撒き散らしている男の顔を、ヨンファは陶然と見入った。
こんな相手に抱かれたら、まず落ちない女はいないだろう。


あまりの刺激の強さに自然と瞳が潤み、知らず知らずのうちに目尻に涙が浮かんでくる。
ジョンシンを見上げると、怖いほど真剣な顔をして、手加減を忘れたように楔を打ち込んできた。


「あっ……いいっ―――ン」


ヨンファの嬌声は荒々しい唇に塞がれて、喉の奥に呑み込まれてしまう。
息苦しいほどの激しさについていけなくて、次第に意識が霞んでいくのを感じた。










「デザートにしちゃ、時間がかかりすぎだろ」


時計を見ると、午後三時を過ぎていた。
乱れたベッドに四肢を投げ出すようにぐったりと横たわっていたヨンファは、額に張りついている前髪を指先で払いながら、嫌味を交えて恨みがましい目で隣の男を睨んでやった。
シーツの上に寝そべったまま肘をついているジョンシンは鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌で、実にすがすがしい顔をしている。


「何、怒ってんだよ。今からでも行こうぜ」
「……腰が立たないから無理」


身体が怠くて、ここから動くのすら億劫なのだ。
とても起き上がる元気は今のヨンファにはなくて、毛布を掛けたままもぞもぞとベッドの端に寄り、ジョンシンに背中を向けた。
ベッドの中だと立場が弱くなるのをいいことに、好き勝手に振る舞う男が恨めしい。
いろいろと予定を立てていただけに、流されてしまった自分も同罪ではあるのだが、何だか面白くなくて、八つ当たり的にふて寝を決め込む。


「それだけ良かったってことだろうが。拗ねんなって」
「……………」


まるで聞き分けのない子供に対して言うような最後の台詞にカチンときて無視していると、ジョンシンは強引にヨンファを自分の方に向かせようとして、簡単に身体をひっくり返されてしまった。
明らかに面白がっている顔で見つめられ、反省の色がまったく窺えないことに、ヨンファは軽く眉を顰める。


「別にバージンってわけでもねーし、今更恥ずかしがるような間柄じゃねぇだろ。まっ、そういう初々しいとこも超好みなんだけど」


その軽い物言いにますます腹立たしさが募るが、ヨンファとしては答えようがない。
嫌なら全力で拒絶すればいいことだし、何か嫌な行為を強いられているわけでもない。
時々わざと意地悪な真似をして、焦らされたり泣かされたりすることはあるが、全般的には優しいし、思いやってくれているのは分かる。


ただ、女を宥めすかすような月並みな言い草が、ヨンファの神経を逆撫でした。
確かに付き合っているのは事実だが、恋愛感情を抱いているのかと訊かれると、ちょっと違うような気がする。
あまりお目にかかったことのないタイプだから、惹きつけられているといっても憧れに近いものがあり、女性に対して魅力を感じるのとはまた違う。


ジョンシンはヨンファが初恋の相手だったと言ったとおり、何かにつけ自分の心情を吐露してくるが、それに対してヨンファが言葉を返したことはなかった。
好意的な気持ちは抱いているが、それを口にするのはどうしても憚られるのだ。
強いて言えば、男としての矜持が邪魔をするのだろうか。
不機嫌なままそっぽを向いていると、いきなり温かい腕に腰を抱き寄せられ、至近距離で互いの顔を見合わせるようにされた。


「それよりさ、来週の木曜日、何の日か知ってっか?」
「……十五日か?知らないけど、それがどうした?」


あまり無視するのも大人げないので、枕に横顔を埋めた状態で聞いてやると、「俺の誕生日」と思わぬ答えが返ってきた。


「ふーん」
「あのなぁ……他にリアクションねぇの?」
「何か欲しい物でもあるのか?予算内なら考えてやるけど」


自分の誕生日にご馳走を作ってもらった手前、お返しくらいはしないといけないだろう。
その返事に気をよくしたジョンシンは、ヨンファの額にキスをひとつ落とすと嬉しそうに囁いた。


「裸エプロンがいい」
「……は?」
「だから、マッパでエプロンつけてさ。やってよ。一度試してほしかったんだよな」
「……………」


あり得ないリクエストに、ヨンファは一瞬にして固まってしまった。
アホらしすぎて、言葉が出ない。
この男は本当にG社の為替ディーラーなのだろうか。
一度、平日に休みを取って覗いてこようかと思うくらい想像ができなくて、ヨンファは思いっきり軽蔑の眼差しで見てやった。


「なぁ、いいだろ?」
「却下」
「なんで?」
「そんなことは自分の頭で考えろ」
「別に手料理を作れって言ってんじゃねーんだから簡単だろうが。そりゃまぁ、その格好で何か作ってくれるともっと嬉しいけど」


こんなくだらない不毛な会話はさっさと終結させたかったのだが、ジョンシンが執拗に食い下がるから、どんどんイライラが募ってくる。
密着した肌がどうしようもなく生々しくて、ヨンファは無茶な要求をしてくる男から身を捩って離れると、上体を起こしてヘッドボードに凭れかかった。


「うるさいから黙れっ」
「何だよ……。エプロン一枚あればできるんだから、手間もかからないし安上がりでいいじゃねぇかよ」
「手間とか安いとか、そういう問題じゃないだろっ。俺はお前と違って、至極真っ当な常識人なんだよっ!」


唾を飛ばす勢いで怒りを露わにするヨンファに、ジョンシンも起き上がって胡坐をかく。
呆れたように目を細めて、軽く顎を上げる仕草が妙に癇に障った。
確かに男とセックスはしているが、これ以上は越えてはいけないという一線はある。
ジョンシンは短い黒髪を掻き上げて、不満そうな視線を向けてきた。


「ったく。マジで頭、固いよな。親密な恋人同士ならやるだろうが、普通」
「お前にとっての普通が、すべての人間にも当てはまるような湾曲した言い方をするのはよせ。第一、お前の頭の中にはソレしかないのか?」
「やりたい盛りなんだからしょうがねぇだろっ。アンタこそ二十八にもなって、こんなことで恥ずかしがんなよ。乙女かっ」


乙女という言葉に、ピクリとヨンファはこめかみを引き攣らせた。
これはさすがに聞き捨てならなかった。


「……いい歳して、お前みたいに経験豊富じゃなくて悪かったな」
「そうきたか」
「何でも言いなりになる従順なタイプを俺に求めるんなら無理だ。他の相手でも探せ」
「誰でもいいってわけじゃねぇ。アンタだからだろ。そういう四角四面なところ、昔と全然変わんねぇよな。うちの部の予算を勝手に自分らの方に上乗せしやがってよ。これだから、お高くてクソ真面目で融通が利かないバスケ部の副キャプテンは……」


ジョンシンの言葉に、ヨンファは目を吊り上げる。
ベラベラとさぞいい気分で喋り倒していたのだろうが、不穏な空気を纏い始めたヨンファを見て、まずいという顔をして急に大人しくなった。
これだけ散々吐き出しておきながら、今さら口を閉じても手遅れだというのに、浅はかすぎて嗤いが込み上げてくる。


ジョンシンの言うとおり、ヨンファが高三の時の部活動予算折衝において、軽音楽部の予算を減らして、その分をバスケ部に上乗せしてもらったのは紛れもない事実だ。
それは、バスケ部が全国大会でベスト8入りしたのと、両方の顧問の教師同士で話し合った結果により決定事項となったのだが、これに猛反発してきた軽音楽部の部員の中に茶髪のロン毛野郎が混じっていた記憶が、ジョンシンの長ったらしい台詞でたった今蘇った。
ヨンファの親友で軽音楽部部長のホンギは何も言わなかったが、副部長以下が集団で練習中の体育館に怒鳴り込んできたのだった。


「ああ。確か、あの中にお前もいたよな。特にコンテストに出るわけでもなし、同好会みたいな仲間内での趣味の延長線みたいな部なんだから、予算なんか減らされて当然なのに、横から搔っ攫うような真似して悪かったなぁ。十年も前のことを、今でもそんなに根に持ってるなんてちっとも知らなかったよ」


中高生時代、男子校にも関わらず、不本意ながら「クールビューティー」とか「男殺し」と陰で囁かれていたのを再現したかのように、ヨンファはにっこりと微笑んだ。
自分のことを初恋の相手と豪語するなら、絶対に効果的だと思ってジョンシンの顔を見ると、案の定、顔を赤くして、ぐうの音も出ないようだった。


心の中で、いい気味だとほくそ笑む。
ここでやめておけばよかったのだが、その顔をもっと困らせてやりたくなり、ヨンファはさらに追い打ちをかけた。


「しかも、俺たちの関係って親密な恋人同士だったのか?そんな付き合いをしているとは、まったく思いもしなかったな」


あまり深く考えず、ちょっと意地悪をするつもりで感情がこもっていない声を出すと、ジョンシンは不意を突かれたような表情を見せた。
すぐさま眉が不快そうにきつく寄せられ、ヨンファを睨み返してくる。
その迫力にヨンファが怯むと、地を這うような低い声で言い放った。


「……いい加減にしろよ。たった今までセックスしてて、じゃあ、アンタはこの関係を何だと思ってんだよ!」


まさかそう返ってくるとは想定外だった。
何だと聞かれても、ヨンファとしてもはっきりとした答えが出なくて困っている。
そろそろ素直に折れてくる頃だと思っていただけに、射貫くような眼差しで逆ギレされ、ほとほと嫌気が差した。
ただでさえ身体がしんどいのに、これ以上話を引っ張りたくない。
ヨンファは早く解放してほしくて、この馬鹿馬鹿しいやり取りを終わらせるつもりで爆弾を投下してやった。


「セフレに毛が生えたようなもん」


本気でそう思っているわけではなかったが、ヨンファも引っ込みがつかなくなってしまったのだ。
ほんの軽い気持ちでつい言ってしまうと、ジョンシンは驚いたように顔を上げた。
しばらく呆然とヨンファを見ていたが、押し黙ったまま瞠っていた目をじわじわと細める。
眉間にはくっきりと縦皺を刻み、冷ややかな視線を真っすぐこちらに向けていた。


「……アンタ、俺のことをそんなふうに思ってたのか。まったく話になんねぇな」


吐き捨てるような声音だった。
ヨンファの顔から目を逸らして、ジョンシンは「分かった。もういい」と尖った響きで言い放つ。
先ほどまでとは打って変わり、寝室にはいつの間にか重苦しい空気が流れていた。
ジョンシンは苛立たしげな溜息をついて忌々しそうにベッドから下りると、無言のまま脱ぎ散らかした服を身に着け始める。


その後ろ姿は、完全にヨンファを拒絶しているように見えた。
言いすぎたのは分かっていたが、ジョンシンが初めて見せた底冷えのする怒りに、何と切り出していいか分からない。
それきり会話は一切なく、背を向けたままヨンファには目もくれず、ジョンシンは部屋から出て行った。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2016/09/15 (Thu) 07:50

hoshi

haruさ―――ん!!!!!!

ありがとうございます♡どうしようも無くドキドキドキドキしています。

ヨンファは相変わらず可愛らしいし♡
ジョンシンはなんだかもうもうもう←好きです(告白)

ヨンファの気持ちもわかるし、裸エプロンもみたいから←ジョンシンの気持ちもわかるけれど。

最後の爆弾ヨンファの発言に、うわわわわってなりました。
続き、お利巧にしてお待ちしますね!!

やっぱりharuさんのお話、シンヨン♡大好きです。

2016/09/15 (Thu) 09:39

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2016/09/15 (Thu) 19:02

haru

t*******さん

こんばんは♡
いいえ!こっそり大歓迎なので、お気になさらないで下さいね(*´ω`*)
う~ん。そのご期待には沿えないかな(笑)
またいろいろ考えて書いていこうと思います♪

2016/09/15 (Thu) 22:20

haru

hoshiさん

こんばんは♡
読みに来て下さり、ありがとうございます(*´ω`*)
hoshiさんのお言葉、あまりにももったいなくて、どうしましょう~。
毎度毎度ですが、ジョンシンのことが好きすぎてもう吐きそうです。
今の黒髪短髪が超素敵すぎて、はぁ~~溜息しか出ません。
あまりにもカッコよすぎてざわざわしっぱなしで、自分でもどうしようもないくらい愛がありすぎて、書いたのがコレです・・・( ̄ω ̄;)
もっとまともな妄想ができんのかと自分に叱咤しつつ、また続きを考えてみます♪

2016/09/15 (Thu) 22:46

haru

は*さん

こんばんは♡
ハピバなのに、こんなのを書いてしまいました( ̄ω ̄;)
釜山ズに比べてなぜか妄想が斜めってしまい、もっと格好いいジョンシンを書きたいはずなんですが、いつもずれた感じになってアレレ?です。
甘々も好きですが、やはりすったもんだがある方が私としては腐心を大いに刺激されるので、またいろいろ続きを考えてみます(〃ω〃)
ジョンシンの手料理、私も食べてみたいものです♪

2016/09/15 (Thu) 23:06