CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 26

2016年08月20日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 4






「……ん、ぅ――」


全身に違和感を覚え、少しずつ意識が覚醒していく。
何か固いものに直接身体を押しつけられているようで、肩や腕にも不自然な痺れを感じる。
それらから逃れたくて、反射的にヨンファは身じろいだ。


「うっ……痛ぅ……っ」


その途端、頭が割れそうなほどの痛みに見舞われて、顔を顰めた。
後頭部を襲った激痛に思わず呻き声が漏れ、両腕にも引き攣るような痛みが走る。
いつもと何だか様子がおかしいことに気づき、うっすらと瞼を開けると、視界に飛び込んできたのは薄汚れた天井だった。


――ここは……どこだ……?


一体どうしたというのだろうか。
しかも、なぜか冷たくて固いコンクリートの上に寝転がっている。
呆然としたまま痛む頭を押さえようとして、ヨンファは初めて両手を後ろ手に縛られていることに気づいた。
何かロープのようなもので巻き結びにされているからなのか、解こうと引っ張ってみてもビクともしない。


頭の芯が未だに朦朧としている中で、腹筋に力を入れて、頭痛に耐えながら何とか上体を起こした。
不自然な体勢のせいか、そこかしこの関節がギシギシと軋む。
現状を把握しようと、ヨンファは眉根を寄せながら辺りを見渡した。


独特な匂いが鼻を掠め、湿り気を帯びた空気が身体に纏わりついてくる。
コンクリートが剥き出しの状態で、物はまったく置かれていないし、窓がひとつもない四角い部屋だった。
かなり薄暗くて、外の音が何ひとつ聞こえないくらいしんと静まり返っている。
それが何だか不気味に思えて、妙に息苦しい。


見た目から判断すると、倉庫か地下室のような造りになっていて、静かすぎる空間に背筋が寒くなった。
両手の自由が利かないのと、他に怪我をした形跡はないが、とにかく頭がズキズキして、力が思うように入らない。


自分の身に何が起こったのかと記憶を反芻してみて、ようやくヨンファは一連の出来事を思い出した。
病院で見知らぬ男に声を掛けられて、その時、いきなり背後から襲われたのだ。
忘れもしない無精髭の男と、普段あまり耳にすることのない釜山弁。
そこからぷっつりと記憶が途絶えていることから、気を失っている間にここまで連れてこられたのだろう。


「くそっ……」


迂闊だった。取り返しのつかない失態を犯してしまい、悪態をつく。
ジョンヒョンに車での送迎はいいと断った手前、自分でも気をつけているつもりだった。
まさか院内でこんな大胆な行動に出られるとは、悪夢だとしか言いようがない。


業務中、突然いなくなった自分を心配して、看護師たちが探しているのではないだろうか。
仕事に穴を空けて迷惑を掛けてしまい、ヨンファの胸中は心苦しさでいっぱいになった。
組との接点を知る者は誰もいないので、もしかすると警察に通報されているかもしれない。


着ていたはずの白衣はいつの間にか脱がされていて、ポケットの中に入れておいたスマートフォンも見当たらなかった。
青い半袖のスクラブと揃いのパンツを身に着けた格好のままだ。
しかも、自分のいる場所がどこなのか見当すらつかないし、何時なのか知りたいと思っても、後ろ手に縛られた状態では腕時計を見ることもできない。


ここから一刻も早く逃げなければ。
自分がこの場所にいるとは誰も知らないから、自力で何とかするしかない。


漠然とした不安を抱えていると、部屋の向こうから只ならぬ気配を感じる。
警戒を強めるヨンファの視線の先で、ガチャッという音とともに重厚な鉄製のドアが開き、あの無精髭の男が姿を現した。
冷めた目でヨンファを一瞥すると、後ろに控えている子分らしき男に声を掛ける。


「おい、起きとるぞ。若頭を呼んできてくれへんか」


ほどなくして、横に広がった体格を高そうなスーツで覆っている三十代半ばくらいの男が入ってきた。
続けて舎弟らしき男たちがぞろぞろと従うように周りに立つ。
どれもこれも見るからにチンピラ風情で面構えもよくなく、うちの組とは大違いだなとヨンファは冷静に観察する。
その中には、病院でヨンファに場所を尋ねてきた男もいた。
抵抗したところで無駄なのは分かっていたから、気を落ち着かせて様子を見ることにする。


若頭と呼ばれた男は集団の中でもひと際目つきが鋭く、薄笑いを浮かべていた。
幹部がいるということは、手柄のために下っ端連中が勝手にやったことではなく、チルソン組を挙げての行動と判断して間違いないだろう。
目的のためならどんな手段も厭わない冷酷さがひしひしと伝わってきた。


「目ぇ、覚めたんやな」


突然襲い掛かった上に無理矢理連れてきておきながら、呑気な調子で言われてカッとなる。
その男は煙草を咥えたまま、値踏みするような目つきでヨンファを眺め回した。
不快な視線を注がれて、こちらに向かって少しずつ距離を詰めてくる男を上目遣いに睨みつける。
ヨンファの前まで来ると、無遠慮に上からじっと見下ろしてきた。
込み上げてくる怒りを露わにすると、低い笑い声が部屋中に響き渡る。


「ほぉ、ええ目しとるやないか。ただの医者にしておくんはもったいないな」
「ここはどこだ?」


チルソン組の本拠地である釜山まで連れてこられたのかと危ぶんで聞いてみたが、男は黙ったままだった。
ふーっと煙を吐き出して、何を考えているのか、その表情からはまったく読み取れない。


「……お前たちの狙いはシマを乗っ取ることか?」
「話が早いな。なにも喧嘩しようと思てるわけやない。うちの傘下に入るんやったら、すぐにでも解放したる」


この連中は父親を狙撃したのち、屋敷まで襲撃した。
チルソン組のこれまでの挑発行為の数々を思い起こすと、胸糞が悪くなり、開いた口が塞がらない。


「正攻法だと蹴られるのが分かってるから、今度は俺を攫ったのか。考えが浅はかだな。俺は組とは何ら関わりはない。生憎だったな」
「何やと、コラァ!お前、何様のつもりやっ」


冷たく言い放ったが、いきり立ったのは舎弟たちだけで、男は悠然と煙草を吹かしながら不敵な笑みを漏らす。


「組長の一人息子やし、ちょっと調べさせてもろたんやけど、組員たちから随分と慕われとるようやないか。あんたは間違いなく、あのまったく隙のない青龍組のアキレスの踵、つまり弱点や。せやから、大いに効果は期待できる」


何をどう調べたのか知らないが、お門違いもいいところだ。
そんなことで組が揺らぐはずがない。
ヨンファは表情を変えず、視線を目の前の男へと向けた。


「お前らの縄張りは釜山だろう。なぜソウルにまで勢力を拡大しようとする?」
「生き残るためには手段は選ばれへん」


組の運営のことはよく分からないが、昔ながらのシノギだけでは立ち行かなくなっているのだろう。警察の取り締まりが厳しい中、法に触れるようなことばかりしているようでは明るい未来はない。
何か新たな試みにでも着手しない限り、特殊で閉鎖的な極道の社会の中で生き残るのは至難の業だと窺い知れた。


「それは、お前たちのやり方が悪いんじゃないのか?」
「……何やと?」
「人の物を奪う前に考えることはあるだろう。チルソン組にはクレバーな人材がいないんだな。気の毒に」


そう言って、ヨンファは挑発的に微笑む。
このまますごすごと相手の言いなりになるつもりは毛頭なかった。
両手が自由で、相手が少人数なら何とか逃げおおせるかもしれないが、十人弱の相手では明らかに分が悪い。
今すぐ自分をどうこうする感じは見受けられないから、相手の動向を少しでも探ろうと画策していた。


「コラ待て、何やその言い草は!」
「まぁ、ええ。綺麗な顔して、鼻っ柱の強い兄ちゃんやなぁ」


チンピラの下っ端が身を乗り出してくるのを男が止める。
少しも気分を害した様子はなく、それどころかヨンファの物怖じしない態度が気に入ったようで、鼻で嗤いながらさらに畳みかけるように言葉を重ねた。


「ただの生っちょろい医者かとなめとったが、やはり血は争えんな。肝が据わっとって頭も切れるようやし。うちに来るか?初めは舎弟の下っ端やけど」


揶揄する声音に、周りの連中から下卑た笑いが起きる。
とことん品がなくて下衆で、うちの組員たちとは大違いだ。
冗談にも程がある。こんな屈辱はなかった。
耐えきれず、気がつくとヨンファの口から怒りに満ちた台詞が飛び出していた。


「ふざけるなっ。誰がお前らなんかに……!」


きつい眼差しで正面の顔を睨みつけ、毅然とした態度を貫く。
口許を緩ませ、余裕綽々でこの状況を愉しんでいるような男たちの態度に怒りが込み上げてくる。


突如、ヨンファの脳裏に、父親や組員たちの姿が浮かんだ。
胸の中に、言葉では言い表せないほどの不安が広がる。
皆を危険な目には遭わせたくない。
たとえどんな屈辱的な扱いを受けても、自分のせいで組に迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
命と引き替えにしても――。


最悪の事態を想定した中で、ただひとり、ジョンヒョンの精悍な貌だけは、なかなか消えようとはしなかった。
きつく唇を噛み締めた途端、男の細い目が面白そうに光り、ポケットからおもむろにスマートフォンを取り出す。


「!」


見覚えのあるものに、ヨンファは咄嗟に反応した。


「今からおもろい余興の始まりや」


男はさも愉しそうに言いながら、平然とヨンファのスマートフォンをこちらに向けてくる。
どうするつもりなのかと見ていると、カシャッという音が鳴り響いた。


「何をやってるんだっ。返せ……っ」
「何て、見ての通りや。今、ええ写真を撮ったからな」


勝手に人の物を操作しているのを、ヨンファは息を呑んでじっと見つめる。
どこかに送信でもしようとしているのだろうか。


――まさか……っ。


それに思い当たり、全身から血の気が引いた。


「お前は獲物をおびき寄せる餌や。どないなるか楽しみやな」


冷やかな口調で言い放たれて、身体が凍りつく。
それは、明らかに宣告だった。
これから始まるであろう抗争の幕開けに対しての――。


信じがたい現実に絶句しているヨンファの前で、男は不気味な笑みを浮かべていた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(4)

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2016/08/21 (Sun) 00:01

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2016/08/21 (Sun) 01:25

haru

は*さん

こんばんは♡どうもありがとうございます♪
今回の話の内容は、画像で分かってしまいますね(笑)
私はいつも粛々と話を形にしてお届けするという作業に没頭しているので、は*さんのお陰で読んで下さる方はこんな風に感じていらっしゃるんだとお心の中が見えて、とても有難く思っています(*´ω`*)
最近は心臓によくない展開で申し訳ないです(´・ω・`;)
今まで書いたことのないタイプの話なので描写が難しいですが、シリアスに目がないので、楽しみながら書いてみます。下手なものですから、雰囲気だけでもお伝えできればいいのですが…。
言葉を慎重に選んで下さり、は*さんのお優しいお人柄にとても癒されます。
お盆がすぎても相変わらず暑い日が続いていますが、お互い乗り切っていきましょう♡♡

2016/08/21 (Sun) 01:26

haru

つ*さん

こんばんは♡
ものすごい破壊力のあるコメントをどうもありがとうございます(笑)
こういう「漢」って感じのヨンが激萌えだったりします(〃ω〃)
少しでも楽しんでいただけると嬉しいです♪

2016/08/21 (Sun) 01:43