CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 24

2016年08月08日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 6






いつの間にか辺りが薄暗くなっていることに気づき、ジョンヒョンが窓の外に目を向けると、しとしとと静かに雨が降っていた。


夕刻は一日のうちで割とのんびりとしており、夜の帳が下りて江南区の歓楽街が煌びやかなネオンに彩られるまで、緊急の場合を除いてさほどすることはない。
夏に起きた屋敷の襲撃事件以降、身も心もすり減らされる案件も少なくなり、青龍組の事務所内は比較的落ち着きを取り戻していた。


現在、事務所には半数ほどの組員がいるだけで、残りの者たちはそれぞれがシノギと呼ばれる資金獲得活動のために独自に動き回っている。
組事務所にとって主な収入源であるが、ご法度とされていることには絶対に手を出したりはしない。薬物や闇金はリスクが大きく、青龍組が掲げている極道のあるべき姿に反しているからだ。
その代わり新しい合法ビジネスに着手しており、不動産の転売や株の取引、店舗を経営するなど様々な業種で利益を得ている。


ジョンヒョンはパソコンの画面に表示された、前年度と今年度の純利益を比較した表を眺めながら、年度末までの見込みを立てていた。その上で、来年度の月別予算案を作成しなければならない。
まるで企業の一社員のようなことをしているが、組をきちんとした形で運営していくためには、とにかく常日頃より数字をよく見て、現状を把握することだとジョンヒョンは考えている。


極道を生業にしているが、幸いなことに高校を卒業するまで成績は上位から数えた方が早かったため、こういう頭を使う作業は苦ではない。
そういえば高校三年生の時の担任教師からも国立大への進学を強く勧められていたな…と当時のことを何となく思い出した。


自分で決断したのだから今更未練があるわけではないが、結局、合格していたにも関わらず進学を断念して、落胆させてしまったのだ。
そして、別々の学校ではあるが進学することをまったく疑いもしなかった、その時すでに大学生だった彼の激高した美貌が頭の隅をよぎる。
それを無理矢理意識の外に追いやりながら、ジョンヒョンは淡々と作業を進めた。


警察の取り締まりが厳しい昨今、どのようにして組を存続していくかなど、常に冷静な目で先を見据えていかなければならない。
若頭補佐としての責務を果たす中で、資金源の確保は組にとっての最重要課題だ。


どうしても諸事情により、やむを得ず店をたたむ顧客が出てくることから、それを補うためにもクリアーなやり方で、定期的にみかじめ料を支払ってくれる店舗を新規開拓していかなければならない。
ありとあらゆる情報網を駆使して、組が管轄しているシマ内で新店がオープンするという情報を素早くキャッチし、事前によく下調べをした上で、ミニョクやスンヒョンといった外見がソフトで人当たりのいい組員を店に派遣して交渉させるようにしている。


昔のように脅しをかけたり、違法な行為のヤクザ稼業をしていては、いずれ組は潰れる。
まっとうな道を歩んでこそ先々まで存続していけるというもので、安心しきって胡坐をかいているようでは、思わぬところで足元を掬われることになる。


両親亡きあと、引き取って育ててもらった恩義もあるが、ジョンヒョンは子供の頃から屋敷に出入りする一見強面でありながら、温かみのある組員たちが好きだった。
義理人情を重んずる組長に右へ倣えで、一般的にイメージされる極道とは明らかに違う。
屋敷内に女性はひとりもいなかったが、大柄な迫力のある男たちが良い行いをした時には誉めて、逆の場合は鬼のような形相で叱ってくれた。


今思うと、周りにいた全員が親代わりだった。そのお陰で卑屈になることも、寂しい思いをすることもなく、真っ直ぐに成長できたのだと思っている。
そんな組の将来を思うからこそ、少々手間であっても後世に継承するための労力は厭わないと、ジョンヒョンは心に決めていた。


「ヒョニヒョン、コーヒーのお替りいる?」


不意に声をかけられて、パソコンから目を離してコーヒーカップに目を落とすと、中身が空になっていた。
それから、ゆっくりと視線を上げると、一重の優しげな眼差しとぶつかる。


「ああ、悪いな。頼む」


ジョンヒョンが穏やかな声色で答えると、ひとつ年下のミニョクは口許に笑みを浮かべた。
組員とは思えないくらい、驚くほど細やかでよく気がつく。
本来なら、ちゃんとした企業にでも就職できるくらいの能力はあるはずなのに、ジョンシンとほぼ同時期に若頭のグンソクにスカウトされて、青龍組の部屋住みとなった。
根が真面目で思いやりがあり、好青年然としているが、こう見えて腕っ節が強く肝も据わっていて、ミニョクほど極道に見えない男も珍しい。


ふと腕時計を見ると、午後五時にさしかかるところだった。
パソコンを前に、二時間近く仕事に没頭していたことになる。
数字と格闘していたジョンヒョンは、少し休憩しようとマウスから手を離した。


ネクタイのプレーンノットに指を入れて緩め、大きく息をつくと、椅子に寄りかかるように背中を預ける。
細かい数字ばかりを見ていたからか、目の奥がやや痛む。
ジョンヒョンは胸の前で腕を組んで、軽く瞼を閉じた。


しかし、それは長時間画面を眺めていたからという理由だけではない。
昨夜から今朝にかけて、ジョンヒョンは一睡もできなかった。
正確に言うと、目の前の美貌に見惚れて寝ることを放棄したのだ。










昨日、前触れもなく突然、組事務所に顔を出したヨンファにジョンヒョンは我が目を疑い、用件が済んで早々に帰った彼を追うように急いで車を飛ばし、マンションで待ち伏せをした。
借りたままになっていたワイシャツを返すというのは表向きの理由で、初めからすぐに帰るつもりなどなかった。


ひと月前、チルソン組の男のナイフで怪我を負い、思いがけずヨンファに手当てしてもらうこととなった。
話をしているうちに次第に積年の想いが溢れ、ついには我慢が限界にきてしまう。
そして、抱き締めてキスをした。


何も期待しないし約束もいらないと言われ、相手も自分と同じ気持ちだったという驚愕の事実をこの時初めて知ったのだ。
ヨンファの将来を考えるなら足枷になるようなことは言うべきではないと判断し、愛を誓うような直接的な言葉は一切伝えなかった。


めくるめく奇跡のような時間が過ぎたあと、ヨンファは次があるとはまったく期待していない顔をした。
一連の事実をなかったことにするかのような口調で、早く帰るように促された。
それは、決してジョンヒョンの本意ではない。


しかし、チルソン組に屋敷を襲撃された直後で、若頭補佐としてやらなければならないことが目の前に山積み状態だった。
後ろ髪を引かれる思いで、ジョンヒョンは仕方なくヨンファの元から去ったのだ。


それから、ヨンファのことを考えない日はなかった。
愛しい気持ちが込み上げてきて、会えないのならせめて声だけでも聞きたいと思っても、どうしても一歩が踏み出せない。


ひとり暮らしを始めるからと、屋敷を出る時にヨンファから携帯の番号を教えてもらっていたから、連絡しようと思えばできるのに。
事後処理に追われて忙しかったのは事実だが、無理をすれば可能であったにも関わらず、ジョンヒョンは躊躇した。


もし自分が堅気の人間なら、迷うことなく行動に移していただろう。
愛している気持ちと同じくらい、ヨンファを極道の世界に巻き込んでいけないという強い思いがあるからこそ、遠慮してこちらからかけることはできなかった。
また、逆に向こうからかかってくることもなかった。


このままフェードアウトするのも仕方がないと諦めかけていた時、ひと月ぶりにヨンファに再会して、理性は脆くも崩れ去った。
部屋に入れてくれたことで、ヨンファも自分と同じ気持ちだと再確認し、当然のように身体を重ねようとした矢先、いきなり愛撫の手を止められた。


どうやらジョンヒョンが本気だということを信じ切れていないようで、どうしていいのか分からない様子だった。
なぜそんなに迷う必要があるのかと、憤りを感じた。


こちらの立場を慮ってくれるのは有難いと思うが、何も期待していないような態度に加えて、あろうことかジョンシンに口説かれていたことを知った。
いつどういう状況でそういうことになったのか知る由もないが、その場面を想像した瞬間、たとえようのない不快感がジョンヒョンの全身を覆い尽くした。
無意識のうちに握り締めていた拳が白くなるほどに。
他の男に付け入る隙を与えたヨンファに苛立ちを覚え、嫉妬心を抑えることができなくなった。


箍が外れてしまったことで、後先考えずただ手に入れたいという欲望のまま、我を忘れてヨンファを抱いた。
普段の高潔で凛としたストイックな佇まいからは想像できないほど壮絶な色気を放ち、肌理の細かい肌はジョンヒョンをどこまでも煽り、そのしなやかな身体に溺れた。
ヨンファのすべてを余すところなく暴き、ジョンヒョンの愛撫に乱れる彼は眩暈がするくらい扇情的だった。


何度も求めてしまったため、余程疲れていたのか、三度目に吐精したあと、ヨンファはそのまま気を失うように寝入ってしまった。
ジョンヒョンは汚れたシーツを剥がし、濡れたタオルで身体を拭い、ひと通りの後始末をしたのだ。


常に最悪の事態に備えて覚悟しているから、最愛の相手といつまで一緒にいられるか分からない。そういう思いがあるからこそ、ヨンファというひとりの人間を自分の身体に焼きつけておきたかった。


その類まれな容貌に疲れの色が見えていて多少心が痛んだが、あどけない寝顔を見せるヨンファの髪の毛を優しく梳くと、時折『う…ん』と小さな声が聞こえる。
眠っていても、ヨンファは輝くほどの美しさを放っていた。


綺麗に整った眉、長い睫毛に縁どられている閉じたままの瞳、すっと通った鼻梁、ふっくらと艶やかな唇。
まるで誰かの口づけを待っているかのような赤みを帯びた唇に誘われて、ジョンヒョンは幾度となく重ねるだけのキスを繰り返した。


幸せな時間を過ごしていると、今すぐ組を抜けて、ヨンファとふたりでどこか遠くへ行きたくなる。誰からも探されることのない、静かに暮らせる見知らぬ街へ。
実際にそんなことができるはずもないのに、夢物語みたいなことを思い描きながら、朝までずっとヨンファの寝顔を眺めていた。


こんなにも心から満たされたのは初めてで、今日は一日温かい気持ちのまま仕事に励み、ようやくひと息ついた矢先のことだ。










突然けたたましい音が鳴り響き、若頭のグンソクがすかさず携帯電話に出た。
話しぶりから緊迫した様子が伝わってきて、どうも雲行きが怪しい。


「……なに?背後がざわついていてよく聞こえない。もう一度、落ち着いてゆっくり言え!」


ジョンヒョンの意識を完全に引き戻したのは、ここ数年聞いたことがないグンソクの鋭い怒声だった。
部屋中に響き渡り、その場にいた一同の動きが止まった。
常に冷静沈着で堂々とした風格を漂わせているグンソクは、少々のことでは揺らがず、こんな風に取り乱した姿をほとんど目にしたことはない。
余程落ち着かないのか、急に立ち上がったと思うと、部屋の中を歩き回っている。


「……何かあったのかな?」
「ああ……」


コーヒーカップをデスクに置きながら低く呟くミニョクに、ジョンヒョンも只ならぬ雰囲気を察知して様子を窺った。
安易に物音を立てることすら躊躇われる。
ふと視線を移すと、少し離れた席に座っているジョンシンとスンヒョンも何事かと訝しげな顔をして、グンソクの方を振り返っていた。


一瞬にして重く張り詰めた空気には不穏なものが混じっていて、ジョンヒョンは眉を顰めたまま静観した。
グンソクは非常に厳しい顔つきをしていて、相槌を打ちながら電話の声に耳を傾けている。


「それは間違いないのか?」


その表情からかつてないほどの緊急事態が発生したのだと判断し、ジョンヒョンは片っ端から思い当たる案件に考えを巡らした。
この手の商売をしていると、どうしても南部洞組を除く他組織との間にトラブルが生じてくる。


相当こちらに分の悪い揉め事でもあったのかと、漠然とした胸騒ぎを感じながら、通話が終わるのをひたすら待つ。
グンソクの大きな声を聞きつけたのか、他の部屋からダークスーツを身に着けた屈強な組員たちがぞろぞろと入ってきた。


待ちきれないとばかりにジョンヒョンは椅子から立ち上がると、神妙な顔をしている男に近づく。
電話を切ったグンソクは唇を引き結び、苦虫を噛み潰したような表情でこちらを見てきた。
聞いてはいけないような、とてつもなく嫌な予感がする。


「何かまずいことでも?」


それでも確かめずにはいられず、絞り出すようなジョンヒョンの問いに、真っ直ぐな視線を向けたままグンソクが重々しく口を開いた。


「……若が行方不明になった」


前置きがまったくなく、いきなり想定外のことを告げられて、ジョンヒョンは驚きのあまり呆然とした。
まるで喉の奥に何かが張りついたかのように、声を発することができなかった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2016/08/09 (Tue) 05:39

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2016/08/09 (Tue) 20:39

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2016/08/10 (Wed) 00:04

haru

こ*****さん

こんばんは♡
今回、初めてバニ視点で書いてみました♪
本当にヨンはどうなっているんでしょうね…(-ω-;)

2016/08/10 (Wed) 03:03

haru

し**さん

こんばんは♡
お待たせしてしまいましたが、やっと書けました♪
今、続きに取り掛かっているところです(。・ω・。)

2016/08/10 (Wed) 03:10

haru

は*さん

こんばんは♡
今回、初めてバニ視点で書いてみました。
ヨンが美しすぎて私の稚拙な文章ではなかなか表現しきれないのですが、どうもありがとうございます♪
とても嬉しいです(〃ω〃)

数ヶ月前から書きたくてうずうずしていたシーンにやっと突入しました。
ここまで本当に長くて、この先もまだ続く予定ですが、年内に終わるのか心配になっているところです。

七夕ヨン、この上目遣いはヤバイですね♡♡
まさにヒョニと一緒にたこ焼き食べたい~のヨンです(笑)!!
こんな顔をされたら、即押し倒しますよね。バニの理性に拍手( ̄m ̄* )

2016/08/10 (Wed) 03:30