CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

My Sweet Home

2016年07月18日
シンヨン短編 6






異例の休暇で、ヨンファは実家のある釜山に帰っていた。
突然の出来事に頭の中が混乱して、未だにその現実を受け入れられないでいる。
なぜこんなことになったのか。何かの間違いではないのか。
同じことを幾度となく反芻してみても、起こってしまった事態はどうにもならない。


自分がこれほどまでに無力であることを改めて思い知らされ、打ちひしがれた。
リーダーとしてグループを引っ張り、事務所の稼ぎ頭として一生懸命やってきたつもりだったが、思わぬことで足元をすくわれたような気がした。


事務所からの勧めもあり、ほとぼりが冷めるまで地元に帰ることになった。
いつもと同じように仕事をしていただけで、疚しいことは何もしていないと胸を張って言える。
正直、納得はいかなかったが、トップが決めたことに所属者のひとりにすぎない自分が従わないわけにはいかない。
メンバーとは言葉少なに挨拶を交わし、即日ソウルを離れた。


家族や友人たちは温かく迎えてくれたが、最初の数日間は、ベッドに入ってもほとんど眠れない日々が続いた。
帰省中は仕事もなく、音楽にもまったく触れなかったため、まるで練習生になる前の自分に戻ったような錯覚に陥ったほどだ。
どことなく違和感はあったものの、長期休暇のお陰でヨンファの心も少しずつ癒えていき、自分らしさを取り戻し始めていた。


その間、あの男とは連絡を取り合わなかった。
お互いに思うところがあり、一切の接触を断っていたのだ。
こういう状況なだけに、長身で年下の男に甘えてしまうことが何だか憚られて、ひとりで考えて答えを出したかったというのもある。
当の本人は、ドラマや音楽番組の収録で相変わらず忙しそうにしていたから、ちょうど良かったのかもしれない。





そして、ようやく今日、ヨンファはソウルに戻ってきた。
人目を避けるため、遅めの時間を選んで空港に降り立つ。
久しぶりに事務所へ顔を出し、代表と理事を始め、スタッフや社員たちにも挨拶を済ませて、自分の作業室へと向かった。


デスクについてみたものの、何から手をつけていいのか途方に暮れて、まったく考えがまとまらない。
長く休んでいたせいで、勘が鈍っているのだろうか。
気分転換にコーヒーでも買いに行こうと思い立ち、自動販売機に向かう途中、練習室の前を通った。


無人だろうと思いつつ覗くと、中に人がいた。
長椅子に腰掛けて、ジーンズに包まれた長い脚を組んでベースを弾いている。
ずっと会いたいと思っていた相手がすぐ目の前にいて、ヨンファは驚愕のあまりその場に立ち尽くした。
みるみるうちに身体から力が抜けて、涙腺が緩みそうになる。


この展開をまったく予期していなかっただけに、動揺を隠せなかった。
今更遠慮する仲でもないのに、何と声をかければいいのか、胸が詰まって言葉が見つからない。
急に心臓が引き絞られるように痛み、込み上げてくる感情を必死で抑えた。


「ひとり……か?」


意を決してドアを開けて中に入るが、ジョンシンはヨンファの顔を見てもあまり驚いてはいないようだった。


「そう。俺だけ」
「こんな時間まで練習って、珍しいじゃないか」
「そろそろ帰ってくる頃かと思ってさ」


平然とした態度にやや拍子抜けしたが、それが自分のことを指していると分かり、ヨンファは何とも言えない気持ちになった。
一体いつからここにいるのだろう。
今日だけなのか。それとも、昨日もここで練習していたのか。
その表情からは窺い知れないが、きっとすごく心配してくれていたに違いない。


自然と心の中に温かいものが流れてきて、それ以上何も話せなくなる。
長年の付き合いから、言葉にしなくても分かり合えるから、敢えて無粋な詮索はしなかった。
長い指から繰り出される深みのある音色は静まり返った部屋の空気を震わせ、聴いていると心が安らぐ。


骨張った指は弦をしっかり押さえ、演奏に集中している時のジョンシンはひどく真剣な顔をしている。
ギターに比べると派手さはないが、重低音ならではの渋さがあり、バンド全体のリズムを支えている影の立役者とも言えた。


ヨンファはジョンシンの傍らに行くと、男の幅の広い太腿を枕にして、長椅子の上で仰向けに寝転がる。
硬さがちょうど良くて、ここはヨンファにとってお気に入りの場所なのだ。


「リフレッシュできた?」
「ん……そこそこ…な」
「そうか」
「……なんか疲れた……」


ずっと仕事をしているジョンシンの前で、何もしていなかった自分がこういう台詞を吐くのもどうかと思ったが、つい口を滑らせてしまった。


瞳を閉じると、愛おしい温もりとベースの音が心地よくて、気持ちが穏やかになる。
ようやく自分の家に帰ってきたような、不思議な感覚に包まれた。
うっとりと音色に聴き惚れていると、次第に睡魔が襲ってきて、頭がぼんやりする。
身体はずるずると力を失い、そこでブラックアウトになった。


――ふっと意識が浮上した時には、ベースの音は完全に鳴り止んでいた。
時間にすればほんの僅かだと思われるが、いつの間にか寝てしまったらしい。
少し伸びた前髪をそっと梳いてくる手の感触があり、それが誰のものか即座に分かる。
安心感に満たされたのか、ヨンファの唇からほうっと自然と息が零れ落ちた。


すぐ近くに気配を感じて瞼を開けると、吐息が触れそうなほどの至近距離にジョンシンの顔がある。何か物言いたげに真上から覗き込まれて、心臓がトクンと大きく脈打った。
かなり久しぶりに真っ向から重なった視線に狼狽えてしまい、時間が止まってしまったかのような静寂が訪れる。
しばし無言のまま見つめ合っていたが、沈黙に耐えきれなくなり、ヨンファが先に口を開いた。


「お前の料理が無性に食いたかった」
「……なんだよ。料理だけか?」


久々の再会なのに色気も何もなくて、挨拶すらろくに交わさず、お互いに軽口を叩き合ってしまう。


「また帰ってこれて良かった……」
「当たり前だろ。戻って来ないでどうする気だよ」


少し怒ったような口調に、ヨンファは胸の奥が熱くなるのを感じて、ポーカーフェイスを保てなくなった。
ずっと抑えていた言葉にならない想いが込み上げてきて、瞳から溢れ出そうになる。
それに気づいたジョンシンが軽く目を見開いた。


「……すごく会いたかったよ」


ヨンファがようやく素直に気持ちを吐露すると、いっぱいまで膨らんで視界を揺らしていたものが弾けて零れ落ちる。
ジョンシンは切なげに目を細めると、涙の痕を温かい指先でそっと拭った。
その仕草に、再び瞳が潤んできそうになる。


ジョンシンが身を屈め、ゆっくりと唇を合わせてきた。
約一ヶ月ぶりに重なった体温にヨンファは息が上がり、眩暈がする。
大切なものにキスするように優しく触れてきて、何度か啄んでから離れた。


年下の男の懐かしい香りが鼻腔を掠める。
たまらなくなってヨンファは起き上がると、恋人の身体にギュッとしがみついた。
すぐさま掻き抱くように長い腕に閉じ込められて、ヨンファは胸がいっぱいになる。


ただでさえ不安な日々が、ジョンシンに会えないことでより一層心細くなっていた。
気が狂うかと思うほど、顔が見たくて声が聞きたくて、このことがきっかけで別れることになるんじゃないかと怖くてたまらなかった。


「俺も会いたかった。何度、釜山に行こうと思ったことか。――おかえり、ヨンファ」
「ただいま……」


話したいことはたくさんあるのに、感極まって言葉が出てこない。
この想いを少しでも伝えられればと、ヨンファは広い背中を抱き締める両腕に力を込めた。


またここに戻ってくることができて、本当に良かった。
自分の居場所は、練習生の時からここにしかないのだ。
こんなにも長く離れていて、当たり前だった生活がどんなに愛しくてかけがえのないものだったのかを痛感した。


優しいキスは瞼やこめかみに落とされ、再び唇に戻ってくる。
久しぶりで遠慮がちだった口づけは、いつしか激しく奪うようなものに変わっていった。


「ん……っ」


当然のように忍び込んできたジョンシンに舌を絡めとられ、探るように蹂躙されると、ヨンファは懸命に応えながら男の背中に縋りついた。


「このあと、自宅に帰るんだろ?」
「いや、シンバにも会いたいから、お前ん家に行く」
「じゃあ、一緒に帰ろう」


温かい眼差しの中に見えるジョンシンの溢れんばかりの想いが、痛いほど伝わってくる。
ヨンファがはにかみながら微笑むと、ジョンシンはふっと口許に笑みを浮かべた。
その顔を見て、ヨンファは心から幸せだと思った。


たとえ何があっても、自分には帰ってくるところがあり、待っていてくれる人がいる。
それが思わぬ力を生み出す原動力となっていて、踏ん張ろうという気を起こさせるのだ。


突如、真っ暗な密室にひとりだけ閉じ込められたような閉塞感の中で、このひと月は思い悩み、ひたすらもがき苦しんでいた。
それがまるで嘘みたいに、晴れ晴れとした気持ちになっている。
時には見守り、困った時には支えてくれる最愛の相手のお陰だった。


再始動に向けて、やらなければいけないことは山ほどある。
今まで何度も四人で困難を乗り越えてきたのだから、今回も大丈夫だろうという確信はあった。
周りの人たちへの感謝の気持ちを忘れずに、また心を一新して、自分の信じる道を前に向いて進むしかない。


そばにいてくれるかけがえのない存在と、同志のようなメンバーや事務所の仲間、スタッフたち、そして、ファンのためにも。


ヨンファは新たな決意を胸に秘め、静かに心の中で祈った。





End





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2016/07/19 (Tue) 10:42

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2016/07/19 (Tue) 20:03

haru

m****さん

こんばんは♡はじめまして♪
読んで下さり、コメントまでどうもありがとうございました(〃ω〃)

なるほど!そういう噂があるんですね♡
シンヨンの動画を観ていて即席で思いついた話なので、そう言っていただけて嬉しいです♪
ヨンにはいつも元気で幸せであってほしいと思います。
早くその姿を見たいですね(*´ω`*)

2016/07/19 (Tue) 22:04

haru

こ*****さん

こんばんは♪どうもありがとうございます♡♡
急に思いついた話なので、そう言っていただけて本当に嬉しいです(>ω<)
いろいろと心配や不安もありますが、ヨンが復活するのを信じて待ちましょう♪

2016/07/19 (Tue) 22:13

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2016/07/23 (Sat) 19:11

haru

は*さん

またまたコメントをありがとうございます(〃ω〃)
あの、お尋ねするんですが、は*さんはツイで私のフォロワーさんでいらっしゃいますか?
もしかして!と思ったんですが、違っていたらごめんなさいm(__)m

毎日、ヨンのことが本当に気になりますね。
数日前、車のそばにいるヨンの写真がアップされていて、久々に元気な姿が見れて嬉しくなりました♡
ヨンには笑顔で、常に幸せでいてほしいなと願っています。
釜山ズとシンヨンの両CPで書くのでややこしいですが、この話は当事者のバニは控えた方がいいと思い、シンヨンで書きました。
お散歩写真、ヨンが撮っていたら最高ですよね♪私の腐脳はそうとしか思えないです(笑)

2016/07/24 (Sun) 02:51