CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 18

2016年06月04日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 6
1 (1)





その人目を引く容姿を視界に捉えた瞬間、ヨンファの身体に緊張が走った。


「ドンゴン……」


ヨンファがその名を呟くと、黒い集団の中からひとりの男が優雅な物腰で前に進み出てくる。
懐かしいものでも見るかのように目を眇めながらこちらに近づいてくると、ドンゴンはスッと頭を下げた。


「ご無沙汰しております、若」
「久しぶりだな。変わりはないか?」
「この通りです。他の者から聞いておりましたが、大層ご立派になられて驚きました」
「歳をとっただけとも言えるがな」
「……謙遜されるほどの大人になられたんですね」


感慨深そうに見つめられて、その漆黒の瞳に懐かしさを感じた。
二度ほど実家に戻った際に男の姿はなかったため、顔を合わせるのはヨンファが屋敷を出て以来、六年ぶりになる。
中高生の多感な思春期の真っ只中の時、ヨンファは父親を毛嫌いしていたこともあり、ドンゴンには実の弟のように可愛がってもらった。
偉丈夫な上に頭も切れ、ヨンファにとっては憧れにも似た存在だったかもしれない。


恵まれた体躯をダークグレーのチョークストライプスーツに包み、相変わらず立ち居振る舞いにはまったく隙がない。
低く響く声は昔と同じだが、ドンゴンの挨拶に奇妙な重苦しさが感じられた。
喋り方も今までとどこか違う。
何かあるのではと、ヨンファは警戒せずにはいられなかった。


年齢はヨンファより九つ年上で、ジョンヒョンと同じくらい上背があり、がっしりとした身体つきをしている。
威圧感に満ちた空気を放ち、組に入った当初から格段に目立っていた。
やや目尻が下がった甘いマスクをしていて、昔と違うのは髪を伸ばし、うっすらと髭を生やしているところだろうか。


「では、私はこれにて」


悠然とした足取りでそのまま前を通ろうとしたドンゴンを、ヨンファが呼び止める。


「待て。話がある」
「説得しようとしても無駄ですよ。何を言われても、考えを変えるつもりは毛頭ありません」
「即答だな」
「はい」


小気味いいほどの返しは、見事としか言いようがない。
ヨンファが何のためにここに来たのか、すべてお見通しらしい。
その場にいる全員の視線が注がれる中、ドンゴンを真っすぐに見据えて口を開く。


「せっかく久しぶりに再会したんだから、思い出話に花を咲かせようと思ってな」
「面白いことをおっしゃる。若もそこまで暇ではないでしょう?」


ドンゴンの口調は取りつく島もなかった。
こんなに頑固な男だっただろうか。
余裕のある態度は、どこかこのやり取りを楽しんですらいるように思える。
廊下でドンゴンと対峙していると、ピリピリとした雰囲気が漂い始め、周囲は固唾を呑んで成り行きを見守っていた。


「そもそも屋敷を出て、組とは関係のない若がなぜ首を突っ込まれるんですか?」
「筋違いだというのはよく分かっている。それでも、俺はお前たちを身内同然だと思っているから、どうしても見過ごすことができない」
「こればかりは、いくら若の言うことでも聞けません」


信頼していた男に裏切られた気分で、ヨンファは拳を握り締めた。
なるほど。確かに一筋縄ではいかないなと、ヨンファは心の中で深く溜息をつく。
思わず天を仰ぎたくなったが、無収穫で帰るようではここに来た意味がない。


「昔はもっと考えに柔軟性があると思っていたが、歳をとった分、頭の中身まで固くなってしまったのか?」


切り口を変えて意図的に煽り立てるようなことを言ってみるが、ドンゴンは気分を害した様子もなく、口許に微かな笑みさえ浮かべている。


「組のことに口を出すということは、それ相応の覚悟があるということですよね?」


一瞬にして、その場の空気が凍りついた。
その台詞には、組長の息子に対しても反旗を翻す意味合いを含んでいる。
勢いよく前に出てきたジョンシンを、隣にいたジョンヒョンが止めている姿が視界に入った。
ふたりは口を一文字に結んだまま激しい怒気を迸らせており、今にも身を乗り出すような気配が立ち上っている。


それを冷静に客観視しながら、ヨンファは妙な違和感に襲われた。
どこかがおかしい。
こんなに話の分からない相手ではなかった。
昔ながらの古い考えにとらわれて、引っ込みがつかないのだろうかと訝しむ。
しかし、そこまで愚かな男ではないはずだ。


「若……」


ドンゴンがいきなりヨンファの肩に触れ、耳許に唇を近づける。
その途端、傍観していた組員たちがいきり立ち、空気がざわめく。
まるでわざと見せつけて、周りを挑発しているようにも感じられた。


「ここではなんですから、こちらへ」


小声で囁くように言われ、ヨンファはジョンヒョンとジョンシンに「動くな」と目で制す。
泰然と構えている男の行動が何を意味するのかよく分からないが、まだ話をする気はあるようだ。
ドンゴンはそれ以上何も言わずに歩を進め、応接室らしき部屋のドアを開ける。
ヨンファは促されるままそのあとに続き、背中にジョンヒョンたちの視線を感じながら中へと入った。


広々とした応接室は優に二十人は座れると思うほど、長ソファーが連なっている。
テーブルを挟んで向かい合うように腰を下ろすと、すかさずヨンファから口火を切った。


「お前と同じ志を持った組員は何人いる?」
「十数人います」


ヨンファが予想していたよりも多い人数を告げられる。
一線から退いたと言えど、ドンゴンを慕っている者はやはり多い。
それは、この男がそれだけカリスマ性を備えているということに他ならない。とすれば、報復措置を取ることに共感できる動機づけが必ずあるはずだ。


真っ直ぐに向けてくるドンゴンの深い闇色の瞳の奥に、仄暗いものが見え隠れしている。
底知れず、何を考えているのか読めない。


「お前の組を思う気持ちは有難いと思っているが、報復措置なんか取るべきじゃない」
「あれだけ舐めた真似をされて、黙っていろと?今の青龍組は温すぎます」
「仕返しをすれば、また奴らは動いてくる。これじゃ、何の解決にもならない。警察による取り締まりは年々厳しくなり、不法なことはできないだろう。極道とはいえ、まっとうなことをしないと、この先、生き残れないぞ」


ヨンファの言葉に、ドンゴンは少しも動じなかった。
その代わり険しい表情をしている。


「お前だって本当は分かっているはずだ。もし奴らが本気でうちを潰すつもりなら、親父の太腿ではなく頭を狙ったはずだ。向こうの目的はこちらを混乱させて報復するように仕向けること。当然、内部分裂も視野に入れているだろう。そうすれば、他の組織に対しても大義ができる。遠慮することなくうちを叩いて、シマを掻っ攫えるんだからな」


男は無言のまま濁った昏い目をしていた。
そこに絶望と悲しみが滲んでいることに、ヨンファは目を瞠る。


「ドンゴン、どうしてだ?……なぜ、こんなことに……」


絞り出すようなヨンファの声に、ドンゴンはようやく重い口を開いた。


「三年前、怪我を負った時に親父さんに除名を願い出ましたが、聞き入れてもらえませんでした。お世話になりっぱなしなのに、何も返せてないんです。この私の惨めな気持ちが若に理解できますか?」
「……………」
「子は親のために何かしたいものです。そうでないと、私の存在意義はない。役職からも外れ、今では組にとってただのお荷物に成り下がってしまった……」


常に冷静であまり感情を表に出さない男だったが、内に秘めていた想いを初めて知らされた。
ドンゴンの右腕が小刻みに震えている。
それは怒りや悲しみから生じたものではなく、大怪我による麻痺だ。
障害が残っているとは聞いていたが、実際に目にして、ヨンファはたとえようのないほどの衝撃を受けていた。


「若だって分かっているはずです。役立たずは一刻も早く切り捨てた方がいいと」
「俺はそんな風に思ったことはないぞ。……ドンゴン……お前、まさか……っ」


ドンゴンの顔を見つめながら、ヨンファは息を詰める。
間違いない。自分の命と引き換えに、最後に大義を貫こうとしている。
ヨンファにはようやくドンゴンが報復措置を取ろうとした意味と、長年の苦しみが分かった気がした。


「死ぬつもりなのか?そんなこと、俺は許さないぞ!」


身を乗り出して激高するヨンファに対しドンゴンは何も言わなかったが、どこか痛むかのように男の顔が歪む。
それが事実であることを物語っていて、言い知れぬ息苦しさを覚える。


「……若には関係のないことでしょう」
「関係なくはないっ。他の組員たちも巻き添えにする気かっ!」
「今すぐお帰り下さい。これ以上、組のことに首を突っ込まないでもらいたい!」


ドンゴンが一際強い声を出したが、ヨンファはまったく怯むことはなかった。
この男もジョンヒョンと同じだ。
組のことを念頭に置いて、いつでも命をなげうつ気でいる。
生き急ごうとする極道の男たちの生き様が、ヨンファにはただ哀しく思えて仕方がなかった。


「ドンゴン、今、俺には関係ないと言ったな。じゃあ、関係を作れば、俺の言うことに従うのか?」
「何を…言っているんですか……?」
「俺が跡目を継げば、聞く耳を持つか?それなら、関係ないとは言えないよな」


あからさまに眉を顰めたドンゴンが苛立ちを隠しもせず、強い視線を向けてくる。


「何をご冗談を……」
「冗談なんかじゃない。第一継承権は俺にある」
「医者の仕事はどうするんですか」
「やめるだけの話だ」
「………っ。正気ですか?」
「ああ」
「あんなに組を憎んでいたじゃないですか……っ」


押し殺したような悲痛な声を出すドンゴンの顔が、ひどく苦し気に見えた。


「そうだな…。つい二ヶ月前まではな。しかし、蛙の子は所詮、蛙だ。お前が医者風情の言うことに耳を傾けないんだから、仕方がない」
「……本気…なんですか?」
「しつこい。俺の気性はお前もよく知っているだろう?」


呆然とした顔つきの男に、ヨンファはもはや一歩も引けなかった。
ドンゴンが本気なら、こちらもその覚悟で対峙しないと、話は平行線を辿るだけだ。


「親父には俺から話す。邪魔したな」


ヨンファはドンゴンの視線を振り切るように立ち上がってドアを開けると、黒山の人だかりができていて、皆が複雑そうな表情を浮かべていた。
どうやら中の会話が筒抜けだったらしい。
ハンやグンソク、ホンギの姿まである。


「若……今の話は……」
「聞いたとおりだ。ハン、今すぐ親父に連絡が取れるか?」
「はい……それは可能ですが……」


気後れしているハンに、ヨンファは強い口調で言い放った。


「じゃあ、電話をかけて伝えろ。俺が次期組長になるとな」





To be continued





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/06/04 (Sat) 05:32

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/06/04 (Sat) 08:12

haru

t*******さん

完全に自分の趣味に走りまくっております♡
私は結構楽しかったりするんですが、読まれている皆さんを置いてけぼりにしてたらごめんなさい!

毎回その都度話を考えてるように思われるかもしれませんが、ラストまで決めている話の途中なんです(´・ω・`;)
どうかな。今、半分くらいきたのかな?

2016/06/04 (Sat) 16:21

haru

は*さん

こちらこそ、いつもありがとうございます♡♡

あっちこっちと横道に逸れまくってごめんなさい(´・ω・`;)
一応全部繋げているつもりなのですが、キャラを出しすぎて収拾がつくのかなと内心大汗タラタラだったりします。
でも、時間をかけてでも何とか全部拾っていきますね♪

頭の中ではだいたいラストまで考えているので、萌えシーンを文字でどれだけ表現できるか、挑戦してみたいと思います♡

2016/06/04 (Sat) 16:34

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/06/05 (Sun) 17:39

haru

釜***さん

こんばんは。はじめまして♪

拙い話ですが、読んで下さり、どうもありがとうございます♡♡
とても温かいコメントをいただき、心より感謝しますm(__)m

極道パロということで、当初はかなり冷や汗もので「大丈夫かな?受け入れてもらえるかな?」と不安でしたが、ようやく最近楽しみながら書けるようになりました。
釜***さんにそうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです♡

釜山ズ、いいですよね♪私もすっかり虜になってしまいました(〃・ω・〃)
公にはしていませんが、6月22日に合わせて、今書いている話があります。
シンヨンとは時間をずらしますが、何とか当日中に間に合うようにしたいです。

遅筆なものでお待たせしてしまいますが、釜山ズで書きたい話はまだまだありますので、少しずつ形にしていきたいと思います。
今後ともどうぞ宜しくお願いします♪

2016/06/05 (Sun) 21:51