CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 11

2016年04月21日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 2






携帯電話が鳴る音を聞いた気がして瞼を開けると、ヨンファは閑散とした寝室のベッドに一人で横になっていた。
そばにいたはずのジョンヒョンの姿はない。
どうやら意識を失っていたらしい。


シーツに投げ出されていた腕を見て、自分が何も身に纏っていない状態だったことに、一連の出来事が走馬灯のように蘇る。
全身に気怠さを感じ、身じろぐと引き攣れたような鈍痛が走った。


眉間に皺を寄せてゆっくりと身体を起こすと、上に掛けられていたタオルケットが滑り落ちて、上半身が露わになる。
肌の至るところに赤い刻印がつけられているのを見て、ヨンファは一瞬言葉を失ってしまった。
ジョンヒョンの唇や指先が何度も触れてきて、追い詰められたことを鮮明に思い出し、再び身体の芯に熱が灯りそうになる。


不意に隣のリビングから当の本人の声が漏れ聞こえてきて、電話で誰かと話をしている気配がした。まだ帰っていないことが分かり、心なしか安堵する。


デスクに置かれた時計を見ると、午後九時を過ぎた時刻を指していた。
雨音が聞こえ外に目をやると、雨が窓を叩いている。
いつから降っているのだろう。まったく気がつかなかった。


屋敷からここまで車で送ってもらい、ジョンヒョンの傷の手当てをしたあとで、そういう流れになって抱き合ってしまった。
長年想い続けていた相手と身体を繋げたことに、多少の気恥ずかしさを感じるものの、ヨンファは満ち足りた気持ちになっていた。


ほんのりと耳を赤く染めて、照れ隠しに髪の毛を掻き上げていると、スラックスだけ穿いたジョンヒョンが携帯電話や上着を手に戻ってきた。
ヨンファが起きていることに気づくと、目を眇めてこちらに近づいてくる。


澄んだ双眸でじっと見下ろされると、視線が真っ向からぶつかり、ヨンファは落ち着かない気分になった。
自分を見つめる瞳が優しい色を放っているのに、胸の奥がじんわりとする。


「身体は……?」


ジョンヒョンはベッドに腰かけると、ヨンファの頬に落ちていた髪を掻き上げ、そっと撫でてきた。その指先は慈しんでいるように優しくて、身動きができなくなる。
あまりにも気持ちが良くて、ヨンファは隣の温もりに凭れるように身を寄せて、じっとしていた。


「ん……怠い……」


声を発した途端、掠れているのに気づき、その原因に思い当たると、知らず知らずのうちに頬が熱くなる。
ジョンヒョンは穏やかな表情でヨンファの髪の感触を楽しむと、耳や頬にも触れてきた。
擽ったさに思わず首を竦めると、唇を指先でなぞられる。
まるで恋人にするような何気ない仕草に、ヨンファは胸がいっぱいになった。


誰かと最後に身体を重ねたのはいつだったか。
それすら思い出せないほど特定の相手がいなかったヨンファにとって、久しぶりの逢瀬の相手がジョンヒョンだったことは、今もまだ夢を見ているような感覚で、実感が湧かなかった。


一生触れられないと思っていた最愛の人と交わり合い、自分のそばにいてくれることが、こんなにも幸せなものだとは知らなかった。
ジョンヒョンに対する想いを自覚して以来、ヨンファは言いたいことも言えず、相手の気持ちを聞くことさえできず、ないものとして諦めていた。


それが、前触れもなくこんな形で叶ってしまうとは、誰が想像しただろうか。
ジョンヒョンと出会ってからこれまでのことに想いを馳せ、ヨンファが心から満たされていたその時――。


「どこか痛いところはありますか?」


ドクンッと心臓が音を立てるのを聞いた。
――ジョンヒョンの言葉遣いが、求め合う前の敬語に戻っている。


一気に現実へと引き戻されて、それまで二人を包み込んでいた甘い雰囲気が、潮が引くように失われていく気がした。


「無茶をして、すみません」


ジョンヒョンは申し訳なさそうに、眉間に苦悶を滲ませて謝る。
何故、情交の時の口調ではないのだろうか。
一線を引かれていると受け取れる態度が、もう夢は終わったのだと告げられているようで、ヨンファは全身の体温が一気に下がるのを感じた。


「……いい。俺も望んでいたんだから」


感傷的になっていることを悟られたくなくて、どうにか笑って見せた。
急に鉛を詰め込まれたように身体が重く感じて、溜息にも似た吐息を零し、ヨンファは長い睫毛を伏せる。
沈黙が落ちて、絶え間なく聞こえてくる雨音ばかりが耳についた。


「……顔色がよくないですね」
「別に女じゃないんだから、いちいち心配しなくていい」


もう甘いムードに浸っている場合ではない。
一刻も早くジョンヒョンを帰らすべきではないのか。
ヨンファの心臓が、激しく音を立てていた。


身体の負担が大きいヨンファを心配そうに眺めると、宥めるように伸びてきた指に顎を捕らえられ、ジョンヒョンの顔が近づいてくる。
キスをされるのだと分かり、ヨンファは反射的に顔を背けていた。
まさか拒絶されるとは思っていなかったのだろう。
ジョンヒョンは驚愕の色を浮かべ、無言でヨンファを見返した。


「あ……早く帰らないといけないんだろう?」


努めて明るい声で取り繕って、敢えて時間がないことを口にすると、ジョンヒョンは「はい…」と言いながら徐にベッドから立ち上がった。
ヨンファに背中を向けて、新品のワイシャツを袋から取り出す。
寝室が急に重苦しい空気に包まれた。


逞しい背中一面に彫られた見事な刺青を見ていると、先程の熱い交わりを思い出し、何とも言えない気持ちになる。
想いが通じ合って嬉しいはずなのに、この身の内を巣食うような寂しさは何なのだろう。
身体の奥の疼痛は、確かに目の前の男と繋がったという唯一の証なのに、どうしてこんなに不安に苛まれるのだろうか。


ワイシャツに袖を通すジョンヒョンを、身を裂かれそうな思いで眺めながら、ヨンファは心の中の葛藤と闘っていた。


激情に流されるまま衝動的に抱き合ったことを、後悔はしていない。それだけは、はっきりと断言できる。
ただ、ジョンヒョンは一般の人間とは異なる。
背中の刺青を目にすると、自分とは住む世界が違うのだということを改めて思い知らされた。
その上、男同士という問題まであるから、決して許されるものではない。


本人は否定したが、組の繁栄のため、懇意にしている組織同士で婚姻することは決して珍しくない。
ジョンヒョンが断ったとしても、父親や南部洞組のイ組長がこんな願ってもない話を白紙に戻すとは到底考えられなかった。


本当は帰ってほしくない。
せめてもう少しだけ、そばにいてほしかった。
でも、そんなことは言えるはずもなく、未練がましさを振り切って、ヨンファは平気な態度を貫くしかなかった。
こうなることは分かっていたはずだと、自分に言い聞かせながら。


「ワイシャツは、クリーニングに出してからお返しします」


若干サイズが違うが、着終わった男がこちらを向いて言う。
ネクタイは上着のポケットにしまい、締めるつもりがないようだ。


「いや、俺はそんなに着る機会がないから、捨ててくれていい」
「そういうわけには……」
「高いものじゃないから、何てことはない」


ヨンファが首を横に振ると、ジョンヒョンは怪訝そうに眉を上げた。
それを静かに見返し、ヨンファはタオルケットを手繰り寄せる。


また会えば、今以上に別れがもっと辛くなる。
何も期待しないし、約束もいらないと偉そうに宣言したのに、このザマだ。
寝た子を起こしたように、ジョンヒョンに触れてしまったことで欲求は際限なく膨れ上がり、歯止めが利かない可能性があった。
そのため、ヨンファは自らそうなり得る原因を排除しようとした。


自分が自分でなくなるような恐怖感と、ジョンヒョンのすべてが欲しいのに、手に入れられないもどかしさ。
虚勢を張っても仕方がないが、自分にはこういう生き方しかできない。
だからこれでいいのだと、ヨンファは無理矢理自分を納得させた。


その時、ジョンヒョンの携帯電話が鳴った。
画面の表示を見て、「すみません」と言い置いてから、電話に出る。


「……ああ、すまない。立て込んでいたから出られなかった。いや、無事だ。……分かった。そう伝えておいてくれ。もうじき戻る」


話しぶりから、相手は組の者に違いない。
若頭補佐として多忙なジョンヒョンが、男の家でこんなことをしている場合ではなかった。
ましてや、チルソン組の襲撃に遭ったばかりだというのに、ベッドに引きずり込んでしまったことに罪の意識を感じる。
通話が終わったと同時に、ヨンファは口を開いた。


「組員たちが待っているんだろう?早く帰った方がいい」
「……では、また明日の朝――」
「せっかくだが、もう車での送迎は不要だ」


ジョンヒョンの台詞が予想できたので、遮るように皆まで言わせなかった。


「何を言って……」
「こんなことにいちいち時間を割くことはない。もっと自分の置かれている立場を自覚しろよ。俺のことはいいから、今は組のことだけを考えろ」


眦の上がった目を僅かに瞠ったジョンヒョンに、ヨンファは真剣な顔で言い募った。


「また襲われたらどうするんですか?」
「その時は、その時だ。この件は親父も了承済みだ。お前には若頭補佐として、もっとすべきことがあるだろう」


再び畳みかけるように言うと、ジョンヒョンが険しい表情を浮かべた。
しばらくこちらを見て逡巡していたが、ヨンファが一度言い出したら考えを撤回しない性格なのを熟知していて、代替案を出してくる。


「じゃあ、他の者を……」
「それもいい。自分のことは自分で何とかする」


執拗に食い下がってくるジョンヒョンを一蹴した。
ヨンファの様子に異変を感じたのか、もの問いたげに表情を変えたジョンヒョンを真っ直ぐに見上げて、辛うじて笑みを浮かべた。


「大丈夫だから、心配するな」


ジョンヒョンは目を細め、何かを言いたそうにこちらをじっと見つめていたが、必死に訴えるヨンファの心情を察したらしく、痛ましげに眉を顰めた。
精悍な顔を途方に暮れたように歪ませたことに、ヨンファの胸の奥がじくりと痛んだ。


「……ヨンファ」
「早く行け」


息苦しさに耐えかねてそう言うと、ジョンヒョンはどこか迷っているようだったが、上着を片手に「それじゃ…」と言って背を向けた。
その後ろ姿に、ものすごい喪失感が襲ってきて、ヨンファはたまらず声をかける。


「ヒョニ!」


愛しい男が、ゆっくりとこちらを振り向く。
ヨンファは身体が震えそうになるのを気づかれないように奥歯を噛み締め、必死にこらえた。


「親父と皆のことを頼む」
「……はい」


しばらくそのまま見つめ合い、ジョンヒョンは言葉少なに、その場を立ち去った。
広い背中が見えなくなっても、ヨンファはそこから視線を外すことができなかった。
玄関のドアが閉まる音がして、完全にジョンヒョンの気配がなくなると、途端に寝室は静寂に包まれる。
まるで時間が止まったかのようだ。


身体が辛くて再びベッドに横になり、ヨンファがシーツに頬をつけると、そこには移り香が染みついていた。
それが男の愛用しているブルガリのプールオムだと認識した瞬間、胸の奥から熱い感情が込み上げてくる。
噛み締めた唇が、ヒリつくように痛かった。


シーツに頬をすり寄せて瞳を閉じると、まるでジョンヒョンに抱き締められているような錯覚に陥る。
ひどく心地よくて、そして切なくて、ヨンファはしばらくその場から動くことができずにいた。


残されたのは、身体を覆う倦怠感と疼痛だけだった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(2)

There are no comments yet.

hoshi

どうしよう、どうしよう・・・。

本当に背負うモノ、ジョンヒョンは大きいしヨンファはそれが全部わかってしまっているから・・・。
ホントに、言葉に上手くできない自分が嫌になりますが。

重なった想い。
身体だけじゃなく心も一つになれたのに。

ドキドキしながら続きお待ちしますね。
運命もサダメも何もかも・・・。

簡単に消去できないだろうけれど・・・。

お話をありがとうございました、お利口に続きもお待ちします♡

2016/04/21 (Thu) 22:53

haru

hoshiさん

こんにちは♡♡
ありがとうございます(〃∇〃)

幹部で背中に刺青を彫っているから、なかなかすんなりとは・・・ですね。
障害があればあるほど私は俄然萌えるので、こういった過程は書いていて楽しいです♡
亀の歩みですが、いろいろかき集めて形にできればと思っています。

最近、ヨンママの影響で釜山ズを書く喜びを知りましたが、反動でシンヨンを書きたくなりました。
ああ、ジョンシン♡♡

2016/04/22 (Fri) 12:52