CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 6

2016年03月31日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 4






父親は小一時間ほどで、お供の組員と一緒に屋敷に戻ってきた。
予想はしていたが、松葉杖をついてかなりゆっくりとした足取りで歩いている。
中庭に出ていたヨンファに気づくと、貫録のある表情を緩ませて近づいてきた。


「よく来たな」


以前会った時よりも体重が戻ったように見受けられ、顔色もかなりいい。


「元気そうで安心したよ。術後の経過も良さそうだね」


ヨンファが声をかけると、穏やかな微笑みを浮かべる。


「定期的にリハビリに通っているからな。もうじき杖なしでも歩けると、主治医にお墨付きをもらったばかりだ」
「それは良かった」


話をしながら屋敷の中に入り、父親の脚に負担がかからないように、ゆったりとしたソファーのある応接間で向かい合って座った。


「お前が帰ってくると、皆が喜ぶな」
「どうだか分からないけど、いろいろよくしてもらってるよ」
「仕事は忙しいのか?この前も思ったが、あまり顔色がよくないな」
「年がら年中睡眠不足でね。明日も仕事だから、もうじき帰るよ」


父親は心配そうに若干眉間に皺を寄せたが、多少は人の役に立っている息子を誇りに思ってくれているのか、納得したような表情で温かく見つめられる。


「ジョンヒョンがお前の身を案じて、いろいろと世話を焼いているようだな」
「もう必要ないって言ってるのに、お節介すぎるんだ。親父からやめるように話してくれないかな?」
「一度、仕事帰りに襲われたと聞いたが、あれから何もないのか?」
「危険な目には遭っていないよ」
「そうか。話してもいいが、納得しないかもしれんぞ。アレはお前のことになると、人が変わったようになる。この屋敷を出たあとも、ずっとお前のことを気にかけていたようだからな」


父親から意外なことを言われ、ヨンファは目を大きく見開いた。


―――ヒョニが俺のことを……?


しかしそうは言っても、ヨンファが屋敷に住んでいた頃はすでにジョンヒョンとはほとんど会話はなく、どこか余所余所しくて他人行儀な態度をとられていた。
だから、俄かには信じられなかった。


「まぁ、アレも補佐という立場で忙しい身であるとは言え、そろそろ落ち着いてもらわないといけないとは思っているんだが……」


意味がよく分からず、ヨンファは父親の顔を見返した。


「南部洞組の組長のお嬢さんとの縁談があるんだ」
「縁…談……?」


父親の台詞に、頭の中が真っ白になった。


―――ヒョニが結婚だなんて、そんな……。


突然目の前に降ってきた事実に、ヨンファは頭を鈍器で殴られたほどの衝撃を受け、内心かなり混乱する。
しかも、その相手をヨンファはよく知っていた。


「それは、ミナのこと?」
「そうだが、そういえばお前は息子さんと仲が良かったな」
「今はなかなか会うことはないけど、高校の時からの親友なんだ」


南部洞組のイ組長の長男、イ・ホンギとは同じ高校の同級生で大親友でもある。
極道の息子という共通点があり、歯に衣着せぬ物言いで裏表がなく、ヨンファとは出会った時から馬が合った。


しかし、卒業と同時に道を違えた自分たちは、お互いに多忙ということもあり、今は年に一度会うか会わないかの仲になっている。
そして、ミナはホンギの妹にあたる。


「お前ももうじき三十になる。誰かいい人はいないのか?そろそろ身を固めることを考えた方がいい。男は結婚して家庭を持って初めて、一人前と認められるものだからな」


医学部時代の同期の半数はすでに妻帯者で、中には子供のいる家庭も少なくはない。
父親とは距離を置いていたため話していなかったが、実際にヨンファも職場のベテラン医師から何度か見合い話を持ちかけられて、その都度断っていた。


男として家庭を持つべき年齢に差しかかり、ジョンヒョンや自分にこういった話が出ても何ら不思議はない。
ヨンファは胸の奥が軋むような痛みに、デニムの上に置いていた右手を強く握り締めた。


「そう…だね」


自分の声が、どこか遠くから聞こえるような錯覚に陥る。


「正式に決まったら報告するが、お前は式には出席しない方がいいかもしれんな」
「どうして?」
「付き合いのある組織の組長や幹部を招くとなると都合が悪い。跡目を継ぐつもりのないお前とは親子の縁を切っていると思われているからな」


それは、ヨンファにとっては願ったり叶ったりだった。
そんなものは頼まれたって出たくはない。
ジョンヒョンが隣に寄り添う相手に微笑みを浮かべる姿など、絶対に見たくない。


胃の辺りに重苦しいものを感じていると、外から何かガラスのようなものが割れる音がした。
そして、突如表の方が騒がしくなり、嫌な予感がしてヨンファが立ち上がると、目の前に座っていた父親の顔色が変わった。


複数の怒号が聞こえ、組員たちが門の方へ駆け出している気配がする。
すると、ハンがいつになく真剣な顔で部屋に飛び込んできた。


「親父さん、中庭に火炎瓶が投げ込まれました。チルソン組の仕業の可能性がありますので、念のため地下室に行って下さい。若も」


この屋敷には襲撃された時のことを考え、地下にも部屋のある造りになっている。
普段はあまり使うことはなく、もっぱら貯蔵庫に物を出し入れするのに下りるくらいだが、こういう時には大いに役に立つ。


「俺は様子を見てくるから、親父だけ連れて行ってくれ」
「若、くれぐれも気をつけて下さい」
「ヨンファ、無理をするなよ」
「分かってる」


神妙な顔をして、ハンは父親とともに部屋をあとにした。
ヨンファは窓から庭に目をやると、再びガラスの割れる音がして、炎が一面に拡がる。


「親父さんが退院したことを知って、来やがったのかっ」


ヨンファが部屋から出ると、血相を変えた若い組員たちが長い廊下を走り中庭に飛び出していく姿が見えた。
同じように外に出てみると、あちらこちらで揉み合うような様子が窺える。


その時だった。
ドォーンという大きな爆発音が響いたと思った瞬間、突然身体に強い衝撃を感じた。
背後から誰かが伸し掛かってきて、ヨンファはもつれるようにして前のめりに地面に倒れ込む。


「………っ」


初め何が起こったのか、よく分からなかった。
呆然としながらも上から抑え込まれるように全身に重みを感じ、俯せのまま顔だけを上げると、周囲にはガラスや金属片が散乱している。


どうやら建物自体は無事のようだが、爆風で窓ガラスが吹き飛んでいた。
火炎瓶だけでなく、何か爆発物を投げ込まれたのは一目瞭然だった。
硝煙と血の混じったような臭いがしてヨンファが眉を顰めると、急にフッと身体が軽くなり、上に乗っかっていた誰かの気配がなくなる。


「兄貴っ、大丈夫ですかいっ」


屈強そうな若い舎弟が数人近づいてきて、その男を気遣っている。
そろそろと身を起こして、ヨンファは息を呑んだ。自分を守るように覆い被さっていたのはジョンシンだった。
いくつか会話を交わし、舎弟たちは表の方へと駆け出して行った。
周囲は複数の組員たちの慌ただしい声で物々しい雰囲気になっていて、そんな中、背中越しに声がかかる。


「……怪我は?」
「大丈夫だ……」


目の前に座り込んでいたジョンシンがこちらを向くと、こめかみから血が出ていた。


「お前……血が……」


よく見ると、両腕からも出血している。爆風で飛び散ったガラス片で負傷したのだ。


「掠っただけだから、どうってことねぇ。それより、ここは危険だから早く出た方がいい。
……悪りぃ。せっかくの綺麗な顔が汚れちまったな」


ジョンシンは指を伸ばし、ヨンファの頬に触れる。
どうやらジョンシンの血が、顔についてしまったらしい。
しかし、そんなことよりもジョンシンの方が心配だった。ガラス片が身体の内部に入り込んでいるかもしれないし、爆風で火傷を負っている可能性もあった。


「俺のことなんかどうでもいいっ。早く手当をしないと……っ」


思わず手を伸ばしかけると、身体を引いて躱される。


「……いらねぇよ」


ジョンシンは少し考えるような表情を見せたあと、それを振り切るように目を細めて立ち上がった。その言い方にはやはりヨンファを拒絶しているような響きが混じっていて、何故だか戸惑ってしまう。
ヨンファも立ち上がり、再び声をかけようとした時だった。


「ヨンファさんっ!」


必死の形相でジョンヒョンが走り寄ってきた。
その姿から、特に被害には遭っていないようでホッと胸を撫で下ろす。


「怪我はありませんか?」
「俺は平気だが、ジョンシナが俺を庇って負傷した……」


それを聞いて顔色の変わったジョンヒョンは、ジョンシンに近づいて怪我の具合を確かめている。
その様子を眺めていると、ハンが心配そうな顔で近づいてきた。


「若、ご無事で」
「ああ、ハンも」


父親も松葉杖をついて屋敷から出てきて、組員たちに声をかけながらヨンファの前にやってきた。


「ヨンファ、お前は早くここから出ろ。ジョンヒョン、送ってやってくれ」
「承知しました。ヨンファさん、行きましょう」
「ちょっ……親父、こんな大変な時に俺は帰りたくない」
「お前がいても足手纏いになるだけだ」


はっきりと言われ、ヨンファは苦く唇を噛む。
確かに自分にできることは何もない。
十分すぎるほどに分かってはいても、このままの状態で帰るのを躊躇していると、追い打ちをかけるように鋭い声が飛んできた。


「早くヒョニヒョンと行けよっ」
「ジョンシナ……」


服で隠れているところまでは分からないが、露出しているジョンシンの腕にはいくつもの傷ができ、血が固まってこびりついている。


「親父、ジョンシナに早くキム先生のところへ行くように言ってくれ」
「分かった。こっちのことは気にするな」


ヨンファは後ろ髪を引かれる思いだったが、仕方なしにそれに従い、ジョンヒョンに背中を庇うようにされて裏門から出て、駐車場へと走った。






緊迫した雰囲気の中、停めてあった黒いベンツに乗り込もうとホッとした瞬間だった。
他の車の影からヨンファを狙って、ナイフを持った男が突進してきた。


以前、マンションで襲われた時の男に間違いない。
無精髭を生やしていて、ヨンファほど上背はないが、体格はかなり勝っていた。
ものすごい勢いでナイフ振り下ろしてくるのに身を捻って避けると、脇腹を蹴り上げられてヨンファは地面に転がる。


「ヨンファさんっ」


運転席側から飛び出してきたジョンヒョンが、ヨンファの盾になるように前に立ち塞がった。


「貴様、よくも……」


今まで聞いたことのないほど怒りに満ちた低音に、痛みで動けなかったヨンファがようやく身体を起こす。
それは凄まじいほど鬼気迫る光景だった。全身から怒気を漲らせ、悪鬼のごとき形相をしている。こんなジョンヒョンは一度も見たことがなく、あまりの威圧感にヨンファは言葉を失った。


無精髭の男は敏捷性があるようで、的確にジョンヒョンを狙って何度もナイフを振りかざし、布地の裂けるような音がした。
それに気を良くした男が執拗にナイフを振り回すのを両手で止め、男の腕を捻り上げながらジョンヒョンが叫ぶ。


「早く車に乗って、中からロックして下さいっ」


大声に促されるようにヨンファは車に走り寄るが、二人の様子が気になって中に乗ることができない。
それに気づいて痺れを切らしたのか、ジョンヒョンの口から驚くべき声が迸った。


「ヨンファッ、早くしろっ!」


その台詞に、一瞬耳を疑った。
ヨンファが竦み上がるほどの怒声に、昔のように名前を呼び捨てにされて目を瞠る。
まるで昔に戻ったような感覚に、胸が甘く疼いた。


ジョンヒョンの足手纏いになることを察して車に乗り込みロックすると、ヨンファは外の様子を窺った。
もし万が一危険が及ぶようなことがあれば、すぐさま車から降りて加勢する心積もりはあったが、形勢は圧倒的にジョンヒョンに有利だった。


男に膝蹴りをすると、持っていたナイフが地面に落ちた。
それを拾おうとした男を蹴り上げ、顔面や身体に拳を浴びせる。
腹部を押さえて膝をついた男の首にジョンヒョンが手刀を打ち込むと、男は仰向けに倒れ、そのまま動かなくなった。


どのくらい時間が経ったのか、辺りは静かになっていた。
ヨンファが車から降りると、ジョンヒョンがこちらを向いて安堵したような顔をする。


「無事で良かった……」


目の前まで来るといきなり逞しい両腕に抱き締められ、ヨンファの身体が大きく揺れた。
突然のことに限界まで瞳が見開かれ、唇は震えて声が出ない。
腕の力は一向に緩まず、苦しいほどの力と一緒に熱が伝わり、ジョンヒョンの鼓動と息遣いがヨンファの中に染みてゆく。


自分の身を案じてくれただけで深い意味はないのだろうが、心の底から欲していた男の温もりを感じて、ヨンファは涙が出そうになった。
ジョンヒョンに身を任せたまま、少しずつ全身から力が抜けていくのを感じる。


時間にすると、僅か一、二分なのだろうか。
ヨンファにとっては永遠にも感じられる時間が、ジョンヒョンの声によって現実に引き戻された。


「マンションまで送りましょう」










敵を倒したあと、確かに二人の距離は縮まっていたはずなのに、車中ではずっとぎこちない空気が漂っている。
急に十年分の距離が、ヨンファに重く圧し掛かってきた。
それをたった二ヶ月で埋めることは、やはり不可能なのだろうか。


すっかり暗くなってきた夜の道を走りながら、だんだんとマンションに近づいていることに、ヨンファは寂寥感を覚えずにはいられなかった。
沈黙しているヨンファをどう思っているのか、ジョンヒョンも一言も発しない。


目の前にマンションが見えると、ジョンヒョンはスピードを緩め、いつもの如く大きな公園の道路に沿って停車した。


「着きました」


声に弾かれて咄嗟にシートベルトを外そうと手をかけたが、ヨンファはそのまま手を止める。
あとは一言挨拶をして、車から降りるだけだ。
分かっているのに、ヨンファの身体は動こうとしなかった。


―――こんな気持ちのまま帰りたくない。


チルソン組の襲撃で屋敷や組員たちのことが心配であると同時に、運転席の男が常に危険と隣り合わせの境遇なのだということを改めて認識し、ヨンファの心は沈みきっていた。


ジョンヒョンも何も言わないし、降りることを促したりもしない。
暗い密室の中に長い沈黙が流れ、聞こえるのは互いの息遣いだけだ。
その時、ヨンファは微かな異臭に気がついた。


―――これは……血の匂い…か……?


自分の想いにばかり囚われて、見過ごしていたことに今更ながら臍を噛む。


「ヒョニ、ちょっと見せろ」


車内灯をつけて目を凝らすと、濃紺の上着の右腕辺りが破れている。
ヨンファがその腕を掴むと、声は出さなかったが、一瞬歪んだ表情で分かった。
無精髭の男のナイフは布地だけでなく、中の肉体まで傷つけていたのだ。


「お前…怪我をしてたのか……」
「いえ……」
「何故早く言わないんだ!」


詰るように言うと、彫りの深い精悍な顔は眉を顰めて困ったような顔をする。


「診てやるから上がれ」


ジョンヒョンはヨンファの言葉に虚を衝かれ、大きく瞠目した。





To be continued





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(4)

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/03/31 (Thu) 02:59

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/03/31 (Thu) 05:52

haru

*さん

ありがとうございます(〃∇〃)
三角関係は大好物なんです♪ずっと書いていたいと思うほどに。
続き、頑張ります!

2016/03/31 (Thu) 12:21

haru

ま****さん

ありがとうございます(〃∇〃)
何とか上手くそれぞれの気持ちを表していけたらなと思っています♪
続き、頑張ります!

2016/03/31 (Thu) 12:28