CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

DESTINY 4

2016年03月08日
DESTINY 0






ヨンファはシャワーを全開にして勢いよくお湯を出すと、その中に身を晒した。
頭から激しく打たれながら、目を閉じ、じっとしていた。
身体中を這い回っていた手と唇の感触が少しずつ消え、うっすらと掻いていた汗も綺麗に洗い流されていく。
肌の火照りは収まりつつあるものの、内側の熱は未だに燻っているようだった。


夢の中の自分は、ひどく淫らで大胆だ。
ジョンシンの前で身体を開き、行為を強請り、何度も求め、快楽に溺れ堕ちていく。
同性とセックスをした経験すらないのに、何故あんなにも恍惚感に浸っているのか、自分でもよく分からない。
現実ではないといえ、自分の意志とは関係なしに、身体が勝手に暴走し始めて好き勝手している。


―――もしかして、これが俺の本当の願望なのだろうか……。


ヨンファの心は葛藤で揺れていた。
自分から望んでジョンシンを遠ざけたのに、いざ離れた途端、喪失感に見舞われている。
そして、ついにはジョンシンに抱かれる夢まで見る始末。
愚かで滑稽としか言いようがなかった。


ジョンシンは同じバンドのメンバーで、家族同然の大切な仲間なのだ。
この想いは絶対に知られてはならないし、醜い欲望に巻き込んでもいけない。
一刻も早く断ち切らなければ。
ヨンファは常に自分自身に対して、そう言い聞かせていた。


ピンポーン


バスルームから出て、幾分スッキリとした面持ちで身体を拭いていると、インターホンが鳴った。


―――早すぎる。もう来たのか?


エントランスのオートロックを解除しようと慌ててリビングに行くと、ドアホンの「玄関」の文字が点滅しているのに愕然とする。
解除しないと上階まであがってこれないはずなのに、エントランスで他の住人と居合わせて一緒に入ってきたのだろうか。


―――ジョンシナが扉一枚隔てたすぐそこにいる。


途端に、ヨンファの心臓が早鐘を打ち始めた。
すぐに出ないといけないのに、躊躇して身体が竦んでしまう。


……どうしよう。


しかし、これ以上待たせては悪いという気持ちの方が勝り、バスタオルを腰に巻いたままの姿でドアを開けた。


ジョンシンはヨンファを見て、驚愕の表情を浮かべた。


「悪い…。シャワー浴びてて……」


濡れた髪から滴が肌を伝って落ちているヨンファのしなやかな身体に、痛いほどの視線を感じる。
ヨンファはジョンシンの顔を直視することができなかった。


「適当に座っててくれ。服を着てくるから……」


リビングに案内して、自分の部屋に行こうとすると、強い力で腕を引っ張られた。


「何……?」
「さっき……ここに誰かいた?」


斜め上からじっと食い入るようにヨンファの顔を覗き込んでくる。
その強い瞳から逃れたくて、思わず視線を逸らす。


「いや、誰もいないけど……何で?」
「じゃあ、俺が来るって分かってて、どうしてシャワーを浴びてるんだ?」


質問には答えず、いきなり核心をついてくる。


―――それは…お前に寝乱れた姿を見られたくなかったから……。


でも、そんなこと言えるはずがない。


「うたた寝して…汗を掻いたから……」
「俺の気持ちを知ってて、こんな格好で出てきて。誘っているの?」
「…んなわけ、あるはずないだろう」


そんなんじゃない。そんなつもりはなかった。
でも、結果的にそう思われても仕方がない展開になってしまった。


「寝室…どこ?」
「え……ちょっ……」


ヨンファの腕を掴んだまま、部屋の奥へと進んでいく。
ジョンシンの勢いに押されて、ヨンファはただされるがままになっていた。


「ジョンシナッ……何を…っ」


ヨンファの部屋を見つけると、先程まで寝ていたベッドの上に突き飛ばされる。
驚いて身体を起こそうとするが、そのままヨンファの身体の上に圧しかかってきた。


「さっき、ここで誰かに抱かれてただろ?違う?電話の声、そんな感じだった」
「……………」


ヨンファは咄嗟に言葉が出ず、自分を見下ろす男を唖然として見上げた。
バスタオル一枚しか身に着けていないヨンファを、ジョンシンが目を細めてじっと見つめてくる。
その熱っぽい視線に晒されただけで、どうにかなりそうだった。


「俺の前でこんな姿を見せて、平気なの?」
「お、お前が…早く来たから…着替えられなかった…んだろ……」
「本当はいろんな相手とやってるんじゃないのか?ホンギヒョンとか」
「!」


―――何故ここでホンギの名前が出てくるんだ。アイツはただの友達なのに。
しかも、誰とでも寝るような奴だと誤解されて、言いようのない虚しさを感じる。


「俺とも一回ぐらい試してみてもいいんじゃない?」
「何、言ってん…だよ…。ふざけんなっ」


話が変な方向に傾きだして、ヨンファは顔が強張るのを感じた。
ジョンシンの口から次から次へと、わざとヨンファを煽るような台詞が出てくる。
これ以上聞きたくなくて視線を逸らすと、突然胸に触れられて、身体がビクンと反応する。


「乳首勃ってるの、自分で分かってる?」
「よせよ!」


冷ややかな瞳で睨みながら声を張り上げるが、それを無視され、ジョンシンはゆっくりとした動作でTシャツを脱いでいく。
浅黒く締まった身体が現れて、ヨンファは夢と現実がシンクロしているようで、眩暈がしそうになった。


―――これは夢の続きなのか?本当に現実に起こっていることなのだろうか?
どうしてこんなことになってしまったんだ……。


「いいよね。一回ぐらい。やらせてよ」
「冗談じゃ…ないっ」


ジョンシンは今にも飛びかかってきて喉を食いちぎられるんじゃないかと思うほど、獰猛な瞳をしていた。
いかに本気で自分のことを欲しているのかを今更ながらに理解し、全身が大きく震える。


流されるのは簡単。一時の快楽を得るのも容易い。
一度くらいならいいんじゃないかと、軽い気持ちで目の前の誘惑に負けそうな自分がいる。
でも、手に入れてしまったら。そのあとはどうなる?
その先に、希望や未来なんか有りはしない。
誰かにバレたら?
解散?それとも、芸能界追放?


いろんなことが頭の中を駆け巡っていく。
快楽と引き換えにするにはあまりにも大きすぎる代償に、ヨンファは心底身震いがした。
自分にはそんなリスクを冒す勇気はない。
目の前に、胸を焦がすほど愛しい相手がいながら、その手をとることは決してできないのだ。





「お前とは絶対に寝ない。お前だけとは……」


ヨンファの屈服しない姿に、ジョンシンは両目を見開き、数秒間固まったように動かなかった。
ここで流されて、取り返しのつかないことになっては駄目だ。


「何で俺じゃダメなんだよ…。俺のどこがいけないんだっ!」


ジョンシンの悲痛な叫びに、心が痛む。
目の前の顔が辛そうにギュッと歪められたが、敢えて気付かないふりをした。


「…お前は同じグループの仲間で、弟だから……」


何度も自分に言い聞かせている言葉を、ジョンシンに対しても繰り返す。


「そんな理由で俺は振られるのか?じゃ、別のグループにいるのなら問題ないのか?」
「…いきなり何を言い出すっ…」
「CNBLUEをやめたら、俺と付き合ってくれんの?」


一瞬、耳を疑った。
いくら売り言葉に買い言葉といっても、口に出してはならない言葉というものはある。
バンドは自分たちの原点であり、すべてと言っても過言ではないのに、そのバンドの名前を持ち出して試すような発言をしたことは聞き捨てならない。
ヨンファは震えるほどの怒りを感じた。


「お前……自分で何を言ってるのか分かっているのか?言っていいことと悪いことの区別もつかないのかっ?」
「俺はアンタが欲しくて欲しくてたまらないんだ!前にも言っただろ?夢の中でアンタのこと抱いてるって。もう数えきれないほど……」
「…………っ」
「ヒョン、苦しいんだ。俺を助けてくれよ……」


ジョンシナが大きな身体を折り曲げて、ヨンファに縋り付いてくる。
その顔が辛そうで見ていられない。
どっちにせよ、俺はジョンシナを苦しめる存在でしかないのか……。
でも、俺も苦しい。苦しいんだ。


唇を重ねようとジョンシンの顔が近付いてきて、ヨンファは横を向いてそれを拒んだ。
一瞬狼狽えた様子だったが、キスを諦め、噛みつくみたいに首筋に口付けられる。


「ジョンシナ…頼むからやめてくれ……」


肩口に唇が下りてきて、ジョンシンの大きな手のひらが白いきめ細かな肌の上を這っていく。
ヨンファが頼んでもジョンシンは行為をやめようとしない。
このまま身を任せられたら、どんなにいいだろうか。
でも……。


「よ…せっ」


抗いながらもヨンファは冷静に考えていた。
ジョンシンの行動を止めるには、もうこの言葉を使うしかないだろう。これを言えば、恐らく二度と触れてくることはないに違いない。


そして、ジョンシンがヨンファの中心に手を伸ばしてきた時、


「…や…だってっ………ホンギッ!」





その瞬間、ジョンシンの動きが止まった。ヨンファの顔を凝視したまま、完全に固まってしまった。
それを見て、続けざまに言う。


「俺は……好きなんだ」

―――そうお前のことが。


「ホンギのことが好きなんだっ」

―――ジョンシナだけが好き。


「だから、お前なんかとは御免だ」

―――抱かれたいのはお前だけ。


「二度とこんなことはしないでくれ。もう何度も言ってるだろ。何で分かんないんだよ!」

―――違う。俺が欲しいのはジョンシナだけ。でも言えない。言えないんだ。分かってくれ!





ジョンシンの顔はみるみる色を失っていった。
呆然として項垂れたまま、しばらく動かなかった。


「分かった。もう二度としない……」


抑揚のない声で告げてヨンファの身体の上から退くと、そのまま出て行った。


―――完全に終わった……。


ヨンファはベッドの上でただじっとしていた。
目の奥が潤んできそうになり、咄嗟にきつく目を閉じ、ギリッと奥歯を噛みしめる。


これで良かったんだ。これで……。










ジョンシンが置いて行った紙袋の中には、さまざまなタッパーに入った惣菜が入っていた。
恐らく彼の母親が作ったものだろう。
以前、ヨンファもご馳走になったことがある。とても料理上手な人で、ジョンシンのそういうところは母親譲りなのかもしれない。


これをジョンシンはわざわざ自分のために持ってきてくれたのだ。
それなのに……。
ジョンシンの折角の好意を無にして、ヨンファは自分のしてしまったことに罪の意識を感じていた。







*********************************************************************







ドラマの撮影が佳境に入り、連日、ロケ地やスタジオへ赴き、長時間行われていた。
分刻みでスケジュールが組まれており、ヨンファはなかなかバンドの練習に参加できずにいた。


今日はロケ地での撮影が予定されていたが、あいにくの雨で中止となり、急遽スタジオでの撮影に切り替わった。
夜になり、ようやくすべて撮り終わり、ヨンファは共演者やスタッフと何人かで明洞へと繰り出した。
皆気さくて付き合いやすい人ばかりで、現場の雰囲気もとても良かった。
だから、仕事を離れてもこういう機会があれば、積極的に参加するようにしていた。


皆で食事をとっている時、ホンギからメールが入った。
どうやら近くの店で飲んでいるらしい。
この後は自由解散だったため、ヨンファはホンギに後で合流する旨を返信した。


ホンギに教えてもらった店は、さほど離れていないところにあって、芸能界では隠れ家的名店としてよく知られていた。
店内に入って、奥の席に案内される。


「お~ヨンファじゃん!久しぶり!」


声をかけてきたのは、キム・ヒチョルだった。
他にもチャン・グンソクやチェ・ジョンフンなど、チョコボールの面々が勢ぞろいで、もちろんホンギの姿もあった。


「あっ、お久しぶりです。お疲れ様です」
「お前、相変わらずイケメンぶり垂れ流して、女にモテてモテて笑いが止まらんだろーが」
「そんな…モテないですよ」
「はい、ヨンファ。地雷踏んだな。今日は潰れるまで俺たちに付き合いなさーい」
「ええーー、ちょっと無理ですって。うわっ」


ヒチョルにガッチリと肩を組まれ椅子に座らされると、ヨンファはそのままチョコボールの餌食になってしまった。
皆結構出来上がっているようで、どんどんヨンファに酒を勧めてくる。
明日も撮影が入っているため、あまり飲みすぎないように調整して、その分面白い話をして盛り上がった。
ちょうどホンギやグンソクがいたので、当時のドラマ秘話とかを暴露し合い、皆大爆笑だった。


「ホンギはヨンファとマジ仲良いよな」


突然、ヒチョルがボソッと呟く。


「あ…まあ、そうですね。事務所も一緒だし、遠慮がないんで」
「だって…誰かさんとは比べ物になんないくらい優しいもんなぁ、ヨンファは!」


普通に受け答えしたヨンファとは対照的に、ホンギが何だかムキになって意味ありげな発言をする。
そして、突然、ガバッとヨンファに抱きついてきた。


「お、おいっ…ちょっと……」


最近、ホンギに妙に懐かれているような気がする。
そういえば情緒不安定ってスンヒョンが言ってたっけ。
やっぱり何かあったのだろうか……。
また素面の時にでも、改めて聞いてみた方がいいのかもしれない。





日付が変わり、そろそろ帰ろうかと思い、ヨンファがジョンフンに話しかけた時、ホンギが隣のヒチョルと何やら話をしていた。
その姿が何だかとても親密そうで、見てはいけないものを見たような気がした。
二人の雰囲気が、明らかに違うグループ同士の先輩後輩には見えなかった。





*********************************************************************







連日のドラマ撮影のため、なかなかメンバーとの練習に合流できなかったが、ヨンファは時間がある時には一人でも練習室に行くようにしていた。
あまりギターに触れずにいると無性に弾きたくなるし、勘が鈍る可能性があるからだ。


この日も時間が空いている朝から練習室に来た。
すると、ガラス張りのドアの向こうにジョンシンの姿が見えた。


会うのはあの日以来だった。
ヨンファは気にしないようにして、普段通りの顔を作る。


「……早いな」
「うん……」


ジョンシンはヨンファに対して、何だか遠慮がちのようだった。
無理もない。あんなことがあった後なのだから。


ケースからギターを取り出し準備を始めていると、後ろから声がかかる。


「コーヒー買いに行くけど、ヨンファヒョンも飲む?」
「あ…うん。頼む」


ホットの缶コーヒーを手渡されお金を払おうとしたら、笑っていいと言われた。
二人で適当に椅子に座ってコーヒーを飲む。
胃に直接滲み渡り、今朝も何も食べずに家を出てきたことを思い出す。


二人の間に何とも言えない沈黙が落ちる。
すると、ジョンシンの方が先に口火を切った。


「俺、いろいろ考えたんだけど、もうヒョンのこと好きでいるのやめるから」





唐突に言われて、コーヒーを飲む手が止まった。


「あっ、勘違いしないでほしいのは、仲間や兄貴としては大好きだからさ。それは今まで通り。実は、この間実家に帰った時に彼女できた?とか、早く紹介しろとか色々言われちゃって。ヒョンって綺麗だから、好きって気持ちを取り違えてたのかなーなんて。やっぱ男だし、正直、セックスもどうやっていいのか分からないし。だから俺、また弟に戻ることにしたから、今までのことなかったことにしてくれる?」


ジョンシンの言葉を一字一句、ヨンファは静かに聞いていた。
そして、すべて聞き終わった時、口元に笑みを浮かべた。


「良かったよ。俺もお前のこと仲間として大好きだから」


ジョンシンは多分、ヨンファの重荷にならないように気持ちをふっ切ろうとしているのだろう。
それが分かっているから、ヨンファは気付かないふりをして、自分もそれに合わそうと思った。


これで良かったのだと、自分の気持ちを抑え込む。


「ヒョンはいつからホンギヒョンのことが好きなの?」


もう嘘をつくことに慣れてしまって、何を聞かれても驚きはしないし、それに対する答えも予め用意したかのようにスラスラと口から出る。


「…ドラマで共演してから…かな」
「そんな前からなんだ。気持ちは伝えてる?」
「アイツは俺のことダチとしてしか見てないから……」
「そっか…うまくいくといいね」


仕方がなかったとはいえ、勝手にホンギの名前を出したことに心が痛む。
でも、それでまたジョンシンとの仲が以前に戻ったのだから、ホンギに感謝しなければならない。


ヨンファの本音は、本当は違うところにあるというのに。







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ドラマの撮影がクランクアップしてからは、来年早々に発売されるソロアルバムの制作のため、ヨンファは連日連夜作業室に籠り、一日の大半をここで過ごしていた。
時には夜を明かすこともあった。


忙しいのは好きだ。余計なことを考えなくても済むから。


ジョンシンのことはさほど気にならなくなった。
顔を合わす時間が減ったことと、ヨンファが制作作業に没頭していることが大きな要因となっている。
一時期は夢にまで見ていたというのに、意識しなくなった途端、それも見なくなった。
恋というものは、案外呆気ないものなのだと思う。





今日もヨンファは作業室のソファーで仮眠をとっていた。
元々そんなに寝なくても大丈夫な体質のようで、数時間寝ると自然と目が覚める。
寝起きは多少ボーッとするが、ソファーの上でうだうだしていると、だんだん頭もハッキリしてくる。


そうこうしていると、ドアをノックをしてジョンヒョンが入ってきた。


「ヨンファヒョン、起きた?」
「…おう」
「これ買ってきたから、一緒に食べよう」


ジョンヒョンが手に持った紙袋を見て、ヨンファも身体を起こして大欠伸をする。
中には、手作りのサンドイッチと淹れたてらしいホットコーヒーが入っていた。
何度かヨンファの様子を見に来てくれたらしい。
有り難く一緒に食べることにした。


「忙しそうだけど、体調は大丈夫?」
「ああ、何とかな。もうあんまり日がないから、こっちに付きっきりでごめんな」
「あとは、アリーナツアーがあるぐらいだから大丈夫。ヒョンがいなくてもちゃんと練習やってるよ」
「時々、抜き打ちで覗きに行ってやるからな」


サンドイッチを齧りながらジョークを言うヨンファに、ジョンヒョンが笑う。


「それより…ジョンシナと何かあった?」
「…えっ、何で?」
「何かおかしいだろ、二人とも」
「……ああ、ちょっと意見の相違で気まずくなったりはしたけど。今は修復してるよ」


笑って言うヨンファに対して、ジョンヒョンは真面目な顔をしたままだ。


「ヒョンはさ、何でも我慢しすぎるんだよ。いっつも俺たちのことばっかり考えてて、自分のことは後回しだろ。たまには好きなように生きてみたら?」


ジョンヒョンがどうして突然こんなことを言い出したのか、真意は読み取れない。
でも、ヨンファのことを心配してくれていることだけはよく分かる。


「俺は十分好きなことをさせてもらってるよ。今回だってソロで出してもらえるし」
「そう…それならいいけど。俺たちはいつもヒョンのことを想ってるから」
「ああ。ありがとな。落ち着いたら、またメシでも食いに行こうぜ。ミニョクとジョンシナにもそう言っといて」


ジョンヒョンの言葉に救われた気がした。
弟と思っていてもやはり頼りになる。
ヨンファがいない時はジョンヒョンがリーダーみたいなものだから。ますますしっかりしてきて、とても心強い。


「アルバムの完成、楽しみにしてるから」
「ああ。サンキュ」


ジョンヒョンのさり気ない気遣いに礼を言って、ヨンファは残りのサンドイッチを平らげた。







*********************************************************************







日本でのアリーナツアーが無事終わり、ソロアルバムの準備も整い、年内にすべき大きな仕事は大半が片付いていた。


12月某日、ホテルを貸し切り、ヨンファの所属する事務所の忘年パーティーが盛大に執り行われた。
代表と理事を始め、社員、スタッフ、所属グループの面々が出席し、かなり大掛かりなものになった。


「今年もお前たち皆が頑張ってくれたから、会社としてもまずまずの実績を上げることができた。この調子で来年もよろしく頼むぞ」


ヨンファとホンギのお酌を受けながら、代表はいつにも増して終始ご機嫌だった。


「代表、それならもうちょっと給料上げて下さいよ」
「ホンギッ」


いくら酒の席で無礼講だからと言って、お金の話はないだろう。
ヨンファは慌ててホンギを止めるが、酒が入っているからなのか、いつも以上に遠慮のない発言が続く。


「あと、たまには休みもほしいです。俺たち、働き過ぎですごいストレス溜まって大変なんですよ。なっ、ヨンファ」


俺に振るなよっ!
ホンギをジロリと睨んでやる。


「ヨンファもそうなのか?」
「えっ…まあ、そうですね……」


突然話を振られて焦ったが、休みはほしいので、さり気なく同意しておくことにした。


「そうか、ヨンファも同意見なのか。まあ、考えておこう」


ヨンファに甘い代表にしてやったりと、ホンギが小さくガッツポーズをしている。
この怖いもの知らずめっ。


「ところで、貴方たち」


横から理事に話しかけられてドキリとする。


「もうじき年末年始だからといって、あまり羽目を外しすぎないようにね。多少のことは目を瞑るけど、スキャンダルにはくれぐれも気を付けなさい。この間のジョンシンのようなことにはならないように」
「大丈夫ですよ。俺たちちゃんと真面目にやってますから。と言うか、ほとんど休みがないんだから、遊ぶ暇なんかないですよ」
「俺も同じく休み返上で仕事なので。でも、そうならないように気を付けます」


理事はホンギを一瞬胡乱な目で見たが、ヨンファの受け答えに対してはちゃんと頷いてくれた。


ジョンシンのように…か。
テーブルを見渡すと、当の本人はミニョクやFTメンバーと楽しそうに盛り上がっていた。
確かにスキャンダルには気を付けないとな。
身を滅ぼす元になるだろうから。


「それより、お前たち、何か余興でもしてみてはどうだ?」
「えっ……」
「はあ~?」
「この場を盛り上げたら、給料のことを検討してやろう」


突然の代表の無茶振りに、ホンギとともに困惑の声を上げる。
代表はほんのり顔が赤くなっていて、かなり酔いが回っているようだった。


「ヨンファはものまねが得意だから、何かやって見せろ。ホンギのものまねとか」
「是非見たいわー、それ」


理事も笑いながら手を叩いてリクエストしてくるが、隣を見ると、本人がものすごく嫌な顔をしている。


「あー、ちょっと誰かマイクを持ってきてくれ。今からヨン議員のモノマネターイム!」


今日は静かに飲みたいと思っていたが、ヨンファも場を盛り上げるのは好きなので、ホンギを引っ張って前に出た。
得意としているものまねをいくつか披露して、最後にホンギのものまねをしたら会場が大爆笑に包まれた。


視界に入ってきたジョンシンも、グラスを傾けながら他の皆と同様に笑っていた。
忘れた、気にならないと言いつつ、やはりジョンシンの反応が気になっている自分に辟易する。


そして、最後にホンギと腕を組んで一緒に歌をうたい、二人の余興は終わった。
その後はFTとAOAのメンバーが前に出てきて、カラオケタイムになった。
ホンギとどこか座ろうと空いた席を探していると、ジョンシンが手招きをしている。


「ここ空いてるから」


そう言って、自分とホンギに席を譲って、ジョンシンは他のテーブルに移ってしまった。
ヨンファの心がスーッと冷めた。


ホンギが止めるのも聞かず酒を飲みまくっていたら、いろんなことが重なり疲れもあるのか、いつもより酔いが回るのが早かった。
そして、お開きになる頃にはかなりフラフラになっていて、瞼がほとんど閉じた状態になっていた。


皆でタクシーに乗り合わせて帰宅することになったが、ホンギとジョンシンとミニョクと一緒に乗ったのまでは覚えている。
しかし、後部座席に座った途端、一気に眠気が襲ってきた。
ホンギが隣で何やら言っていたが、ヨンファはウトウトとし始めて、それ以上聞き取れなかった。










身体の揺れを感じて、うっすらと目を開けると、何が何だか訳が分からなかった。
誰かに寄りかかって動いている?
何回か瞬きをして、ようやく自分が誰かに負ぶさっている事態が飲み込めてきた。
一瞬パニックになって、身体を動かそうとしてバランスを崩す。


「うわっ」


後ろに倒れそうになったので、その身体にしがみ付く。


「ヒョン、起きた?」


声でそれが誰だか分かってしまった。


「…ジョンシナ?」
「そう」
「何で俺、負ぶさってんの?」


まだ脳が正常に働いていないのか、思ったことをそのまんま呑気に聞いてしまった。


「ヒョンがタクシーの中で寝たからだろ」
「あれ…ホンギとミニョクは?」
「先に帰ったよ」
「じゃあ、何で…お前は?」
「体格からして、どう考えても俺しかヒョンを運べないだろ」


そこで、初めてヨンファは今、自分がどれほど厚かましい真似をしていたか悟った。
どうやらヨンファのせいで、ジョンシンは一緒にタクシーを降りる羽目になったらしい。


「あ……悪い。ホントごめん!自分で歩くから」
「いいよ。あと少しだから」


ヨンファが周りを見渡すと、自分のマンションよりまだ300メートルくらい手前の地点だった。


「あ…れ、でも、ここ違う…」
「運転手さんに降りるところを伝え間違えたみたい」
「じゃ、尚更下りるよっ。お前、ここからだとまだ結構あるぞ」
「いいよ。ヒョン。酔ってるんだからこのままで。頭グラグラなんだろ?」
「でもっ……」
「しつこい」
「…悪い、今度なんか奢るわ」
「そんなの気にしなくていいから、ちゃんと掴まって。ずり落ちそうだから」


確かにまだ頭がフラフラしているヨンファは、立っても真っ直ぐには歩けないかもしれない。
有難くジョンシンの好意に甘えることにして、両腕を肩に回し、前で交差させる。
まるで、後ろからジョンシンを抱き締めているような、そんな格好になってしまった。
身体が密着して、鼓動が早くなっていくのを感じる。自分の心拍音が聞こえるんじゃないだろうかと心配になる。


「……重いだろ?」
「全然余裕だよ。しかも、ヒョンあったかいし」


12月に入ってから寒さがひと際厳しくなっていた。ハァーッと息を吐くと白くなる。
夜の道に人通りはまったくない。たった二人きり。
ヨンファは長い睫毛を伏せて、ジョンシンの気配だけを感じていた。


もう二度とこんな風に触れることはないと思っていた。
広くて温かい背中におんぶしてもらって、ヨンファは鼻の奥がツーンとしてきた。
ジョンシンの髪の毛のいい匂いと香水の香りが混じり合って、夢見心地になる。


―――ずっとこのままでいられたらいいのに……。


でも、それが叶わないこともよく分かっている。
ヨンファは何を話していいか分からず無言になってしまい、ジョンシンも特に話しかけてこなかった。


マンションが近付くにつれて、突然、寂寥感が襲ってきた。


―――もう夢の時間は終わりだ。


ヨンファのマンションに到着して、エントランスのところで下ろされた。
急に温もりが無くなり、身体がブルッと震える。
何だかこのままジョンシンを帰したくなくて、考える前に口をついて出ていた。


「……寄ってくか?」


ヨンファの言葉にジョンシンは首を振る。


「いや、明日も早いから帰るよ。ヒョン、臍出して寝て風邪引かないようにな」
「うっせー、それはお前だろ?」


お互い顔を見合わせて笑い合う。


「じゃ、おやすみなさい」
「本当にありがとうな。おやすみ」


ヨンファは帰って行くジョンシンの背中を見送った。





ちゃんと、笑えてたよな、俺。


自分から手を離してこうなったのに、今、自分はどんな顔をしているだろう。
物欲しそうな顔でもしているのだろうか。


会わなければ耐えられるのに、会って顔を見てしまうと、気持ちがまた再燃する。
恋とはなんて厄介なものなんだろうな。


さっきのパーティーの時ホンギと一緒にいても、笑って見ているお前。
俺たちに席を譲ってきたお前。
ジョンシナ、もう嫉妬さえしてくれないんだな……。


恐らくこれは罰だ。
ジョンシンを苦しめ傷付けたから、当然の報いだ。ジョンシンと同じように、今度は自分が苦しみを味わう番なのだ。
それが、この先どのくらい続くのだろうか。





ヨンファとジョンシンの仲は、もうすっかり元の兄と弟に戻っていた。
今までの出来事が全部無かったことのように。
まるで異次元の世界で起こったかのように。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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