CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

DESTINY 3

2016年03月08日
DESTINY 0






「メンバー全員の一人暮らしを許可してもらえませんか?」


突然のヨンファの発言に驚いた様子もなく、代表は黙ったまま聞いていた。


もっと長く共同生活を続けるグループもいるため、反対される可能性があることは覚悟していた。
しかし、ジョンシンの気持ちを知ってしまった以上、このまま共同生活を続けることはできない。
ましてや自分も同じ気持ちを抱いている状態で、一緒に住むことなど許されるはずがない。


いつかこういう日が来ることは分かっていた。
韓国で芸能活動をするグループは男女ともに親元を離れてメンバーと共同生活を送ることは常識で、長ければ10年近く続けているグループもある。
でも、大半は何らかの事情でそれより早い時期に共同生活を解消し、各々が一人暮らしを始める。
だから、ヨンファたちもいずれは決断すべきことではあった。


それを早めたのはジョンシンの発言がきっかけではあるが、ヨンファ自身はもっと以前から考えていた。


どうしても長年一緒に暮らしていると、必要以上に親しい関係になる。
それはCNBLUEの四人にも言えることで、実際のところ、ほとんど喧嘩になったことがない。
ヨンファが一番心配していたのは馴れ合いだった。


真剣な意見交換などを行わず、適当な話し合いで済ませるなど緊張感の欠ける関係になりはしないか。
それが音楽にも影響してくるのではないか。
常に危機感は持っていた。
だから、ジョンシンのことがなかったとしても、いずれ別々に暮らす決断を早急にしないといけないと考えていた。





ヨンファは緊張の面持ちで、代表の言葉を待った。


「四年か…」
「はい」
「ヨンファのことだから、いろいろと考えた上でのことだろう」
「…はい……」
「お前たちはこれまで何の問題もなくよくやってきたから、一人暮らしをしても大丈夫だろう。許可しよう」
「ありがとうございます」


一つ返事でOKを出してくれた代表に、ヨンファは頭を下げた。
僅かな可能性に賭けていたが、許しをもらえてヨンファは心から安堵した。


―――これで、ジョンシナと距離を置くことができる……。


仕事では一緒だが、ともに過ごす時間が短くなれば、そのうち気持ちも薄らいでいくだろう。
昨日のジョンシンの顔を思い浮かべて胸がツキンと痛むが、ヨンファはその感情を無理矢理抑え込んだ。


「それと、ちょうどいい機会だから話しておきたいんだが…」


代表から改まって言われて、ヨンファは慌てて意識を目の前に戻す。


「お前はリーダーという立場から、何でも抱え込んで無理しすぎていないか?」
「……いえ、そんなつもりはないです」


思ってもみないことを言われ、ヨンファは目を見開く。
無理をしているように見えるのだろうか。


「お前には新人の頃から少し厳しすぎたな。そのせいで枠の中に閉じ込められているようだ。もう少し羽目を外してみてもいいんじゃないか?」
「羽目を外す…ですか?」
「そうだ。デビューしてからずっと走り続けてきて、お前は真面目に仕事に取り組んできた。それを側で見ていた私にはよく分かる」
「……………」
「少し肩の力を抜いてみなさい。そういう意味で、今回の一人独り暮らしはお前にとってもいい決断だと思う」
「はい…」
「そして、ヨンファ、恋愛も逸脱行為もしてみなさい」


恋…愛…?逸脱……?


「お前ならちゃんとわきまえて行動するだろうし、そういった経験が必ずプラスになると思う」
「そう…でしょうか…?」


自分ではあまりピンとこない。
一人の人間の想いに応えることもできず、逃げ回るだけの自分にちゃんと恋愛なんてできるのだろうか。


「ホンギはお前と違って逸脱行為が多すぎるきらいがあるが…まあ、それもまた個性だとある程度は目を瞑っている。お前ももう少し自分を解放してみるといい」


「ホンギ」のところで、代表と顔を見合わせて笑う。
代表の温かい言葉がヨンファの心に沁みて、目の奥が熱くなってくる。
新人の頃から何かと目をかけてもらって、感謝してもしきれないほど恩義を感じている。


代表はもともと歌手だったが、作曲家兼プロデューサーに転向し、その後、後輩育成のため若くしてこの芸能事務所を立ち上げたと聞いている。
ヨンファたちの現状とは比べ物にならないくらい、苦労をされてきた人なのだと思う。


だから、ヨンファやホンギに対して時には厳しいこともあるが、常に自分たちを真っすぐ上へと導いてくれ、何かあった時は全力で守ろうとしてくれる。
ヨンファはこの事務所で働けることを誇りに思い、心から感謝していた。
代表の言葉にヨンファは背中を押してもらい、新たな一歩を踏み出そうという前向きな気持ちになっていた。





代表の部屋を出て、ヨンファは自分の作業室へと向かいながら、今日の午後からの予定を頭の中で確認していた。
四人が集まり次第練習を始めて、夏フェスのセットリストについて、スタッフの意見を取り入れながら決めていく。
途中で取材が入るから一旦中断して、その後、一度通しで全部を演奏してみた方がいいかもしれない。
そうすると、引っ越しの件はまず初めに言うべきだろうな。


ジョンシナ……。
このことを聞いたら、お前はどんな顔をするだろうか……。





昨夜、宿舎を飛び出したヨンファは小一時間ほど夜道を歩き、今後のことについて考えを巡らしながら、自分の気持ちを整理していた。
再び宿舎に戻るとジョンヒョンが仕事から帰ってきていて、ジョンシンとミニョクは自分の部屋に籠っているようだった。
ジョンシンの部屋の前を通る時、ヨンファの心はキリキリと痛んだ。


『とにかく頭を冷やせ。今の話は聞かなかったことにするから』


想いを告げてくれたジョンシンに対して、ヨンファは嘘をついて拒絶した。そして、手酷い言葉をぶつけた。


本当は目の前の大きな身体を思いっきり抱き締めたかった。
自分も同じ気持ちだと、口に出してその想いを伝えたかった。
でも、不器用な自分には、こうするしか他に術がなかった。


―――もし俺たちが違った形で出会っていたら、こんなに辛い思いをすることはなかったのかもしれない……。










練習開始時刻より少し早めに集まった三人に、話があると言って、ヨンファは口を開いた。


「実はさっき代表と話をして決まったことなんだが、来月、引っ越しをすることになった」


「えっ………引っ越し?」
「ヨンファヒョン、何、どういうこと!?」
「……………」
「喜べ。一人暮らしの許可が下りたんだ」


ヨンファの言葉にジョンヒョン、ミニョク、ジョンシンが一様に驚き、呆然としたまま固まっている。


「何だよ、その顔。嬉しくないのか?」
「早く一人で暮らししたいって思ったこともあったけど、今の生活も悪くなかったからちょっとビックリした」
「僕も家事は大変だったけど、それ以上に楽しいことがいっぱいあったから……」


ジョンヒョンとミニョクは意外とこの暮らしが気に入っていたらしい。
ジョンシンは驚愕の表情を浮かべたまま、言葉を発しない。じっとヨンファを見ている。


「新しい部屋はこれから探してもらうから、何か希望があれば言ってくれ。急だけど、今の宿舎は来月末に引き渡す予定だから」


話し終えたヨンファは自分の作業室へ必要なものを取りに行くため、練習室を出た。
後ろから追いかけてくる音がする。


「ちょっと待って」


グイッと腕を引かれて振り向くと、ジョンシンが思い詰めたような顔をしていた。


「ヒョンから代表に話をしたのか?」
「ああ…そうだ…」
「俺が昨日あんなことを言ったから?」
「……そうじゃない。前々から考えていたことだ」
「そんなことを突然言われても、俺は嫌だ」
「もう決まったことなんだから、仕方がないだろ」


ジョンシンを振り払って歩き出そうとすると、今度はヨンファの手を掴んできた。


「よせ。ここは事務所の中だぞ」
「俺は誰に見られたっていい」
「子供みたいなことを言うな」


ヨンファはジョンシンと真っ向から対峙する。


「ジョンシナ、俺はどうしてもお前のことを仲間か弟としか見れないんだ。だから、頼むからこういう話はしないでくれ」


じっと見つめられるとその目に自分の心を暴かれてしまいそうで、ヨンファはジョンシンから視線を逸らせた。
何も答えないジョンシンをそのままにして、その場を後にした。







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事務所が探してくれた物件をいくつか見て回り、気に入った者から順次不動産屋と契約をして、引っ越しの準備にとりかかった。


ヨンファは自分が最後に引っ越すことを決めていたので、他の三人を見送る立場になった。
一人ずつ荷物と一緒に去っていくと、家の中がだんだん広くなって、少しずつ居心地が悪くなってきた。





ジョンシンが引っ越す日、お互いなかなか会話の糸口が掴めなかった。


―――お前と一緒に暮らせて楽しかったよ。


本当はそう言いたかったけど、それは心の中にしまって、必要最小限のことだけ話した。


「じゃあ、また練習室でな」
「……うん、それじゃ」


最後の会話はこんな素っ気ないものだった。





そして、ヨンファが引っ越しをする日。


すべての荷物が運び出された部屋はガランとしていた。
ここはこんなに広かっただろうか。
自分たちが四人で生活をしていた時と同じ部屋とは思えないほど殺風景だった。


ヨンファは物の無くなった空間の中で佇んでいた。


「さて、行くか」


感傷を振り切るように、ヨンファは元宿舎を出た。







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四人は別々に暮らすようになったが、夏フェスのリハーサルで毎日のように顔を合わすため、あまり寂しいという感じはしなかった。


いつもの練習室での風景。
休憩に入っても、ヨンファは一人気になるところがあり、ギター練習をしていた。
横では弟たち三人が何やら楽しそうにしている。


一番背の高いジョンシンがジョンヒョンとミニョクを順番におんぶして、二人は「高い高い」と大はしゃぎだった。
仲睦まじい様子を微笑ましいと思いつつ、ヨンファは心のどこかで少し羨ましいと思った。


ジョンシンは以前に比べ、あまりヨンファに纏わりつかないようになった。
ヨンファの望んだとおりになったのだから喜ぶべきなのに、この空虚感は何だろう。
自分からジョンシンの手を離したのだから、仕方がないのも良く分かっている。
それなのに、寂しいと思う自分は何て身勝手なんだろう。


ジョンシンはこんな自分のことに、とうに愛想を尽かしたかもしれない。





リハーサルが終わっても、ヨンファだけやり残したことがあったので、三人は先に帰って行った。
書類に記入し終わり、スタッフのいる部屋に持って行こうと廊下を歩いていると、大きく張り出した窓から道路脇に赤い車が停まっているのが見える。
窓に近付いて下を見ると、ジョンシンがその車に走り寄っていくところだった。


そのまま車に乗り込んで走り去る姿をヨンファはじっと見ていた。







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8月の半ば、CNBLUEは日本で二つの夏フェスに出演した。


三日間連続の日程で、他の韓国や日本のアーティストたちが多数集結し、熱いステージを繰り広げた。
ヨンファたちは自分たちの出番以外は知り合いや好きなグループの演奏を聴いたり、他のステージを覗きに行ったりして交流を図り、良い刺激を受けることができた。
また嬉しいことに、ホンギ率いるFTISLANDとも一緒だった。


三日目が終わった後、CNBLUE とFTISLANDで合同の打ち上げ会が催された。
メンバーだけでなくスタッフも一緒だったため、有名な焼肉店を貸し切り、盛大に行われた。


「ヨンファ、もっと飲めよ」


ホンギがジョッキになみなみと注がれたビールを勧めてくる。


「今日は自分のペースで飲むって」
「この間、マジ酔いだったもんなー」
「へぇ、ヨンファヒョンってお酒強いから、酔ったとこなんて想像できないっすね」
「ホント見てみたいっ」


スンヒョンが意外そうな目でこちらを見てきて、ミンファンも興味津々のようだ。


「俺に比べたらどーってことないけどな」
「だから、お前はザルなんだから、誰も勝てないって」


大きなテーブルにメンバー9人が座っているが、話の中心はどうしてもヨンファとホンギになる。


「ヨンファ」


ホンギがじっと見つめてくる。


「俺、お前にしようかな」
「は?」


ホンギがヨンファをギュッと抱き締めてくる。


「げっ、暑苦しいっ。離れろよ」
「ホンギヒョン、最近情緒不安定なんすよ。いろいろあるみたいで」
「えっ、そうなのか?」


スンヒョンの言葉に他のFTメンバーが全員頷いている。
情緒不安定ってホンギが?信じられない。


「まさかホンギに限って。何かの間違いだろ」
「ヨンファ~~~」
「あー、こらこら、ヨンファヒョンに迷惑かけない!」


ヨンファとホンギの仲の良さは皆に知られているので、またかという感じで周りのメンバーたちは笑いこけている。
いつまでも抱きついているホンギを何とかしたくて、周りに助けを求めようとした時、少し離れて座っていたジョンシンと目が合った。
思わず声を掛けようとしたが、隣のジェジンと話が盛り上がっているようで、そっちに視線を移したっきりこちらを見ようとはしなかった。


あ…そうだった。もうあんまり頼ったりしたらいけなかったんだ。
ヨンファはまた、言い知れぬ寂しさを感じていた。







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夏フェスが終わっても、ヨンファたちに休息はなかった。
秋には日本でのアルバム発売、単独でのファンミーティング、アリーナツアーと立て続けに予定が入っている。
また、来年早々にはソロアルバムを出すことが決まっており、収録する曲作りも同時並行で進めている。


今日も一日ハードスケジュールだった。
午前中にメンバーとの練習、午後からは雑誌の取材と撮影、そして夜はテレビ局での打ち合わせがあり、終わったのは日付が変わる直前だった。


自宅に着くとすぐ、誰もいない真っ暗な部屋に電気をつける。
シーンと静まり返った室内は、引っ越ししてもう一ヶ月以上が経つというのに未だに慣れない。


誰かが「おかえり」と声をかけてくれるわけでもなく、自分も「ただいま」という言葉を使うことすらない。
一人なのだから、会話をすることがない。
ヨンファはふぅーっと一つ溜息をついた。


テレビを観て、パソコンを触って、料理もたまに一人分の分量だけ作って。何とも味気ない生活だ。
一人暮らしとはこういうものなのかと思った。


四人で同居を始めた当初は正直むさ苦しかった。
全員が180センチ台の長身の男ばかり。
多少お洒落に気を遣って香水をつけたりはしていたが、女性特有のいい匂いとかそんなものとは一切無縁の世界だった。
まだお互いを知り尽くしていない頃は相手に気を遣ったり我慢したりして、イライラが募り口論になったこともあった。
しかし、それ以降は信じられない話だが、喧嘩や揉め事は一切なかった。
だから、事務所に迷惑をかけることもなく、今回異例で一人暮らしの許しが出たのだ。


―――アイツらは今頃、何をしているのかな。


不意に思い立ち、ヨンファはスマホをタップしてメンバーのSNSを見る。


ジョンヒョンとジョンシンは最近子犬を飼い始め、ツイッターで頻繁に愛犬の画像をアップしている。
ミニョクはまだペットは飼っていないが、日々の出来事を呟いて画像を載せている。
三人は新生活をとてもエンジョイしているようだった。


ジョンシンの画像を見たまま手が止まった。
そこには、シンバという名前のゴールデンレトリバーの子犬とじゃれ合っている姿が写っていた。
それは、ヨンファが久しく見ていない表情だった。とても幸せそうで、慈愛に満ちた顔。
以前はヨンファにもよく見せていた。





『ヒョン、起きて』


ヨンファが寝坊しそうになれば、ジョンシンが大抵部屋まで起こしに来てくれていた。
浅い眠りの中、耳元に心地よい声が聞こえてきて、ヨンファはうっすらと瞼を開ける。
すると、目の前には長い茶色の髪を垂らして覗き込むジョンシンがいて、微笑みかけてくれるのだ。
いつも目覚まし時計をセットして寝るものの、どうしても起きることができないヨンファに嫌な顔一つしなかった。


ヨンファは自分の顔に届きそうな綺麗な髪をよく触っていた。
すると、ジョンシンは嬉しそうに目を細めて笑うのだ。


―――そうだ。お前が俺にしてくれたのは、起こすことだけじゃなかった。


美味しい料理を作ってくれたのもお前。
疲れた時、すぐ飲み物を出してくれたのもお前。
肩が凝った時にマッサージしてくれたのもお前。
リビングでうたた寝した俺を抱き上げて、ベッドまで連れて行ってくれたのもお前。
部屋中に脱ぎ散らかした服を洗濯機に入れてくれたのもお前。
シャワーを浴びて濡れたままにした髪の毛をタオルで拭いてくれたのもお前。
そして、いつも笑顔で俺を慕ってくれたのもお前。


俺はどれだけお前に助けてもらっていたんだろうな……。


今頃になって、ヨンファは言いようのない喪失感に襲われていた。
でも、今更遅い。
こんな年上の男のことなんかもう頭にないだろう。
あれだけ何度もジョンシンを傷付けて、プライドを踏みにじったのだから。


―――そして、俺はいつからこんな情けない男に成り下がったんだろう。







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いつものように作業室で仕事をしようとヨンファが事務所へ行くと、何だか物々しい雰囲気に包まれていた。
社員たちがバタバタと走り回り、どこかへ電話を掛けたり、いつもと様子がおかしい。
顔見知りのスタッフに事情を聞こうと探していると、向こうからホンギが歩いてくるのが見えた。


「ホンギ、何かあったのか?」
「ジョンシンが例の女との写真を週刊誌に撮られたらしい」
「何だって?」
「発売元の出版社から掲載する旨の連絡があったそうだ。これから出版社に記事の掲載差し止めの交渉をしに行くって」
「あン…の馬鹿っっ!」


ホンギと一緒に急いで代表の部屋へ行くと、理事と何やら打ち合わせをしていた。


「ジョンシンのこと、今聞きました。申し訳ありません。俺がもっと注意を払っておけば……」
「狼狽えるな、ヨンファ。あそこは悪質な手口を使うことで有名なんだ。今からAHの社長と出版社に行ってくる」


そう言って去っていく代表を、ただ後ろから眺めているしかなかった。


―――AHエンターテインメントも絡むほど話が大きくなっているのか。


ヨンファは、事務所のみならず他社まで巻き込んでしまったことに、事の重大さを感じる。
このまま何もなく終わるはずはない。責任を取らなければならないかもしれない。
最悪の事態を想定して、唇を噛み締め拳を握っていると、ポンと肩に触れられた。


「ビビるな。お前らしくもない」


ホンギが慰めてくれるが、そんなことでヨンファの気持ちは晴れるはずもない。
身体は震え、手には汗が滲み出ていた。


「……俺たちは、もう終わりかもしれない」
「縁起でもないことを軽々しく口にすんな。代表を誰だと思ってる。絶対に悪いことにはなんねーよ」
「でもっ……」
「信じて待ってようぜ」


ホンギの自信に満ちた顔に、ヨンファはただ頷くしかなかった。
すると、渦中の男がジョンヒョンとミニョクに伴われて姿を見せた。


頭に血が上って完全に目が座った状態のヨンファに気付き、ジョンヒョンとミニョクはギョッとする。


「あれほど忠告したのに、何で気を付けなかった?マークされてる自覚がなかったのか?」


ヨンファのいつになく怒りを露わにした姿に、ジョンシンは怯むことなく真っ直ぐ見返してきた。


「何とか言え、ジョンシナ」
「ヒョン、ジョンシナの言い分も聞いてやってくれ」


横からジョンヒョンが口を挟んでくるが、ヨンファの怒りは一向に治まらない。


「言い分?ジョンヒョナは何か知っているのか?」


それにジョンヒョンは頷く。
ジョンシンはなかなか口を開こうとせず、もう一度ヨンファが理由を問い質そうとした時。


「待って下さい!お願いっ、ジョンシナを責めないでっ」


声がする方を見ると、髪の長い女性がヨンファとジョンシンの側に駆け寄ってきた。
ヨンファはその顔を見て、すぐに赤い車の女だと確信した。


「……君は?」
「ユン・エギョンといいます。この度は私のことで皆さんにご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありません!」
「何故ここに?君の社長とうちの代表が今から出版社に行くって知ってるの?」
「はい…。今、社長の車に乗せてもらってここに来たんです。どうしても皆さんにお詫びしたくて…」


ヨンファが想像していたタイプとは違い、清楚で真面目な感じで、遠目で見た時よりもかなりの美人だった。
年齢はヨンファより少し年下だろうか。事が大きくなって、かなり動揺しているようだ。
ヨンファは不憫に思い、できるだけ優しく語りかける。


「どういうことか分かりやすく説明してもらえる?」
「ジョンシンとはドラマで共演したことがきっかけで知り合いました。あの…私たちは友人で、付き合ってるわけではないんです!」


事情を聞くと、エギョンには他に好きな男性がいて、二人きりで会う勇気がないから、ジョンシンも交えてというのが真相のようだ。


「それで、時々ジョンシンを呼び出すようなことをしてしまって…。ジョンシンは無関係なのにとても親身になってくれて、私もそれに甘えていました」
「今のは本当の話なのか?」


エギョンの説明を聞いた上でヨンファがジョンシンに尋ねると、ようやく声を出して答えた。


「エギョンの言うとおりだよ」
「なーるほど。そうしたら、ジョンシンと噂になったと」


ホンギが会話に入ってきて、ジョンシンとエギョンは頭を下げて謝罪した。


「私が軽率でした。ジョンシンを巻き込んで、皆さんにまでご迷惑をおかけして、とても申し訳なかったと思っています」
「俺がもっと警戒して気を付ければ良かったんだ。迷惑かけてすみません」
「事情はよく分かった。代表たちがどういう話をされてきたか、後で聞いてみよう」


ヨンファの言葉に練習室で待つことになり、一時間後、代表とAHの社長が戻ってきた。


「出版社と交渉してきた。週刊誌には掲載されないから安心しなさい」
「あそこは記事をねつ造するので有名でね。過去、うちの俳優が同じ手法でやられたことがあるんだよ。ハンさんと一緒に警告しておいたから、もう大丈夫だ」


代表とAHの社長の言葉に、皆一斉に安堵する。


「じゃあ、今まで通り活動してもいいんですか?解散とかしなくても?」
「何を言ってるんだ、ヨンファ。当然だ。解散なんてされたらうちが困る」


ヨンファはずっと心配だったことを代表に尋ねると、笑って否定された。


「皆さんにはうちのユンのことで多大なご迷惑をおかけしました。申し訳なく思っています。また後日改めてお詫びに伺います」


AHの社長はヨンファたちに頭を下げて、ユン・エギョンとともに帰って行った。


そして、四人で改めて代表とホンギに頭を下げる
忙しい二人は次の仕事のため練習室を後にした。


周りの皆に助けてもらって事なきを得た。
ジョンヒョンとミニョクも心からホッとした表情を浮かべている。


ヨンファは長い緊張から解放されて、かなり神経が疲弊していた。
確か栄養ドリンクがまだあったことを思い出し、作業室へ行くと言ってその場を離れた。


「ヒョン」


ジョンシンがノックとともに作業室に入ってきた。


「今日はいろいろとありがとう。迷惑かけて本当にごめん。俺いつもヒョンには面倒ばっかりかけてるね…」


ヨンファは先程の場面で疑問に思っていたことを口に出してみる。


「何でさっきあの子が来る前に、本当のことを話さなかったんだ?ずっと黙ったままで……」
「……男として格好悪いだろ。本人がいないところであれこれ言うのは」
「じゃあ、俺が以前、宿舎で問い質した時にはっきり違うって言えよっ」
「俺は付き合ってないって言ったのに、ヒョンが勝手に勘違いしたんだろ」


何度もお前があの子と一緒にいる場面を見れば、普通付き合ってるって思うだろう。
誰が見てもお似合いの二人だ。
でも、ただの友人だったんだな。


「良かっ…た……」
「えっ?」
「解散することにならなくて、ほんと…良かった……」
「心配…してくれた?」
「当たり前だろっ!もしお前が活動自粛とかになってみろっ。もう一緒にバンドやれなくなるんじゃないかっ…て…ずっとそう…思っ…て……」


張り詰めていたものが弾けて、その途端、こらえていたものがパラパラと頬に落ちる。
慌てて手で隠したが、ジョンシンに見られてしまった。


「ヨン…ファ……」


信じられないものを見るかのように、ジョンシンが目を見開いている。


「本当に…良かった……」


再度言葉にして、溢れてくる涙を手で拭っていると、骨がきしむほど強く抱き締められて息が止まる。


「ジョン…シナ……?」


「泣くなよ。頼むから。泣かないでくれ。そんな風にアンタに泣かれると俺……。クソッ…」


急にヨンファの身体を離して、ジョンシンは出て行った。
部屋に一人残されたヨンファは、茫然とそのドアを見つめていた。







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ゆっくりと身体をベッドに倒され、ヨンファは目の前の愛しい存在に腕を回す。
一秒たりとも離れたくない
相手から与えられる優しい愛撫に身を任せて、身体が少しずつ熱を帯びてくる。

喉に吸い付かれ、そのまま唇は生き物のようにそこら中を這い回る。
ヨンファの身体を知り尽くした唇は胸の尖りを見つけると優しく吸い上げ、手は中心を包み込み、徐々に追い上げていく。
濡れた声がひっきりなしに零れ、口での愛撫に切り替わると、瞬く間に上り詰めて一気に落ちていく。
長い時間をかけて後ろを解され、身体の奥まで入ってきたものに嬌声を上げる。


『…はっ…。ん……』
『ヨンファ、痛くない?』
『平気…もっと強くしてもいい……』


腰から下が蕩けそうなほど気持ちが良くて、目の前の浅黒い身体に縋り付く。
すると、ヨンファの細い腰をがっしりと両手で掴み、下からゆっくりと突き上げてくる。


『あっ……。そこ……いい……』


弱い箇所へ何度も繰り返される抽挿に、ヨンファは身も心も溺れていた。
次第に欲望が膨れ上がり、ほぼ二人同時に達する。
目の前の幸せそうな笑みを浮かべた唇にヨンファは自ら口付けて、二人は深い闇に溶け込んでいった。










意識がゆっくりと覚醒していく。


夢にもかかわらず、身体中が火照って汗ばんでいた。
もう何度見たか分からない。ジョンシンに抱かれる夢。
気持ちを抑え込みすぎて、眠っている間に卑しい幻想まで見るようになった。


昨日、ジョンシンに突然抱き締められて、頭が真っ白になった。
仕事以外では以前のようなスキンシップをしなくなり、久しく触れ合っていなかったから、その温もりをどれだけ渇望していただろう。


その時の余韻があったから、またこんな夢を見てしまったのかもしれない。


―――俺はおかしい。ジョンシナに欲情して、抱かれたいだなんて。
こんな醜い欲望でアイツを汚してしまっていい筈がない。


その時、不意にデスクの上に置いていたスマホの着信音が聞こえた。
表示されている名前を見て、愕然とした。
たった今、ヨンファが夢の中で抱かれていた相手だった。
すぐに声を聞きたいのに、疚しい夢を見ていた罪の意識からか出るのを躊躇してしまう。
それでも、しつこく着信音が鳴り続けるので、震える手で通話を押した。


『ヨンファヒョン、今、家?昨日はいろいろと迷惑かけてごめん』


夢と同じ低音の声に、先程の痴態を思い起こされ、咄嗟に言葉が出ない。


『……ヒョン、どうかした?寝てるの?』


何も答えないヨンファに、怪訝そうな声が返される。


「……ジョ…シ…ナ……」


寝起きで声が掠れている上、今しがた見ていた夢の余韻で、自分でも驚くほどの濡れた声が口をついて出た。


『……………』


ジョンシンが急に無言になった。


『………実家から貰ったものがあるから、今からそっちに持って行く』


少し間を置いて声が聞こえて、唐突に電話は切れた。





―――ジョンシナが今からここに来る……。
こんな状況下で、どういう顔をして会えばいいのか。


洗面所へ行き、自分の姿を鏡で見てみる。
目の前に映る自分は、髪は寝乱れ、頬は紅く染まり、全身に薄っすら汗をかいていた。
そして、夢の名残なのか情欲に濡れた瞳をしていた。


このままの姿をジョンシンには見せられない。
一刻も早くシャワーを浴びて、この欲にまみれた姿を洗い流さなければ……。


ヨンファは身に着けていたものをすべて脱ぎ捨て、バスルームへと入っていった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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