CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Forbidden Love 9

2016年03月12日
Forbidden Love(兄弟パロ) 0






7月に入り、外はうだるような暑さだった。
午前中、関係先に足を運んでいたヨンファは用向きが終わると会社に戻り、エアコンがよく効いている建物の中に一歩足を踏み入れると、「はぁー」と思わず息を吐き出す。
汗ばんだ肌から徐々に熱が引いていき、ヨンファはようやく人心地がつけた。


自分の席に戻る前に、持ち出していた過去のデータを返却するため、5階の資料室へと立ち寄った。
フロアーを横切っていると、右手の奥にキム課長とジョンシンの姿が目に入る。
パソコンを前にしたジョンシンに、何か指示をしている様子のキム課長が、突然こちらに顔を向けた。


「チョンくん!ちょうど良かったわ」


ヨンファは会釈をして通り過ぎようとしたが、手招きされながら呼び止められて、二人に近づいた。


「今から少し時間ある?」
「えっと…長くならなければ大丈夫ですが…」
「私、これから会議があるから、弟くんにちょっと教えてあげてくれる?」
「え?僕がですか?」
「他の皆もちょっと立て込んでるから、申し訳ないけどよろしくね」
「は…い……」


見回すと、同じ部署のメンバーは緊迫した雰囲気の中、それぞれが電話中かパソコンに何かを打ち込んでいて、皆自分のことで手一杯のようだった。
キム課長はにこやかにヨンファに声をかけると、書類を抱えてエレベーターの方へと向かう。
正直逃げたかったが、元上司の頼みなら仕方ない。


「どうした?」
「……B/Lをチェックしてたら、商品明細の記載が間違ってた」
「見せてみろ」


上体を屈めてヨンファが書類を見比べると、確かに一箇所入力ミスがあった。


「L/Gを作成して船会社で訂正してこないといけないんだが、行ったことは?」
「ない」
「じゃあ、誰かと一緒に行くことにして、まずL/Gだな。作成の仕方は……ジョンシナ、聞いてるか?」


横に目線をやると、いつからか自分を見つめていたらしいジョンシンと目が合った。


「……聞いてる。L/Gって何だ?」
「保証状のことだ。ここに様式があるから……」


ひと通り説明すると、ジョンシンは一人で書類作成にかかった。
それを間違っていないか、横でヨンファが確認する。


ジョンシンと一緒に暮らし始めて三ヶ月が過ぎたが、グンソクとのことがあって以来、相変わらず態度は硬化したままだった。
他の相手に対してはよく話しよく笑っているようだったが、ヨンファの姿を見ると、途端に表情から笑みを消してしまう。
でも、無視をされないだけまだマシかもしれない。


今みたいに会社で会えば話をして、家では必要な時に二言三言の言葉を交わすくらいで、あとは互いに無言状態を貫いている。
当初はヨンファも気を揉んでいたが、そのうち気にしないようにした。
それで、同居生活は十分成り立っている。


ちょうどいい機会だったから、ついでに気になっていたことを訊いてみる。


「今週末の件、分かってるんだろうな?」
「ああ、あの野郎が実家に来る話か」
「おい」


その話題を出すと、ジョンシンの表情が急に険しくなった。
ヨンファは周りを見回しながら、小声でジョンシンを咎める。
近くに本人がいたら、いい気はしないだろう。


「失礼な言い方をするなよ」
「俺は行かないからな。そもそも関係ないだろ」
「関係ないことはない。同席しないと失礼にあたることは、お前だって分かっているはずだ」


ヨンファが立て続けにつらつらと事情を説明するが、ジョンシンは書類作成に集中して、それ以上こちらの言葉に耳を傾けようとしない。こうなると、もう何を言っても無駄だった。
仕事は一人でも大丈夫そうだったため、ヨンファは小さく溜息をついて、6階の自分の部署へと戻った。







*********************************************************************







週末、グンソクを実家に連れて行くと、いるはずのないジョンシンの顔があった。
あれほど行かないと言い張っていたのに、恐らく母親に説得されたのだと容易に想像がつく。
ジョンヒョンとミニョクは父親の会社とは関係ないということで、同席はしなかった。


ジョンシンはお世辞にも機嫌が良いとは言えない顔をしていて、かえってグンソクに失礼だろうと、ヨンファは陽気な母親に目で合図を送る。
しかし、母親は話に夢中になっていて、まったく気付いていないようだった。
ヨンファは会話に参加しながらも、ジョンシンの態度の悪さが気になり、なかなか話に集中できなかった。


「せっかくですが、本当にこれ以上は……」
「あら、遠慮しないで、たくさん召し上がって下さいね」


グンソクと母親の声でハッと我に返り、ヨンファは目の前のチョコレートケーキに意識を戻す。
いつの間にか手が止まっていたらしい。
母親の手料理を一通り食べたあと、デザートとコーヒーを出してくれたのだが、やたらとお替わりを勧めてくる。


「母さんはいつも作りすぎるからな」


斜め前に座っている父親も苦笑いしている。
母親は大層な料理好きで、人にたくさん食べてもらいたいと思っているのか、作る種類も量も多い。
到底食べきれないのだが、今日の母親はいつも以上に腕を振るったに違いない。
やはりグンソクが来てくれたことが、余程嬉しいようだ。


ヨンファはケーキを何とか胃に収めると、先程会話の中で出た二階の書庫にグンソクを案内することにした。
家族全員が所有する書籍、CD、DVD等を保管している場所で、今ではかなりの量になっている。


ドアを開けると、部屋の中は書棚とラックで埋め尽くされていて、滅多に驚かないグンソクが感嘆の声を上げた。
部屋中を興味深げに見渡し、目当てのCDラックの前で立ち止まると、顔を近づけて隅々まで見ている。


「すごい枚数ですね」
「うちの家族は全員音楽好きだから、いろんなジャンルのものがあるんだ。どれでも好きなのを持って行ったらいい」


グンソクは趣味の一つが音楽鑑賞らしく、この部屋の話をしたら見てみたいと言うので、連れてきたというわけだ。
ヨンファも何か持って帰ろうと物色していると、不意に視線を感じて隣を見る。
じっと真っ直ぐにヨンファを見つめてくる黒い双眸に、落ち着かない気分になった。


「そういう格好をしていると、まだ十分学生で通用しますね」
「そうか?言いすぎだろう」


ヨンファは白のサマーニットにジーンズというラフなスタイルだった。
それをグンソクは眩しいものでも見るかのように目を細めて、どこか嬉しそうな表情をする。


グンソクの私服姿は初めて見るが、センスのいい着こなしをしていた。
半袖の黒シャツと白カットソーを合わせ、ベージュのチノパンによく映えている。
ルックスがいいから、何を着ても似合うのだろう。


「今日はせっかくの休みなのに、来てくれてありがとう。いろんな話が聞けて楽しかったよ」


ヨンファが改めて笑顔でそう言うと、突然、温かい腕に抱き締められた。


「グンソク……?」
「すみません。少しこのままで……」


いつもと様子の違うグンソクに言われるがまま、ヨンファは腕の中でじっとしていた。


「私と二歳しか違わないのにいろいろなものを抱え、重圧に耐えながら前向きに努力されている姿を見ていると、堪らなくなります。だから、今日はリラックスしたヨンファさんを見れて良かったです」
「自分の役割だと思ってるからこのくらい平気だ。グンソクがいてくれるから、本当に助かってる」
「はい…」


グンソクの言葉がささくれ立っていた心に沁みて、癒されていくような気がした。
補佐役である彼は入社当初からのヨンファをすべて知っていて、恐らく一番の理解者と言える。
かなりの切れ者で、いつも数歩先を見据えてサポートしてもらい、とても有難く思っている。これから先もこの揺るぎない信頼関係が崩れることはないとヨンファは確信していた。


「そろそろ下に戻るか?」


身体を離そうとすると、目の前に影が迫ってきて、唇に柔らかい温もりが触れた。
まるで硬直したように、ヨンファの身体は動かずに立ち尽くす。
唇はすぐに離れ、グンソクが至近距離からヨンファの瞳を見つめながら囁く。


「貴方が好きです」


それは今まで聞いたことがない、驚くほど優しい声だった。
グンソクの黒い瞳が、愛おしむようにヨンファに向けられている。
出会ってから4年。ずっとヨンファをそばで支え続けてくれている彼が、そういった素振りを見せたことは一度もない。
こんな風に好意を持たれているとは、考えもしなかった。


不思議なことに、グンソクの体温を直に感じても、これといって嫌悪感はない。
ヨンファが目線を上げると、グンソクが少し困ったように眉を寄せながら小さく微笑んだ。


「グン……」


ヨンファが名前を呼ぼうとしたら顏が近づいてきて、再び重ねるだけのキスをされる。
驚いて身を捩ったが、グンソクの両腕が腰に巻きついてきた。


「いつも貴方のことを想っています」


グンソクの真剣な気持ちが流れ込んできて、拒むことができない。
この腕を取れば、ジョンシンを忘れることができるだろうか―――。


ようやく長い暗闇から抜け出せるかもしれないと、ヨンファは初めてそう思った。










午後5時を過ぎた頃、食事会はようやくお開きとなり、三人でタクシーに乗り合わせて帰宅することになった。
ジョンシンが助手席に乗り、ヨンファとグンソクは後部座席へと座る。
とりとめのない雑談をしていると、グンソクのマンションが見えてきた。


「今日はお招き下さり、ありがとうございました」
「休みのところ、時間を割いてもらってすまなかった」
「いいえ。とても楽しかったです。では、また明日」


別れ際、グンソクの視線が熱っぽいように感じたのは、気のせいだろうか。
グンソクは、ジョンシンにも挨拶をして帰って行った。





それから、程なくして二人のマンションに到着した。


今日のジョンシンは同席はしたものの、終始機嫌の悪そうな顔をして、ほとんど会話にも参加しなかった。
それをヨンファは腹立たしく思っていたが、皆の前で醜態を晒すわけにもいかず、ずっと耐えていた。
本当は楽しい気分の余韻に浸ったままでいたかったが、言わないとヨンファの気が済まなくて、帰宅したら説教してやろうと、ずっとこのタイミングを待っていた。


「せっかく来てもらったのに、あの態度はないだろ?」


自室に入るジョンシンを追いかけるようにして、ヨンファはその大きな背中に文句を言った。
ヨンファの方へ向き直ると、硬い表情のままのジョンシンと目が合う。


「別に俺なんかいたって何の意味もなかったじゃねぇか。時間の無駄だったな」
「そんなことはない。いずれお前もグンソクの世話になることだってある。将来的に俺たちのために…」
「俺たちじゃなくて、アンタのためだけだろ?」


ジョンシンの言葉には露骨な険が含まれていて、話し合いにならない。


「しかし、大胆だよな。下に親がいるのに普通するか?」


それが二階でのキスのことを指しているのだと、すぐに分かった。


「……見てたのか…っ」
「見たくて見たんじゃねーよ。あんまり遅いから、お袋に様子を見てくるように言われて仕方なくだ」


ジョンシンがゆっくりとヨンファに歩み寄ってくる。


「実家でするほど飢えてんのかよ。まさかあんなもんを見せられるとはな」


傲然とこちらを見ているジョンシンの態度に、心の中が急速に冷えていくのが分かる。
面白がるように言われて、もうどうでもいい気分になった。どうせ本当に欲しいものは、一生手に入らないのだ。


「どこでしようと俺の勝手だろう」


ヨンファが開き直ると、鋭い双眸はギラギラしてこちらを睨みつけるように射貫いてくる。


「アンタの見た目に釣られただけなんじゃねぇのか」
「それは自分のことを言ってるのか?俺のことを昔から性欲処理の相手としか思ってないんだろうからな」


思いきり嫌味を言ってやると、一瞬のうちにジョンシンの顔が怒りに染まり、パシンと大きな音が響き渡ったと思ったと同時に、左頬に強烈な熱さを感じた。
それがジョンシンに叩かれたことによる痛みだと分かり、ヨンファは言葉を失った。
侮辱された上にこんな仕打ちまでされ、全身が凍りついたように動かない。


だが、手を上げたジョンシンの方が何故かひどく痛そうな顔をしていた。
ヨンファに一瞥をくれて無言で出て行くジョンシンの後ろ姿を、ただ呆然と眺めるしかなかった。


叩かれた頬は確かに痛かったが、精神的なショックの方が何倍も大きく、心の中が空っぽの状態になったような気がした。


やはりどう考えても、この状態で一緒に住むのは無理がある。
そう決断して、ヨンファはすぐに行動を起こすべく、スマホを取り出して母親に電話をかけた。


「……あ、母さん、俺だけど……」


ジョンシンに出て行けとは言いづらい。だから、自分がこのマンションを出ようと思った。
ここより条件は悪くなるが仕方ない。
できるだけ早急に、ジョンシンから離れないと、自分たちの関係はますます悪化するだろう。
どうしても最悪の事態だけは避けたかった。


すぐに関係を修復するのは無理かもしれないが、時間が経てば、また昔のような兄弟に戻れるかもしれない。
その可能性がたとえ1%であったとしても、希望だけは捨てたくなかった。







*********************************************************************







その翌日のことだった。


「すごい雨ですね。弱まるまで、ここで待ちますか?」
「そうだな。今出ると、悲惨なことになるだろうな」


運転席のグンソクと顔を見合わせて、ヨンファは少し様子を見ることにした。
夕方から降り始めた雨は時間を追うごとに激しさを増し、台風並みの強風と暴風雨をもたらしていた。
どうやら爆弾低気圧というものらしい。


自宅マンションに着いた時には、大粒の雨が土砂降りの勢いで降りだし、車から降りただけでずぶ濡れになるのは明白だった。
苦肉の策として車中で少し時間を潰してみたが、一向に弱まる気配はない。


「埒が明かないな。帰ることにするよ。付き合わせて悪かった」
「いいえ。お気を付けて」


車から降りてすぐ傘をさしたが意味をなさず、走ってエントランスに入ったが、ちょっとの距離で濡れ鼠と化してしまった。
暑い時期だから風邪を引く心配はないが、この濡れた服を一刻も早く脱ぎたかった。





鍵を差し入れて回すと、ドアが開いていることに気付いた。
ジョンシンが先に帰宅している。
できるだけ顔を合わせたくないから、一つ息を吐いて、音を立てないようにして中に入った。


洗面所へ直行し、棚の中からバスタオルを取り出すと、ずぶ濡れになった髪の毛や全身を拭いていく。
着替えを取りに自室へ向かうと、リビングの入口にジョンシンが立っていて、一瞬呼吸が止まった。
髪の毛が濡れていることから、同じような目に遭ったことが分かる。


「話があるから、来いよ」


抑揚のない声で言われ、ヨンファは渋々あとに続いた。
明るいリビングで互いに突っ立ったまま、息をすることさえ憚れるような重い沈黙が流れる。
外では雨風がひどくなっている様子で、遠くで落雷の音も聞こえる。


「何だよ。早く着替えたいんだけど……」


剣呑な雰囲気から、穏やかな内容ではないらしい。
ジョンシンは憮然とした顔をして、ヨンファの正面で腕を組んでいる。
昨日の頬と胸がまたズキンと痛み、どうしても目の前の顔を見ることができない。
ろくに視線を合わせないヨンファに、ジョンシンは苛立っているようだった。


「お袋に何を言った?」
「え?」
「ここから出て行くって、どういうことだよ」


どうやら、母親から直接聞いたらしい。
今更ながらに、口止めしておかなかったことを後悔した。


ゆっくりとジョンシンが間合いを詰めてくるから、ヨンファも後ろに下がる。
困惑の色を含んだ声に戸惑いながらも、威圧的なジョンシンの態度に、自然と目が据わるのを感じた。
ジョンシンに視線を向けたまま、ヨンファは強い口調で言う。


「どういうって…言葉通りだ。俺とは一緒に住みたくないだろうから、出て行くことにした」
「……アイツのところに行くのか?」


それが誰のことを指しているのかは、言われなくてもすぐに分かった。
とんだ勘違いに、呆れてものが言えない。どうしてそういう考えになるのか。
母親からすべてのことを聞いているんじゃないのだろうか。


ジョンシンがヨンファの方ににじり寄ってくる。
あまりにも一方的で癪だったから、ヨンファはそれに乗っかることにした。


「それもいいかもな。ここに連れ込まなきゃ、何やったっていいんだろう?俺が一緒に住みたいって言えば、グンソクだって了承してくれるさ」
「……………」


グンソクには申し訳なかったが、顔を強張らせているジョンシンを見て、胸のすく思いがした。
明日にでも、一言詫びを入れておこう。


「話が終わったんなら、もういいな」


横をすり抜けようとした時、いきなり肘を強く掴まれた。
ギョッとすると、肩を押されてリビングの隅に追い詰められる。


「行かせない」
「は?」


ジョンシンが眦を吊り上げて睨みつけてくる。
目の色を変えて、いつにない迫力に、ヨンファは一瞬たじろいだ。
何故こんなにも怒りに支配されているのか、ジョンシンの言動がまったく分からない。


昨日、嫌悪感丸出しで叩いておきながら、どうして出て行こうとするのを止めようとするのか。
顔の底に憤りを湛えながら。
それは、まるで嫉妬しているみたいに―――。
有り得ない考えがヨンファの頭に浮かび、即座に否定した。


―――馬鹿な。そんな感情をジョンシンが自分に対して持つはずがない。


まだ懲りずに、都合の良いように解釈する自分に笑えてくる。


渾身の力で抵抗してジョンシンの身体から逃れようとすると、乱暴に身体を押されて、後ろの壁に激突して一瞬息が止まる。


「………っ」


痛みで呻き声を漏らしていると、ヨンファを囲い込むようにジョンシンは壁に両手をついた。
ジョンシンの胸に閉じ込められ、鼻先が触れるほど顔を寄せられて、逃げ場を失ってしまう。


この光景には見覚えがある。
そうだ。初めてキスをされた6年前と同じ―――。
それに思い至った瞬間、リビングの温度が急に下がったような錯覚に襲われた。


「……お前のやってることは滅茶苦茶だっ。後悔してるって自分で言ったんだろう!」


ヨンファは大きな声を上げて、思いきりジョンシンの胸を押す。
その時、外がピカッと光り、数秒後に大きな落雷の音が鳴り響くと、家中の電気が一斉に消えた。
二人の間にある均衡が崩れて、張り詰めていた空気を一瞬のうちに変えるには充分だった。
真っ暗な中、目線を合わせるように腰を屈めてきて、強く顎を掴まれる。


「……怖いのか?」
「は、なせよっ」


ヨンファは乱暴にその手を払い除けた。


―――冗談じゃない。また同じことを繰り返すなんて、絶対に嫌だ。


「ずっとアイツに可愛がられてたのか?ソヒョンと付き合ったんじゃなかったのか?」
「ソヒョ…ン?彼女とは、今でもいい友人だ」
「じゃあ、男に宗旨替えしたのか?俺が教えてやったから」
「い……かげんに…し……っ」


抗議の言葉を発した途端、いきなり唇を塞がれた。
抗った腕は両手に拘束され、背後の壁に押し付けられたが、暗くて周りがよく見えない。
ヨンファは必死に顔を背けようとしたが、ジョンシンの舌が強引に唇の間を割って入ってくる。
逃げようとするヨンファの舌を追い、絡みついて強く吸い上げる。その激しさに、ヨンファは震えた。


「また…6年前と同じことを繰り返すのか……?」
「繰り返すんじゃない。新しく関係を作るんだ」


ジョンシンの台詞に思わず耳を疑った。自分の身に起きていることが信じられない。
何か得体の知れないものを感じて背筋が震えた。


「そんなことをして、何の意味がある?俺は御免だ。他を当たれよっ」


そもそもアメリカに恋人がいるんじゃないのか。
ジョンシンの真意が推し量れずヨンファが困惑していると、再び部屋が明るくなった。


「……やらせろよ」


ジョンシンはヨンファを見下ろしながら唇の端を歪めた。
その言い方に、横っ面を思いきり張られたようなショックを受けた。
どうやってもジョンシンにとって自分は、欲望の捌け口としての存在でしかないのか―――。


雨と風が相当激しく窓ガラスを叩く。
必死で胸板を押し返した手首を簡単に捕えられる。再び壁に押さえつけられて、身動きひとつ取れなくなった。
ジョンシンの鍛え上げられた身体は、腕も肩も背中も以前より逞しくなっていた。


「お前っ…まさか……」


ヨンファは絶句した。
―――ここで、事に及ぼうとしているのか?


「ベッドの方が良かったか?」


ジョンシンはヨンファに口付けると、思うさま唇を貪りながらヨンファの抵抗が弱まるのを待った。
そして頃合いを見て、性急な手つきでベルトを外しスラックスを引き下ろすと、力任せに服を剥ぎ取っていく。
あまりの激しさに恐怖すら感じてしまう。


フローリングの上に座り込んだジョンシンの膝の上に無理矢理座らされ、完全に壁との間に挟まれた。
身を捩り、相手の腕から逃れようともがくが、ヨンファを力尽くで押さえつけ、強引に唇を合わせてくる。
獰猛な唇はヨンファの口腔内を荒々しく貪り、逃げ惑う舌を追いかけ執拗に吸い上げた。
その瞬間、身体の奥に指を押し入れられ、ヨンファは目を見開く。


「嫌だ……っ」


入口付近の浅いところを出入りする生々しい感触に、何度も首を横に振る。
徐々に指は奥深く入っていき、内壁を緩やかに掻き回すようにされると、覚えのある感覚が蘇ってきた。


こんな状態で快感など得たくないのに、濡れた音とともにリズミカルに動く指に翻弄され、ヨンファの腰は勝手に揺れ始めた。
それを合図に、ジーッとファスナーを下ろす音が響く。
ジョンシンは服を着たままジーンズの前だけを開いた。


熱くそそり立ったものを取り出し、容赦なくヨンファを貫こうとして、それを避けようと最後の抵抗で身体を浮かせる。
そうさせまいとジョンシンは両手で細い腰を引き戻し、一気に押し入ろうと下肢の間に熱い塊が押し当てられた。


「痛っ……やめ…っ……無理…っ」


強引な力で、昂ぶりが少しずつめり込んで、身体の中に侵入してくる。


「……ッ……あ……!」


奥を押し広げられる痛みに、ヨンファは顎を仰け反らせて唇を強く噛み締める。
指とはまったく違う大きさに、意識が飛びそうになった。
それでもジョンシンは、お構いなしに腰を使って揺さぶってくる。


「グンソクに…可愛がられてる割には狭いな……っ」


当たり前だ。お前しか知らないのに……。
見当違いなことを言われて、胸までギシギシと軋んでくる。


辛うじて脱がされずにいたシャツのボタンに手をかけられ、僅かばかりの抵抗を試みたが、すべて外されて前を大きくはだけられた。


「ここを可愛がったら、キュッと締めつけてきたよな」


指先で胸の先端を捏ねくり回されると、薄紅色の突起は次第に存在を主張してきて、ヨンファは唇を引き結んで必死に堪える。
慣れた手管と巧みなリードに、ジョンシンの6年間を垣間見たような気がした。


「前よりもっと絡みついてくるって、どれだけ開発されたんだ?」


下から突き上げられ、壁に頭や背中がぶつかる鈍い音と、下半身を打ちつけられる音が響く。
明るいリビングの中で、無様な格好で弟に犯されるなんて、こんな屈辱はなかった。
無意識にずり上がろうとする腰をガッチリと押さえつけられ、逃げることも叶わない。


「食いついて離さないじゃねぇか。これがそんなにいいか。突っ込まれるなら誰でもいいんだろ?」
「ンッ……あぁ……っ」


強い力で腰を掴まれ、抉るような抽挿が繰り返され、頭の中が真っ白になっていく。
悲惨な目に遭っているのは自分の方なのに、痛みを与えているジョンシンの方が辛そうな顔をしているのはどうしてだろう。


「ヨンファ……」


散々酷い言葉を投げつけられているのに、熱っぽい息を吐きながら名前を呼ばれる時だけジョンシンの声色が変わり、愛されているのではないかと、また変な錯覚をしてしまう。
しかし、期待をしたところで、所詮セックスしている間だけの戯れ事だということもよく分かっている。


羞恥と屈辱にまみれた状況の中で、無理矢理抱かれているにもかかわらず、快楽を感じる自分に心底吐き気がした。
いっそ狂ってしまえばいいのに―――。


激しく抜き差しされながら、駆けあがって頂上まで追い詰められる。


荒々しく腰を使われ、ほぼ同時に達したのが分かると、ヨンファは完全に意識を失った。










どのくらい時間が経ったのだろうか。
目を覚ますと、ジョンシンの姿はどこにもなく、身体にはタオルケットが掛けられていた。
ヨンファの視線はしばらくぼんやりと宙を彷徨い、その瞳にはもはや何も映ってはいなかった。


6年前のような満ち足りた幸せは、一片も感じなかった。
ジョンシンの欲望の赴くまま、ただ犯されただけ。
荒々しい愛撫と冷たい眼差しは、ヨンファの身体だけでなく、心までもズタズタに傷付けた。
力尽くで屈服させられ、言いようのない虚しさで、ヨンファはもう何も考えられなくなっていた。


もう一秒たりともここにはいられない。
その時、微かにバスルームから音が聞こえた。
ジョンシンがシャワーを浴びているのだろう。その隙に、一刻も早くここから離れなくては。


軋むような痛みを堪えて身体を起こすと、下肢に鈍痛が走る。
ヨンファは床に散らばっていた濡れた服を何とか身に着け、震える膝を伸ばして立ち上がると、少しずつ歩を進める。


のろのろとした足取りでマンションを出ると、勢いは大分衰えていたが、まだ雨は降り続いていた。
あの場に居たくなくて考えもなしに飛び出してきたが、ヨンファが行くところと言えば実家くらいしかない。
ちょうど通りかかったタクシーに乗ったはいいが、このままの姿を両親に見せるわけにもいかず、思案してから運転手に行き先を告げた。


10分ほど走ると、ある場所に着いた。
昨日来たばかりだから、場所はよく覚えている。


真新しいマンションを見上げ、ヨンファは徐にスマホを取り出して、その番号を画面に表示させた。
まだ起きているだろうか。
断られる可能性が高いかもしれないと一瞬躊躇したが、藁にも縋る思いで電話をかけてみる。
すると、数回のコール音で相手が出た。


「ヨンファさん?どうかしましたか?」


冷静沈着な中に優しさが滲み出ているグンソクの声を聞いて、ヨンファは涙が出そうになった。


「ごめっ……こんな…遅く……」
「何かあったんですかっ?今、どこからかけているんです?」


ヨンファの声で尋常ではないと分かったようで、いつもは落ち着き払っているグンソクが取り乱し、非常識な時間なのに迷惑がりもせず心配してくれる。
何だか救われたような気がした。


「グンソクの…マンションの下にいる……」
「え……」
「……今夜、泊めてくれないか?」


電話の向こうから、グンソクの息を呑む気配がした。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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