CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 98

2020年06月15日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 0






ジョンヒョンが裏口のドアを開けて建物から出るなり、外の冷気がすうっと入ってきて、あとに続いていたヨンファの頬を撫でた。
咄嗟にコートの襟に巻きつけたマフラーに顔を埋めたものの、温まっていた身体がぶるっと震える。
午前零時を回ったマンション周辺はしんとした静寂に包まれており、聞こえるのはふたりの足音だけだった。
幹線道路から外れた場所に位置しているため、昼夜を問わず車の通りが少ないのだ。


美しい星々が瞬いている澄み渡った夜空の下、ふと目を凝らしてみれば、ジョンヒョンの愛車――黒いメルセデス・ベンツSクラスは公道の路肩に停められていた。
街灯から少し離れているせいか、見事に暗闇に溶け込んでいるように見える。


「じゃあ、隣に乗ってくれ」
「……ああ」


ロックが外れる音がして、寄り添うように歩いていたジョンヒョンに促されるまま、ヨンファは助手席に乗り込んだ。
シートベルトを装着したタイミングでエンジンがかかり、車がゆっくりと走り出す。
ジョンヒョンの車に乗るのは、送迎警護してもらっていた時以来だ。


自分から言い出したとはいえ、まさか急にこんな展開になるとは思ってもみなかった。
断わられる可能性があることを前提に、また機会があれば……という意味合いで勢いに任せて思いを伝えたところ、即座に快く了承したジョンヒョンから『今から行こう』と突として提案された。
あまりにもあっさりと進むので、逆に驚いたのはヨンファの方だ。
反射的に頷くやいなや、生産性が高い男の行動は迷いなく素早かった。
話が決まってからふたりの身支度が完了するまで、五分もかからなかっただろう。
予想外の成り行きに驚きつつも、いかにも無駄のないジョンヒョンらしいと思った。


そっと運転席を窺うと、当の本人は慣れた手つきでステアリングを操作しながらアクセルを踏み込んでいる。
時折、対向車のヘッドライトに照らされて、彫りの深い精悍な顔立ちが暗い車内に浮かび上がった。
高い鼻梁、シャープな顎のライン、尖った喉仏。
真っすぐに前方を見据えている横顔は、いつもと変わりなく落ち着き払っている。


「……本当に迷惑じゃないか?」


せっかくヨンファの自宅でゆったりと寛いでいたところだったのに……、とクリアになってきた頭で申し訳ないような気持ちになった。
遠慮がちに問いかければ、ジョンヒョンはちらりとこちらに目を向けてくる。


「それはない」


瞬間的に視線が絡み合うのと同時に端的に否定され、再び前を向いて続けた。


「あんまり居心地がいいから、俺の方が押しかけてばかりだったな。うちに来てもらうという発想がそもそもなかった。何もなくて退屈かもしれんが……」


見慣れたポーカーフェイスなのに、纏っている空気はひどく柔らかくて、必要以上に言葉にされなくてもジョンヒョンの想いは伝わってくる。
思い切って口に出してよかったかもしれない……、とヨンファはシートに深く凭れたまま、通り沿いにある建物に心が浮き立つようなクリスマスイルミネーションが煌々と輝いているのを車窓越しに眺めた。
日付が変わってクリスマス当日ということもあり、深夜にもかかわらずやはり普段よりも交通量は多い。
ジョンヒョンが比較的空いた道を選んでいるせいか、ヨンファが診療所から帰宅した時に比べれば割とスムーズに流れている方かもしれない。


「まだ若干混んでいるんだな。仕事終わりはもっとひどかったけど」
「この二日間はどうしても毎年混雑する。今日が公休日だけに、羽目を外してオールナイトで過ごす連中も多いしな」


さらりと言うジョンヒョンと取り留めのない話をしながら、ヨンファは助手席の窓の外に流れていく、色鮮やかにライトアップされた夜の街並みを目で追いかけた。
車で三十分ほど走ると、高層ビルや高級マンションが建ち並ぶ江南エリアの一等地へと入る。
ほどなくして、洗練された外観の高層タワーマンションがフロントガラスの向こうに聳え立つのが見え、瞬く間に近づいたかと思った刹那、減速したメルセデスは敷地内の地下駐車場へと滑り込んだ。
登録車両として識別される仕組みになっているのか、出入り口に近づいた途端、設置されたシャッターゲートが自動開閉する。
そのまま真っすぐ進んでいき、ゆっくりとスピードを落として所定の場所に停められた。


裏社会で生きる者たちの懐具合をよく知らないが、二十七という年齢でありながら、こういうところに住めるだけの待遇を受けている男なのだと、今さらのように驚く。
やや気後れしてしまい、車を降りるのを一瞬躊躇した時、エンジンを切ったジョンヒョンがシートベルトを外す音がした。


「どうした? 降りないのか?」
「あ、ああ……」


横から不思議そうに低く尋ねられ、ヨンファは助手席側のドアを開けて降車する。
黒いロングコートを翻して近づいてきたジョンヒョンに伴われながら歩き、サブエントランスらしき出入り口から中に入った。
オートロック操作盤にジョンヒョンが手をかざすと、かすかなモーター音とともに扉が解錠される。
豪奢な建物内に足を踏み入れたヨンファは幾分緊張気味に周囲を見回すものの、時刻が時刻なだけに人気もなく閑散としていた。


エレベーターホールを横切り、直通らしいエレベーターの前でも同様に操作するのをヨンファはそばで眺める。
オートロックシステムは日々進化していると言われており、いわゆる生体認証装置の指紋読み取り部分に指を滑らせるだけで、精確な本人確認ができるのだろう。
ジョンヒョンがこのタワーマンションを選んだということは、さぞ厳重なセキュリティ体制がとられているに違いない。


ドアが開いたのを見て乗り込み、ジョンヒョンが三十九階のボタンを押す。
静かに上昇していく中、ヨンファはいつになく気が張っていた。
最上階でエレベーターを降りたジョンヒョンについてカーペット敷きの内廊下を真っすぐ歩き、じきに足を止める。
どうやら、一フロアに二住戸しかないようだ。
さりげなく訊いてみると、隣の住人は南部洞組の幹部だと教えてくれた。


ドアハンドルに手をかけた途端、オートロックが解除され、ドアを大きく開けたジョンヒョンに目顏で促されて室内に入る。
柔らかな照明が淡く照らす、開放感のあるゆったりとした玄関ホールはシックかつモダンな佇まいで、オンドルによって心地よく暖められていた。
足許の床材と視線の先まで続く長い廊下は黒で統一されていて、すべて天然大理石だと思われる。


ジョンヒョンに案内されて向かったのは、リビングスペースらしき部屋だ。
全体的にダークトーンで纏められた、落ち着いた雰囲気のスタイリッシュな空間は驚くほど広い。
気圧されたように周囲に視線を巡らせると、ゆったりとした革張りのソファや肘掛け椅子、中央に据えられたローテーブルに観葉植物など、センスよく配置された様々な調度品はどれもシンプルながら高級感が漂っていた。
まるで一流ホテルのスイートルーム並みに一分の隙もなく、何もかもが完璧なくらい整っているため、かえって無機的な印象を受けてしまう。
その時、静寂を破るように聞き慣れた電子音が鳴り響いた。


「ちょっと、すまん」


一言断って、コートのポケットからスマートフォンを取り出したジョンヒョンが画面に視線を落とすなり、仕事時の顔つきになったのに気づく。


「俺だ。――そうか……わかった」


スマートフォンをさっと耳に当てたジョンヒョンは表情ひとつ変えることなく、クールに対応している。


「いや、指示した通りにやれば問題ない。何か動きがあったら、すぐに知らせてくれ。それと――」


通話の邪魔にならないようにヨンファがその場から離れると、ジョンヒョンは話しながら広々としたリビングを足早に横切って、奥のスペースへと姿を消した。
急に手持ち無沙汰になってしまい、ヨンファは落ち着かない気分で脱いだコートとマフラーを座り心地のよさそうなソファの背凭れにかける。
そして、壁一面のFIX窓に引き寄せられるように近づき、ガラスの向こうに映る見事な夜景に目を瞠った。

  
地上約200メートルといったところだろうか。
眼下に美しく広がっている眩いばかりの光の渦を見つめたまま、知らず知らずのうちに溜息がこぼれていた。
まさに、宝石箱をひっくり返したような夜景だ。
あたかも時間が止まったかのように身じろぎひとつせずに、しばらくぼんやりと魅入っていたヨンファの意識を引き戻したのはジョンヒョンの足音だった。
通話時間は、三分にも満たなかったかもしれない。


「ヨンファ、酒でも飲むか?」


ついでにコートと上着をクローゼットに収めてきたのか、ワイシャツにスラックス姿になった男にいきなり尋ねられた。


「え? ああ……、そうだな。何がある?」
「こっちに来て、選んでくれないか」


窓辺から離れてジョンヒョンの傍らまで歩み寄ると、シーザーストーン仕様のオープンカウンターキッチンのスペースの一角に、ダークカラーの扉式収納キャビネットが設置してある。
ガラスショーケースになっており、右側はずらりと並んだ酒のボトルと様々な種類のグラスがディスプレイされ、左側は温度設定が異なる二段式のワインセラーになっていた。
ブランデー、ウイスキー、ワイン、シャンパン、マッコリ、ソジュなど多種多様だ。


「えっ、こんなにあるのか。すごいな。ちょっとしたホームバーみたいだ」
「たまにうちの者たちが来るんで、ひと通り揃えているんだ。ビールがよければ、冷蔵庫にバドワイザーとハイネケンがあるが」


かなりの品揃えを前にして、ジョンシンが飲み屋と勘違いしている、というミニョクの言葉を思い出したヨンファはなるほどと納得した。
あれこれと目移りしてしまって迷ったものの、結局、クリスマスだからシャンパンにしようかとふたりの意見が一致する。
ワインセラーの中からモエ・エ・シャンドンをチョイスし、大量の氷と水を入れたシャンパンクーラーで三十分ほど冷やすことにした。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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