CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 94

2020年04月24日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 2






まるで悪い夢でも見ているようだった。
どうやら、よかれと思ってしたことが逆に仇となってしまったらしい。
ドラマのようなあり得ない展開に、どうしていつもこうなるんだ……、とヨンファは頭を抱えたくなった。
自分のいないところでジョンシンが組員たちとそんな会話に興じ、しかも、その場にいたジョンヒョンも一部始終を見聞きしていたとは――。
思いもよらない事実を知って絶句したヨンファは、これまた面倒なことになったものだと内心で密かに溜息をついた。


「よくもこの俺を散々コケにしてくれたな」とジョンヒョンは怒気を孕んだ声色で激高したきり黙り込み、その迫力にたじろいだヨンファを物言いたげに見つめてくる。
超絶に機嫌を損ねているのは、火を見るよりも明らかだ。
居心地の悪さはもちろんのこと、何とも言いようのない気まずさが辺りに漂い、今さらながらに顏が引き攣った。
ジョンヒョンの怒りの矛先はジョンシンだけなのか、はたまたヨンファにも向けられているのか。
間違いなく両方だろうな……、と隣の仏頂面からそれとなく目線を外し、ちょうど視界に入ってきたコーヒーカップの中身が空なのを思い出した。


「あっ、ええと……、コーヒーのお替わりはいるか?」


ふたりの間の微妙な空気を少しでも払拭したかったので、何とか穏便にやり過ごせればと祈るような気持ちで尋ねてみる。


「いや、もう十分だ」


極力明るい口調で笑みまで浮かべたのに、憮然とした面持ちでにべもなく返されてあえなく撃沈した。
身の置き所のなさに、ヨンファはわずかに残っていたコーヒーにぎこちなく口をつける。
さて、どうしたものか……。
落ち着かない気分で言葉を探しながら中身を飲み干し、目の前のローテーブルにマグカップを置いたタイミングで、待ち構えていたようにジョンヒョンがぼそりと言う。


「俺も焼きが回ったのかもしれんな」
「――え?」
「最近おとなしかったから、ようやくお邪魔虫の駆除から解放されると喜んでいたんだがな。見通しが甘かったか」


誰もが認める、彫りの深い精悍な貌をした男はひとつ大きく息を吐いたかと思うと、さも面白くなさそうに容赦のない台詞を吐き捨てた。


「ヒョニ、それはいくらなんでも言い過ぎだろ」
「本当のことを言って何が悪い。そもそも成り行きとはいえ、診察だけじゃなく往復の送迎も引き受けるって少し過保護すぎるんじゃないか? いい歳をした男にそこまでする必要があるのか」


納得できないと言わんばかりに、眉間の皺を深くしたジョンヒョンは苦々しげに反論してくる。


「高熱だったら、自分で運転できないだろう」
「タクシーを呼べば問題ない」
「そうは言っても、すごくつらそうだったんだぞ」
「舎弟に頼めばいいだけの話だ。ヨンファが優しいから、これ幸いとすぐ図に乗る。アイツはそういう男だ」


軽く肩を竦めながら、不快感を露わにした顔でばっさりと切り捨てられ、二の句が継げなくなった。
頭の回転が速いだけあって、巧みな切り返しに舌を巻く。
              

「ああいう流れから、見過ごせるわけないだろ。それだと、俺はただの人非人になってしまう。――第一、ヒョニが心配するようなことは何もなかった」
「当たり前だ。あってたまるか」


できるだけ冷静に答えるヨンファとは対照的に、苦い表情のジョンヒョンは遠慮など微塵もない様子でちくりちくりと毒を吐きまくる。
  

「……それで、またホストクラブと同じように写真を撮られたのか」
「まさか。診察しただけだ」
「でも、アイツに白衣姿を見せたんだろう?」


ヒートアップしている男に何か言っても虚しく玉砕するばかりで、さすがのヨンファもほとほと途方に暮れた。


「まあ……、仕事着だからな」
「俺は金髪のヨンファと写真も撮っていないし、白衣姿を見たのだって大学病院でたった一回きりだぞ。俺を差し置いて、なんでアイツばっかりいい思いをしているんだ。どう考えてもおかしいだろ」


顔を顰めていたジョンヒョンは聞えよがしにふうっと息を大きく吐き出し、眉間のあたりを指で揉んでいる。
愚痴めいた言い分はあまりにも赤裸々すぎて、ヨンファはくらくらと軽い目眩に襲われそうになった。
どうにかして穏便にその場を収めようと試みても、取りつく島もない態度に次第に気力が萎えかけた時だ。
突然何を思ったのか、おもむろに下を向いたジョンヒョンが無言でワイシャツのボタンを外しだした。


「……ヒョニ?」


呆然と瞬くヨンファの前で無造作にシャツの前立てを大きく開き、逞しく鍛え抜かれた胸許を惜しげもなく露わにする。


「俺も診察してくれ」


何の前触れもなく真顔で告げられて、は……?と目が点になった。


「急に気分が悪くなった。自律神経が乱れて交感神経が活発になったせいで、心拍数や血圧が上昇しているはずだ」
「――いきなり何を言い出すんだ。冗談が過ぎるぞ」


医学用語を並べ立てながらも的を射た訴えに、思いきり面食らってしまう。


「冗談なんかじゃない。俺は至って大真面目だ」


呆気に取られるヨンファを真っすぐ見据えたまま迷いなく言い切られ、やれやれとこっそり息を吐いた。
いつも泰然と構えていて、こんなふうに不可解な振る舞いをする男ではないだけに、もはや意地になっているとしか思えない。


「あいにく、ここには聴診器がないから診察できないんだ」
「じゃあ、触診でもいい」


そう言うが早いか、横から伸びてきた手にやすやすと手首を掴まれた。
え……、と狼狽えるヨンファをよそに、平然としたジョンヒョンは素早い動きで厚みのある自分の胸を触らせる。  
まさかの行動に出られて反射的に手を引っ込めようとしたが、びくともしない上にさらにぎゅっと強く掴み直されてしまった。


「ちょっ……、ヒョニ……っ」


引き締まった硬い胸板は温かくて、一定のリズムを刻む心臓の鼓動がじかに手のひらに伝わってくる。
戸惑うヨンファの心情を知ってか知らずか、ジョンヒョンは眉ひとつ動かさずにこちらを見ていた。


「アイツにも、べたべた触ったんだろうが」
「べたべたって……、そういう言い方は語弊がある。リンパ節とかの腫れはどうしても手で触って確認しないと。医師なら誰でもそうする」
「――………」


どこか拗ねたような物言いに平静を装って答えたものの、張り詰めた筋肉の弾力までリアルに感じられて、じんわりと顔が熱くなってくる。
隙を狙ってやんわりと離れようと試みても、ジョンヒョンは有無を言わさぬ力でしっかりと握り締めたまま離そうとしなかった。
ジョンシンに対抗しているのか、普段落ち着き払っている男がこんな大人げない真似をするとは、誰が想像できただろう。


「だから、そんなことでいちいち目くじらを立てるなよ」
「……そんなこと? 俺にとっては、そんなことじゃない」


すっかりムキになっているらしく、クールな見た目に反して、まるで駄々を捏ねている子供のようだった。
常に冷静沈着で誇り高き男は、人前で弱みを見せることは皆無だ。
大学進学を断念して極道の道に進むことを独りで決断し、その五年後に若頭補佐の地位に上り詰めたことは並大抵の努力では成し遂げられない。
そんなジョンヒョンが飾り気のないプライベートな姿を見せるのも、こんなふうにストレートに感情をぶつけてくるのも恐らく自分に対してだけだと、なんだか面映ゆい気分になった。
邪推する必要がないくらい他へ気持ちが移ることはないというのに……、とふっと笑みがこぼれる。


「とにかく落ち着けよ。身体を冷やしたらどうするんだ。柔道を習い始める前は、毎年冬になると熱を出していたじゃないか」


いくらオンドルで室内が暖かいとはいえ、十二月も後半に差しかかっているのだ。
捕らわれていない方の手で大きくはだけたままのシャツの襟許や前立てを掻き寄せてやると、ジョンヒョンはわずかに驚いたように目を見開いた。


「……いったい、いつの話だ。そんな大昔のガキの頃のことなんか、とっとと忘れてくれ」


本人にとっては屈辱の記憶でしかないのか、いつになく嫌そうに口許を歪めている。


「なんだよ。俺が世話したの、覚えているだろう? 風邪をひくと大抵食欲が落ちてみるみるやつれるから、これでも結構心配していたんだぞ」


そう言いながら、ふいに当時のジョンヒョンの幼い顔が脳裏に浮かんだ。
色白で線が細く、欧米人の血が混じっているのではと誰しも思うくらいのはっきりとした目鼻立ち。
どことなく中性的で、周囲の目を引くほどのエキゾチックな容貌ゆえに、ヨンファと同じ小学校に転校したその日から女の子たちの関心を一気に攫っていた。
突然の交通事故で両親を亡くし、八歳の時にジョン家に引き取られて同じ屋根の下で暮らすようになったジョンヒョンは、冬になると熱を出して寝込むことがあったのだ。
風邪がうつることを危惧してか、部屋住みの組員たちには止められたが、ヨンファはこっそりとジョンヒョンの部屋に様子を見に行っていたのを思い出す。


あれは――、ヨンファが五年生で、ジョンヒョンが四年生の冬休みの出来事だった。





To be continued





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(2)

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/04/26 (Sun) 22:02
haru

haru

ふ*******さん

こんばんは♡

笑ってやって下さい(笑)
コミカルな感じで書いたので、吹き出してもらって何よりです♪
ジョンヒョンのささやかな逆襲といいますか、ヨンファを困らせてそのリアクションを見たいという意図があったのと、男は好きな相手の前では子供っぽい一面を出してしまうものだからと、ちょっと悪ノリしました。
本来は話の中で説明すべきなんですが、ヨン視点が続くため、ここでバラしちゃいました( ̄ω ̄;)
子供時代のシーンもほんの少しだけ入れているので、楽しんでもらえたら嬉しいです。
近日中にアップできればと思っています。

先が見えない状況が続きますが、お互い気をつけながらこの困難を乗り切りましょうね♡♡

2020/04/27 (Mon) 21:04