CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 24

2020年03月17日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 4






翌日の土曜日、自宅のローテーブルで仕事をしていると、ふいに玄関のドアが開閉する音がした。
マウスに手を乗せたままノートパソコンのディスプレイを注視していたヨンファは、反射的にぱっと顔を上げる。
インターホンを鳴らさずに入ってくる人間はヨンファの知る限り、この世にひとりしかいない。
続く足音に誘われるように目を向ければ、お馴染みの長身が勝手知ったるとばかりに部屋に上がり込んできた。


「そろそろメシにするか? いつでも食えるぞ」


言わずもがな、隣人のジョンシンだ。
少し厚手の黒ニットにジーンズというラフな服装をした男は、仕事中のヨンファの傍らまで近寄ってくる。


「ああ、ありがとう。今、行く」


二つ返事で頷くと、目許を和らげたジョンシンはゆらりと踵を返した。
ちらっと目をやったディスプレイの時刻が18時30分を過ぎているのを確認して、入力中のデータを上書き保存したヨンファはほっと一息つく。
のどかな休日のはずが、食事の時以外は双方ともに各々の部屋に籠って持ち帰りの仕事に専念していたので、結局のところ、平日とさほど変わらない何とも味気ないクリスマス・イブだ。
海外の金融マーケットの情報収集や、月曜日に提出するFXレポートの作成などに時間を費やしていたヨンファは、ローテーブルの上に無造作に広げていた書類を掻き集め、ノートパソコンの横に重ねて置く。


腰を上げて何げに窓の方へ視線を巡らせると、外はとうに闇に沈んでいた。
カーテンを引こうと窓辺に立てば、寒々とした空の下、色とりどりの煌びやかなイルミネーションによって街中が美しくライトアップされているのが見える。
いつもと同じ景色がまるで幻想的な別世界のようで、これだけでも充分クリスマス気分が味わえた。
少しばかり心が和んだヨンファはカードキーとスマートフォンを手にして、先に戻ったジョンシンのあとを追うように隣室へ向かう。


リビングに足を踏み入れると、キッチンスペースに立っていたジョンシンがオーブンから天板を取り出すところだった。
食欲をそそる香ばしい匂いに引き寄せられ、作業の邪魔にならないようにそろりと近づく。
ヨンファの視界に飛び込んできたのはほのかな湯気を立ち上らせている、こんがりといい色に焼けたローストチキンだ。
見るからに皮がパリパリで、これは絶対に美味しいはずだと確信する。
しかも、驚いたことに、テーブルの上にはすでにいくつもの彩りのいい豪華な料理が並べられていて、あまりの思いがけなさにヨンファは目を丸くした。


「うわっ、旨そう。どうしたんだよ、このご馳走」
「今日ぐらいはな。気分だけでもと思って、それっぽいのにしてみた」


何も聞かされていなかったので、いつの間に……、と呆然と見入っていたヨンファは、あっさりした返答にさらに面食らう。


「――これ、まさかお前が全部作ったのか? デリバリーとかテイクアウトじゃなくて?」
「まあな。簡単に作れるものばかりだが」
「へぇ……。すごいなぁ、こんなにたくさん。手間がかかったんじゃないか? 言ってくれれば、俺も手伝ったのに」


純粋に感嘆したヨンファがそう呟くと、ジョンシンは広い肩を軽く竦めてみせた。


「いや。ローストチキンはタレに漬け込んでオーブンで焼いただけだし、他のも短時間でできたんでな」
「仕事で忙しい中、悪かったな」
「いいって。俺も好きでやってんだから」


なんてことないと事もなげに言ってのけるジョンシンは、いつも通りの飄々とした態度でローストチキンを手際よく皿に盛りつけていく。
一緒に食事をした焼肉店では、あれほどクリスマスに関心がなさそうだったのに……。
いい意味で、ヨンファの予想をことごとく裏切る男だ。
こちらもクリスマスに思い入れがあるわけではなかったが、取り立てて言わなくても、ヨンファを喜ばそうと仕事の合間に用意してくれたのだとわかり、いかにもジョンシンらしい粋な計らいが有難かった。


何事もそつなくこなすジョンシンの冷蔵庫にはミッパンチャンが常備されているのはもちろんのこと、冷凍庫にも下ごしらえ済みの食材を小分けにしたものが大量にストックしてある。
時間がある時にまとめて作り置きなり準備しておけば、仮に忙しくてもいつでも作りたてが食べられるだけでなく、調理時間の短縮や食費の節約にも繋がるといった思考が当たり前のように習慣化しているのだろう。


ジョンシンの厚意につい甘えてしまい、比率で言うと、九対一くらいの割合で手料理をご馳走になっているので、その代わりにヨンファも定期的に材料費を多めに出している。
いくら簡単だとか短時間でできると言われたところで、頭では理解できても自分には到底真似できない。
別段料理が苦手ということはないものの、必要に迫られて仕方なくといった感が否めず、やはり人には向き不向きがあるのだ。


「なんか……急にワインが飲みたくなってきたな」


申し訳なさを感じつつ、絵に描いたような完璧なクリスマスディナーを改めて感心しながら眺めていると、思わずぽろりと言葉がこぼれてしまった。
すると、ヨンファに視線を向けていたジョンシンはおもむろに冷蔵庫を開けて、「リースリングなら冷やしているぞ」と言いながらワインボトルを掲げて見せる。


「――お前、なんでそんなにやることなすこと抜かりがないんだよ」


今まさに、頭の中で思い浮かべていた白ワインの登場に俄然テンションが上がり、思い切り顔が綻んだ。
この押しつけがましくない優しさと絶妙な気遣いがほどよい距離感と相まって、ジョンシンのそばはたまらなく居心地がいいのだ。
ヨンファの言い方が可笑しかったのか、目を細めたジョンシンは口の端で笑う。


「そりゃあ、まあ……、喜んでほしいからな」


こちらのことをすべて把握しているのではないかと思うくらい、痒い所に手が届くような行動を平然とやってのける男のお陰で幸せな気分になった。
「手伝うよ」と言って、ヨンファはトレイに載せたふたり分のワイングラスと取り皿をテーブルに置いていく。
座るよう促されるまま席につくと、ワインオープナーを手にしたジョンシンも真向かいの椅子に腰を下ろした。


焼き上がったばかりのローストチキンの他にカマンベールと生ハムのピンチョス、トマトとバジルのブルスケッタ、シーフードのアヒージョ、アボカドとサーモンのサラダ、そして、よく冷えたリースリング。
ジョンシンの手料理は相変わらずどれも美味で、白ワインとの相性も抜群だった。
短時間でこれほどのものが作れることに驚きを隠せず、ヨンファが「旨い」を連発するたびに、目の前で嬉しそうに見開かれた漆黒の双眸がゆっくりと眇められる。
とても和やかな雰囲気の中、美味しい料理とワインを堪能しながら会話が弾み、一時間後にはすべての皿が綺麗にからになっていた。


ふたりで後片づけを終えると、ジョンシンがコーヒーを淹れてくれるらしく、慣れた手つきでサーバーやドリッパーなどを準備し始める。
そうだ……、とヨンファはその隙をついて自宅へ戻った。
昨日購入したばかりのプレゼントをいつ渡そうかと、タイミングを見計らっていたのだ。
自室に置いていた紙袋を手に取って引き返せば、ちょうど淹れ立てのコーヒーをジョンシンがローテーブルに置いているところだった。


「これ、もしよかったら……」


ポール・スミスのロゴが入った紙袋の中からレインボーのリボンがかかった小さな黒い箱を取り出し、振り返ったジョンシンにすっと手渡す。
「――へ?」と、きょとんとした顔つきで反射的に受け取ったものの、唐突すぎていまいち状況が呑み込めていないようだった。


「お前に、と思ってさ」


言葉少なに告げると、すぐさま事態を理解したジョンシンは目を大きく瞠った。
よほど意外だったらしく、「マジで?」と手の中のプレゼントに視線を落としたまま、驚いたように瞬く。


「今、開けていいか?」
「ああ、もちろん」


ふたりはソファに隣り合って座り、長い指が器用にリボンをほどいて箱を開けるのを、ヨンファは固唾を呑んで見守った。
果たして気に入ってくれるだろうか。


「おっ、ポール・スミスのキーケース」
「お前、黒が好きだろ。今のもそうだし。――好みに合わなかったら悪いけど」


上質の天然皮革を使用しているキーケースを取り出し、興味深げにスナップボタンを外して四連のキーフックやカードポケットに触れている男を横から眺める。


「へぇ、デザインが洒落てていいな。そろそろ買い替えようかって考えていたから、ちょうどよかった」
「……そうか」
「ありがとな。大事に使わせてもらうよ」


嬉しそうに表情を緩めるジョンシンに、ほっと安堵するとともに何やら照れくさくなっていると、「実はな」といきなり切り出された。


「俺も、アンタに渡すもんがあるんだ」


キーケースを箱に戻しながら突如、思いがけないことを言われて、どきりとする。
このタイミングで渡すものといえば、クリスマスプレゼント以外に考えられない。


――マンネリ予防として、趣向を変えてみるってのはどうだ?


その時、ふと、あの焼肉店でのジョンシンの台詞が脳裏をよぎった。


――手軽なところだと、目隠しプレイとか拘束プレイが無難だろうな。イブの日にお試しでやってみて、盛り上がれば今後も取り入れたらいいんだし。


やけに楽しそうに、締まりのない顔でニヤニヤと自分を無遠慮に見てきた時の光景を思い出す。
まさか……だよな。
決して鵜呑みにしていたわけではないが、それに関連している可能性は否定できない。
渡されて困るようなものだったらどうすればいいんだ……、とよからぬ妄想がヨンファの頭の中をぐるぐると巡り始めた。


「ちょっと取ってくる」
「あ、あのさ」


こちらの当惑をよそに、そう言い置いてソファから立ち上がったジョンシンを慌てて呼び止める。
途端に、不思議そうな顔でヨンファを振り返った。


「どうした?」
「――それって、ヤバめのものか?」
「……ああ? 『ヤバめ』って何だそりゃ。どういう意味だ?」


わずかに眉を寄せたジョンシンが高い位置から見下ろしてきて、どう答えたものかと一瞬迷ってしまう。


「ええと……普段あまり使わないっていうか……」
「――………」


若干引き気味なのを気づかれないように口を開いたが、肝心なところで言い淀んでしまった。
ジョンシンはますますわけがわからないといった顔つきで、ヨンファの様子を窺っている。
これでは埒が明かないと思い、言葉を探すように視線を彷徨わせたのちに、恐る恐る尋ねてみた。


「その……アブノーマル系なもの……とか?」
「はああ?」
「ほら、以前、言ってたじゃないか。焼肉店で」
「――俺が? 何か言ったっけ」


自分から発言しておいて、もう忘れたのか。たった三週間前の出来事なのに。
考えるふうに首を捻りながらぼそりと低く呟くジョンシンに、ヨンファは呆れ半分にひとつ息を吐く。


「イブにお試しでって。だから、てっきりアイマスクか手錠の類かと……」


長身を見上げたまま馬鹿正直に白状した直後、まずいと思った。
この男には禁句だったかも……、と途端に後悔する。
ぽかんとした表情でこちらを眺めていたジョンシンは数秒の沈黙のあと、ブッと勢いよく吹き出した。
「はっ……手錠って……」と肩を震わせ、ついには両手を叩きながら身を折り、滅多にないほど大爆笑している。
その楽しげな姿を目の当たりにして、思いきり的外れなことを口走ってしまったのだとばつが悪くなった。


「アンタさ、俺のこと、どんだけ変態だと思ってんだよ」


どうやらツボにはまったらしく、「あー、腹いてー」と腹部を押さえながら声を上げて笑うばかりだ。
少なからずムッとしたヨンファは、上目でじろりと見やる。


「そんなに笑うことか? そもそも、お前が原因を作ったんじゃないか」
「……まあ、否定はしねぇけど」


ということは、こちらの反応が面白くて、わざとすっとぼけていたのか。
案の定、口許がニヤついている上に、かすかに肩を揺らしている。


「お前なぁぁぁ」
「まーまー。そんなに怒るなって。拘束プレイに興味を持ってくれたのは嬉しい誤算だけどよ。ご所望とあらば、アマゾンで探してみるか」


人の話を聞いているのか、いないのか。
ふと思いついたように、見当違いなことをしれっと言い出す男にぎょっとする。
長身を屈めて、ローテーブルに置いていたスマートフォンに手を伸ばそうとしたのに気づき、ヨンファは慌ててジョンシンの肘のあたりを掴んだ。


「い、いいっ。興味なんかないからよせ!」


冗談じゃない。そんなものを勝手に注文されてたまるかと、必死の形相で引き留める。
ヨンファの狼狽えぶりが滑稽なのか、笑いをこらえた表情のジョンシンは再び隣に腰を下ろし、心底愉しげに横から顔を覗き込んできた。


「そうか? 新境地を開いてみるのも一興だと思うぞ。手錠だと手首に傷がつく恐れがあるから、まず手始めにネクタイを使うとかさ。アイマスクの代わりにもなるし、一石二鳥だな」


ニヤリと唇の両端を上げながら、追い討ちをかけるように戯言を続けざまに口にされ、ひくりとこめかみが引き攣る。
こちらとしては早くこの話題を終わらせたいのに、なぜか面白がって執拗に食い下がってくるのだ。
揶揄いの材料を自ら提供してしまい、余計なことを言うんじゃなかったとヨンファはつくづく後悔した。


「いいって、さっきから言ってるだろ。俺は今のままで充分なんだよっ。もうお前、しつこすぎる!」


感情に任せて一気に捲し立てると、ジョンシンは面食らったように漆黒の双眸を大きく見開き、すぐさまわざとらしく意味ありげな流し目をくれる。


「――へぇ、男冥利に尽きるな。お褒めに預かり光栄ってか」


取ってつけたような物言いをされて、自分が発した言葉の意味を理解するのと同時に、うっかり口を滑らせてしまったことに気づいた。
言わずもがなのことをぽろりと言ってしまうとは、なんたる失態だ。
泡を食って真面目に返したのが、逆に墓穴を掘る結果となってしまったらしい。
ソファに凭れたジョンシンが喉の奥で低く笑っているのが聞こえ、さらに居たたまれない気持ちになった。


「褒めてないだろっ」
「またまた。照れんなよ。俺のテクで充分満足してくれてるってのはよくわかった。これに驕らず、アンタに飽きられないように今後もスキルを磨かねぇとな」
「結構だ!」


ジョンシンの思う壺とわかっていても、反論せずにはいられない。
おどけたような態度のまま、ぬけぬけと言ってのける男を軽く睨んでみたが、いいことを聞いたと言わんばかりにニヤニヤと相好を崩してこちらを眺めているばかりで、てんで効き目がなかった。


「アンタのそういうところ、マジで大好きなんだけど」


ご満悦そうに目を細めたジョンシンに臆面もなく言われて、どきんと心臓が大きく跳ねる。
顔が熱くなるのを自覚しながら気恥ずかしさをこらえて見返すと、思いがけず包み込むような優しい眼差しと目が合った。


「話が脱線したな。ちょっと待ってろ」


わずかに笑いを収めたジョンシンはそう言うなり、すっくと立ち上がった。
そのまま寝室へと消えたかと思うと、すぐさま手にラッピングが施された大きめの黒い箱を持って戻ってきて、ソファに座っているヨンファの前で立ち止まる。


「こういうの、初めてでよくわかんねぇから、何がいいのか迷っちまって」


にやけていた口許は真一文字に引き結ばれ、どことなく緊張した面持ちですっと差し出されたのは、シルバーのシックなリボンがあしらわれた長方形のギフトボックスだった。
意外な気持ちで瞬いたヨンファは、そろりと両手で受け取って膝の上に置く。
箱の中央には、『Harley OF SCOTLAND』のロゴが入っていた。


「……えっ」
「アンタに着てほしいと思ってさ。開けてみてくれ」


料理だけでも十分嬉しいサプライズだったのに、まさか自分にもこういうプレゼントが用意されているとは、思いがけなさすぎて言葉が出てこない。
ソファに腰を落ち着けたジョンシンが長い脚を煩わしそうに組んでいる隣で、ヨンファはリボンを解いて箱を開けた。
続けて包み紙を破かないように慎重な手つきで丁寧に広げた途端、思わず目を瞠る。
綺麗に畳まれた状態で収まっていたのは、白い鉱石のような明るいベージュのクルーネックニットだった。


「これ……シェットランドウールか?」
「いや、ラムズウール。こっちの方がシェットランドより手触りがよかったんでな」


ジョンシンのイメージに合わないチョイスに面食らってしまい、この男の意外な一面を新たに知る。
触れた瞬間、すぐに素材のよさがわかり、「柔らかくて気持ちいい……」と小さく声を漏らした。


「今、着てるのもいいけど、アンタにはそういう優しい色も似合うと思うぞ」


ネイビーのケーブルニットを身に着けたヨンファと、両手に持っているクルーネックニットを交互に眺めていたジョンシンがそう呟く。
ハーレー・オブ・スコットランドはイギリスの老舗ニットブランドだけに、高品質な素材を用いていることは容易に想像できた。
肌触りがふんわりと柔らかくてウェイトが軽いし、目が詰まっていることから保温性の高さも窺える。
カットソー感覚で素肌の上から着用しても、気持ちのいい着心地に違いない。
柄ではないらしいジョンシンからの贈り物に視線を落としたまま、持っている手だけでなく、胸の奥までじんわりと包み込まれるように温かくなった。


「でも、よくサイズがわかったな」
「頻繁に抱いてたら、そのくらいわかる」


さらりと言われて一瞬固まってしまったが、それよりも、手錠などと勘違いしてしまったことに対し、今さらのように申し訳なく思う。


「すごく気に入ったよ。ありがとう。――なんて言ったらいいのか……、料理だけでも驚いたのに、服までもらって嬉しいよ」


素直に感謝の気持ちを伝えると、組んだ膝に頬杖をついた格好でじっとヨンファを見つめていたジョンシンは「……ああ」と、照れくさそうにすっと目を逸らした。
つい今しがたの饒舌さは鳴りを潜め、普段は滅多に見せることのないはにかんだ笑みを浮かべている。
面映ゆくて甘い感覚……とでもいうべきか。


こんなに満ち足りた気持ちになったのは、いつぶりだろう。
もう引き返せないところまできているのだと薄々感じていたが、たとえ後戻りできなくても、それでいいと思えるようになった自分に驚いた。
惹かれたのが、たまたま男だったというだけだ。
同じ中高一貫校のただの顔見知り程度の間柄だったのに、いつの間にかヨンファの胸の内を大きく占めるほどの存在になっているのだから、世の中はつくづく不思議だと思う。


「なあ、今日、泊まっていくだろ?」


しばし物思いに耽っていたところで、やや掠れた低音が横合いからさりげなく尋ねてきた。
ベッドの誘いも込みだということは、言葉にされなくてもわかる。
こういう流れは初めてではないにもかかわらず、こちらの反応を探るように間近から顔を覗き込まれた。


「――ああ……そうする」


ヨンファが頷いて了承すると、ジョンシンはほっとしたように漆黒の双眸をじわりと細めた。
つられるようにわずかばかり微笑んだ次の瞬間、横から伸びてきた手に髪の毛を撫でられる。
ひどく優しい手つきに、全神経が剥き出しになっているみたいに即座に肌が反応した。
気づいた時には肩が触れ合うくらいに身体が密着し、ほんの数センチ先から温かい眼差しが注がれる。
真っすぐに見返せば、途端にふたりの視線が真っ向から絡み合った。


それが合図になったのか、髪を梳くのをやめた指先がヨンファの唇をゆっくりとなぞっている間に、端正な貌はピントが合わない距離まで近づいてくる。
愛しげに高い鼻梁が鼻先に擦りつけられたかと思うと、やがて驚くほどの優しさで吐息を塞ぐように唇が重なってきた。
筋張った手にうなじのあたりを引き寄せられた拍子に、もう片方の長い腕に囲い込まれてしまう。


「――ンッ……、ぅん……」


瞬く間に舌を搦め捕られ、甘い痺れがヨンファの全身をふわりと包み込んだ。
どこか強引なのに、大きな手も柔らかな唇も心地よくて、勝手に体温が上がっていく。
以前ほど傲岸不遜だと思わなくなった男の巧みな口づけに酔いしれながら、夜が長くなりそうな予感がした。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(4)

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2020/05/16 (Sat) 09:15
haru

haru

n***さん

こんばんは♡

終わりには近づいています。
でも、相変わらず遅筆なので、時間がかかるかもしれません。
完結したら、真夏の夜の夢の続きを書こうと思っていますが、いつになるかな( ̄ω ̄;)

2020/05/16 (Sat) 23:07

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2020/05/17 (Sun) 23:36
haru

haru

n***さん

こんばんは♡

n***さん、どうもありがとうございます♪
萌えを探求しながら、少しでも楽しんでいただけるように頑張ります(。・ω・。)ノ

2020/05/18 (Mon) 20:28