CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 21

2020年01月25日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 0






カーテンを開け放った窓から差し込む日差しで、唐突にふっと覚醒する。


「――………」


うっすらと瞼を開いたジョンシンは、自分がどこにいるのか一瞬わからなかった。
眩しい陽光に思わず目を眇めて、片手で顔を覆ったところでようやく思考がクリアになる。
ぼんやりと視線を巡らせながら寝返りを打ち、すぐ隣で眠っていたはずのヨンファがいないことに気づいた途端、がばっとベッドから身を起こした。


「―――っ!」


夜中に一度目が覚めた時、無防備にジョンシンの方にすり寄った体勢のまま、枕に頬を埋めて静かな寝息を立てていたのはよく覚えている。
甘やかな情動に突き動かされ、自分の肩口に凭れかかるようにヨンファをぐっと抱き寄せたことも――。
伝わってくる体温を肌で感じながら心地よい眠りに再び落ちていき、その先は完全にブラックアウトだ。
いつからひとりになっていたのか、まったくわからなかった。


もぬけの殻となってしまった左隣のスペースに手を置いてみても、ヨンファの温もりは一切残っていない。
今、何時だ……?、と眉根を寄せて傍らに置いていたスマートフォンに目をやると、時刻は午前八時を五分ばかり過ぎていた。
平日と違ってアラーム設定していない休みの日は、大抵このくらいの時間に起きることが多い。


「……どこへ行ったんだ」


ぼそりとひとりごちたジョンシンは、緩慢な動作でのっそりとベッドを降りた。
ドアを開けて寝室から出てみれば、周囲はやけにしんとしている。
見渡すまでもなく、リビングにもキッチンにもヨンファの姿はなかった。
落ち着かない気分で玄関を覗くと、そこにあったはずの黒い革靴が跡形もなく消えている。
自宅に戻ったのだと腑に落ちたジョンシンは思い出したように寝室に取って返し、ウォークインクローゼットにかけていたコートやスーツなどの持ち物もなくなっているのを確認した。


「人が寝てる時に黙って帰るって、なんなんだよ……」


せっかく泊まったのだから、もっとゆっくりすればいいものを。
「――ったく、しょうがねぇなぁ……」と唸るようにぼやきながら無造作に前髪を掻き上げて、昨夜の出来事を思い返す。
焼肉店で夕食をともにしたヨンファは、普段とは少し様子が違っていた。
週末ということも大いに関係していたのかもしれないが、途中からどこかぴりぴりした気配を漂わせ、酒で何かを流し込むかのように杯を重ね始めたのだ。
無茶な飲み方なのは一目瞭然で、いつになくハイペースでグラスを空けるヨンファに、何かあったのか……?、と訝しく思った。
見かねたジョンシンがやんわりと窘めたものの、頑なな態度で聞く耳を持とうとはせず、じきにハイな状態になった彼は意味もなく楽しげに笑いをこぼし、しまいには気持ちよさそうにテーブルに突っ伏す有様だった。


それ見たことかと、足取りが危なっかしいヨンファを横から支えてタクシーで連れて帰り、自宅まで送り届けた時だ。
前触れもなくジョンシンの部屋に行くと告げられて、予想すらしていなかった展開に息が止まりそうになった。
アルコールがそう言わせたのか、それとも本心なのか。
驚きと嬉しさがない交ぜになって、すぐには声が出なかった。
感情の起伏が常とは違うので、正直判断のしようがないのだが、この可愛い生き物はなんなんだ!、と内心悶絶しながら自宅に招き入れた。


まさに、天性の男殺しだとしか言いようがない。
無自覚、無防備、無警戒と三拍子揃っている上に、計算ずくでないことがさらに罪作りなのだ。
ヨンファがあんなに酔っていなければ、速攻でその場に押し倒して美味しくいただいていた。
どちらにせよ、これほどまでにジョンシンを翻弄する人間はこの世には存在しない。
多少は頼りにしてくれているのか、一緒にいたいと思っているのか。
理由はどうであれ、ジョンシンの前で素の部分を出し、少しずついろんな表情を見せてくれるようになってもいる。
寝室で話をした時もそうだった。


甘えるように手を伸ばしてきた、どこか頼りなげなヨンファは庇護欲を猛烈に掻き立てられる。
ジョンシンのベッドにしどけなく横たわり、安堵の表情を浮かべながらうつらうつらと微睡み始める姿にどうしようもない愛おしさが溢れてきて、瞳を閉ざした彼が眠りに落ちる寸前、赤みを帯びた唇にそっと口づけた。
ほっそりとした指をきゅっと握り締めたまま、あどけない寝顔を魅入られたように眺めていると、それだけでひどく満ち足りた気分になる。
他人の体温が安らぎを感じるものだと教えてくれたのは、ヨンファなのだ。
完全に熟睡したのを確かめてそろりと手をほどき、シャワーを浴びてさっぱりしたあと、ジョンシンは再び隣に潜り込んだ。
そして、額にかかった黒髪をそっと梳きながらヨンファの寝顔を堪能しているうちにいつの間にか寝入ってしまい、先ほど目が覚めたというわけだ。


二日酔いになっていないだろうか……。
どうしてもヨンファのことが気になってしまい、放っておけないという強い衝動に駆られた次の瞬間、身体が勝手に動いていた。
昨夜の様子が引っかかっているとはいえ、居ても立ってもいられなくなるとはどれだけ過保護なんだか。


玄関のドアを開けて外廊下に出たジョンシンは、数メートル隣のヨンファの部屋の前に立ってインターホンを押してみた。
少し待ったが、一向に応答はない。
再度鳴らしても何も反応がないため、諦めの境地でドアハンドルに触れると呆気なく開いた。
玄関には見慣れたストレートチップが置いてあったものの、人の気配が感じられなかったので、ジョンシンは靴を脱ぎ捨てて断りなく上がり込む。


「ヨンファ、――いないのか?」


まさか倒れているんじゃないかと何となく胸騒ぎがして、勝手知ったる足取りで整然としている室内に入り周囲を見回すが、やはり部屋の主の姿はなかった。
しんと静まり返る中、かすかに漏れ聞こえる物音にジョンシンの動きが止まる。
足を向けてバスルームに近づくと引き戸がわずかに開いていて、よりはっきりとシャワーの音が耳に届くのと同時に、ほっと安堵の息をついた。
ノックしてからドアをスライドさせ、「……ヨンファ?」とそっと覗きながら声をかけてみる。


洗面や手洗いを兼ねたスペースは朝の柔らかな光に包まれていて明るく、奥にあるシャワーブースとの間の擦りガラスの仕切り越しに、シャワーを浴びているヨンファのシルエットが目に飛び込んできた。
立ち込める湯気が見え、ボディソープやシャンプーの爽やかな香りが鼻腔を刺激する。
距離がある分、聞こえていないだろうなと背を向けて出て行こうとしたら、優しく叩きつけていたシャワーの音がぴたりと止んだ。


「――えっ、……ジョンシナ!?」


こちらの姿がたまたま視界に入ったのか、背後から驚いたような声が上がる。


「そう、俺」


振り返って低く答えると、擦りガラスの仕切りからヨンファがそろりと上半身を出してきた。
無駄な肉のないスレンダーな身体は、いつ見ても綺麗に締まっている。
ジョンシンを認めるなり、不意を突かれた面持ちで大きく目を瞠ったヨンファは、タオルレールにかけていたバスタオルを慌てて腰に巻きつけた。


「な、なんで……お前がここにいるんだよ」
「起きたら、アンタがいなかったから」
「まったく驚かすなよ。心臓が止まるかと思った」


両目を覆うように張りついた前髪を掻き上げた途端、白皙の額が露わになる。
何とも言えない微妙な表情で見返されて、ジョンシンははっと息を呑んだ。
こういうシチュエーションで濡れそぼったヨンファを目にするのは、意外にも初めてなのだ。
ぞくりとするほど色っぽい上にひどく危うげにも見える彼に、自分でも驚くくらい狼狽した。


「あー……、悪い。心配になって来てみたら、玄関の鍵はかかってねぇし」
「またあとで行くつもりだったんだ。いろいろと面倒をかけてすまない。お前、気持ちよさそうに寝てたから、起こさない方がいいと思ってさ」


艶やかな濡れ髪の先から雫が伝い落ち、無防備に晒された白い裸身の輪郭をなぞるように幾重にも滴っているのがやけになまめかしくて、完璧な造形美に喉が干上がってしまいそうだ。
これまでの人生の中で、こんなに綺麗な男にお目にかかったことはない。
かつては行きつけの店など出会いの場に赴けば、ルックスに恵まれているお陰もあって、言い寄ってくる相手には事欠かなかった。
それなりに見場のいい男たちもいたが、自分の魅力を十分に承知した上での押しの強さにほとほと嫌気が差したものだ。
媚びを売ったり、必要以上に甘えてこられると逆に興ざめする。
まともな恋愛ができるような相手はいないと早々に諦めたジョンシンは、自由奔放に後腐れのない相手ばかりを選んでいた。


そういった理由で、記念日やクリスマスといったイベントの類にはあまり興味がないし、どちらかというと無頓着だ。
だから、ヨンファの口から思いがけずプレゼントの話が出た時はとにかく驚いた。
『何か欲しいものはあるか?』と訊かれて、目の前にいる彼以外に何も思いつかなかった。
連想ゲームのようにそれとなく間接的に答えたものの、それが自分のことだとは気づいてもらえなかったようだ。


己の本心を告げるのがこんなに難しいとは思ってもみなかった。
再会した当初、積極的にアプローチを仕掛け、強引に身体を繋げて既成事実を作ったので、自分に気があるということくらいはわかっているはずだ。
その上で抱かれ続けているのだから、今のところこの関係に終止符を打ちたがっているようにも見えない。
ただ、ジョンシンの言動をどこか信じ切れていないような戸惑いがかすかに感じられるのも事実だ。


改めて告白してヨンファの本音を確かめたい気持ちはあるが、過去、手の届かない遠い存在だったからこそ、焦って事を進めて取り返しのつかない事態になることだけは避けたい。
ノーマルだけに、やっぱり女の方がいいと、突然振られる可能性だってあるのだ。
せっかくここまで築き上げた関係を一瞬で台無しにしたくないという切実な願いもあって、もう一歩が踏み出せないでいる。
よって、ジョンシンの想いに確実に応えてくれるまで、ヨンファのすべてを自分だけのものにするまでは現状を維持しながら冷静に待つしかないのだ。


そんなこちらの独占欲など微塵も気づいたふうのない彼に、仕方がないと心の中で溜息をつきながら苦笑し、その場を取り繕うように、ついまた『マンネリ予防として――』などと余計なことを言ってドン引きされてしまった。
露ほども思っていないのに、口が勝手に暴走するので困っている。


「そういうことか。気分が悪くないんだったらいい。朝メシ、一緒に食うか?」
「ああ。昨日の埋め合わせに俺が作るよ。食欲はあるんだろ?」
「見た目通り、胃袋も繊細じゃねぇし。何でも食う」


ジョンシンが軽口を叩くと、ヨンファは小さく笑ってみせた。
朝にふさわしいようなすっきりと爽やかな表情をしているが、彼とは対照的にこちらはそれどころではなかった。
見慣れているはずのしなやかな裸体を前にして、ずっと落ち着かない状態が続いているのだ。
綺麗なラインを描く鎖骨のくぼみや、ほんのりと上気したなめらかな薄い肌は思わず手を伸ばしたくなるほど扇情的で、ジョンシンはかっと全身が熱くなるのを感じた。


「あれから、お前もすぐに寝たのか?」
「いや、シャワー浴びたりしてたから、もっと遅かった」
「そうか。お前の布団、すごく暖かくて気持ちいいな。お陰でぐっすり熟睡できたし、寝覚めもよかった」
「……ああ」


言葉少なに身じろぎひとつしないジョンシンの様子から何かを察したらしい。
ヨンファはゆっくり瞬いたのちに、不思議そうに上目に見上げてきた。


「ジョンシナ? ――どうかしたのか?」
「――………」


何も答えないジョンシンをどう思ったのか、ヨンファは戸惑いが混じった顔つきで眺め返してくる。
シャワーを浴びたせいか、誘っているのか……、と問いかけたくなるほどの濡れたような瞳で見つめられ、心臓が早鐘を打つのがわかった。
甘美な目眩に襲われながら視線を下げると、淡く色づいた胸の突起にひどくそそられて興奮を抑えきれない。
ただでさえ朝の生理現象で下半身がぱんぱんに張り詰めているのに、どうしようもなく欲情してしまった。
こんな姿を見せられて、このままおとなしく退散できるはずがない。忍耐力なんかクソくらえだ。


「じゃあ、服を着るから、リビングにいてくれないか?」


食い入るようにじっと凝視されている気まずさからか、何度か瞬いたヨンファは困惑げにふいと目を逸らす。
いつもの彼らしくなく、どこか遠慮がちだと思ったところで、耳許がうっすらと赤くなっていることに気づいた。
これは……間違いなく照れている。
自分に都合よく解釈すると、襲って下さいと言ったも同然だ。
そんな些細な表情や仕草が余計にジョンシンを煽り立てて、もともと無いに等しい理性は一瞬にして吹き飛んだ。
同時に最後の箍が外れてしまい、ヨンファに触れたい……、と激情に駆られるまま無意識に足が動く。
身勝手な欲望がひとり歩きするのは今に始まったことではないと半ば開き直りながら、あっという間に距離を縮め、手を伸ばせば届く位置まで近づいた。


「なあ、シャワー浴びたのが無駄になっちまってもいいか?」
「――え?」


至近距離から覗き込むと、驚きに見開かれた澄んだ瞳と視線が絡み合う。
あからさまに質量を増したものが早く何とかしろと急かしてきて、ジョンシンはつくづく自分の堪え性のなさに内心苦笑いする。


「我慢、……できなくなった」
「………っ」


興奮混じりに発した声はいつにもまして低く、情欲に掠れていた。
ここにきて意味を悟ったらしいヨンファが驚愕したように顔を上げる。
息を詰める気配とともに狼狽も露わな表情で、どことなく緊張したふうに大きな瞳をうろうろと泳がせた。
逡巡しているのが窺え、伸ばした指先で濡れた肌を焦らすようにゆっくりなぞっただけで、びくんと肩を大きく揺らす。
抗う素振りがないのを確かめてから、初めて触れた時のようにそっと抱き寄せると、おとなしくされるがままになっていたヨンファはジョンシンの胸許に身を預けてきた。
伏せた長い睫毛がかすかに震えている。
それが返事の代わりだと都合よく受け取ったジョンシンは、ヨンファのほっそりした腰のあたりに熱を持った昂ぶりをこすりつけた。


「あっ……――」


バスタオル越しでもしっかり伝わったらしく、おののいたように身じろぎながら小さく声を漏らす。
ジョンシンは逃さないように愛しい痩身をそのままきつく腕の中に閉じ込めて、いまだに赤く染まっている耳朶をやんわりと甘噛みした。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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