CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 89

2019年11月12日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 2






今度一緒に飲みに行こうという話が診療所で出た数日後、アドレスを交換したばかりのキムから連絡があった。
『土曜日の午後六時はどうだろう?』との提案に対してヨンファも即了承し、楽しみにしていたその前々日の夜のことだ。
不意に着信音が鳴り、液晶画面に表示されたキムの名前を見たのと同時にタップしてスマートフォンを耳に当てると、聞き覚えのある女性の声がした。


『あの……ジョンさんでしょうか?』
「はい、そうです。ええと――」


特徴があるため、すぐさま相手がキムの娘であるシニョンだと認識したところで名乗られる。
『夜分にすみません。今、話をしてもよろしいですか?』との問いに、自宅マンションのキッチンでコーヒーを淹れようとしていたヨンファは「大丈夫です」と答えながらリビングへ移動した。
キムのスマートフォンから電話をかけてきたということは何かあったのだと思い、ソファに腰を落ち着けて身構える。


『実は父が入院しまして、代わりにご連絡しました。土曜日のお約束をキャンセルさせていただきたいのですが』
「!」


静かに告げられた内容は予想だにしなかったもので、ヨンファは言葉を失った。
昨日、診療がすべて終わって帰り支度をしていた時に突然腹痛を訴え、まともに歩ける状態ではなかったことから、救急車を呼んで病院へ搬送されたのだという。
つい先日、キムと話をしたばかりだが、体調が悪そうな感じはまったく見受けられなかっただけに、ヨンファに与えた衝撃は大きかった。
冷静に捉える傍らで自分の顔がひどく強張っているのを感じ、どうにか落ち着こうと、奥歯をぐっと噛み締める。


「分かりました。――それで、キム先生のご容態はいかがですか?」
『大したことはないと思いますが、三日ほど検査入院をすることになってしまって……』
「どちらの病院か、差し支えなければ教えて下さい」


動揺を押し殺して入院先を尋ねると、三成にある中規模病院の名を告げられた。
そこは、かつてミニョクがお世話になった医療機関で、キムの知り合いの医師が院長だと聞いている。
いきなり病院に押しかけるのは、かえって迷惑かもしれない。
そう思いはしたものの、居ても立っても居られなくなったヨンファは翌日、キムの見舞いに行くことにした。










駅近くの有名なフラワーショップに出向き、アレンジメントをオーダーすると、仕上がるまでに十五分ほどかかると言われる。
ヨンファは時間を潰すべく、約二週間後に迫ったクリスマス一色に染まっている街中をぶらぶら散策した。
快晴にもかかわらず、冷気は容赦なくポロコート越しに肌を刺し、時折冷たい向かい風まで吹き抜ける。


ブランドショップが立ち並ぶメイン通りを歩いていると、ヨンファの前方にいたカップルが急に立ち止まり、「こういうのが欲しいな」と女性がガラス張りのディスプレイを指差しながら隣の男性を見上げた。
ふたりの様子から、幸せそうな雰囲気が伝わってくる。
そこかしこにあるショーウィンドウはどれもクリスマス仕様になっていて、それらを眺めているうちに、ふと、ある疑問が頭をよぎった。


――ヒョニのために、プレゼントを用意しておいた方がいいのだろうか?


男女の恋人同士なら当然そうだろうし、クリスマスイブは洒落た店でディナーを楽しみながら甘いひとときを過ごすのが定番だと言われている。
だが、ジョンヒョンは同性だ。
コートやスーツなどの衣服から革製品の小物類に至るまで、常に上質なものを身につけている男が今さら何かを欲しがるとも思えない。
それ以前に、男同士で贈り物をした経験がないヨンファには、世界規模でお祝いムードに包まれる一大イベントを目前にしても、いまいちピンとこないのだ。


しかも、ジョンヒョンと顔を合わせても、クリスマスのことなどこれまで話題にも上らなかった。
ここのところ以前にもまして忙しそうな様子のジョンヒョンを思い浮かべ、それどころじゃないんだろうな……、と納得する。
それなら普段通りでいいかと結論を出したヨンファは、高級店を素通りしながらぐるりと一周し、再びフラワーショップへ戻った。










病院に到着するや否や、一階の総合受付でキムの名前を告げて病室を尋ね、エレベーターで七階の病棟に向かう。
使用済みの食器が収まっている配膳車の横をすり抜け、ナースステーションを通り過ぎたヨンファは、教えられたナンバーの部屋の前で立ち止まった。
そして、入り口のネームプレートを確認する。
ひとり分しか掲げられていないことから、個室であることが分かった。


軽くノックして、ゆっくりと引き戸を横にスライドさせながら「失礼します」と声をかける。
午後の明るい陽射しが降り注いでいるせいか、適温に保たれている白い病室がより暖かく感じられた。
窓際のソファに座っていたシニョンがヨンファにいち早く気づいてぱっと腰を上げ、その手前の斜めに起こしたベッドにキムが凭れかかっている。


「おお、ヨンファ。来てくれたのか」
「こんにちは」
「お忙しいのに、わざわざすみません。どうぞ中にお入り下さい」


入り口に立って挨拶したヨンファは、促されるままに奥へと足を踏み入れた。
頭を下げるシニョンに、用意していた華やかなフラワーアレンジメントを差し出す。


「これはほんの気持ちですが……」
「まあ……素敵! かえって気を使わせてしまってごめんなさいね。どうもありがとうございます」


色とりどりの花を受け取ったシニョンは満面の笑みを浮かべ、恐縮したように礼を言われた。
そして、ベッドサイドの床頭台にアレンジメントをそっと置くと、「ごゆっくりなさって下さいね」とヨンファにソファを勧めて、そのまま病室を出ていく。


「せっかくの約束をキャンセルして、すまないな」


ヨンファの顔を見るなり、キムはくしゃりと相好を崩した。
シニョンから連絡をもらってからずっと心臓が縮む思いだったが、顔色や表情がいつもと変わらないことに多少安堵する。


「とんでもないです。シニョンさんからお電話をいただいて、とても心配していました。体調はいかがですか?」
「過労による胃潰瘍だそうだ。ここの院長は私の古くからの友人なんだが、三日間入院するように勝手に決められてしまって、このざまだ。薬だけでいいと言ったのにな」
「それはいけません。検査を受けて、しっかり休養なさって下さい」


オーバーワークにより心身に不調が出てしまい、病気へと発展するケースはよくあるのだ。
原因としては、睡眠不足やストレスなどが挙げられ、肉体的にも精神的にも疲弊してしまう。


「そうだな。休診にしたのは開業以来初めてだ。こういうことじゃいかんのだが、年々歳は取るし、いつまで続けられるかは分からん」
「先生……」


パジャマ姿のキムにあっけらかんと笑いかけられて、どうしてかたまらない気分になった。
その時、ドアが開き、紙コップを両手に持ったシニョンが戻ってくる。


「よかったら、どうぞ」
「すみません。いただきます」


ひとつをさっと差し出されたので、礼を言って受け取ると、シニョンは一人掛け用の椅子に座った。
それを見て、ヨンファはソファに腰を下ろし、ふわりと立ち上る芳醇な香りに誘われるまま温かいコーヒーに口をつける。


「まあ、なるようになるさ。どうした? 私よりも、ヨンファの方が今にも倒れそうな顔をしておるじゃないか」
「お父さん」


軽口を叩くキムに、横合いからシニョンが咎めるような視線を送った。
そう言われて初めて、自分が沈んだ表情をしていることに気がつく。
開業医には定年がないため、年齢に関係なくいつまでも働くことができるので、生涯現役を貫くものと思っていた。
自分も含めて、キムを必要としている人間は大勢いるだけに、すっと気持ちが萎んだのがそのまま顔に出てしまったようだ。


「そうそう。実は、ジョンさんに手伝ってもらった日の翌日から急に患者さんが増えたんですよ」


丸顔を綻ばせながら話すシニョンに、「おお、そうだったな」と思い当たったようにキムが同調する。


「インフルが流行っているからでしょうか。この時期はどうしても慌ただしくなりますよね」
「いやあ、それなら例年通りだ。いきなりうちだけ患者数が増えるということはない。『イケメンの先生は?』ときたもんだ」
「……はい?」


ヨンファが思いついたまま口にしたところ、含みのある言い方をされた。
どういう意味だろうかと、結論を求めてキムを見つめる。


「ヨンファが診察した患者の中に、クラブに勤めている女性がいたらしい。店でその話をしたんだろうな。それから、新患がわんさか来るわ来るわ。で、私の顔を見るなり、げんなりするわけだ。今の若い女性は礼儀というものを知らんな」
「――………」


こちらに矛先が向いて戸惑うヨンファをよそに、一旦言葉を切ったキムはさらに続ける。


「その日だけ手伝ってもらったと言えば、どこの病院の医師かと訊かれる始末だ。個人情報だから教えられんと躱しているんだがな」


ガハハと豪快に笑い飛ばす老医師を眺めていると、つられたように頬が緩んだ。
キムがいるだけで、どんな場でもアットホームな雰囲気になり、自然と和やかな気分になる。
二時間ほど診療所の手伝いをした際に抱いた想いが甦り、包み込むような温かい空気を纏ったこの人のそばで仕事がしたい……、と猛烈な欲求が全身から湧き上がってきた。


「あの……、もしご迷惑でなかったら、先生の診療所で正式に働かせてもらえませんか?」


もはや、考える時間は必要なかった。
即座に固まった気持ちを言葉にすると、キムは一瞬驚いた顔をして、それから急に沈黙する。


「おひとりで切り盛りされれば、またいつ今回のように体調を崩されるか分かりません。先生には、うちの組の者たちがお世話になっていますし、診療所の周辺で働いている人たちからも頼りにされているはずです。少しでも長く続けていただきたいので、考えてみてもらえないでしょうか?」


率直な想いを畳みかけるように訴えたら、こちらの真意を探るかのように黙り込んでいたキムがようやく口を開いた。


「ヨンファも知っていると思うが、私のところにはいろんな組織の者たちが大勢出入りしているぞ。他の病院では眉を顰めるような診療も日常的に行なっておる。抵抗はないのかね?」
「……そうですね。組の存在を疎ましく思い、自分の置かれた境遇を恨んだこともありました。裏社会と決別しようと実家を出て、一時期、完全に連絡を絶っていました。でも、今は違います。どんな人間も治療を受ける権利がありますし、患者に対して平等に接して診療に当たるのが医師の務めだと思っています。そもそも医師法に違反するので、依頼されれば当然拒んではいけないのですが……。そういうわけで、抵抗はありません」


すっぱりと言い切って、温厚な人柄を表すような眼鏡の奥の慈愛に満ちた双眸を見つめていると、納得したように大きく頷かれた。


「考えるまでもないよ。ヨンファがそこまで言ってくれるのなら、こちらとしても願ったり叶ったりだ。私の専門は本来外科なんでな。ヨンファがいてくれればこんなに有難いことはない」
「それでは……」
「よろしく頼むよ」


了承の返事をくれたキムに、「ありがとうございます」と深々と頭を下げる。


「ただ、ひとつだけよく頭に入れておいてほしい」
「はい。何でしょうか?」
「うちには腰かけ感覚でいたらいい。他の医療機関から誘いがあって、ヨンファの心が動かされた時はいつでもそちらに移りなさい」
「キム先生……」
「私に遠慮はいらない。いいね?」


穏やかな声音には、ヨンファに対する気遣いが溢れていた。
思いもよらない言葉に、目の前の実直な老医師を真っすぐに見つめ返す。


「……はい。いろいろとありがとうございます。よろしくお願いします」


キムの懐の深さに触れ、声が震えそうになったヨンファはそう返すのが精一杯だった。
話がトントン拍子に進み、まさに急転直下の展開で、この時、正式にキムの診療所で働くことが決まったのだ。


「キムさん、ちょっと血圧を測らせてもらってもいいですか?」


シニョンも交えて三人で今後について話し合っていると、ノックの音のあとに引き戸が開き、担当らしき看護師が姿を見せる。
それを潮に、また後日打ち合わせようということで、ヨンファはふたりに挨拶をして病室を出た。


今日のこの決断を後悔するつもりはない。
いや、そんな日はきっとこないだろうと、ヨンファは足早にエレベーターホールに向かいながら、これからのことを頭の中で思案し始めた。


愛車の運転席に乗り込んだ途端、すぐにエンジンをかけ、ポロコートのポケットから取り出したスマートフォンを操作する。
他の誰よりも先にこの件を伝えたいという気持ちから、ジョンヒョンの名前が表示されたのを確認して、短いメール文を打つ。
ヨンファの再就職先を憂慮していたので、直接会って報告しておきたいとまず思い立ったのだ。
話したいことがあるから、近いうちに寄られるか?という内容を送信したところ、その二十分後、『今夜10時頃には行けると思う』とレスポンスが返ってきた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(2)

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2019/11/15 (Fri) 22:28
haru

haru

ふ*******さん

こんばんは♪

ヨンが診療所で働くという展開は数年前から考えていたんですが、ようやく今頃形にできました( ̄ω ̄;)
決意に至るまでの気持ちをもう少し膨らませて説得力がある感じにしたかったものの、先を急いでいるのと私の力量不足でこんな風になりました。
ジョンヒョンのリアクションですね(笑) 書きます♡
あと、クリスマスネタもいずれぶっこみますので、今回の話に少し滲ませてみました。
プレゼントは・・・、この二人だけにふ*******さんのご想像とは違うかもしれませんが、今考えていることを書く予定です。

気温が徐々に下がり、秋らしくなってきましたね。
未だに毛布一枚で寝ている元気な私ですが、ふ*******さんも気温差で体調を崩されませんように(。・ω・。)ノ

2019/11/16 (Sat) 21:14