CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 87

2019年10月25日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 4






再びふたりきりになった第三診察室で、事態の急速な展開に呆気に取られていたヨンファは、困惑しながらも気を取り直してジョンシンに問いかけてみる。


「――ということになってしまったが……、俺が診察するのでも構わないか?」
「超大歓迎」


大きく目を見開いていた本人はすでにそのつもりなのか、短く即答した。
その言い方が妙に可笑しくて、肩の力が少し抜けたヨンファは脱いだダウンジャケットをベッド横の脱衣カゴに置き、白熱灯の光に照らされるリノリウムの床の上を歩いて奥の共有スペースで立ち止まる。
白を基調とした清潔感のある室内をぐるりと見回すと、小規模ながら医療設備は整っているようだし、壁面に沿って設置されたキャビネットやラックには様々な診療材料が整然と収納されていた。
また、使用する頻度が高い器具はワゴン上のステンレス製のバット等の容器に並べられ、煩雑になりがちな現場の作業効率を上げるように考えられているのが分かる。


ざっくりと編み込まれた生成りのセーターの上に白衣を身に着けたところで、受付にいた丸顔の女性がジョンシンのカルテを持ってきてくれた。
どうやら、キム医師が気を利かせて頼んでくれたらしい。
目礼して受け取ると、にこりとした愛嬌のある笑顔を向けられる。
そして、今から診察に必要だと思われるものを準備してもらい、ヨンファはふたりの細やかな配慮に感謝した。
隅にある洗面台で両手を丁寧に洗い、アルコール消毒薬を全体によく擦り込んでから、ジョンシンの待つ診察室へと戻る。
ヨンファに気づくと、途端に渋々といった顔つきで黒キャップを脱ぎ、粗野な仕草で短い金髪をわしゃわしゃと掻き上げた。
どこか憮然としたジョンシンに「どうした?」と尋ねれば、黒マスクに隠れていない目許を歪ませてぼそりと呟く。


「……アンタに見られたくなかったのに」
「金髪のことか? 俺なんかよりよほど似合っていると思うが。ホンギの仕業なんだろう?」


てっきりジョンシンも、この鮮やかな髪色が気に入っているものとばかり思っていた。
先ほど、なかなかキャップを脱ぎたがらなかったのはそういうことか……、とようやく腑に落ちる。


「リクエストしてきたのはホンギさんだけど、やってもらったのは美容院」
「わざわざ行ったのか」
「一日限りじゃねぇし、髪が痛むのは嫌だからな。――バイトが済んだら、すぐ黒に戻すつもりだったのによ」


ただでさえ人目を引くルックスをしている上に、金髪でさらにファッション誌のメンズモデルさながらに端正な顔立ちをより際立たせていると思うのだが、当の本人はお気に召していないようだ
しかも、ヨンファに見られて恥ずかしがるとは、意外な一面に驚いてしまった。


「俺の代わりをやる羽目になって、すまなかったな。ホンギがお前のことを褒めてたぞ。すごい指名率だったって」


感心したように言ってみたものの、「大したことねぇよ」とあまり嬉しそうではないので、早々に私語を切り上げる。
具合が悪いのだから、当然といえば当然だ。


「では、インフルかどうかの検査をするから、その前に体温を測ってくれ」


準備を始めるべく、ジョンシンに体温計を渡したヨンファは箱から検査キットを取り出した。
S大学付属病院に勤めていた時は、診療以外の作業全般は担当の看護師が受け持ってくれていたが、ここではすべて自分でやらなければならないのだ。
パソコンの他に備品などが置かれた横長の机から椅子を引いて腰かけ、ジョンシンの方に向き直ったタイミングでピピッという音がした。
差し出された体温計を見ると、38.5度と表示されている。


「これ、苦手なんだよなぁ」
「すぐ終わる」


椅子を前に動かして近づいたヨンファは、黒マスクを外したジョンシンの鼻の一番奥の上咽頭まで細い綿棒を差し入れた。
採取した粘膜をすぐさま処理液に浸し、検査キットに滴下する。


「くっそ痛ぇ……」
「男なら、ギャーギャー騒がない」


ぼやきまくる男を尻目に作業の手を休めずにいると、隣の診察室から「先生、痛くしないで下さいよ」という野太い声が漏れ聞こえた。
非常に特徴があるので、待合室でジョンシンと親しげに話をしていた強面集団の中のひとりだと分かる。
どうも鼻孔をつく血生臭い匂いがすると思っていたのだが、怪我を負っていたのだろうか。
「そんな図体して情けない」と切り返すキムに、自分たちと似たようなやり取りをしているんだなと、思わず頬が緩みそうになった。


「検査結果が出るのに10分程度かかるから、その間、診察します。まず、胸を出して」


そう言いながら聴診器を首にかけると、向かい合ったジョンシンは丸まっていた背筋をわずかに伸ばし、黒のスウェットの裾を捲り上げる。
無駄なく鍛え抜かれた褐色の肉体が露わになり、心音と呼吸音を聴診するために、ヨンファはイアーチップを両耳に挿入した。


「息を吸って……、吐いて……」


ジョンシンの胸に聴診器を当てて、注意深く左肺と右肺の音を聴き比べ、異常がないかどうか確認していく。


「じゃあ、今度は背中」


「へーい」と気怠げに返事をした男は、丸い回転椅子ごとくるりと後ろを向いた。
すると、眼前に引き締まった背中が曝け出され、ヨンファは大きく目を瞠る。


「………っ」


時間の経過とともにだいぶ薄れて目立たなくなっているものの、肩甲骨のあたりにガラス片が原因と思しき傷跡が見て取れた。
同時に、チルソン組に屋敷を襲撃された日のことを思い出す。
あれは、いきなりだった。
何の前触れもなく突然手榴弾が投げ込まれ、ジョンシンがヨンファの盾になって深手を負ったのだ。
どれほどの痛みだったのか、想像しただけで胸が苦しくなり、チェストピースを持つ手が震えそうになった。


「特に異常はないようだ」


問題がないと判断したヨンファは敢えて明るい口調で言いながら、たくし上がっていたスウェットの裾を下ろしてやる。


「次は、喉を見せてくれ」


聴診器を外し、咽頭や扁桃の状態を診るために使い捨ての舌圧子を袋から取り出した。
口を大きく開けさせてから、舌を抑えるように舌圧子を差し入れ、口腔の奥を隈なく観察する。
状況を把握すると、今度はジョンシンの両耳の下にある耳下腺に触れた。
そのまま両手を滑らせて、顎下線や首のリンパ節に至るまで触診する。


「扁桃腺が赤く腫れているが、唾液を飲み込むと痛いだろ?」
「……ああ、もう最悪」


ヨンファの問いに、ジョンシンはやや大袈裟に渋面を作ってみせた。
日頃、元気すぎる男だけに、かなりこたえているようだ。
そうこうしているうちに10分が経過し、ヨンファは手にした検査キットをじっと見つめた。
そして、線の色や場所から判明した検査結果をジョンシンに伝える。


「陰性だな」
「……へ?」
「安心しろ。ただの風邪だ」
「はっ……、マジかよ……」


思いがけない反応を不思議に思い、どこか不服そうに唇を尖らせたジョンシンを見返した。


「なんだ。インフルの方がよかったのか?」
「そうじゃねぇけど……、鼻に棒を突っ込まれて損した気分」


ああ、そういうことか……、と脱力しそうになりつつも納得した。
ひと通り処置を済ませたヨンファはデスクに向かい、ジョンシンのカルテに診断結果を書き込みながら話しかける。


「他に気になるところはあるか?」
「なんもない」
「よし。じゃあ、以上で終わり。キム先生に報告しよう」


ひとりの患者に対して、こんなにじっくりと時間をかけたのは初めてだった。
S大学附属病院ではどうしても限りがあり、ひとり当たり10分以内と決められている。
流れ作業になりがちだったことは否めないが、決して手を抜いているわけではなく、分け隔てなくすべての患者を診療するための最善策だったのだ。
耳を澄まして隣の診察室の様子を窺っていたヨンファは、ドアが開閉する音で強面の患者が退室したのだと察して、すっくと椅子から立ち上がる。
「失礼します」と控えめに声をかけながら足を踏み入れると、キムはちょうどデスクで作業をしていて、背中越しに「終わったかね」と短く返事があった。


「はい。インフルではなく、風邪でした」
「おお、そうか。すまなかったな。ところで、これから何か予定でも?」


慌ただしそうにペンを走らせていたキムがカルテから顔を上げるなり、急いたふうに尋ねられる。


「いえ、何もありません。ジョンシンを車で送ってから帰宅するだけなので」
「無理を承知で頼みたいんだが、追加であと数人、診察してもらえないだろうか。今日は外傷の患者が多くて縫合処置ばかりでな。時間がかかる分、他の患者を待たせることになってしまうんだ」


告げられた内容が思いもよらないものだったので、ヨンファは虚を衝かれたのと同時に面食らってしまい、咄嗟に返事ができなかった。
診察が済み次第、熱があるジョンシンを一刻も早くアパートに連れて帰らなければと考えていたのだ。
手伝うのはやぶさかではないし、キム直々の申し出を断るのも正直気が引ける。


「そういえば、待合室がかなり混み合っていましたね……」


どうしたものかと躊躇いながら言葉を継いだところで、「先生」と背後から低い声が割って入った。
反射的に振り向くと、いつの間にかジョンシンがすぐ後ろに立っている。


「ヨンファヒョンを待ってる間、俺、奥の部屋で寝させてもらってもいいすか?」


どうやら自分たちの会話を聞いていたらしく、いきなりとんでもないことをぼそぼそと言い出した。


「ちょっ……、ジョンシナ……っ」
「もちろん構わんぞ。ゆっくり休んでいきなさい」


ぎょっとして、慌てて制止したヨンファとは対照的に、椅子に座ったままのキムは眼鏡を押し上げながら鷹揚に頷いてみせる。
「決まりだな」と呟いたジョンシンは視線を転じ、おもむろに高い位置からヨンファを見下ろしてきた。


「つーわけだから、俺に遠慮しないで手伝えば?」





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(4)

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2019/10/26 (Sat) 17:51
haru

haru

は*さん

こんばんは♪

地球温暖化が原因で、毎年のように自然災害が多いですね。
昨日も雨がひどかったみたいですが、大丈夫でしたか?
は*さんはずっとお仕事が激務ですね。本当にお疲れ様です。
私は、最近は落ち着いていて、変わらずまったりと過ごしています。

医療に従事していない者が書いているから突っ込みどころ満載なのに、嬉しいお言葉をありがとうございます。
いよいよヨンファが帰ってきますね(*´ω`*)

2019/10/26 (Sat) 22:23

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2019/11/03 (Sun) 01:02
haru

haru

さ**さん

こんばんは♪

今日、ヨンファが帰ってきますね。
この日をずっと待ち望んでいたのに、喪失感の方が大きすぎて当初の気持ちとは微妙に違っています。
それでも、ヨンファの顔を見たら感極まってしまうかもしれません。
温かいお言葉をどうもありがとうございます♡ 何とか踏ん張ってみますね(*´ω`*)

2019/11/03 (Sun) 02:01