CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 85

2019年09月29日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 0






ほどなくして合流した幹線道路は、混雑する時間帯にはまだ間があるせいか、比較的空いていた。
途中、目についたドラッグストアに立ち寄り、ジョンシンの症状を見越して必要なものをいくつか購入する。
ヨンファ自身はすでにワクチンを打っているので、仮にインフルエンザだったとしても感染する確率は低いだろう。
二十分ほど車を走らせると、目を凝らすまでもなく、じきにフロントガラスの向こうにジョンシンが暮らすアパートが見えてきた。
建物の正面入り口のあたりに車を横付けして、すぐさま電話をかける。


「今、着いたぞ。正面玄関のところにいる」


『了解』という返事を聞き、購入したばかりのサージカルマスクを着用して待っていると、数分後、身長が百八十を軽く超える大柄な人影がアパートのエントランスからのっそりと出てきた。
全身スウェットの上に黒のチェスターコートを羽織り、足許はVANSのスニーカー。
加えて、金髪と顔を隠すように黒キャップを目深に被って黒マスクをつけているので、まさにオールブラックコーデのストリートファッションだ。
いつも背筋がピンと伸びて姿勢がいいジョンシンだが、今は歩くのすらつらそうで、足取りも幾分重いように見える。
運転席から降りたマスク姿のヨンファに気づくなり、こちらにゆっくりと近づいてきた。


「悪ぃ……助かる」
「気にしなくていい。それより大丈夫か?」


元気のない声でぼそぼそと詫びるジョンシンに、気遣うように問いかけたヨンファが後部座席のドアを開けて乗るよう促す。


「――頭がいてぇ……」


窮屈そうに規格外の長身を折り曲げてシートに収まった男はよほど具合が悪いらしく、唯一、黒マスクに覆われていない目許を歪ませ、黒キャップの上から側頭部のあたりを押さえた。
低く呻くような声と大きく上下する両肩は、呼吸が苦しいことを物語っている。
こんなに弱りきった様子のジョンシンを目にするのは初めてだ。
ヨンファが知る限り、部屋住みをしていた当時、風邪ひとつ引いたことがなかった。
明朗快活で頑強な男は入門当初から肝が据わっていて、自分の脆弱な一面を表に出そうとせず、いかにも自由奔放に生きているように見えたものだ。


「寒気がするのか?」


案じ顔で覗き込むと、ふいに視線がぶつかる。
漆黒の双眸に普段の力強さはなく、顔をわずかに顰めていたジョンシンはさも息苦しそうにマスク越しに言葉を絞り出した。


「今はしねぇけど……、怠いし熱い……」


車外に立っていたヨンファは軽く腰を屈め、「ちょっと触るぞ」と一言断りを入れてから、後部座席にぐったりと身を預けている男の黒キャップを後方にずらす。


「え……っ、どう……」


途端に瞳をぱっと見開いて狼狽えるジョンシンをよそに、露わになった額に手のひらをそっと押し当てると、びくんと肩を揺らした。
想像していたよりも、熱が高いことに驚く。


「――39度近くあるな。これじゃ、頭も痛いだろう」
「あー……、ひんやりしてて気持ちいい……」


ほうっと息を吐くのと同時に縦皴が寄っていた眉間が緩み、ジョンシンはうっとりとしたように目を閉じた。
珍しく子供のような無防備な姿を見せられ、思わずふっと笑みがこぼれそうになる。


「こんな状態なのに、我慢したら駄目じゃないか」
「心配……してくれたんだ?」
「当たり前だ」


迷いなく言い切ると、先ほどまで苦痛に満ちていたジョンシンの顔つきがほんの少し和らいだ。


「病気になって……ラッキーだな。アンタに世話焼いてもらってさ……、すげぇいい気分」
「……馬鹿。あまり心配をかけるな。――家で何か食べたか?」
「いや……なんも……」


目の前のわずかな表情の変化に瞬きつつ、静かな口調で尋ねたヨンファに、ジョンシンはぼそりと漏らす。
ずっと寝込んでいたのだろうから、それもそのはずだ。


「じゃあ、せめて水分補給だけでもした方がいい」


額から手を離したヨンファは、助手席に置いていたドラッグストアの袋からスポーツドリンクを取り出し、ジョンシンに手渡した。
素直に黒マスクを外してゴクゴクと飲んでいる間に、「取り敢えず、応急処置な」と言いながら冷却シートを額にそろりと貼ってやる。


「体調が悪い時くらいは、もっと早めに誰かに甘えろ。俺は今フリーだし、組の者や友達でも」


現時点でできることを済ませるなり、後部座席のドアを閉めようとした寸前、一瞬早く熱を持った長い指に手首を掴まれてぎょっとした。


「なあ……、アンタの厚意に付け上がったらどうする?」


深々とシートに背を沈めていたジョンシンはやや身を乗り出し、驚くほど真剣な様子で熱っぽく見つめられる。


「それは困る」
「……即答すんなよ」


不服そうに大きく溜息をついたかと思うと、息苦しくなるような色を帯びた眼差しはすぐさま元に戻ったものの、端正な顏に瞬間影が差したことに気づいてしまった。
少なからずヨンファの心も波立ち、こんな時、いつもどう接していいのか分からなくなる。
決して傷つけたくないし、中途半端に関わることが結果的にジョンシンを苦しめている可能性があるにもかかわらず、どうしても素知らぬ振りをすることができないのだ。


「都合がいいかもしれないが、お前とは今の距離をこれからも保っていきたいと思っている」
「――………」


自分を慕ってくれるジョンシンの真の望みに応えられないのに、完全に繋がりを断つことだけはしたくない。
それが己のエゴだということは、十分に自覚している。
先日、『Club Blueming』において、ジョンヒョンの恋人の存在を知っているのかとホンギに訊かれた時、辛うじて胡麻化した直後、ヨンファが持っていたグラスと交換するように料理の乗った皿を差し出したのはジョンシンだった。
場の雰囲気を変えるようにさりげなく気を回してくれたのだと、すぐに理解した。
目には見えない心遣いや、素っ気ない態度の裏に隠された温かさに、これまで何度も救われてきたのだ。


「ジョンシナが優しい人間だということは、よく分かっているよ。だから、俺はお前を放っておけないんだ。家族同然に大切だから――」
「家族同然……か。温かくて泣けるねぇ。……俺にとっては、一番な残酷な言葉だけど」
「………っ」


皮肉げに口許を歪め、自嘲めいた笑みを浮かべる男に、ヨンファは何も言えなくなった。
実の弟に対して向けるようなこの気持ちは、どうやってもジョンシンンの心に届いてくれないのか。


「俺もアンタのこと……同じように思えるのはいつなんだろうな……」


どこか遠くを眺めるようなうつろな目つきで誰に言うともなく、ただ静かにぽつりとこぼれ落ちた言葉の意味合いと重さが、ひどく胸に痛かった。
そして、見ているだけで切なくなるような表情も――。
ふと気づけば、身動きが取れないほどの強い力で握り込まれていた長い指先がするりと緩んで、いつの間にか解放されていた。
今はこれ以上触れない方がいいと判断し、後部座席のドアを閉めたヨンファは運転席に乗り込む。
ジョンシンに悟られないようにそっと深呼吸を繰り返しながらシートベルトを締め、どうにか心を落ち着かせた。


「お前の行きつけの病院か、距離が近いところがいいのか。どこへ連れて行けばいい?」


背後を振り返ると、ジョンシンは再び黒マスクを装着していて、その表情はもう伺い知ることができない。
長い脚を持て余し気味にシートに凭れたまま、ちらりとこちらに視線を向けてぼそりと行き先を告げた。


「……じゃあ、アンタが会いたがってた――キム先生のところ」





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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