CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 17

2019年07月21日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 0






ストレートな誘いにヨンファは瞬きすら忘れて、目の前の男を呆然と見返した。
すぐに返答できなかったのは、触れ合った箇所からワイシャツ越しに伝わってくるジョンシンの体温がやけに熱く感じられたからだ。
まるでこちらの理性を根こそぎ奪おうと、ダイレクトに訴えかけてきているのが分かる。
性欲が常に枯渇しているのかと呆れてしまうほど隙あらば求めてくるジョンシンは、ヨンファを食い入るように見つめたまま答えを待っていた。


鍋の蓋が開くまで――。
せっかくいい気分でいたのに、あたかもやっつけ仕事のような物言いをする男に動揺を隠せない。
「提案」と言いながら、腰に回された腕に力が込められている時点で断るのを拒否しているとしか思えないし、シンクとジョンシンに挟まれた形では逃げ道を塞がれたのも同然だった。
表向きはヨンファに選ばせているようでも、結果的には追い詰められている。


ざわりと肌が波立ち、条件反射のように反応してしまうのは、この男の愛撫にすっかり慣らされているせいだと己に言い訳した。
ひょっとすると、ジョンシンは心よりも身体の繋がりを望んでいるのだろうか。
そう思い至った途端、胸の奥がしんと冷えていくような錯覚に陥る。
ヨンファに対して好意を寄せているふうでも、結局行き着く先はそこかと、ひどく複雑な心境になってしまった。


「――で、どうする?」


予想外の成り行きに即突っぱねることもできずに言葉を探していると、ジョンシンが落ち着き払った声で性急に結論を迫ってくる。
どうするも何も……。
これまでの経験から、口が達者な男を相手にこちらが何かしゃべったところで、上手いこと言いくるめられるのは明らかだ。


小さなキッチンの中で、ヨンファの内心の動揺までも見透かすような静かな眼差しがじっと様子を窺っている。
疲れているから御免だ……、と適当な理由を言えば済むのに、心のどこかで拒みきれずにいる自分自身に狼狽えまくる。
そのうち、視線を合わせていられなくなったヨンファが、それとなく目を逸らした時だった。


「なーんてな」
「――………は?」


突如、この場に不釣り合いな素っ頓狂な台詞が耳に入ってきて、思考に急ブレーキがかかる。


「そんな困った顔すんなよ。ジョークだよ、ジョーク」
「―――――」


唖然とするヨンファの前で、ぷっと吹き出したジョンシンは目許を和らげて悪戯っぽく笑った。
さも楽しげな様子から、単に自分が揶揄われていただけだとようやく気づく。
途端に、一気に全身から力が抜けて、入れ替わりにカッと頭に血が上った。


「こんの……馬鹿……っ」


両手でジョンシンの胸板を力一杯に押し退けると、弾みで大柄な体躯がやっと離れる。
こちらがどういうリアクションをするのか試されたのだ。
その結果、ヨンファが狼狽している様子を見て面白がり、腹の中でほくそ笑んでいたに違いなかった。
悪趣味にもほどがある。


「だってよ、十五分ぽっちで終われるかよ。俺、早漏じゃねーし」
「やかましいっ。ふざけんな!」


何食わぬ顔で事もなげにのうのうと言ってのける男に対して冷静になれるはずもなく、怒りと当惑がない交ぜになった感情がふつふつと湧いてきた。
正面から睨めつけるだけでは飽き足らず、ぐっと握り締めた拳でジョンシンの肩や腕を殴りつける。


「いててっ……いてーよ。アンタ、顔に似合わず凶暴すぎ」


こちらの気も知らないで、人を食ったような態度を取る男に振り回されてばかりで腹が立った。
あまり内心を見せようとしないから、何を考えているのかわけが分からないのだ。
平然と手のひらで転がされている気がして、悔しくてたまらなかった。


「俺を揶揄って、そんなに楽しいかよ」
「揶揄ってねぇって」
「嘘をつくな!このホラ吹き男がっ。初っ端から、無職だって大嘘をつきやがったくせに」
「そんな前のこと、よく覚えてんなぁ」
「当たり前だっ。忘れてたまるか」


ヨンファにとっては衝撃づくしの日々だったが、ジョンシンにしてみればその程度のものなのだろう。
蛇足だったな……、と必要以上に戸惑ってしまい、過去の出来事を今さら持ち出すべきではなかったと後悔した。
これ以上余計なことは言うまいと口許を引き結んだところで、普段あまり意に介する素振りもないジョンシンが小さく溜息をつく。


「まあ、お近づきになりたかったってことで、それについてはもういいだろ。……今のも、半分は本気だけど、アンタが腹減ってんじゃねぇかって思い直したんだよ」


ジョンシンは急に真剣な顔つきになり、珍しく弁解するように言い募り始めた。
「俺はアンタで満たされるけど……」と、さらに取り繕うよう付け加えられた台詞にどきりとする。
不快でしかないはずの男に、また別の感情がちらりと顔を覗かせた。
慣れない展開はヨンファの心を掻き乱すばかりで、こんなふうにあっさりと白状されても、手のひらを返したように素直にはなれない。
だが、こちらの意思とは真逆にわけもなく心臓が早鐘を打ち出し、不覚にもじんわりと頬が熱くなった。


何とも言えない気恥ずかしさを感じて咄嗟に下を向いたものの、長身をひょいと屈めたジョンシンが窺うようにヨンファの顔を覗き込んでくる。
ほぼ同時に目が合ってしまい、ますます居たたまれなくなった。
わずかな間をおいて、しばらく黙ってこちらを見ていたジョンシンがふっと表情を変えて口を開く。


「……なあ、――もしかして、照れてる?」
「そ、そんなわけないだろっ。勘違いするな!」


自分でもどうかと思うくらい顔が火照っているのを、勘の鋭いジョンシンが見逃すはずがなかった。
知りたくもないのに息を呑んだ気配まで伝わってきて、決まりの悪さにヨンファは尖らせた声音で言い放つ。


「いいか。くだらないことを言った罰として、今日の洗いものはお前。食後のコーヒーもお前。俺は何もしないぞ。食べるだけで、梃子でも動かないからな」


一気にまくしたてると、瞠目したジョンシンがつと眉根を寄せた。


「ああ、もう分かったって。そんなマジに怒んなよ。しょうがねぇなぁ……」


別段嫌そうでもなく、「そのくらい、いくらでもやってやるよ」と言いながら、まるで悪戯が見つかった子供みたいな表情で困ったようにがりがりと頭を掻いている。
端正な貌はどことなくはにかんでいるようにも見え、この男らしくない意外な姿に、毒気を抜かれたヨンファはまじまじと見入ってしまう。
溜飲が下がったのはいいが、すんなりと素直な態度に出られると怒りの矛先を見失い、どうしていいか分からなかった。


ジョンシンは再び少しずつ距離を縮めてきて、ヨンファの髪にそっと触れてくる。
温かい大きな手に宥めるように優しく撫でられ、じろりと睨みつけたヨンファにすぐさま気づいたらしく、「悪かったから、機嫌直せよ」と弱り切った顔で呟いた。
そのまま長い指先で前髪を掻き上げたかと思うと、露わになった額に掠めるようなキスが落ちる。


「――その代わり、もう一回だけ」


間近で囁かれた声は、やけに艶めいて聞こえた。
いつもより甘い低音に加えて包み込むような眼差しにも、先ほどまでの面白がるような揶揄めいた響きや色合いは一切ない。
「ヨンファ……」と名を呼ばれながら、背中をやんわりと抱き寄せられた。
肩先が小さく跳ねたが、振り払わずに身を任せていると、目線を合わせたまま顎に手をかけられる。


その時、逃げたいと思わなかったのはヨンファの本心だ。
上目にじっと見上げれば、やがてジョンシンの整った貌がゆっくりと近づいてくる。
どちらもお互いから視線を逸らすことなく、柔らかな唇は驚くほど繊細に合わさってきた。
強引な男なのに、情欲が滲んでいない触れるだけの口づけはひどく優しくて、その心地よさに浸るようにそっと目を閉じる。
それが伝わったのか、おもむろにジョンシンの胸許に深く抱き込まれ、ヨンファは応えるように広い背中に回した指先に力を込めた。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(0)

There are no comments yet.