CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Forbidden Love 5

2016年03月11日
Forbidden Love(兄弟パロ) 0
無題





突然のジョンシンの留学話に、ヨンファは軽いショック状態に陥っていた。


朝食を済ませたあと、ヨンファは自室へと戻ったジョンシンを追いかけた。
ノックをして部屋に入ると、ジョンシンはちょうど制服に着替えているところだった。


「ジョンシナ、一体どういうことなんだ?ちゃんと説明しろ」
「……さっき言っただろ」


ヨンファに背を向けたまま、裸の上半身にカッターシャツを身に着けながら低い声が返ってきた。


「あんなので納得できるか。S大を目指していたんじゃなかったのか?」


一瞬ピタッと動きが止まり、こちらを振り向いたジョンシンは、何かを振り切るような顔をしていた。


「そのつもりだったけど、向こうでやりたいことが見つかったんだ」
「いつ決めたんだ?なんでそんな大事なことを言わなかった?俺はてっきり同じ大学に行くものとばかり……」
「……………」
「しかも明日ってなんだよ。どうしてギリギリまで黙ってた?」


突然のことに、ヨンファは頭の中が真っ白になりながらも、どうにか言葉を絞り出していく。
でも、ジョンシンは何も言わず、黙々と制服に身を包む。
まるで説明しても無駄だと暗に仄めかされているようなその態度に、ヨンファの胸がキリキリと痛んだ。


「それは、もう決定なのか?」
「……ああ」


身を切られる思いで、縋るような目をしてヨンファが訊ねると、目の前の端正な顔が困ったような表情を見せる。
でも、ジョンシンの口調は終始淡々としていた。
あまりにも急すぎる展開に、ヨンファは頭の整理がつかず、気の利いた言葉が何も見つからない。


「……どこの…大学に入りたいんだ?」


それでも、矢継ぎ早に訊かずにいられなかった。
胸が苦しくてたまらない。気丈に振る舞っていなければ、涙が零れそうになる。
そんなヨンファの心中を知りもしないで、ジョンシンは真っ直ぐ見据えて口を開く。


「C大学LA校。親父たちに相談したら、LAにある大学なら許可するって言われたんだ」
「C大って…正気か?S大よりもかなり難しいはずだろ」
「承知してるよ。だから、他の大学も受験するつもりでいる」


ヨンファの考えも及ばなかったことにチャレンジしようとしているジョンシンに驚きを隠せない。
なんだか見知らぬ人間を前にしているような感じがして、ヨンファはそっと奥歯を噛み締めた。


「明日……何時の飛行機で行くんだ?」
「午後2時50分、仁川発」


迷いのないその顔つきにジョンシンの本気を見た瞬間、もうこの話が覆ることはないだろうとヨンファは悟った。
ジョンシンは一度決めたことは、途中で投げ出さずにやり遂げる奴だから、これ以上、何を言っても無駄だ。
そう思った途端、ヨンファは身体中の力が抜けるのを感じた。


「いろいろ……悪かった。嫌なことをして」
「………っ」
「……俺たちはきっと……一緒にいない方がいい」


ジョンシンが低い声ではっきりと断言した。


―――それは一体……どういう意味だ……?


切りつけられたように、心臓の奥が痛くなった。


「来年、卒業式が終わったら、すぐに渡米するつもりだから」


上着を着てカバンを手にすると、ジョンシンはヨンファの横を通り過ぎ、部屋から出ていった。
ヨンファはその背中を、ただ呆然と見送ることしかできなかった。





ジョンシンが急に留学を決めたのは、もしかしたら自分とのことが原因なのではないだろうか。
あの日以来、なんとなく距離を置かれているような気がしてならなかった。
目が合ってもぎこちなく逸らされたり、話しかけても用件が終わると、逃げるようにヨンファの前から立ち去ったりする。


ジョンシンが後悔していることは一目瞭然だった。
衝動的に過ちを犯して、同じ家で一緒に暮らすことに苦痛を感じているのかもしれない。


あの夏の出来事が間違いだったのだと、はっきりと突きつけられたようで、ヨンファの顔は強張った。
一緒にいたくないと思うほど、嫌悪感を抱かれてしまったのだろうか。
いろんなことが頭の中を駆け巡る。


結局、自分はただの身近で手軽な相手にしかすぎなかったのだということを再認識した。
決してこんな結末を望んでいたわけではない。
完全に元に戻らなくても、兄弟としてこれから先も上手くやっていければいいと思っていた。
こんなことになるくらいなら、あの時全力で抵抗して、誘いに乗るべきじゃなかったと今更悔やんでももう遅い。


―――何を期待していたんだろうな……。


たった一週間という短い期間ではあったけれど、触れられる唇や指先が思いのほか優しく、熱っぽい眼差しが自分に対してだけ向けられているものだと、勝手に勘違いしていた。
同居していれば、またそういうことがあるかもしれないと、心のどこかで望んでいた。


何を思い上がっていたんだろう。自分で自分に笑いが込み上げてくる。
とうの昔に終わったことなのだ。


ジョンシンの周りには彼女のみならず不特定多数の気配がしていたことを、忘れていたわけではなかった。
自分はあくまでもその中の一人にしか過ぎない。
それなのに、自分の都合の良いように解釈して、ヨンファは恥ずかしくてたまらなくなった。
あの日を境に自分の想いと決別したはずなのに、未だに引きずっていることに苦笑を禁じ得なかった。










翌日、ジョンシンはアメリカへ出発した。
滞在期間中は両親の家に身を寄せるとのことで、ヨンファの知らないところであれこれ根回しをしていたことに驚いた。
頭が良いせいか、やる事に抜かりがない。
恐らく何ヶ月も前から、用意周到に準備を進めてきたのだろう。


アメリカの大学に進学するための準備や具体的な手続について、ヨンファは自室のパソコンで調べてみた。
韓国の大学のような入学試験はなく、代わりに民間企業・団体によって作られた全国統一テストがあり、他に学校の成績、エッセイ、推薦状、課外活動、面接による総合的な判断に基づき、合否が決まるようだ。


ジョンシンの成績なら、万が一にも合格するかもしれない。まったく可能性がないとは言い切れない。
ヨンファは椅子の背もたれに身体を預け、大きく息を吐いた。
想いを振り切った相手と、同じ屋根の下で暮らすのは正直辛い。だから、別々に暮らした方がいいのだ。
そう結論付けて、ヨンファは自分で自分を慰めるしか手立てはなかった。


現にジョンシンも、「一緒にいない方がいい」と言っていた。
だから、これで良かったんだ。
ヨンファは自分の感情を無理矢理押し殺した。







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二週間後、ジョンシンは母親と一緒に帰国した。
事前に電話で聞いていたが、半年以上もの間別々に暮らしていただけに、母親との再会は喜びもひとしおだった。


「おかえり、母さん。会いたかったよ」


二人を出迎えたヨンファは、玄関で母親を抱き締める。


「ただいま、ヨンファ。元気そうで安心したわ。長い間、苦労をかけてごめんなさいね」


長旅で疲れているだろうに、母親は明るい表情で息子たちへそれぞれ土産を手渡し、休む間もなく早速家事に精を出していた。
父親は帰国の目処が立たず一人アメリカに残っていたが、母親がいるだけで家の中の雰囲気は随分と明るくなった。





ほぼ時を同じくして、ミニョクの大学修学能力試験が始まった。
結果次第で受験大学を選び、年明けから始まる各大学の入学試験を受けることになっている。
ミニョクの第一志望校はジョンヒョンの通っているY大学なので、ここで高得点を取っておけばかなり合格の可能性は高くなる。
本人もかなりの手ごたえを感じているようなので、良い結果を期待したいところだった。


そして、ジョンシンは留学の準備や手続で連日慌ただしくしていた。
遅い時間まで部屋の明かりがついているから、寝る間を惜しんでいろいろやっているのだろう。
ジョンシンから特に相談を受けることもなく話をする機会が減ったが、順調に進んでいるのか、本人はとても活き活きとした表情をしていた。


国内の大学を目指さないのであれば、これ以上塾に通う必要はないということで、ジョンシンはCNゼミナールを退塾した。
ハン先生はいたく驚いていたらしいが、理由を知ると快く承諾してエールまで送って下さったようだ。
クラスの友人たちも皆同じ反応だったと、ソヒョンがすぐにメールで知らせてくれた。
試験の結果も聞きたかったので、ヨンファは近日中にソヒョンと会う約束をした。







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火曜日の夕方、ヨンファが待ち合わせ場所の駅改札口へ行くと、反対側からソヒョンがこちらに向かって歩いてくるところだった。


「やあ、ちょうどピッタリだったね」
「わざわざ来てもらってすみません」
こちらこそ。ジョンシンのことで迷惑をかけたね。今から時間ある?」


どうやらジョンシンの塾模試の結果や諸々のプリントをハン先生から預かってくれたらしい。
ソヒョンは重そうなカバンを肩にかけ、寒さのせいか頬が薄桃色に染まっていた。


「はい。塾が始まるまでまだ1時間以上あるので大丈夫です」
「じゃあ、何か温かいものでも飲みに行こうか」


ソヒョンを誘って駅のそばの大手チェーンのカフェに入ると、ヨンファは二人分の飲み物を購入した。
自分の分を支払おうとしたソヒョンをやんわりと制して、窓際の席に座る。


「大学修学能力試験はどうだった?」
「まずまずできたかな…と思います」
「それは良かった。随分有利になるね」
「だといいんですけど、何があるか分からないから、最後まで気を抜かないようにしないと…」
「ソヒョンなら大丈夫だと思うよ。合格するよう祈ってるからね」


ヨンファが笑みを浮かべると、ソヒョンははにかみながら嬉しそうな顔をする。
自分のことを慕ってくれるソヒョンが可愛くて、ヨンファは久しぶりに心が満たされるのを感じた。


「それと、これがハン先生から預かったものです」
「わざわざごめんね。どうもありがとう」


ソヒョンがカバンから取り出した封筒を、ヨンファは礼を言って受け取った。


「ジョンシンがアメリカの大学に行くって聞いて、本当に驚きました」
「まだ受かったわけじゃないから、どうなるかは分からないよ」
「でも、ジョンシンなら、やってくれそうな気がします」
「……もともと型にハマらないというか、兄弟の中でも一番異色な奴だからね」


自分で口にした言葉に、ヨンファは苦く笑う。
ジョンシンは末っ子だけあって、ついていけないくらい自由奔放なところがある。
だから、今回のことも勝手に一人で決めて強行しようとしていた。
それだけの才覚があるから、両親を始め誰も文句は言わないのだが、無鉄砲すぎるとヨンファは思っている。


「なんだかもったいないです。せっかくヨンファさんと同じ大学に入れたのに…」
「どうかな。アイツだからって合格する保証はないよ」
「それはないですっ。ジョンシン、クラスでいつもトップでしたから。……でも、ヨンファさん、この話聞いてショックだったでしょう?」


思いがけないことをソヒョンに言われて、ヨンファは瞠目した。
ショック……?
そう、確かにショックだった。同じ大学に入るとばかり思っていたのは紛れもない事実だから。
でも、ヨンファの口から出たのは、自分の思いとはまったく逆の言葉だった。


「それはまったくないね。家の中が静かになるし、せいせいするよ。アイツ、本当に生意気で腹の立つことばかりだしね」
「あっそ」


ソヒョンが「あっ」と驚いた顔をしているので、後ろを振り向くと、ジョンシンが立っていた。


―――なんてタイミングだ……。


「そーゆーこと。俺一人いなくなったところで、誰も悲しまねぇよ。気にかけてくれるのはソヒョンくらいだって」


ジョンシンは買ってきたコーヒーをテーブルに置いて、強引にヨンファの隣に座ってきた。


「ジョンシンったら!もうそんなことないのに…。でも、会えて良かった。ハン先生から預かったものをヨンファさんに渡したから受け取ってね」
「おお、サンキュー。でも、こんなとこで会えるなんてホント偶然だよな。さっき一緒にいた友達がさ、『すげー美男美女のカップルがいるぞ』って表で指を差すから、見てみると二人だったってわけ」


ソヒョンは「カップルじゃないから」と頻りに照れていた。


「で、その友達はいいのか?」
「そこで別れてきた」


ヨンファとジョンシンの会話が途切れたのを見計らって、ソヒョンが身を乗り出すようにして訊いてきた。


「ジョンシンはS大をやめてまで、アメリカで何を学びたいの?」
「経営学。ここで学ぶよりは本場に行った方がプラスになると思ってさ」
「すごい…。考えることが卓越してるよね。アメリカにはいつ行く予定なの?」
「卒業式が終わったらすぐに行くよ。向こうで面接とかいろいろあるからさ。合否は3月に分かる」
「入学時期って9月なんでしょ?」
「一般的にはそうだけど、年に四回くらい入れる時期があるから、4月でも入学できるらしいよ」


自分にはまったく話してもくれなかったのに、ソヒョンには次々と口を開くジョンシンに、ヨンファは何とも言えない気持ちになった。
こんなことで嫉妬しても仕方ないのに、胸の中がモヤモヤする。
話に夢中になっていると、いつの間にか一時間近く経っていて、ソヒョンの塾の時間もあるので、急いでカフェを出た。


「ヨンファさん、ご馳走様でした」
「いいよ、このくらい。頑張っておいで」
「はい、行ってきます。じゃあ、ジョンシン、またね」
「おう、またな」


笑顔で会釈をして走り去るソヒョンに、ヨンファは軽く手を振って見送った。


「ソヒョンには随分優しいんだな」
「当然だろ。女の子なんだから」
「へぇ、意外とタラシなんだな」
「は?それはお前だろっ」


ヨンファはジョンシンと一緒に地下鉄に乗って、自宅に近い駅で降りた。
二人肩を並べて、夕闇に包まれた道を歩きながら、これといった会話もなく目的地まで歩く。
互いに何を話していいか分からず沈黙が続いたところで、堪りかねたヨンファが重い口を開いた。


「アメリカに行っても、また夏休みとか長期休暇には帰ってくるんだろ?」
「……いや、余程のことがない限り、卒業するまで戻らないつもりだ」


ヨンファは驚きのあまり足が止まった。


「な…んで……?」
「渡航費も高いし、そんなに頻繁には帰ってこれるもんじゃねぇよ」


それが嘘だというのはすぐに分かった。
うちの経済状態からして、この程度余裕で出せる。
本当の理由は訊かなくても想像がついた。間違いなく自分だ。だから、帰って来たくないのだ。


ジョンシンがそれ以上何も話さないので、ヨンファも黙って歩いた。
もしかしたら、ジョンシンに良からぬ想いを抱いていることを、気付かれてしまったのだろうか。
だから、気持ち悪くなって、自分から遠ざかろうとしているのではないか。
ジョンシンは兄弟の縁すら切りたいと思っているのかもしれない。ヨンファは胸が押し潰されそうになった。


「大学を卒業したら、俺は家を出るよ。だから、たまには帰ってきてやれ。母さんもそれを望んでいるんだからな」
「……家を出る?」
「就職を機に自立するつもりだ」
「一人暮らしをするつもりなのか?」
「ずっと親元にいるのもな……」
「……なぁ、ヨンファ」
「ん?」


ジョンシンが何か言おうとしたので待ってみるが、続かないので疑問に思って訊ねてみた。


「……どうした?」
「もし俺が……」


ジョンシンがめずらしく言葉を濁した。


「いや……」


ジョンシンはその場に立ち止まり、何か言いかけたのをやめてしまった。
前を歩いていたヨンファはふと足を止めて振り返ると、ジョンシンがじっとこちらを見てきた。
何を言いたいのか気になってヨンファが視線を合わせると、思いもよらないことを言われた。


「……ソヒョンと幸せにな」


ヨンファはその場から動けなかった。顔が微かに強張るのを感じる。
何故、急にそんなことを……。
ジョンシンの考えていることが、まったく理解できなかった。
言いたいことがいろいろあるような気がするのに、ヨンファは口を開くことができなかった。


一方的にしゃべってさっさと歩きだした長身の後ろ姿を、ヨンファは静かに見つめた。
そして、そのあとを追うようにして岐路に就いた。
二人の間には、もう会話はなかった。







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それから、時は目まぐるしく過ぎていった。


年が明けて、寒さは一段と厳しくなった。厚手のコートなしでは外を歩けないほどで、吐く息も白い。
そんな中、各大学の入学試験が始まった。
昨年11月に実施された大学修学能力試験の結果を踏まえた上で、面接、高校の内申成績、各大学独自の評価方法によって、
合否が決まる仕組みになっている。


ミニョクとソヒョンは二人とも大学修学能力試験で高得点を取っていたため、多少は有利に働くと思われるが、
こればっかりは結果を見るまでなんとも言えなかった。


そして、1月下旬の合格発表当日。
ヨンファは事前に二人から受験番号を教えてもらっていたので、インターネットでそれぞれの番号を入力して合否結果を確認してみた。
すると、画面には間違いなく「合格」の二文字があり、ミニョクはY大学、ソヒョンはS大学にそれぞれ見事合格した。


恐らく本人たちもすでに結果を知っていると思ったが、ヨンファはすぐさま二人に 『おめでとう』 と、労いのメールを送信した。
すると、程なくして返信があり、二人ともとても喜んでいた。
ヨンファはまるで自分のことのように嬉しく思い、厳寒の真っ只中ではあったが、気分的に春が一歩近づいたような気がした。










2月は卒業式シーズン。


高校三年生にとっては大学入学前の大きな門出であり、とてもおめでたい日といえる。
運の良いことに日程が重ならなかったため、母親はミニョクとジョンシンの卒業式にそれぞれ出席し、嬉しそうな顔をしていた。
これで四人の息子が全員大学生になるので、感慨深いものがあるのかもしれない。


それは、同時にジョンシンとの別れの時でもあった。
徐々にその日が近づいているのは分かっていたが、ヨンファはどうすることもできないまま、穏やかに毎日は過ぎていく。


あまりジョンシンのことを考えないように家にいる間は勉学に勤しみ、休みの日はできる限り友人たちと遊びの予定を入れ、暇な時間を作らないようにした。
そうでなければ、心が保てそうになかった。










そうこうしているうちに、明日いよいよジョンシンがアメリカへ旅立つという日を迎えた。
ヨンファが大学から帰宅すると、母親がダイニングテーブルに豪華な料理やケーキを並べているところだった。
話を聞くと、すべて料理上手な母親の手作りと分かり、思わず目を瞠る。


「これ、全部母さんの手作り?」
「久しぶりに腕によりをかけて、たくさん作ったわ」
「すごいね」


母親を手伝って、ヨンファが人数分の皿を用意していると、ミニョクとジョンシンが帰ってきた。
ヨンファと同様の反応をして、満面の笑みを浮かべている。


「うわーっ、美味しそうっ」
「こら、ミニョク。どさくさに紛れて、クリーム舐めてんじゃねぇよ」


帰ってくるなり、目の前のご馳走に大興奮しながら、双子が騒ぎ出した。
本来、ミニョクはこういう行儀の悪いことはしないのに、わざと明るく振る舞っているようにヨンファには見えた。
皆、直接口には出さないが、ジョンシンの渡米を寂しく思っていることが、ひしひしと伝わってくる。
最後にジョンヒョンが帰宅して、全員揃ったところで母親の声がかかる。


「さあ、そろそろいただきましょう。二人の卒業祝いと明日アメリカに出発するジョンシンの壮行会も兼ねてね」


夕食は終始和やかな雰囲気だった。
まだジョンシンがアメリカの大学に受かっているわけでもないのに、気の早いジョンヒョンとミニョクはすでに合格したものとして、夏休みにどこへ行こうかと、もうそんな話をしている。
それをヨンファは笑いながら母親と聞いていた。


豪華な料理をあらかた食べると、母親がケーキを切り始めた。
それを見て、気を利かせたジョンシンが人数分のコーヒーを入れてくれる。
子供の頃から大好きな苺が乗った生クリームのケーキなので、皆、満腹でもこれだけは食べられた。


しばらく話をしたあと、全員で手分けして後片付けをした。
その後、順番にシャワーを浴びてそれぞれの部屋に引き上げた時には、もう午後9時を回っていた。


ヨンファはいつもより食べ過ぎたせいで身体が重く、ベッドに寝転がって本を読んでいたが、満腹ですぐ眠くなり、早々に寝入った。
すると、寝る時間が早すぎたのか、夜中に突然目が覚めた。


ついでに喉の渇きを覚えたので、ミネラルウォーターでも飲もうと、部屋を出た。
隣のジョンシンの部屋の前を通ると、ドアの隙間から明かりが漏れていることに気付く。


―――まだ起きているんだろうか?


ドアをそろりと開けると、電気をつけたまま、ジョンシンはベッドで眠っていた。
毎日多忙を極めているから、相当疲れて寝落ちしたのだろう。


ヨンファは部屋の電気を消して、すぐ出て行こうとした。
しかし、急に後ろ髪を引かれるような思いが襲ってきて、ジョンシンの方を振り向いた。
暗がりで目を凝らしながら、ゆっくりとベッドへと近付く。


目の前には無防備な姿で寝入っているジョンシンがいる。
しばし眺めていると、不意に触れたいという強い気持ちが湧き上がってきた。
そんな自分の考えに一瞬躊躇したが、今なら寝ているから気付かれないだろうと大胆な行動に出てしまった。


ヨンファは手を伸ばして、ジョンシンのサラサラの髪の毛に触れた。
指の間から零れ落ちる感触が気持ち良くて何度か梳き、そして、頬のラインをなぞるように指を這わせる。


ジョンシンの体温を感じ、ヨンファの指が微かに震える。
これで、これから先、自分は大丈夫だと、ヨンファは自分自身に言い聞かせた。
思い出だけで、前に進んでいくことができる気がした。


名残惜しかったが、ゆっくりと手を離してベッドから離れようとすると、いきなり手首を掴まれた。
時間が止まったような気がした。
両目を開けたジョンシンが、無言でじっとこちらを見ていた。


驚いてジョンシンの手を振りほどこうとすると、同時に腕を強く引っ張られ、ヨンファはバランスを崩して胸の中に倒れ込んだ。
そして、息が止まるほどきつく抱き締められる。
身じろぐヨンファをものともせず、素早い動きで体勢を入れ替えると、ベッドに押さえ付けられた。
真っ暗で互いのシルエットがやっと判別できる程度の中、ヨンファはジョンシンを見上げた。


都合のいい夢なんじゃないかと、ヨンファはこの展開が信じられなかった。
正体は分かっているはずなのに、ジョンシンは何も言わない。


でも、これが本当の最後になるとしたら―――。
身体の奥にゾクリとするものが走った。


この行為にどんな意味があるのか、そんなことはどうでもいい。考えるだけ、期待するだけ無駄なのは良く分かっている。
ジョンシンにとって、身体の熱を鎮めるためだけの行為だったとしてもいい。
自分を求めてくれるのなら、どんな理由だって構わない。
ヨンファは戸惑いを捨てて、目の前の禁断の果実に手を伸ばした。


上から見下ろしている男の首に両腕を回して引き寄せると、その唇にヨンファは初めて自分から口付けた。
ジョンシンの身体が一瞬強張って、その唇は少し震えていた。
呆れられてしまっただろうかと、ヨンファは不安が込み上げてきた。


ぎこちなく唇を離すと、数秒間、無言で見つめ合ってしまった。
至近距離だと、暗がりの中でも相手の顔が見える。
まずかったかと身体を離そうとすると、大きな手で顎を強く捕えられて、噛みつくようなキスが降ってきた。


「ん……っ」


ジョンシンと触れ合ったのは、もう半年も前のことだった。
あの時もこれが最後だと思っていたのに、この降って湧いた事態を嬉しいと思う自分がいる。
もし今ここに誰かが入ってきたら、言い逃れができないことをしているのに、もうどうにも止まらなかった。


口付けは長く執拗で、やがて熱い舌が歯列に差し込まれ、ヨンファの舌を絡めとった。
唇が徐々に移動し、喉に歯を立てられて、ヨンファは仰け反る。
喉から胸元へとキスがゆっくりと下がっていきながら、ジョンシンはヨンファの服を器用に剥ぎとっていく。


ジョンシンがなぞったところから熱が生じ、身体の奥が火照り始めるのが分かる。
ヨンファの乳首にしつこいぐらい口付けられ、唇を噛んで声を殺していると、いつの間にかジョンシンは服を脱ぎ捨てていた。
他の部屋にいる家族にばれるわけにはいかないから、気付かれないように声は極力抑えなければならなかった。


大きな手で敏感な場所を擦られ、嬌声が漏れそうになると、まるで声を吸い取るかのようにジョンシンの唇に塞がれる。
舌を絡め合っていると、先走りで濡らしてしまったジョンシンの指が後ろに伸びてきた。


半年ぶりに探られたそこは、長い無骨な指を覚えていたようで、難なく呑み込んでいく。
そのうち少しずつ指が増やされ、奥の一箇所を抉られた途端、ヨンファの全身がビクンと大きく震えた。
声が出そうになり思わず手で口を覆うと、そのポイントを念入りに擦り上げられる。
ただ慣らすためだけでなく、ヨンファの快感を高めようとする指の動きに身悶えて、わけが分からなくなった。


口許の手を強引に引き剥がされて声が漏れると、代わりに啄むような優しいキスが落ちてくる。
ヨンファが口付けに夢中になっていると、ジョンシンが少しずつ中に入ってきた。
圧迫感と鈍い痛みはあったものの耐えられないほどではなく、ジョンシンが身体の奥に到達すると、悦楽が全身を支配し涙が滲んできた。


「………くっ…」


お互いに言葉は一切発しなかった。
何か言えば取り返しのつかないことになりそうで、ヨンファは必死に口を噤んだ。


ジョンシンの唇や指先は泣きたくなるほど繊細で、慈しむようにヨンファを追いつめていく。
中を掻き回されてまた声を上げそうになり、ヨンファはすぐさま唇を噛み締めて必死に耐えたが、それでは足りなかった。
ジョンシンが中にいるというだけで快感の度合いがまったく違い、右の手首を強く口に押し当て、必死に声を押し殺す。


ついでに痛みを紛らわせようとして、ヨンファは無意識のうちに手首に歯を立てていた。
音でそれに気付いたジョンシンに、腕を掴まれて口から離されてしまうと、初めて喘ぎ声が口をついて出る。


「ア………ンッ……」


ジョンシンはそれを気にする風でもなく、歯を立てた手首に優しく舌を這わせ、そのあと何度も執拗に吸い続けた。
その瞬間、甘く切ない欲望が込み上げてくる。
他には何もいらない。ジョンシンだけが欲しいと衝動的に思った。
でも、それが叶わないこともよく分かっている。


―――もっとひどくされてもいい。忘れられないくらいの痛みと傷をこの身体に刻みつけたい……。


初めはゆっくりだった腰使いが、夢中になるにつれて手加減を忘れてしまったかのように、次第に激しく動き始める。
睦言は一切なく、互いの吐息と抑えた喘ぎ声のみで、徐々に高みへと追いつめられ、頭の中が真っ白になった。
全身を震わせながらヨンファが達すると、ジョンシンの低い呻き声が聞こえて、奥が濡らされたのが分かった。





荒い呼吸を繰り返していると、信じられないことに中に入ったままのジョンシンが十分な硬度を取り戻してきた。
再び抜き差しされるとヨンファの締め付けで刺激を受けるのか、徐々に反り返ってきて、完全に硬くなった屹立がヨンファを責め立てる。


「……ふ……んっ」


腰を回すように動かされ、出そうになった声はジョンシンの唇に呑み込まれた。


「ん………ンンッ……」


ヨンファの内壁は半年前よりもきつく絡みつき、貪欲にジョンシンを離そうとしなかった。
ジョンシンの首にしがみ付いて、ヨンファはついていくだけで精一杯だった。
すると、身体を抱き起こされ、結合部分が一気に深くなった。
さっき当らなかった部分を擦られて、ヨンファは目もくらむような快感に我を忘れた。


「や……あぁっ……」


大きくて温かい身体に上下に揺さぶられて、浅ましいほど感じて、これ以上ないくらい幸福だった。
角度を変えて奥を突かれながら、胸の尖りとヨンファ自身を手で弄られると、喉を反らして腰をよじらせる。


―――壊れてもいい。もっと奪ってほしい。これ以上は何も望まないから……。


切ない瞳をしてジョンシンを見下ろすと、激しく唇を塞がれて、涙が滲みそうになる。
舌を貪り合いながらピッチが早くなり、ラストの抽挿に入ったかのようだった。
ヨンファはジョンシンの荒い息遣いや、きつく抱き締めてくる腕の強さを忘れないように身体に記憶させる。


ジョンシンの動きがより一層荒々しくなり、これ以上ないほど深く腰を入れられ、ヨンファは大きく仰け反った。
絶頂を迎えたヨンファに引き摺られるように、ジョンシンもまたあとを追うように中で弾け、例えようのない幸福感に満たされる。
朦朧としている意識の中で、目の前の男の顔を心に刻んで、最後に再び自ら唇を重ねた。





少しずつ熱が引いていき、呼吸も元に戻ってきた。
もう夢の時間は終わったのだと、告げられているようだった。
ただ身体を重ねただけで、言葉をまったく交わさない睦事。
それは虚しい行為にしか見えないかもしれないが、ヨンファにとってはもう十分だった。


抱き寄せるように腰にまわされた手を、ヨンファはやんわりと振りほどいた。
闇の中でジョンシンの目が見開かれる。
ヨンファはぐしゃぐしゃになったシーツを身体に巻き付け、脱いだ服を拾うと、ジョンシンの部屋をあとにした。





もう二度と触れ合うことはないと思っていたのに、神様が最後にご褒美をくれたらしい。
半年ぶりの交わりは、思ったよりも身体的な負担を与えた。でも、ヨンファは充足感に包まれていた。
身体に刻み込まれた痛みが嬉しいなどと、男の自分が思ってしまうなんてどうかしている。


もしかしたら、部屋まで追いかけてきてくれるのではないかと、どこかで期待していた。
しかし、そんな気配は微塵もなく、とんでもない思い違いをした自分に苦笑するしかなかった。
ジョンシンにとっては、最後まで性欲を満たす行為でしかなかったということだ。
未だに忘れられない半年前の夏の出来事と同様に―――。


様々な感情を胸の奥に押し込みながら、ヨンファは布団を被ってきつく目を閉じた。
これ以上なにも考えたくなくて、眠りの中に入ってしまいたかったが、身体がまだ昂ぶっていて一向に寝させてくれない。
何度寝返りを打ってみても駄目で、結局一睡もできず、そのまま朝を迎えてしまった。










ジョンシンの出発する時が刻一刻と迫っていた。
朝食の席で、ジョンシンと顔を合わせたが、まともにこちらを見ようとはしなかった。
だから、ヨンファも同様にやり過ごした。


当分ジョンシンと会えないことが分かっているから、母親を始めジョンヒョンやミニョクもいつも以上に饒舌になっていたが、ヨンファは聞き役に徹して、笑顔を浮かべて相槌を打つ程度に留めていた。
何かしゃべろうものなら、余計なことまで言ってしまいそうで、敢えてあまり口を開かなかった。





当初は空港まで全員で見送りに行く予定だったが、ジョンシンが頑なに拒むので、急遽取り止めになった。
タクシーを待つ間、家の前で母親から一人ずつジョンシンに言葉をかける。


「ジョンシン、身体に気を付けて頑張りなさい。結果が分かったらすぐに知らせてね。当分の間はお父さんもいて下さるから、遠慮しないで頼るのよ」
「そうするよ。お袋も元気で」


次にジョンヒョンとミニョクが、それぞれジョンシンと別れの挨拶を交わす。


「まあ、頑張れよ。うるさいお前がいなくなると、ちょっと寂しいけどな」
「ヒョニヒョン、あんまり遊びすぎずに、お袋とヨンファの手助けをしろよ」
「分かってるって」


「夏休みには友達と一緒に押しかけるから、絶対に合格しろよな」
「おう。任せとけ。夏、待ってるからな」


そして、最後にヨンファの方を振り返った。
柔らかな太陽の陽射しに包まれて、コートを着た長身はいつも以上に絵になっていた。
ジョンシンがじっとこちらを見て、視線と視線が絡み合う。
将来を見据え、新たな決意を感じさせる澄み切った瞳をしていた。


「やるからには、しっかりやってこい。くれぐれも父さんを困らせるようなことはするなよ」
「ああ……分かってる」


ヨンファは正面から真っ直ぐジョンシンの瞳だけを見つめて、万感の思いを込めて言葉を発した。


「……身体に気を付けて。ジョンシナの幸せを……いつも願ってるよ……」


ヨンファの言葉が余程意外だったのか、目の前のポーカーフェイスが崩れた。
でも、それは一瞬のことで、またすぐ元の表情に戻った。


「……ああ。……ヨンファも」


その時、タクシーがこちらに向かってくるのが見える。
思わずギュッと拳を握り締め、ヨンファは背筋の伸びたスラッとした後ろ姿を見送った。


ジョンシンは一度も振り返ることなくタクシーに乗り込むと、そのまま走り去っていった。


視界から完全に消えるまで、ヨンファはその光景を目の奥に焼き付け、皆が家の中に入っても、一人だけ身体が固まったようにその場から動くことができなかった。


この家で一緒に暮らしてきた日々が、走馬灯のように駆け巡った。


そして、決して忘れることのできないあの夏の一週間。
ジョンシンにとっては意味のないことでも、ヨンファはずっと大事に心の中にしまい込んでいた。
吸い込まれそうなほど綺麗な黒い瞳に見つめられ、甘い口付けを交わし、長い指で何度も追い上げられ、そして、温かい腕に包み込まれて心から満たされた。


本人はもう手の届かないところへ行ってしまったのに、何時間か前に触れた肌の感触は、未だ消えずに残っている。
ジョンシンの唇や手が這いまわったところや、身体の奥の鈍痛でさえ、今はただ愛おしい。


急にギュッと胸が絞られるような痛みを感じて、ヨンファは思わず手で押さえた。


次に会うのがいつになるか分からないけれど、その時、兄として笑って再会できるように自分も前に進まなければならない。
ジョンシンとのことは良い思い出にして、気持ちを新たにしよう。


フーッと一つ大きな溜息をついて、ヨンファは踵を返して家に入ろうとした。
門扉に手をかけた時、不意に自分の手首に赤い痣があるのに気付く。


それを目にした瞬間、ヨンファの身体に震えが走り、今まで抑えていたものが一気に溢れ出てきた。
咄嗟に奥歯を噛み締めて空を見上げたが間に合わず、止めどなく流れて、頬を伝って落ちていく。


それは、ジョンシンに何度もきつく吸われた場所だった。
まるで刻印のように、はっきりと鮮やかに色濃く残っている。
その時のことを思い出しただけで、ヨンファは心臓が締め付けられるような気がした。





ジョンシナ、愛してたよ……。


―――世界中の誰よりもお前だけを。





言葉にできない想いを、ヨンファはそっと自分の中に呑み込んだ。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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