CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 15

2019年07月13日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 0






ここ最近ずっと、自分でも気づかぬままに溜息ばかりついている。
自宅マンションでひとりきりの時はもちろんのこと、仕事の合間でさえついこぼれそうになるのを慌てて噛み殺す始末だ。
理由については決して納得できるわけではないが、ヨンファはちゃんと理解していた。
奇妙だと思っていた感情の正体が自分の中で明確な形として現れたのと同時に、はっきりとした答えが出てしまったのだ。


もともとは同じ中高一貫男子校の先輩後輩だったのが今では隣人同士となり、いつの間にかジョンシンの美味しい手料理で懐柔されていた。
誰よりも身近な存在なのは間違いないし、ヨンファの生活に深く関わっているのも紛れもない事実だ。


耳許で囁かれる低い声、力強い腕の感触、ほっとするような心地よい体温。
始まりは身体を重ねたことがきっかけだが、心まで囚われてしまうとは想像すらしなかった。
自覚したあの日から一夜明けた翌日は、その事実がいきなり現実のものとして重く圧しかかってきて、認めてしまうのが怖かった。
それから半月が経ち、ふたりの関係はこれまで通りで別段何も変わっていない。


どうしたらいいのか、正直、自分にもよく分からないが、今さら否定する気はないのだ。
そのため、元凶である男のことを考えるたびに、無意識のうちに溜息がこぼれてしまうらしい。
まるで重苦しいものを体外へ排出するかのように――。


初恋の相手だ、惚れているだの言われても、どこまで本気なのか。
ぶっきらぼうで歯に衣着せぬストレートな物言いをし、基本飄々としていて掴みどころがない。
でも、その反面、信じられないくらい優しい面を持ち合わせていることも知っている。
いつの間にかそばにいるのが当たり前になっていて、あの男と一緒に過ごす時間は確かに楽しいけれども、あくまでも一過性の出来事にすぎないと思っていた。


もしジョンシンが女性だったら、これほどまでに悩むこともないのだろうか。
この期に及んで、まだこんなことを考えている。
往生際が悪いとしかいいようがないが、すんなりと認めたがらないもうひとりの自分がいる。
そして、諦め半分にまたもや深々と溜息をつくのだ。


誰にも相談できないので、尚更そうなのだろう。
これまで女の子を好きになった時には、決して起こらなかった現象だ。
気休めにしか過ぎないと分かっていても、大きく息を吐くと幾分気持ちが楽になった感じがする。
事の発端は、そんな日々を送っていたある日、昼休みにヨンファが同じ資金証券部の三年ほど上の先輩と、職場近くの中華料理店で食事を終わらせて社に戻ってきた時だった。
エレベーターを降り、ディーリングルームに向かってひと気の絶えないフロアを歩いていると、横合いから名前を呼ばれたのだ。


「あっ、ヨンファ!」


聞き慣れた声に顔を向けると、経営企画部のグァンヒがちょうどよかったと言わんばかりに、安堵の表情を浮かべながらこちらに近づいてくる。
仕事上の接点はさほどないが、同期の中ではもっとも親しくしているので、社内で顔を合わせれば言葉を交わすのが常だ。
反射的に足を止めたヨンファは、「先に戻っているぞ」という先輩に会釈をしてからグァンヒの方に向き直る。


「どうした? 昼飯は食べたのか?」
「今日はちょっとバタバタしてて、さっき簡単に済ませたところ。実は、折り入って相談があるんだけど……」
「なんだよ、改まって」


グァンヒの話はこうだった。
午前中、一階にある店頭に下りていた時に、かつて支店の渉外係として外訪活動を行なっていた頃の顧客と偶然再会したそうだ。
当時、その顧客――精肉店のオーナーが新店舗を出店するにあたり、融資の件でグァンヒが本店営業部に働きかけをしたのだという。
既存店と同様に業績が右肩上がりで推移していると喜びながら報告を受け、グァンヒに対して改めて感謝の意を伝えてきたらしい。


「それで、スペイン産のいい肉を今朝仕入れたばかりだから、仕事上がりに店に寄ってくれって言われたんだ。どうしてもお礼がしたいって。有難い話だけど、俺、料理できないし、実家も遠いから、正直困っててさ。ヨンファなら自炊してるだろ。俺の代わりに貰ってくれないか?」


以前は、確かに自分で調理していたこともあったが、今は専属料理人がいるから、ほぼ作っていない――とはとても言えなかった。
そういえば、新しい彼女ができたと早とちりされた時にも思い切り否定したのだ。
あの時点では、まさかこんな展開になるとは夢にも思わなかった。


「顧客はお前に食べてほしいのに、まずいんじゃないのか」
「いや、それは気にしなくていいよ。後日、食べた感想を聞かせてくれればいいから」


明るく言い放つグァンヒに、半ば押され気味のヨンファは一応問いかけてみる。


「……肉って、なんの肉だ?」
「イベリコ豚のスペアリブらしい」
「へぇ……」


実家で暮らしていた頃、専業主婦の母親がスペアリブのマーマレード煮をよく作ってくれたのを思い出す。
肉がとても柔らかくて、優しい甘さの中にオレンジピールのほのかな苦味が感じられる洋風の味わいだった。
ただ、スペアリブなんてものを貰っても、調理方法を知らない自分にはお手上げだ。
そうなると、やはりあの男しかいないと、端正な顔立ちを思い浮かべる。


困った時につい頼ろうとしてしまうのは、もう条件反射のようなものだろう。
でも、不思議と、ジョンシンならきっと何とかしてくれるという確信が持てるのだ。
何事もそつなくこなす男なのは認めているので、ヨンファの頼みもふたつ返事で引き受けてくれそうな気がする。


「……じゃあ、いただいてもいいか?」
「もちろん。恩に着るよ。定時になったら受け取りに行く予定だから、ヨンファはディーリングルームで待っていてくれ。また連絡する」
「分かった。それじゃ」


「あとでな」と言いながら去っていくグァンヒの背中を見送って、ヨンファは短く息を吐いた。
取り敢えず、事前に連絡しておいた方がいいな……、とフロアの隅に寄り、上着のポケットに入れていたスマートフォンでジョンシンにLINEを送ったところ、数秒後に着信音が鳴る。


「えっ……、はやっ」


驚きのあまり瞬いたヨンファが視線を落とすと、画面には『作れる』という素っ気ないレスポンスが表示されていた。
笑えることに、たった一言だけだ。
互いにマメな方ではないし、連絡を取り合うといっても用件を簡潔に伝えるのみなので、こんなものだろう。
こちらは昼休みだが、向こうは案外仕事をしていたのかもしれない。
『帰宅次第、持っていく』と返事を打ち、ヨンファは再び送信した。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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