CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 14

2019年07月05日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 0






即了承したジョンシンは促されるままに、スマートな身のこなしで先に立って歩くグンソクのあとに続いた。
ふたりが向かったコミュニケーションスペースはランチタイムやちょっとした休憩時だけでなく、社内外の相手との打ち合わせやミーティングなど、様々な目的で使用している場所だ。
広々とした空間に複数のテーブルと椅子が並べられていて、コーナーには自動販売機や背の高い観葉植物が見栄えよく配置されていた。


足を踏み入れるなり、こちらに気づいた他部署の見慣れた面子と短く言葉を交わし、窓際の四人掛けテーブルに向かい合って腰を下ろす。
すぐさま紙袋からテイクアウト用のランチボックスとホットコーヒーが取り出され、ジョンシンは礼を言いながら受け取った。


「俺の分まですみません。ええと……いくらですか?」
「金はいいよ。俺の奢り」


尋ねると、端正な目鼻立ちに笑みを浮かべたグンソクはさらりと言って、自分のボックスの蓋を開ける。
何度か店に足を運んだことがあるが、見るからにボリューム満点なハンバーガー、厚めに切られた揚げたてのフライドポテト、彩り豊かなミックスサラダが入ったテイクアウトセットは手軽ながら食べごたえ十分だ。


「……合コンの代理なら、もう勘弁して下さいよ」


どうしてご馳走してくれるのか、だいたい察しがついて先手を打つと、グンソクは一瞬目を瞠ってからわずかに苦笑した。


「なんだ、バレたか」
「そう何度も同じ手に引っかかりませんって」


あっさりと認めたグンソクは悪びれたふうもなく、おどけたように肩を竦めてみせた。


「仕方がない。他の奴でもあたってみるか。まあ、遠慮せずに食え」
「いいんですか? ありがとうございます。ご馳走になります」


端から押しつけるつもりはなかったらしく、すぐ退いてくれたことに内心安堵する。
S大出身で相当頭が切れるのに、それをひけらかしたり驕ったところがまったくなく、誰に対しても気さくで物腰が柔らかいのだ。
今みたいにフランクに接してくれるので、ジョンシンが新入社員時代から何かと世話になっていて、公私ともに付き合いのある先輩でもある。
グンソクがカリカリのポテトに手を伸ばすのを確かめてから、ジョンシンはカップに口をつけた。
ブラックコーヒーのほどよい苦味と酸味、香ばしい薫りが口中に広がる。


「――また出張ですか?」
「いや、顧客と会食」
「あ……、それはお疲れ様です」


外国為替取引を専門に行なっている為替ディーラーはポジションごとに細かく分類され、さらに別の肩書が複数存在する。
その中で、ふたりは直物為替を取り扱っている『スポットディーラー』と呼ばれ、為替相場の値動きを常に追いかけ、売買によって収益を上げるといった業務に携わっているのだ。
グンソクはスポットディーラーのチームリーダーであり、ただでさえ多忙な上に突発的に予定が入ることもままあるようだった。


「まあな。一応、仕事第一主義なんで、もう諦めてるよ。しかし、ジョンシンに行ってもらったら、女の子たちが喜ぶんだけどな」
「せっかくですけど、俺、合コンはもうやめておこうと思って」


真顔で答えたジョンシンは、薄い包み紙ごと持った大ぶりなハンバーガーに豪快にかぶりつく。
肉厚でジューシーなビーフパティに新鮮野菜やチェダーチーズの具材がマッチしていて、自家製のふわふわのバンズとも相性抜群だ。
手にしたフォークでミックスサラダをつつきながら、グンソクがまじまじとこちらを見る。


「……まさか、お前、彼女ができたんじゃないだろうな」
「そのまさかです」


ひどく驚いた顔をする四つ上の先輩を見返して、ジョンシンはすんなりと白状した。
実際は彼氏ですけど……、とはいちいち訂正せず、当たり障りのない返答にとどめておく。


「特定の相手は作らない主義じゃなかったっけ」
「以前はそうでしたね」
「ついに、『来るもの拒まず去るもの追わず』は返上か?」


正面から切れ長の瞳を向けられまま、揶揄めいた声音で問いかけられた。
ジョンシンは自らがゲイだとはカミングアウトしていないため、客寄せパンダ的な役割を期待されてか、合コン等であちらこちらから誘いの声がよくかかってきた。
女にはまったく興味がないだけに苦痛以外の何者でもなかったが、付き合いだからと無下にできなかったのだ。


「まあ……そういうことになりますね」
「へぇ、お前がねぇ」


頷いてみせると、グンソクはさも意外そうに眉を上げ、一拍置いてから興味深そうに目を細める。


「美人なのか?」
「ええ、それはもう」
「少しは謙遜しろよ。こんなところでノロケやがって。なんだよ、つまんねぇな」


仕事の時とは打って変わり、砕けた口調でぼやきながら食事を続けるグンソクを見て、ジョンシンもハンバーガーを食べることに専念する。
今頃はあちらもランチタイムだな……、と思いつつ、綺麗に整った顔立ちを思い浮かべた。


ジョンシンの想い人は、高校時代とさほど変わらない。
類稀なる美貌はもちろんのこと、自分よりも頭半分ほど低い身長や細身体型も、だ。
高潔で凛とした雰囲気を纏いながらも明るくユーモアがあって、いつも輪の中心にいるような人だった。
今のような関係になってからは、意地っ張りで怒りっぽい面やチョディンのように無邪気に笑うところなど、驚くくらいコロコロ変わる豊かな表情を傍らで見られて、過去の印象をいい意味でことごとく裏切ってくれる。


初めて出会ったのは中学校の入学式の時で、新入生歓迎のスピーチで登壇したのが、当時生徒会長をしていたヨンファだった。
人目を引くほどの容貌とぴんと背筋が伸びた立ち姿に、一目で恋に落ちてしまった。
残念ながら学年や部活が異なるとほとんど接点はなく、ごくたまに校内で見かける程度だったので、彼が所属するバスケ部の練習をこっそり観にいったこともある。
そんなささやかな楽しみもヨンファが大学受験のために引退するまでで、その後、高校を卒業したのと同時に、ジョンシンのほろ苦い初恋は呆気なく終わりを迎えたのだ。


あれから十年もの月日が流れ、未練がましくなかなか忘れられなかった相手がマンションの隣人だと判明した時は、本当に度肝を抜かれた。
その日はちょうど溜まりに溜まった有給休暇を消化している最中で、飲み過ぎて気持ちが悪い上に自宅のカードキーまでなくすという失態を演じてしまった。
深夜に何かできるはずもなく、途方に暮れて部屋のドアに凭れかかるように座り込んでいたところに声をかけられるという最悪のタイミングだったのだ。
昔と変わらぬ綺麗な貌を前にして、心臓が口から飛び出しそうなほどドキドキしながら、ジョンシンはこの再会に運命を感じた。


それからというもの、ジョンシンの生活は一変した。
仕事はこれまで通りだが、プライベートでは超がつくほど品行方正になり、ほぼ真っすぐ帰宅してはいそいそと料理を作る日々だ。
それも、すべてはヨンファの胃袋をがっちり掴むため。
女に対抗するには、手料理で餌付けするしかないのだ。あとは、セックス……。
これは得意分野なので、ありとあらゆるテクニックを駆使していけば、今後も満足させられると自負している。


ただ見つめるだけで触れることすら叶わないと思っていたのに、こうしてそばにいられるのはまさに奇跡に等しかった。
向こうは性欲に負けたか、ほだされただけだろうが、一応付き合っていることに変わりはない。
でも、身体だけじゃなく、心まで手に入れたいのだ。
当たり前のように一緒に食卓を囲むようになった穏やかな日常を壊したくないし、彼を永遠に失いたくない。
その上で、さらに現状よりもう一歩踏み込んだ関係を望んでいるジョンシンとしては、長期戦でいこうとすでに腹を括っていた。


ヨンファに触れるたびに、どんどん好きになる。
頻繁に抱いているにもかかわらず、もっともっと欲しくて、今の頻度では足りないくらい日に日に貪欲になっているのが自分でも分かるのだ。


『い……から……動いて』


不意に、病み上がりのヨンファと身体を繋げた日の記憶が蘇る。
痛みと快楽がない交ぜになっていたのか、泣き濡れた瞳は心許なさそうに揺れていた。
壮絶な色香が漂う上目遣いで縋るように見つめられるうちに、込み上げてくる情動が抑えきれなくなり、ジョンシンの理性は跡形もなく崩れ去ったのだ。
普段の強情さは鳴りを潜め、素直に身を預けるヨンファはどこか頼りなげで、可愛さのあまり抱き潰すかと思った。


甘えるような仕草で、無防備に抱きついてくる彼にどうしようもない愛おしさを覚え、誘うように開いた唇をありったけの想いを込めて深く塞いだ。
ほっそりした腰を捉えたまま、熱く滾った己自身を何度も繰り返し突き入れて、思うさま痩身を揺さぶった。
自分の腕の中で甘やかな吐息と嬌声を漏らし続けるヨンファを見下ろしながら、慎ましくもきつく締めつけてくる内壁に我を見失ったように夢中になった。
だが、あんなふうに激しく睦み合って互いの温もりを共有しても、想いが通じ合っているとは現時点では言い難いのだ。


「何やってんだ。百面相か?……なんか幸せそうで腹立つな」


呆れ声に視線を上げると、グンソクが胡乱げに眉根を寄せている。
いつから見られていたのか、過去を思い返していたのが顔に出ていたらしく、ジョンシンは慌てて表情を引き締めた。


「なんでですか。グンソクさんもそろそろひとりに絞ったらいいじゃないですか。引く手あまたでしょうに」
「何かに縛られるのって、あんまり好きじゃないんだよな。お前もそうだったろ?」
「その時は、これっていう相手がいなかったんで」
「言ってくれるねぇ」


グンソクは唇の端を上げてニッと不敵に笑い、どこか面白がるような興味津々な様子が伝わってくる。
妙な居心地の悪さを感じながら、ジョンシンが数口飲んだコーヒーをテーブルに置いたちょうどその時、LINEの着信音が鳴った。
「すみません」と目の前の先輩に一言断りを入れてから、スーツのポケットから取り出したスマートフォンを開くと、今まさに頭の中で思い浮かべていたヨンファからだった。
表示された画面に、たった数行の短い文面が並んでいる。
さっと一読したジョンシンは、思いがけない内容に目を瞠った。


『仕事終わりに、精肉店の顧客からスペアリブをいただくことになった。これで、何か作れるか?』





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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