CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

その男、不遜につき 13

2019年06月29日
奇跡のチカラ シリーズ(リーマンパロ) 3






第4四半期の十月はブラックマンデーやリーマン・ショックなど、世界の金融マーケットを大混乱に陥れた出来事が起きており、統計的に分析すると、アメリカ株式市場の株価がもっとも暴落することの多い月だと言われている。
そのため、外国為替市場関係者は皆一様に警戒を強めて、企業の決算発表ニュースなどの動向に注視していた。
為替ディーラーの肩書を持つジョンシンも、そのうちのひとりだ。


十一時半になり、前場と呼ばれる午前中の取引がクローズした途端、それまで張り詰めていたディーリングルームの空気が一気に緩んだ。
後場の開始時刻までがランチタイムなので、上司や同僚たちはぞろぞろと三々五々に散っていく。


「じゃあ、お先に」


隣の同僚が席を立ってひと声かけてきたため、多画面モニターから視線を外したジョンシンは「ああ、お疲れ」と返事をした。
自分も何か買いに出ようかとデスクの上の書類を整理し始めたところで、傍らに置いていたスマートフォンを何げに手に取る。
ヨンファからメールもLINEも届いていないのを確認して、ふうっと深々と溜息をついた。
別段約束しているわけではないものの、お互いに何も予定が入らずに退社時間も遅くならなければ、一緒に夕食を摂ることになるだろう。
食材は十分ストックしているので、こちらとしては大歓迎なのだが、ひとつ気になることがあった。


ここ最近、ヨンファの様子が少しおかしいのだ。
心ここにあらずといった調子でぼんやりとしていたり、時折小さく息をついてどことなく元気がない。
仕事で何か心配事があるのかと尋ねてみれば、『ない』と首を横に振るから、それ以上確かめようがなかった。


ヨンファとは平日のみならず、週末も一緒に過ごすことが多い。
再会したばかりの頃のように警戒心を剥き出しにされることもなく、表情は格段に柔らかくなって、子供のように無邪気な笑顔を見せる時もある。
何を作っても、ジョンシンの手料理を美味しいと言いながらよく食べてくれるし、会話もそれなりに弾む。
以前に比べて距離はぐんと縮まったように実感しているだけに、どうも腑に落ちないのだ。


そして、初っ端から違和感がまるでなかった身体の相性は、抜群にいいときている。
こちらから求めても毎回されるまま受け入れてくれるため、三日にあげず抱き合っているが、ヨンファの身体的な負担が大きいことは否めないので、仕事に支障をきたしている可能性はある。


外堀を埋めるかのようにまず身体を先に手に入れて、そのあと、多少時間をかけてでも心を許してくれるような展開に持っていこうと画策したのはジョンシンだった。
拒絶されないといっても、抱かれる側になったことに対してヨンファの中で迷いや後ろめたさのような感情は完全には消えてなくならない。
だから、衝動的に触れたりキスを仕掛けると、いまだに身を固くし、やや困惑したように目を伏せることがあった。
楚々とした仕草により一層不逞な欲望を掻き立てられて、それを抑え込むのにどれだけ苦労しているか、本人は知らないだろう。


正直なところ、あまりにも上手く事が運びすぎて、逆に怖い。
何かの前兆のようにも思え、予告もなしに二度と立ち直れないくらいの大型爆弾を落とされるのではないかと危惧してしまう。
そう、あの時のように――。


『セフレに毛が生えたようなもん』


あれは、翌日まで尾を引くほどショックだった。
つい調子に乗って、絵に描いたような堅物な彼に揶揄い半分で『裸エプロン』をリクエストするという無茶振りをしたのは自分だが、思わぬカウンターパンチを食らってしまったのだ。
いくら売り言葉に買い言葉でも、こちらの気も知らないであの言い方はないだろう。
もうちょっと気の利いたジョークで返せないものか。


――いや……、とジョンシンはその愚痴めいた駄目出しをすぐさま打ち消した。
何でもこちらに合わせて、すぐに言いなりになる奴はお断りだ。
あの場面で快く了承するような相手なら、自分は選んだりしなかった。
頑なで融通が利かない生真面目なところもすべてひっくるめて、ヨンファという人間に惹かれてやまないからこそアプローチしたのだ。


いい関係が築けていると思っていた矢先に半端ない破壊力の台詞を投げつけられ、身体から始まった付き合いだけに、余計にぐうの音も出なかった。
考えただけで腹立たしくなるので訊きもしないが、ジョンシンと再会するまでは当たり前のように女と付き合っていたのだ。
相当モテることは容易に想像できるので、その数は計り知れない。
自分たちにいつ終わりがきても不思議ではないのだと、その事実を改めて目の前に突きつけられた気分だった。


そんなジョンシンの複雑な心情に、ヨンファは微塵も気づいていないだろう。
何せ『万年発情期男』扱いされるくらいだから、恐らくセックスのことしか頭にないと思われているはずだ。
これでも、何も考えていないわけではないのだが、そんなことをやすやすと口に出したり、手の内を見せるような安っぽい自尊心は持ち合わせていない。
いい男ぶるのは、柄じゃないのだ。


スタート地点でいきなりずっこけた……などと、今さら思いたくもない。
だが、あの時、身体を繋げる以外に方法はなかった。
正攻法で告白したところで、異性愛者相手に即玉砕するのは目に見えているし、ドン引きされるのが落ちだ。
だから、強引に迫って無理矢理に関係を作ったのだ。
その方が可能性はゼロではないと踏んだのはまさに正解で、せっせと手料理で餌付けまでして今日に至る。


ストレートに惚れると痛い目に遭うというのは、ゲイの間では周知の事実だ。
たとえ一時的に付き合えたとしても、長続きしない上に結局別れたという話ばかりが耳に入ってくる。
ただでさえゲイ同士でも難しいのに、自分たちのようなパターンで想いが報われる可能性は限りなく低い。
しかも、ジョンシンは今までストレートと付き合ったことがないので、正直分からないのだ。
後腐れのない相手ばかりを選んでいたため、ヨンファと過ごす時間はとても新鮮で楽しくて、自分にとってかけがえのないものになっている。
気が向いた時に適当に遊ぶといった割り切った関係は、もうこりごりだ。
同じ性的嗜好の人間が集まる店からも、すっかり足が遠のいてしまった。


ヨンファが何を考えているのか。どういうつもりで抱かれ続けているのか。
受け入れてくれたと都合よく解釈しているものの、彼の心の中まで推し量ることはできないので自信はなかった。
頻繁に求めすぎると愛想を尽かされるかもしれないし、ただ単に成り行きに身を任せているだけなのではないか……、という不安はどうしても付き纏う。
一度ネガティブ思考になるとストッパーが利かなくなり、まるで坂を転がり落ちるようにそのままもっとも考えたくないひとつの答えに行き着いてしまい、気鬱になった。
よもや、この関係を終わらせたがっているのではないだろうかと――。


好きな女ができたとか、異性を抱く側に戻りたいと言われたら……と思い至ったところで、その考えをシャットアウトした。
元気がないように見えるのが、仕事の疲れが溜まっているなどの理由もしくは、ただの思い過ごしならいいのだが……。
この際、料理でも何でもいい。
自分に対してほんの少しでも好意を持ってくれれば、こんな不安は一瞬で吹き飛ぶのだろう。
面白くない気分で、物思いに耽っていたのをジョンシンが中断した時だった。


「ジョンシン、昼飯だ」


背後から、聞き慣れた深みのある声がした。
椅子に座ったまま振り返ると、上質なスーツに身を包んだ四期上のチャン・グンソクがこちらに向かって歩いてくる。
手には、有名ハンバーガー店の紙袋を提げていた。


「どうしたんですか? それ」
「新人の女の子が、俺らの分までテイクアウトしてくれた」


ジョンシンたちが勤めているG社ソウル支店は、近代的な高層ビルが立ち並ぶ駅三駅周辺――すなわちソウルを代表するビジネス街にあり、路地へ入るとオフィスワーカーに人気のある飲食店や移動式店舗、屋台が多数軒を連ねている。
ふたりとも外国為替営業部為替部門に在籍しており、グンソクはジョンシンと同じくこのフロアで働くFXのベテランディーラーのひとりだ。
十一時半から十二時半まではソウル株式市場が昼休みになるため、この時間帯は値動きが鈍くなるのだが、ディーラーという仕事柄、昼食は簡単に済ませることが多い。


「随分と気が利きますね」
「朝会った時に頼んでおいたんだ。これでよかったら、向こうで食べないか?」


そう言って、グンソクはディーリングルームに隣接しているコミュニケーションスペースの方を指差した。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(3)

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2019/06/29 (Sat) 20:52
haru

haru

ま****さん

おはようございます♡ 

ま****さん、お久しぶりです♪
変わらず読みにきて下さっていたんですね。どうもありがとうございます(´;ω;`)
かなり日が経ってしまいましたが、ようやくこちらの続きにも目を向けることができました。
あっちもこっちも遅くてごめんなさい。
素直じゃない者同士がどうなっていくか、いろいろやってみますね(*´ω`*)

2019/06/30 (Sun) 05:54
haru

haru

ヨ*****さん

おはようございます♡

読んで下さってどうもありがとうございます♪
中身を深く掘り下げてなくて上っ面だけなので、もったいないお言葉に恐縮しちゃいます。
腐脳をしっかり動かして、釜山ズとシンヨン、どちらも何かしら萌えをお届けしていきますね(´・ω・`)b

2019/06/30 (Sun) 06:09