CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

BLUE MOON 4

2019年06月15日
BLUE MOON(ヴァンパイア パロ) 2






なんの前置きもなく、にわかに信じがたい話を聞かされ、ヨンファは激しく混乱していた。
結界、輪廻転生、成均館……。
日頃、聞き慣れない言葉をどう受け止めればいいのか、まるで分からない。
ヨンファにはまったく意味不明なことばかりで、頭の中は疑問符だらけだ。
そういうのは本やドラマの中で作り上げられた世界であって、突然、自分の身に降りかかるなんて考えたことすらなかった。


「俺が二十歳になるのを待っていたって、どういう意味? 何かの分岐点になっているのか? ――少なくとも、誕生日を迎えるまでは俺の周りでは何も起こらなかった。普通の生活を送っていたんだっ」
「あいにくだが、もう元の生活には戻れない。諦めるんだな」


衝撃のあまり堰を切ったように感情を迸らせたヨンファに対し、ヒョニは相変わらず感情の読めない顔でにべもなく言い切る。


「――っ、そ、んな……」


たちの悪い冗談、あるいはただの幻惑や悪夢なら、どんなにいいだろう。
だが、そうでないことは眼前で繰り広げられる光景によって証明済みである上、何よりふたりの真摯な表情が真実であることを雄弁に物語っていた。
何も知らなかった頃にはもう引き返せないというのか……。
動揺と焦りがない交ぜになった感情に支配されていると、横にいたフニにぽんと軽く肩を叩かれた。


「前世での記憶の封印が解かれるのは、二十歳だと言われているんだ。多少個人差があるけど、徐々に昔のことを思い出していくと思うよ」


固まったように突っ立っているヨンファに、フニは神妙な面持ちで言う。
それで、あの日、朝鮮王朝の夢を見たのかと、ようやく腑に落ちた。
直感的に、『予知夢』と思ったのはあながち外れていなかったというわけだ。
衝撃的な言葉の連続に、ヨンファは返事をすることも頷くこともできなかった。


「――………」


先ほど、ヒョニに触れられた時のフラッシュバックのような映像の正体もそうなのだろうか。
今さらのように思い至り、ほぼ同時に夢で見た光景が脳裏に浮かんだ瞬間、ぎょっと思考が急停止した。
寝台の上に横たわっていた自分とそっくりな人物に、目の前の男がしていた行為を思い出したのだ。
これまで勉強一辺倒で、色恋沙汰には疎いヨンファでも、ただの親友同士ではないことくらい察しはつく。
なんだか急に、人の秘密を勝手に覗き見してしまったような気まずさを感じた。


「お前、韓国史の知識はあるか? 李氏朝鮮時代だ」


無意識のうちにぼんやりとヒョニを見つめていたらしく、こちらに視線を合わせるなり口を開く。


「――え?」
「Y大学の学生なら、馬鹿じゃないんだろう?」
「……失礼な。歴史は俺の得意科目だ」


――この男は、どうもいけ好かない……。


悪い奴じゃないと一瞬でも思ってしまった自分に腹が立つ。早くも前言撤回だ。
人を小馬鹿にしたような口調にムッとしながら言い返したところで、どうして在籍している大学まで知っているのかと驚いた。
それも、特殊能力によるものなのだろうか。
ヨンファは挑むような眼差しで正面の男を見やったが、これといった反応もなく、「じゃあ、理解しているものとして説明を端折るぞ」と素っ気ない前置きに続いて、突如つらつらと話し始めた。


「成均館を卒業した俺たちは、それぞれ六曹の官僚となった。その当時、勲旧派と士林派の対立は激化の一途を辿るばかりで、お前と同じ名の鄭容和は巻き添えになり、命を落とした。さっき、お前を連れ去ろうとしたドンゴンは堂上官だった。士林派のな。奴は己の私利私欲のために魔族に魂を売り、その見返りとして、人間の心を意のままに操る魔術を身につけたんだ。激しい派閥争いにかこつけて、裏では虚偽の謀反を通報し、両党派がより一層敵対するように仕向けた。結果、俺たちは何人もの友を失い、復讐のために吸血族と取引をしたというわけだ」


想像を絶する内容に、ヨンファはフリーズすると同時に言葉を失った。
簡潔に要点がまとめられているので、言葉自体は頭の中に入ってくるものの、あまりにもスケールが大きすぎて何も考えられない。
ただ戸惑うばかりで身体は変に強張り、ヨンファは小刻みに震えだした拳をぐっと握り締めた。


「吸血…族……」
「土地柄、時代によって多種多様あり、古代から世界各地において確認されている。一般には知られていないが、この世には人類の他に、いわゆる『人外』と枠組みされている様々な種族が存在する。無論、この国にもな。結局、ドンゴンの悪巧みが明るみになって粛清されたが、完全に死んでいなかった。そこで、姿形を自由に変えて生息し続ける奴らを倒すには、どうしても俺たちが不老不死になる必要があった」


いきなり核心に触れられ、ヨンファの背筋にぞっと冷たい戦慄が走った。
男の口から語られる内容は、どれも信じられないことばかりなのだ。
息をするのも忘れるくらい、やけに淡々としたヒョニの一言一句に耳を傾けた結果、心底肝が冷えた。
すべての言葉が驚きの連続で、正気を保っていないと気が変になりそうになる。
その時、「ちょっと補足するけど……」と横合いから柔らかい声が割って入った。
緊迫した雰囲気の中で、どこかほっとさせてくれるのがフニだ。


「人間の魂が再び人間として転生するサイクルってさ、だいたい三百年から四百年と言われているんだよね。非常に稀だけど、前世の記憶を持っている人は確かに存在する。でも、大半は君のように記憶を持たずに生まれてくる。だから、俺たちはヨンファのエントロピーを頼りに、時空を超えてこの時代に辿り着いたってわけ」
「エン、トロピー……?」
「『エネルギー』とか『気』って意味なんだ。まだピンとこないかもしれないけど、君のエントロピーに気づいたアンデッドたちが行動を起こしだした。あ、『アンデッド』っていうのは、力を持たない下級ヴァンパイアのことな。ドンゴンはあらかじめ連中を見張っていたんだろう」


こんなことが現実に起こるなんてあり得ない……、と思考を巡らせるのを拒否したくなるほど未知の恐怖に全身がざっと総毛立つ。
ヨンファは頭の中を整理しながら自分の置かれている状況を把握し、ひたすら冷静になろうとした。


「アンタたちも輪廻転生したってことなのか?」
「いや、君は一度亡くなっているから該当するけど、俺たちのように生きたまま転生するのは不可能だ。かと言って、人生を終えるまで待つつもりもなかったから、吸血族を頼ったのさ。その方が手っ取り早かったからね」


事もなげに答えるフニに、ずっと気になっていたことを問いかけてみる。


「その……ドンゴンって奴は、どうして俺を?」
「あいつは四百年前、容和にひどく執着していた。意味は分かるかい? 恐ろしいほどの邪な想いを容和に対して抱いていたんだ。過去に成就できなかったから、今度こそ手に入れようと君を狙っている」
「嘘だろ……」


長い歴史において、古代ギリシャや隣国の日本にはかつて『男色文化』が栄えていたと聞き及んだことがある。
このふたりが現れなければ、あの時、自分はどうなっていただろうか。考えただけで身の毛がよだつ。
とにもかくにも、窮地を救ってくれたのは紛れもない事実なのだ。
この国でも昔からある程度容認されていたのかもしれないが、前世の自分が同性からそういう対象として見られていたと知り、どうにも落ち着かなくなった。


「二十歳になってから、ずっと誰かに見張られている気がするんだ。――今も」


そう言えば、この空間には風も音もない。
闇と静寂に支配されている周囲にさっと視線を巡らせると、奇怪な何かがどこがで蠢いているような、こちらの様子をじっと窺っているような不気味でただならぬ気配を感じた。
張り詰めた空気は様々なものが混沌と入り混じっているみたいにひどく淀んでいて、ヨンファはぶるりと肌を震わせる。


「お前のエントロピーに引き寄せられるんだろう」


低音の美声に反射的に顔を上げると、ヒョニはこちらを見つめながら再び口を開いた。


「敵がドンゴンだけだと思ったら大間違いだ。下等な吸血族や魔族どもも、虎視眈々とチャンスを伺っている。本来ならば、奴らが感づく前に俺たちが先に見つけ出したかったんだが……」
「厄介なことになったな」
「仕方がない」
「覚醒するのに時間がかかと思うか?」
「恐らくな」


またしても意味深な会話が行き交い、ふたりは何やら頷き合っている。
今、見聞きしたすべてが処理できないまま、ヨンファの頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。
理解しようとするのを拒否されているみたいに――。


「ジョン・ヨンファ、これでよく分かっただろう? お前を取り巻く環境は一変したんだ」


整いすぎていると言っても過言ではないほど端正な顔立ちをしていながら、相変わらず表情が薄い男と真っ向から目が合った。
無駄が嫌いなのか、必要以上にしゃべらないし、マイペースでとっつきにくい。
しかも、ヨンファのことがよほど気に入らないらしく、妙に冷めていて辛辣だ。


「そんなことを急に言われたって、まったくわけが分からない……っ。前世とか吸血族とか……一体何なんだよっ。俺はただの学生だぞ。なんでこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ……!」


激しく動揺したせいでオーバーヒートしてしまい、自分の声だけが辺り一面に虚しく響き渡った。
八つ当たりしたところで現状が変わるわけでもないのに、何かにぶつけずにはいられなかったのだ。


「遅かれ早かれ、こうなることは四百年前から決まっていた。恨むんなら、お前の運命を恨むんだな」
「………っ」


低く突き放すような口ぶりに気圧されてしまい、ヨンファはまともに答えが返せなかった。
射るような鋭い眼差しは、こちらを見据えたまま瞬きすらしない。


「まあ、まあ。そのくらいにしておけよ。お得意のポーカーフェイスでそういう言い方をすると、誰だって気分はよくないと思うぞ。ヨンファも少しトーンダウンして」


タイミングよくすっと言葉を挟んだのは、ふたりの間の剣呑な雰囲気などまるで気にした様子もないフニだった。
仕方ないとばかりに一拍置いてから小さく息を吐いたかと思うと、ヒョニはちらりとヨンファに視線を向けてくる。


「ドンゴンはお前を手中に収めて、この世を邪悪がはびこる魔境にしようと目論んでいる。それを全力で阻止して、積年の恨みを晴らしてやる」


静かな口調ながら真顔でそう告げられた瞬間、この男の並々ならぬ決意と覚悟が垣間見えたような気がして、ヨンファは瞠目した。
何か途轍もないことに巻き込まれているのだと今さらのように自覚し、背筋に冷たいものが走る。
そんなヨンファを眺めていたヒョニは、ふと何かに思い当たったように目を眇めた。


「なんだ、もしかして怖いのか?」
「誰が……っ。別に怖いわけじゃない」


冷淡で挑発的な言葉が癇に障り、即座に反論する。
極力感情を抑えて睨み返すと、実に素っ気ない一言が返ってきた。


「空元気で終わらなければいいがな」
「ヒョニ、いい加減やめとけって。容和には絶対そんな口をきかなかったのに」
「当たり前だ」


片眉を吊り上げて即答するヒョニに、フニは少しだけ困ったように目を細めながらやれやれ……、という感じに肩を竦めてみせる。
いかにも気が短い男は「用は済んだから、行くぞ」と言うなり、さっさと背を向けた。


「って……おい。せっかくヨンファと再会できたんだぞ。それに、奴らに見つかったとなると、まずいんじゃないのか」
「俺たちの存在を知ったからには、ドンゴンもおいそれとは手を出せまい」
「そりゃまあ、そうだろうけどさ……。あ、ひとつ言い忘れていた。名乗ってなかったけど、俺はチェ・ジョンフン。で、この愛想のない男がイ・ジョンヒョン」


人懐こい笑みを浮かべたフニが、ヨンファと目線を合わせるように覗き込んできた。
柔和そうな表情と一貫してフレンドリーな態度に、「はあ……」とヨンファの警戒心がわずかに和らぐ。
二言三言言葉を交わしたところで、いつの間にか振り返ってふたりの会話を黙って聞いていたヒョニがおもむろに動いた。
天に向けて右手をかざしたかと思うと、異質な空間を取り囲んでいた靄のような蒼い光がぱあっと霧散していく。
そして、次の瞬間、目の前には見慣れたエントランスが闇に浮かび上がるようにぽつりと現れた。
思わず数歩歩いて呆然と見上げれば、馴染みのある高層アパートが青白い光に包まれた状態で聳え立っている。


「念のため、余計な手出しができないように結界を張っておいた。すでに特定された可能性があるからな」
「……え」


背後から美声が聞こえてぱっと振り返ると、そこにふたりの姿はなかった。
言いたいことだけ言うなり、一瞬にして闇の彼方へ消え去ってしまったのだ。
そう……、まるで神隠しにでも遭ったかのように――。
皓々と照らす月明かりに誘われるがまま天を仰ぎ見たヨンファは、「あっ……」と息を呑む。
漆黒の夜空にはブルームーンではなく、いつもの満月が静かに佇んでいた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(2)

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2019/06/22 (Sat) 14:32
haru

haru

ふ*******さん

こんばんは♡

いつも読んで下さってありがとうございます♪
特殊なジャンルなので、書けば書くほど下手なのが露呈してしまってお恥ずかしいです( ̄ω ̄;)
しかも、蒼き運命くらい長くなる予感がしています。
ふ*******さんの疑問点は追い追い明かす予定です。
が、極道の話もあるし、ずっと抑え込んでいたシンヨンも書きたくなったので、よかったら待ってて下さい♡
ちなみに、続きはこのあとアップします。

今日はおめでたいヨンバースデーですね。
Twitterもいつも以上に賑わっていて、本当に嬉しい。
少しずつ近づいてきた除隊の日が今から待ち遠しいですね(*´ω`*)

2019/06/22 (Sat) 20:14