CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

BLUE MOON 3

2019年06月09日
BLUE MOON(ヴァンパイア パロ) 0






指摘された通りに結界とやらが四方に張り巡らされているのを目視したヨンファは瞬間、黒目がちの澄んだ瞳を大きく瞠った。
反射的に数歩あとずさってしまったのは、とてつもない恐怖を感じて竦み上がったせいだ。
自分の意思とは関係なく、勝手に未知の世界に迷い込んだ気分だった。


「ここから……出られるのか?」
「張るのも破るのも、造作ない」
「――………」


いとも簡単そうに言われたが、完全に理解の範疇を超えていて到底頭が追いつかない。
しんと静まり返った生気のない空間に立ち竦んだまま呆然と前方を眺めていると、ふと自分の身体に異変を感じた。
ずっと不快に思っていた生温かい大気が肌の上を這うようにねっとりと纏わりつき、どういうわけか、胸の奥に何かが詰まったような息苦しさを覚える。
まるで誰かにずっしりと重くのしかかられているみたいな圧迫感があるのだ。
ハァハァ……と、肩で息をするヨンファに気づいたフニが近寄ってきて、横から怪訝そうに顔を覗き込んできた。


「顔色がよくないけど、どうかした?」
「なんか――この生ぬるい感じの空気が……気持ち悪く、て……」
「邪気が至るところに漂っているせいだよ。アンデッドたちの姿形は消滅しても、奴らの怨念がそこかしこにまだ残ってるからね」
     

柔らかな口調で説明されても、急に心拍数が上がり始めて答えることができなかった。
心臓を鷲掴みにされているのかと錯覚するくらい、ますます呼吸が苦しくなっていく。


「は……、ちょっ、と……」
「おい、大丈夫か?」
「――く、る……し……っ」


胸を押さえながら、フニに訴えかけるように切れ切れの声を発した時にはもう限界だった。
ぐらりと視界が歪み、とても立っていられなくなったヨンファは足許から崩れるようにその場に蹲る。


「ヨンファ……っ」
「まだ身体が慣れていないんだろう。すぐ楽にしてやるから、横になれ」


動揺した声に被さるように、足音とともに落ち着き払った美声が聞こえるなり、そっと背中に触れられた。
Tシャツ越しにもかかわらず、リアルに男の体温を認識した途端、何の前触れもなく強烈な目眩に襲われて、ヨンファは思わず顔を顰める。
その時、突然ある映像が直接脳内に流れ込んできた。
緑が生い茂っている庭園のような場所で、笠子帽を被った韓服姿のヒョニが優しく微笑みかけているというものだ。
ギョッとする間もないほど、時間にすればほんの一瞬で掻き消えたが、あまりにも断片的すぎてわけが分からない。
慈しむような眼差しが誰に向けられているものなのか、どういうシチュエーションなのかも一切不明だ。


――今のは……なん、だ……?


不可思議なことに、映像の中の笑顔に言いようのない懐かしさを覚えるのはなぜだろう。
しかも、この大きな手の感触を知っている気がして、口では説明できない甘く痺れるような感覚が背中から全身へと駆け抜けた。
何かしらの深い暗示的なメッセージを自分に対して投げ与えられているような、漠然とした予感を抱いていたところで、強い腕に背後から支えられながらゆっくりと地面の上に仰向けに横たわる。
「ヨンファ……」と身を屈めたフニが真上から気遣わしげに覗き込んできたが、とてもしゃべれる状態ではなかった。


視界の隅には、大きなブルームーンが皓々と輝いている。
静かな闇夜にぽっかりと浮かんでいるさまはとても美しいのに、どこか不気味で怪しげだ。
まるでひっそりとこちらを窺っているようで、妙に落ち着かない。
ヨンファの傍らに片膝をついた男は無言のまま、おもむろに右手をすっと前に差し出した。
途端に、手のひらが蒼く発光し始めたかと思えば、炎のようにゆらゆらと立ち上る。
そして、喘ぐような息をついているヨンファの胸にその手を押し当ててきた。
熱くも冷たくもなく、断続的に放出される蒼い光によって吸い出されているのか、ヨンファの身体から何か重苦しいものが取り除かれていくのを感じる。
次第に異様な圧迫感は和らぎ、激しく脈打っていた心臓の拍動が元のように一定のリズムを刻んでいるのが分かった。


「焦らず、慎重に呼吸してみろ」
「―――――」


言われた通りに深く息を吸ってから、ゆっくりと吐くのを何度か繰り返す。
すると、驚くほど呼吸が楽になり、息苦しさからようやく解放された。
だが、胸の奥はひどくざわつき、何か大事なことを忘れているのではないか……、そんな思いがふっと頭を掠め、ヨンファは紫色の瞳の持ち主を見上げる。
すぐさま視線を感じたらしく、思いがけず真剣な眼差しで見下ろしてくる男とまともに目が合った。
色濃く鮮やかなアメジストの瞳孔は戸惑ってしまうほど真っすぐで、再び囚われてしまったかのように目が離せない。
特殊な能力を持っている人間なのか、それとも――。


「もう大丈夫だ」


互いに無言で見つめ合っていたが、先に沈黙を破ったのは無愛想な男の方だった。
ふいと視線を逸らされるのとほぼ同時に胸に当てていた手が離れ、あっさりと腰を上げる。
態度は相変わらず素っ気ないものの、助けてくれたのは紛れもない事実だし、意外と悪い奴ではないのかもしれない。
ゆっくりと身を起こしたヨンファに、「ほら、掴まって」と安堵したような表情を見せるフニが軽く腰を屈めたまま手を差し伸べてくる。
親切に甘えさせてもらうことにして、「……ありがとう」と掠れ声で言いながら遠慮なく掴まり、男の手を借りて立ち上がった。


「ヒョニ、早いところ契約を交わした方がいいんじゃないのか。そうすれば、こんなふうに気分が悪くなることもなくなる」


わずかに表情を曇らせたフニは、数歩離れたところに立っているヒョニへと視線を向ける。


「それは、まあ……そうだが。焦ってする必要もないだろ」
「過去の記憶が蘇るのを待つつもりか?」


辺り一面に淀んだ空気が立ち込める中、ヨンファはふたりの会話にじっと耳を傾けていた。
低音のやり取りの内容から、やはり自分が何かに大きく関わっているのだと身震いする。
不可解な感情はますます膨れ上がり、取り巻く環境のみならず、己の身に次々と襲いかかってくる不穏な現状にもはや黙っていられなくなった。


「アンタたちは何者なんだ。どうして俺を助けてくれる?変な力が使えるみたいだけど、本当に人間…なのか?」


思わず口を挟んだヨンファに、ふたりはこちらに向き直って意味ありげな目で見つめてきた。


「ジョン・ヨンファ。俺たちは、お前が二十歳になるのをずっと待っていた」


いきなりフルネームで名を呼ばれ、ビクンと肩が揺れる。
硬質な響きを含んだ声音に、ヨンファは反射的にヒョニの顔を凝視した。


「お前が輪廻転生する前――つまり、前世のことだが、俺たち三人は親友だった。今からおよそ四百年前の成均館でな」


たった今告げられた内容があまりにも衝撃的すぎて、一瞬にして頭の中が真っ白になる。
ヨンファは大きな双眸をいっぱいに見開いたまま、ただ呆然と立ち尽くした。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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