CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

気ままなFisherman 後編

2019年05月24日
Pretty Baby シリーズ 0







「もうそろそろいいかな」


そう言いながら、ダイニングテーブルに置かれた土鍋の蓋をジョンヒョンがそろりと開けると、白い湯気がふわっと立ち上った。
味噌とにんにくの何ともたまらない匂いが、一段と食欲をそそる。
目の前でメウンタンが美味しそうにぐつぐつと煮立っているのを見るだけで空っぽの胃が刺激され、まるでパブロフの犬みたいにヨンファの腹がぐぅーっと鳴った。
途端に、向かい合って座っているジョンヒョンがぶはっと吹き出す。


「なに、そのタイミング。すごいウケるんだけど」
「うるせーよ」


くくくっ……、と肩を震わせて笑いだす男をばつの悪い思いで眺めていると、今度は急に脇腹のあたりを抑えて、「いててて」と顔を顰めた。


「なんだよ、ひとりで忙しい奴だな」
「エルボー攻撃を受けたところがまだ痛いんだって」
「お前がくだらないことばっかり言うからだろ。身から出た錆」


冷ややかな視線を送りながらばっさりと切り捨てたヨンファは、しれっとした顔で生マッコリが入ったグラスに口をつける。


「……鬼嫁」


かすかな酸味とまろやかな口当たりを楽しんでいたところに、小声でぼそりと呟いたのを耳ざとく聞きつけ、ヨンファは口をへの字にしたまま、テーブルの下でジョンヒョンの足をむぎゅっと軽く踏みつけてやった。
当然、手加減しているにもかかわらず、「痛い」と大袈裟に言ってわざとらしく唇を尖らせる。
そんなあざとい仕草に引っかかってたまるかと、こちらに向けてくる恨みがましいジト目を鉄面皮で跳ね返し、ヨンファは箸を伸ばして自分で捌いたばかりの刺身を口に運んだ。


「おっ、期待を裏切らない旨さだな。ヒョニもいじけてないで食ってみろよ」


淡白な味わいなのに、プリプリした身はほどよい甘みと歯ごたえがあってとても美味だ。
冷蔵庫で冷やしておいた生マッコリともよく合い、食が進む。
少しばかり溜飲を下げたヨンファが目顔で大皿をさすと、立ち直りの早い男はいそいそと箸を取った。


「やっぱり釣りたては新鮮だね」


自分が釣ったボラを満更でもなさそうに摘まんだジョンヒョンは思い出したようにカセットコンロの火を弱火にして、手際よく器にメウンタンの具材をたっぷりと盛っていく。
いつも有難いなと思うのは、プライベートでもひとつ年上のヨンファを立てて、嫌な顔ひとつせず率先して動いてくれることだ。


「はい、どうぞ。いっぱい食べて」
「おう、サンキュ」


節くれだった指の動きを何とはなしに眺めていたヨンファは、礼を言いながら差し出された器を受け取り、早速箸をつけてみる。


「あ、うま……」
「そう? よかった」


まず、スープを味見するやいなや、あまりの美味しさに驚いた。
いろんな旨味が口の中いっぱいに広がり、そのまま胃にも染み渡っていく。
続けて、熱々のボラをハフハフしながら頬張ると、そんなヨンファを微笑ましそうに眺めていたジョンヒョンも箸を持って食べ始めた。


「これ、コクがあって、めちゃめちゃ旨いな」
「魚からいい出汁が出てるよね」
「ああ、何杯でもおかわりできそう」


頬を上気させながら感嘆の言葉ばかり呟くヨンファに、同調したジョンヒョンも満足そうに頷いた。
ボラのアラで出汁をとり、切り身の他に数種類の野菜や豆腐をコチュジャン、青唐辛子などの調味料で仕上げたものだが、いろんな具材の持ち味がいい感じに引き出され、コク深い辛みと旨味が見事に調和している。
しかも、ボラは火を通すとふわふわな食感になるのだ。
ひとり暮らしだと鍋料理を食べる機会が皆無に等しいだけに、気の置けない相手とふたりで同じ鍋をつつき、のんびりとたわいない話をしながら食事するのはとても楽しかった。


「ヨンファってさ、美味しいものを食べる時、すごく幸せそうな顔をするよね」
「え、俺が……? 自分じゃ、全然分かんないけど」
「なんか見ていて、たまらなく可愛いっていうか」
「―――っ」


危うく食べているものを噴き出しそうになったのを辛うじてこらえると、一部始終を眺めていたジョンヒョンが喉の奥で低く笑う。
食事中にそんな台詞が飛び出すとは、まったく予測だにしていなかった。
口許を綻ばせて、嬉しさを隠し切れないというふうに微笑まれてしまえば、なんだか面映ゆい気分になる。


「根は素直なのに、俺にはわりと塩対応だよね」
「それは……っ、お前がわざと直前に連絡してくるからだろ」
「仮に、一週間前に約束したとしても、ヨンファは当日になって絶対に後悔するでしょ。あー、やっぱり面倒くさい。やめときゃよかった…って」


ズバリ言い当てられて、思わず目を見開いた。
確かにそういうところはある。
事前に取り決めた時は快く了承しても、約束の日が近づくにつれて、なぜかだんだんと気が重くなって億劫になるのだ。


「お前さぁ……、俺以上に俺の性格を把握してんな」
「そりゃあ、何年一緒にいると思ってんの。早々に提案してもきっと同じ結果になるんだろうから、それならいっそ直前に連絡して、ヨンファの迷惑そうなリアクションが見たいじゃない」


笑み混じりの声に、案の定、この男は超ドSで確信犯だと再認識した。


「やっぱり、すべて分かった上での抜き打ち訪問なんだな」
「まあ、そういうこと。ギャーギャー言われるだけで追い返されるわけじゃないし、鬼嫁がたまーにものすごく可愛くなる時があるから、俺も癖になって離れられないんだよね」
「……どういう道理だ」
「もっと優しくしてよ。これでも結構グサグサきてるんだから」
「お前がそんなタマかよ。策士め」


つい意地を張って憎まれ口を叩いてもジョンヒョンは肩を竦めるだけで、こちらが拍子抜けするほど鷹揚な態度を崩さない。
辛辣な切り返しに別段腹を立てず、さも楽しげに笑ってくれるのはこの男くらいのものだろう。
気負うことなくいつも自然体で、ああだこうだ言いながらもしっかり受け止めてくれる愛情の深さがこんなにも心地いい。
いつの間にか自分の肩から余分な力が適度に抜けていることに、ヨンファはあとになってから気づかされるのだ。


「ヒョニといると、すげぇ楽。気は使わなくて済むし、さりげなくフォローしてくれるし。だから、俺も仕事に邁進できるんだよな」


オフ日にジョンヒョンとふたりきりで、美味しい食事と酒を堪能しているうちに心の中まで温かくなってしまったのか、思わずぽつりと本音をこぼしていた。
多忙な日常を送っているからこそ、こんなふうにのんびりと静かに流れていくやさしい時間に心底癒されるのだと分かる。
柄じゃないし、照れくさいからあまり口には出さないが、釣った魚にずっと餌をやり続ける――すなわち、自分のことを変わらず大切に想ってくれている男にはいろいろと感謝しているのだ。


ふと視線を感じて顔を上げると、生マッコリの入ったグラスを握り締めたまま、じっとこちらを見つめていたらしい眦の吊り上がった双眸がわずかに見開かれている。
いつになく強い目力にどきりとして、なぜか視線を外せなくなった。
不意に落ちてきた静寂はここだけ時間が止まってしまったように感じられ、甘やかでどこか緊迫したような空気は付き合い始めの頃を思い起こさせる。


当時は、とにかく毎日が新鮮だった。
こんなにトントン拍子に進んでいいのかと怖くなるくらい仕事もプライベートも順調で、ジョンヒョンが傍らにいてくれることがただただ嬉しかった。
ふとした瞬間に視線が吸い寄せられるように絡み合い、そのたびに息が止まりそうになったのを今でも覚えている。
キスを交わすだけで胸が押し潰されそうなほど苦しくなって、顔も茹でダコみたいに真っ赤になるような純情っぷりだった。
初めて肌を合わせた時も終始緊張しっぱなしで、事が終わっても、片時も離れたくなかったふたりはベッドの中で向き合って睦言を繰り返していた。
今ではすっかり『鬼嫁』扱いされている自分にも、そんな可愛らしい時期が確かに存在したのだ。


刺身に舌鼓を打ちながら過去の日々に思いを馳せていたところで、ジョンヒョンは急に手の中の生マッコリをぐいっと一気に呷り、空になったグラスをトンとテーブルに置いた。
ヨンファがぽかんと目を丸くすると、やけに真剣な顔つきでじっと見つめられ、途端に心臓がトクンと高鳴る。


「ヨンファ、あのさ……」
「ん?」
「どうしよう、俺」
「……なんだよ、一体」


妙に改まった態度のジョンヒョンを訝しく思い、何を言うつもりなのかと身構えた時だった。


「猛烈にしたくなった」
「――………」


前置きも何もなく大真面目な顔でさらりと告げられて、箸で摘んでいたボラがぽろりとテーブルに落ちる。
面食らってしまい、完全に固まった状態のヨンファの耳に、「刺身が落ちたよ」という色気もへったくれもない台詞がすっと入ってきた。
即物的に誘われて、長年連れ添っている夫婦はこんな感じなのだろうかと、素朴な疑問がちらりと頭をよぎる。
食事の真っ最中に堂々とアプローチをかけてくる男に対し、「頭は大丈夫か?」ではなく、愛しいと思ってしまう自分はすでに末期症状なのだろうか。
そもそも、『嫁』という言葉にいちいち噛みつかない時点で、自分たちの関係性をすんなりと受け入れているとも言える。


「ヒョニは唐突すぎるんだよ。なんでもかんでも、いつでもどこでも」
「ねぇ、駄目かな?」


やけに神妙な面持ちでおねだりされてしまえば、こちらとしても断れるはずがなかった。
こんなふうに前触れもなく欲しがられるのも、強引なのも嫌じゃない。
過去、求められて拒否したことは一度もないのだ。
それが、たとえ夕食時だったとしても――。


「……まあ、……いいけど」


むず痒いような気恥ずかしさを押し隠したヨンファの素っ気ない返答に、ジョンヒョンはふわりと目を細めた。
熱っぽい視線にまたどきりとしていると、正面から大きな手が伸びてきて、くしゃりと髪に触れられる。
その温もりが気持ちいいだなんて、柔らかな笑みを見せる目の前の男に伝えてやることは一生ないだろうけど。
それから、ふたりはひたすら食べることに専念し、十分以内に手早く食事を終えると同時に、寝室へと移動したのだった。










重なり合ったままもつれ込むと、ベッドがぎしりと軋むような音がした。
スイッチが入ったみたいに濃厚なキスを交わしながら、互いの着衣をひとつ残らず剥ぎ取っていく。
普段は優男っぽいジョンヒョンだが、とことん知り尽くしているヨンファの弱点を集中的に責め立てられるうちに、立場はすっかり逆転していた。
完全に主導権を握られてしまい、日頃の仕返しとばかりに喘がされまくる。
たとえて言うなら、まな板の上の鯉状態で、今もまさにそうだった。


「出したばっかりなのに、もうこんなに硬くして……」


ぞくりとするほど艶やかな低音とともに吐息がかかり、そこばかり狙ったように敏感な箇所を指や舌で執拗に弄り回される。
耳を塞ぎたくなるような濡れた音に被さって、居たたまれないほどの甘ったるい嬌声がひっきりなしにこぼれた。


「――あ、あ……っ、んっ……」
「今日はいつもより感じてるね。ほら、舐めてもすぐに溢れてくるよ」


形を変えた欲望を手の中に握り込まれたまま、ねっとりとしたような熱を帯びた眼差しでこちらの反応をじっと伺ってくる。


「あっ……、も……、いちいち……しゃべんな……っ」


巧みな口淫はいとも簡単に理性を蝕み、あまりにも気持ちよすぎてもう何も考えられなかった。
いくら噛み殺しても、容赦なく濡れた声を上げさせられ、もはや時間の感覚などない。
与えられる快楽にただ身を任せていたヨンファは再び限界が近づくのが分かり、ひと際大きく背筋を震わせた時には絶頂へと追いやられていた。
全身が弛緩していくのを感じながら浅い呼吸を繰り返していると、あっという間にひっくり返されて四つん這いにさせられる。
意識が半分飛んだまま、物欲しげに揺れる腰を後ろから掴まれ、待ち望んでいたものに深々と貫かれた。


「――ンッ、……あぁ――っっ」
「ああ……すごい。中が吸いついてきてるよ。よっぽど欲しかったんだね」


耳朶を優しく食まれながら甘さが滲んだ耳障りのいい美声に低く囁かれて、身体中が蕩けそうになる。
消え入りたいほどの羞恥に襲われたものの、ジョンヒョンの絶妙な腰遣いの前ではどうすることもできなかった。
「きつくて気持ちがいい……」と呟きつつ縦横無尽に中を掻き回され、その淫猥な動きに合わせてヨンファの腰まで揺れてしまう。
気が遠くなりそうなくらいゆっくりと時間をかけた抽挿に、四肢を支えている肘や膝が次第にガクガクしてきた。
くずおれそうになるのを必死でこらえたヨンファが縋るために爪を立てたシーツは、すでにくしゃくしゃに乱れている。


「もう……長すぎるって――。早く……イケよ……」
「でも、ここはまだ離したくないって絡みついてくるよ」


的確に狙った箇所ばかりを立て続けに突かれると、もう為すすべがなかった。
口調は柔らかいのに、獰猛な肉食獣さながらにがつがつと蹂躙するジョンヒョンは逆らう意思さえも奪ってしまうのだ。
スプリングの軋む音やふたり分の息遣いが寝室に響く中、抜き差しされるたびに甘く痺れるような感覚が全身へと広がっていく。


「たっぷり孕ませてあげるね」


背後から覆い被さるように激しく揺さぶられながら、そんなふざけた台詞を直接耳許に吹き込まれた。
日頃、ヨンファの尻に敷かれている鬱憤をベッドの中で晴らしている気がしないでもないが、たまにはこういう馬鹿話に付き合ってやるのも案外悪くないかもしれない。


「ちゃんと……認知しろよ」


深く穿たれる愉悦に身を任せていたヨンファが後ろを振り向いて気の利いたジョークを返してやると、ジョンヒョンは驚いたように目を瞠る。
そして、ひどく幸せそうに笑って、返事の代わりに甘くて蕩けるような口づけが降ってきた。





End





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(0)

There are no comments yet.