CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Forbidden Love 3

2016年03月10日
Forbidden Love(兄弟パロ) 0






唇が赤く腫れている―――。


それに気付いたのは、朝起きて真っ先に洗面所で顔を洗おうとした時だった。
鏡に映る自分の顔を見て、ヨンファは違和感を覚えた。
唇がいつもと比べてふっくらとしていて、妙に色鮮やかなのだ。
指で触れてみるとヒリヒリしていて、ヨンファは唐突にその原因に思い当たり、昨夜のことがフラッシュバックのように蘇った。


―――ジョンシンとキスをしたんだった……。


かなり長い時間、ジョンシンの唇に翻弄され続けた結果がこれだと分かり、ヨンファは小さな溜息を洩らした。


どうしてはっきりと拒絶しなかったのか、今更悔やんでみたところでもう遅い。
ソヒョンのことを持ち出されて、他に選択の余地がなかったとはいえ、本気でヨンファが抗えば回避できたかもしれない。
それをしなかったのは、相手がジョンシンだからだ。
かなり強引で結果的に流されて、抵抗できないほどジョンシンとのキスに酔いしれて、自分を見失ってしまった。


そのあとジョンシンはミニョクの部屋の窓を閉めに行き、リビングには下りてこなかった。
戦々恐々としていたヨンファは幾分ホッとして、課題の続きに取りかかろうと自室の机についた。
しかし、リビングでの出来事が頭から離れず、一向に集中できなかった。


それなら、早く寝ようとベッドに入ってみたが、なかなか睡魔は襲ってこず、時計が午前2時近くを指したところまでは覚えているが、それ以降は記憶がないので、いつの間にか寝落ちしていたようだ。


こんな展開になるなどと、誰が想像しただろうか。
ジョンシンへの気持ちを思い切ろうとしていたのに、また再燃しそうな予感がして怖い。
踏み込んではならない領域に入ってしまったような気がして、たまらなく不安を感じる。


昨日の口振りから、ジョンシンはこれで終わりにするつもりはないらしい。
日曜日まで二人きりという状況の下、可能な限り接触を避けた方がいいと、ヨンファは警戒を強めていた。
できることなら間違いであってほしいと、祈るような気持ちで何度目かの溜息が零れ落ちた。










さっぱりとした面持ちでリビングに向かうと、信じられないことにジョンシンが先に起きていた。


「おはよう。寝坊助」


隣接したキッチンで何やら料理を作りながら声をかけられるが、ジョンシンの顔をまともに見れない。


「お前が言うな。初めて俺より先に起きたからって、威張るなよ」


気まずい思いをしているヨンファとは裏腹に、ジョンシンは何故だか機嫌が良かった。
不機嫌モードのヨンファに、ジョンシンはさも心外そうに切り返してくる。


「初めてじゃない。中学生の頃は俺の方が早かっだろ」
「そんな昔のこと、いちいち覚えてられるか」


文句しか言っていないヨンファに対して気分を害することもなく、心底楽しそうに笑うジョンシンに、どこか懐かしさを覚えた。


―――コイツがこんな風に笑うのを、久しぶりに見たような気がする。


顔は大人びてきたけど、相好を崩すと子供みたいに無邪気な顔になり、昔の面影が残っている。
互いの部屋を行き来して好きなCDを一緒に聴いたり、新作のゲームソフトを買うと、親の目を盗んで遅くまでゲームに興じたこともあった。
四人兄弟の中では一番仲が良かったのだ。それなのに―――。


「ほら、できたぞ」


当時のことを思い返していると、ジョンシンの声で現実に引き戻された。
ダイニングテーブルへと運ばれてきた朝食を見て驚いた。
大きめの白い皿に乗っていたのはアメリカンブレックファーストで、見るからに美味しそうだった。


トースト、厚切りベーコン、スクランブルエッグ、野菜サラダが綺麗に盛りつけられていて、それにコーヒーまでついて、どこぞの喫茶店のモーニングさながらで完璧としか言いようがない。


一口食べてみるとスクランブルエッグの火加減が絶妙で、フワフワしていてものすごく美味しい。
ジョンシンは高校に入るまでは、母の手伝いを一番よく買って出ていたから、料理が上手で、よく作ってくれたものだった。
ヨンファが誉めると、『また作るね!』と嬉しそうだったのを思い出す。


ふと視線を感じて顔を上げると、ジョンシンが何も言わずにじっとこちらを見ていた。


「なんだよ…?」
「色っぽいね、唇。ぷっくり膨れてて、艶々してる」


真顔で言われて、ヨンファは一瞬、固まってしまった。


ジョンシンが女にモテる理由がよく分かった。
ルックスや頭が良いというだけでなく、男が恥ずかしくて口にできないようなことを平気で言葉にするのだ。
料理を作っている時から、やけにチラチラこちらを見てくるとは思っていたが、とうの昔に気付かれていたらしい。


「……お前のせいだろ」


ジョンシンは一瞬不意を突かれたような顔をして、それから目を細めて口許を緩める。
昨夜この唇と何度もキスをしたのだと、改めて複雑な気持ちになった。
いきなり手をスッと伸ばしてきたかと思うと、唇を指でなぞられて、ヨンファは背筋がゾクリとした。


「ごちそうさん。うまかったよ」
「……馬鹿なこと言ってないで、早く食えよ」


ジョンシンはクックッと笑いをこらえている。


「ヨンファのそういうところ、いいよな。いつも自然体で、何があっても本質は変わらない」


眩しいものでも見るかのように双眸を細めるジョンシンを無視して、ヨンファは食べることに専念する。
ジョンシンが何を考えているのか、さっぱり分からなかった。誰に対してもこうなのだろうか。
あけすけで軽口を叩いて、どこからどこまでが本気で冗談なのか判断ができない。


そんなことを考えていると、ヨンファは急にあることを思い出した。


「今日、飲み会があって帰りは遅くなるから、夕飯は自分で何か買って食べてくれ」
「ふーん。それって合コン?」
「違う」


ホンギとジョンフンに飲みに行こうと誘われていたのを、危うく忘れるところだった。
ジョンシンが興味ありげな顔をしたが、これ以上答えてやる義理はなかった。


できるだけジョンシンとは二人きりにはならない方がいいと思っていたので、まさに渡りに船だった。
昨日みたいに油断していると、何をされるか分かったもんじゃない。距離を置いて隙を見せないようにしなくては。
ヨンファはそう自分に言い聞かせた。










S大学の最寄り駅近くの居酒屋で、衝撃の事実を聞いたヨンファは、唖然とした顔をしてホンギとジョンフンを交互に見ていた。


「えっ、二人とも付き合ってるのか?」
「あれからすぐメアド交換して、時々連絡は取り合ってたんだけど、最近になってようやくOKもらってさぁ」


生ビールを飲みながらホンギが嬉しそうに言うと、隣のジョンフンも照れたような顔をしている。


「俺も最近なんだ。テヨンちゃんがもう可愛くてさ。まだ付き合ってるって実感が湧かないんだよな」


二人は先日の合コンで知り合ったユリとテヨンと、それぞれ交際を始めたらしい。
手の早いホンギは分かるとして、真面目なジョンフンまでちゃっかりカップルになっていたとは。


「まあ、良かったじゃないか。ホンギは長続きしないだろうけど、ジョンフンは頑張れよ」
「は?ヨンファ、それどういう意味だよ」
「ホンギは気が多すぎるだろうが。前みたいに浮気して、彼女に捨てられないようにな」
「今度は大丈夫だって。ユリちゃん超絶美人だから、絶対に浮気なんてしねぇ」
「それより、ヨンファはソヒョンちゃんとどうなったんだ?」
「そうだよ。ちゃんと連絡取ってんのか?」


ジョンフンの言葉に、ホンギが頷きながら付け加えた。


「それがさ、驚いたことに弟と同じ塾に通ってて、ちょっと前に偶然再会したんだ」


すると、二人が「マジで?」と驚いた顔をする。


「ヨンファもソヒョンちゃんと付き合えば、六人で遊びに行けるんだからさ、アタックしちゃえよ」
「受験生だから今はマズイだろ。誘うにしても、まず受験が終わらないことにはな」


フライドポテトを食べながらジョンフンが親切心を出してくるのを、ヨンファは適当に躱した。


「俺のことはいいから、お前らだけで遊びに行ったら?」


気を利かせてヨンファが提案すると、次の休みの日にダブルデートでロッテワールドへ行くらしい。
別に羨ましいとは思わないが、純粋に楽しそうでいいなと思った。
自分とは大違いだ……。


「ヨンファ、今日、ちょっとペース早くねぇか?」
「暑い日のビールはいくらでも入るんだよ」


知らず知らずのうちに杯を重ねていたようで、ホンギに心配される。
家に帰ると問題児が約一名いるし、飲まないとやってられない気分だった。
しかし、そんなヨンファを嘲笑うかのように、不思議と酔えなかった。










時刻は午前1時を回っていた。


家の中は真っ暗で、人の気配はなかった。
部屋の電気が消えていたので、ジョンシンはすでに寝ているようだ。
ヨンファは安堵して、肩から力が抜けた。


なるべく音を立てないようにして自分の部屋に入り、ヨンファは着替えを持ってバスルームへと向かう。
頭からシャワーを浴び、時間が遅いので、手早く髪の毛と身体を洗った。
パジャマ代わりの部屋着を身にまとい、歯磨きを済ませて自室へ戻る。


ドアを開けて電気をつけると、ヨンファのベッドにジョンシンが寝転がって、こちらを見ていた。
予想だにしていない展開に、心臓がドクンと激しく脈打ち、ヨンファは腰を抜かしそうになった。


「な、何だよ、お前っ。ビックリするだろっ。心臓麻痺で俺を殺す気か!」
「こんなんで死ぬかよ……」


呆れ顔で言うジョンシンに、ヨンファは気が動転して頭が真っ白になる。
着替えを取りに来た時にはいなかったから、そのあと忍び込んだのだろう。


「遅い。待ちくたびれた」
「……一体どういうつもりだ。何でここにいる?」
「昨日の続きをしに」


ジョンシンの台詞にヨンファの心拍数が急に高くなり、喉がコクリと鳴る。


「……馬鹿なことを言うな。今、何時だと思ってる。とっとと寝ろよ」


喉の奥に張り付いたような声で何とか言葉を発すると、ジョンシンはベッドから下りて、ヨンファのそばまで近付いてくる。
ドアに凭れたまま顔を上げると、見下ろすジョンシンとまともに目が合った。
いきなり頬に触れられ、反射的にビクッと震えた自分に叱咤する。


「じゃあ、ソヒョンに手を出してもいいんだな?」
「……俺を脅迫するのか?」
「人聞きが悪いな。俺は強要していない。選ばせてるんだ。アンタかソヒョンか」


その言い草に、カッと頭に血が昇るのが分かった。
選ぶ余地などないことは始めから承知しているくせに、わざといたぶって楽しんでいるとしか思えない。
ヨンファは怒りで身体中が震えて、言葉が出なかった。


「そんなに難しく考えることないだろ。大人しくしていれば、気持ち良くしてやるって」


背中から腰のラインをそっと撫で下ろされて、肌に痺れが走る。
激しく動揺している自分とは対照的に、手慣れたジョンシンは余裕の表情を見せている。
どうすればいいのか分からず身体を強張らせていると、ヨンファの肩を抱き寄せ、半乾きの髪に口付けてくる。
返事をしないことを、肯定の意味に取られてしまったのだろうか。


「緊張しなくていいから」


その所作がまるで女扱いされているみたいで、ヨンファは不快な気持ちになる。
ジョンシンが過去に抱いた女と自分が、同等に扱われるのだけは耐えられなかった。
気付いたら、その手を強く払い除けていた。


「……っ、よせよ!女みたいに扱うなっ」


瞠目するジョンシンを睨み付け、ヨンファは大きな声で叫んだ。
屈辱以外の何者でもなかった。女じゃないし、守られる対象でもない。
いろんな感情が渦を巻いて、胸がキリキリと痛む。


「……ああ。そーかよ」


張りつめた空気の中、低く怒りを抑え込むような声が響いた。
と思ったら、いきなりTシャツの上から、胸の敏感な部分を強く摘まれてギョッとする。
もう片方の手はハーフパンツ越しにヨンファの中心を握り込んできて、荒々しく動かしてくる。


「ちょっ……痛っ……やめろっ!」
「優しくしない方がお好みなんだろ?」
「い…嫌だっ……ジョンシナッ!」


あまりの痛みに半ばパニック状態になりながら、ヨンファはジョンシンの両腕を自分から外させようとする。


「……もう……やめてくれっ……」


ヨンファの泣きそうな声に反応して、痛みと圧迫感がスッと消えた。
ジョンシンが複雑そうな顔をして見下ろしていた。


「……別に女扱いしてるわけじゃねぇよ。悪かった……」


苦痛に耐えようとして、ヨンファが無意識のうちに唇を強く噛んでいたのを見て、ジョンシンがやめさせようと唇に触れてくる。


「……ヨンファ」


宥めるように名前を呼ばれ、長い腕に腰ごと強く抱き込まれた。
密着したジョンシンの身体から、自分と同じボディーソープの香りがする。


「本当に…するつもりなの…か?」
「そう言っただろ」


ジョンシンはヨンファを解放してくれる気はないらしい。
たちの悪い冗談ではないことは、ジョンシンの真剣な目が物語っていた。
ヨンファが動けないでいると、いつの間にか部屋の電気を消され、代わりにベッドサイドランプがつけられた。
そのせいか暗い中にベッドだけが浮かび上がって、リアルに存在を主張してくる。


手を引かれ、ヨンファはベッドに押し倒された。
体勢を整える間もなく、ジョンシンが圧し掛かってきて、上から覗き込んでくる。
男らしさと繊細なつくりが合わさった端正な顔立ちは誰もが認めるほどで、その黒い瞳に射貫かれると身動きが取れなくなる。


今から兄弟の域を超えた行為をするのだと、ヨンファは改めて思い知った。
ジョンシンは自分のことが好きでこんなことをしているわけではない。最初から身代わりと言われていた。
興味本位、性欲処理、妊娠しない手軽で身近な相手という理由で選ばれたのは、自分でもよく分かっている。


―――これは罰なのだろうか。
弟を好きになったばかりに、こんな目に遭わなければならないとは、なんて皮肉な運命なのだろう。
ジョンシンには分からないに違いない。
深く考えずに発した言葉の一つ一つに、傷付いている相手がいるということを。





ジョンシンがあやすように、ヨンファをギュッと抱き締めてきた。
不安を拭い去ろうとするかのように、何度も優しく髪を梳いて、額にそっと口付けをされた。
強張りを解くように気遣われ、ヨンファは戸惑ってしまう。


瞳を閉じると、瞼にジョンシンのキスが降ってきて、鼻筋、頬と移動し、最後に呼吸を塞がれた。
触れた唇は一度離れ、また再び重なってくる。
口付けが深くなるにつれて、ヨンファは反射的に両手でジョンシンを押し戻そうとしたが、思いがけず厚い胸板に阻まれビクともしない。


執拗に唇を貪られ、あまりの激しさにヨンファは恐怖すら感じ始めた。
歯列を割って入ってきた舌に、頬の内側をなぞられて肌が粟立ち、両腕はジョンシンに拘束され、シーツに押し付けられる。
だんだんと洒落にならない状況に追いやられ、焦りが増してくる。
ヨンファは顔を左右に振って、ジョンシンの唇から逃れ、声を絞り出す。


「ジョンシナ……やっぱり…俺には…できない……」


しかし、ジョンシンは聞く耳を持たず、唇は首筋や鎖骨や、ありとあらゆるところを探るように這いまわってくる。
ヨンファは一瞬の隙をついて身体を横に滑らせ、ベッドからフローリングの床に落ちた。
身を起こそうとしたが、すぐさまジョンシンが覆いかぶさってきて、逃げようとした腰を強く引き寄せられた。


「やめ……っ」


足を振り上げても躱され、逆に抑え込まれて身体の自由が利かなくなる。
Tシャツを強引に捲り上げられると、ヨンファの滑らかな胸がジョンシンの前に露わになった。
食い殺されるかと思うような瞳の色に、鳥肌が立つほどの緊迫感が漂う。
ジョンシンは無防備になったヨンファの胸から腰にかけて、キスの雨を降らし始めた。


「……あっ………」


思わず高い声が出て、唇を噛む。得も言われぬ快感が身体中を駆け巡った。
弟に触れられて感じてしまったことに、ヨンファは激しく狼狽する。


「……嫌だ…っ…」


ジョンシンの熱い唇がヨンファの身体の線をなぞるように、隅から隅まで啄むように吸われ、思わず涙が滲んでくる。
何の変哲もないゴツゴツした男の身体に、どうしてこんなことをするのか理解できない。
面白半分で始めたことなら、間違いなく幻滅されるに決まっている。


目の奥から滴が溢れ出てきて、それを隠すようにヨンファは両腕を交差させて顔を覆う。
ジョンシンに触れられた箇所が次第に熱を帯びてきて、このままでは取り返しのつかない事態に陥りそうだった。
突如、ヨンファの脳裏に、両親やジョンヒョンとミニョクの顔が思い浮かび、冷や水を浴びせられたような気分になった。
兄弟で背徳の行為に耽ることに、吐き気を催すほどの嫌悪感が襲ってきて、耐えられなくなった。


「頼むからやめてくれ…っ!」


ヨンファの悲痛な叫びに、ジョンシンはようやく動きを止め、愛撫を中断した。
床の上でぐったりとして、ヨンファは荒い呼吸を繰り返す。
ジョンシンの唇と手で追い上げられた身体が火照っているのに動揺しつつ、ようやく解放されて安堵していると、いきなり両手首を掴まれて、顔の上の腕を外そうとする。


―――まだ何かするつもりなのか?


ヨンファは慌てて両腕に力を込めると、再び激しく抵抗して、それを阻止しようとする。
たが、呆気なくジョンシンに両腕を捕われて、床の上に押さえ付けられた。
視界いっぱいにジョンシンの顔があり、涙に濡れた顔を真正面から見られた。


「ヨン…ファ……」


見上げるように両目を大きく見開いたヨンファを、ジョンシンは呆然とした面持ちで見下ろしていた。
互いに肩で息をしながら、二人はしばし無言で見つめ合った。
ジョンシンの瞳は明らかに欲で濡れていた。その食い入るような鋭い視線に居た堪れなくなり、ヨンファが目を逸らす。
まるで痛いものでも見るかのようにジョンシンは顔を顰め、ヨンファを抱き上げるとベッドの上に下ろした。


「俺はやめたくない。アンタがどんなに嫌がって泣き叫んでも」


ヨンファは言葉を失った。
ここまでしても、願いが聞き入れられないことに再び顔が強張る。


「日曜日、ジョンヒョニヒョンとミニョクが帰ってくるまで、俺の好きにさせてくれないか?」


口の中が急激に乾いてきて、心臓は早鐘のようにずっと鳴り続けている。
ヨンファが何か言葉を発しようとして口を開くと、両頬を大きな手で包み込むように触れられた。
その手はとても温かく、興奮して取り乱していたヨンファの心を癒そうとするかのようだった。
ジョンシンの長い指が、涙の跡を優しくなぞっていく。


「それ以降はアンタに指一本触れない。ソヒョンにも手を出さない。約束する」


吐息がかかるほどの距離から、低く切実な声で囁かれた。
ジョンシンは幾分緊張したような顔をして、ヨンファの泣き腫らした瞳を覗き込んでくる。
それはいつもの俺様で自信家のジョンシンではなく、今までに見たことがないほど苦しそうな顔をしていた。


これから先ずっと続くわけではないのならいいんじゃないかと、誘惑の魔の手が忍び寄ってくる。
約束の期限が来たら、自分もこの想いと決別すればいいのだからと、徐々に気持ちが揺らぎ始めた。


「……痛いのはごめんだ…」


気付いた時には、もう遅かった。思わずヨンファの口をついて出ていた。
これで完全に後戻りはできなくなってしまった。


ジョンシンは驚いたようにハッと息を呑んで動きが止まる。
それが、了承の返事だと理解されると、やがて狂おしいほど強く抱き締めてきた。


「善処するよ」


近付いてきた唇にヨンファは反射的に顔を背けたが、ジョンシンは気にする風でもなく、息をつかせぬほど激しい口付けが降ってきた。
奪うように覆われて、唇の隙間にするりと舌が入り込んできた。
舌を絡め取られながら、何度も角度を変えて執拗に舌先を吸われ、何も考えられなくなる。


「……大丈夫か?」


熱っぽい囁きとともに、滴を吸い取るかのように、瞼や頬にも啄むようにキスをされる。
その触れ方があまりにも優しくて、突然、ヨンファの胸を押し上げるように、今まで長いこと抑え込んでいた気持ちが表に溢れ出てきた。


―――もう嘘はつけない。ジョンシンが欲しい。
気が遠くなるほど前から、ずっとずっとこの愛しい存在を手に入れたかった。


キスを繰り返しながら服を剥ぎ取られ、仰向けになったヨンファの前で、膝立ちしたジョンシンも自らTシャツを脱ぎ始める。
間近で見るジョンシンの裸体の美しさに、ヨンファは圧倒された。
浅黒く、筋肉に覆われて引き締まった身体は、何度見ても魅了される。


同じように何も身に着けていない自分を恥ずかしく思っていると、ジョンシンが熱っぽい目で見下ろしてきた。
首筋に触れ、鎖骨、胸へとゆっくり指を滑らせて、手触りを愉しんでいるかのようだった。
その間もじっと視線を注がれて、ヨンファは逃げ出したくなる。


指で触れられた箇所に、むしゃぶりつくように唇が這わされていく。
胸の尖った部分を指で触れられビクンと反応すると、すぐさま舌で舐められ、電流のような甘い痺れが全身を駆け巡った。


「あぁ…っ……」


自分の身体が自分のものではないような錯覚に陥り、もっと快感を得たいと気持ちが貪欲になるのを止められない。
両方の乳首を交互に口に含まれ、舌先で転がすように愛撫される。


「は……あっ……」


強烈な刺激に我慢できず奥歯を食いしばっていると、ジョンシンが乳首に軽く歯を立てながら下に手を伸ばしてきた。
直接触れられただけで腰が跳ね、敏感な部分を責められると、あまりの気持ち良さに意識が遠退きそうになる。


滑らかに動く指先に煽られ、身体の奥に熱を感じるようになると、それに気付いたのか、長い指がゆっくりと入ってきた。
痛みを感じて身体に力が入ったが、ジョンシンが辛抱強く時間をかけて中を探っていくと、次第に柔らかく解されて、言葉で言い表せない感覚が生まれてきた。


気が付けば、指の出し入れに合わせて腰が震え始め、察したジョンシンは慎重に隅々まで模索するような動きに変わっていた。
指がある部分に触れた瞬間、ヨンファの身体が大きく反応し、確かめるようにジョンシンが同じところを刺激してくる。


「……ん、ぁ、……ぅん…っ」
「ここだな」


何が「ここ」なのか分からないでいると、その一点を執拗に責められて、腰が淫らに揺れる。


「っあ、……ん、…や……っ」


増やされた指で蕩けた内部を掻き回されても、甘ったるい嬌声が零れるばかりで、もう痛みは感じなかった。
ヨンファの声と吐息に誘われたのかジョンシンに唇を奪われて、呼吸を許さないような激しさに思考が霞んでいくと、気付かないうちに片方の膝を押し上げられていた。


「中に入るから……ヨンファ……力、抜いて」


それが何を意味するのか、半ば意識が飛びかけていたヨンファはもう逃げることさえできなかった。
少しずつジョンシンが身を沈めてきて、ヨンファの白い喉から高い悲鳴が迸る。


「…痛…っ……あ、はっ……あっ……っ」


押し入ってきた異物感に身体が引き攣ったようになり、全身から汗が滲み出てくる。
指が白くなるほど強くシーツを握り締め、半端ないくらいの圧迫感と衝撃が押し寄せてきて、息をするのも苦しい。
弟と身体を繋げてしまったのだと、今更ながらに実感した。
ジョンシンはしばらくの間動かずに、ヨンファが落ち着くのを待っているようだった。


「痛いか……?」
「ん……っ」


確かに痛いし苦しい。しかし、それ以外の感覚も少しずつ芽生えてきて、ヨンファを戸惑わせる。
辛そうな顔をするヨンファを見て、ゆっくりと抜け出ようとしたジョンシンがある部分に当たった時、ヨンファの口から信じられないような嬌声が漏れた。


「……ん、あぁ…っ……」


ジョンシンは一瞬驚いた顔をすると、ヨンファの反応を確かめながら、もう一度中に入り込んでくる。


「ここ…もっと擦ってあげるから」


ジョンシンは浅いところだけを狙って、ゆっくりと腰を使い始めた。


「あ…っ、ん……っ、……あっ……」


感じる場所を突かれるたびに、濡れた声が止まらなかった。
もっと酷いことをされるのかと思っていたが、ジョンシンはまるで壊れ物を扱うかのように、終始気遣ってくれた。
以前、彼女との情事の最中の時みたいな荒々しさは一切なく、不思議と嫌ではなかった。


無意識のうちに噛んでいた唇をキスで塞がれ、ジョンシンがヨンファの様子を見ながら更に奥へと侵入してくる。
繋げた腰を遠慮がちに揺すられてヨンファが身悶えると、喉許に口付けながら低い声で訊ねてきた。


「まだ痛いか?」
「へ……き……」


ホッとしたような顔をしたジョンシンが、次第に追い上げる動きを早めていく。
ヨンファは知らず知らずのうちに、ジョンシンの背中に腕を回して縋り付いていた。


「ヨンファ……ヨンファ……」


切羽詰まったような声で名前を呼ばれ、ヨンファはそれを愛情からと勘違いしそうになり、切なくなる。
繰り返される濃厚な口付けと、中を穿たれる甘い快楽に熱が高まっていく。
力強い腰の動きに頭の中が真っ白になり、ヨンファが達すると、あとを追いかけるようにジョンシンも中で果てた。


そして、ヨンファはいつの間にか意識を手放していた。










翌日、目が覚めた時、部屋の中はすでに明るかった。
ヨンファは腫れぼったい目をこすりつつ、ゆっくりと身体を起こすと、シーツがずり下がり一糸まとわぬ姿が露わになった。
全身がかなり怠く、ジョンシンを受け入れたところに引き攣れたような違和感がある。
思ったよりひどくはなかったが、ジョンシンと一つに繋がったのだと、何とも言えない複雑な気持ちになった。


女ではないのだから妊娠の心配もないし、二人しかいないのだから、家族にバレることもない。
ジョンシンのようにあまり深く考える必要はないのかもしれないが、ヨンファは良心の呵責に苛まれていた。





時計を見ると午前10時を過ぎていて、ヨンファは驚きつつ、服を着て階下へと下りる。
ダイニングテーブルにはジョンシンが作ったらしい朝食がラップに包まれて置かれていて、本人はすでに出かけていなかった。
シャワーを浴びてから、ヨンファはかなり遅い朝食を摂った。


今日は何もする気が起きなかった。
情事の余韻が残る気怠い身体を持て余し、自室のベッドに仰向けで寝転がったまま、ヨンファは天井をぼんやりと見上げた。
そのまま横になっているとウトウトして、ヨンファはいつの間にか泥のように眠っていた。










次に起きた時、周りはもう真っ暗で、すっかり夜になっていた。
慌てて飛び起きリビングへ向かうと、電気がついたままで誰もいなかった。
自分でつけた記憶はないので、ジョンシンが一度帰宅して、また外出したのかもしれない。


何か作らなければと冷蔵庫を物色していると、玄関から音がする。ジョンシンが帰ってきたようだ。
手にはコンビニの袋を提げていた。


「起きたのか」
「……ああ」


意識を飛ばしてから、初めてジョンシンと顔を合わせた。
後悔はしていないが、気まずいのと、何とも言えない気分には変わりなかった。


「夕飯、適当に買ってきたけど」
「ありがとう…。何も用意してなかったから助かる」


ダイニングテーブルに置かれたものを見ると、中には弁当が二つ入っていた。
向かい合わせに座って食べ始めたが、ヨンファはあまり食欲がなく、なかなか箸が進まなかった。
ゆっくりと少しずつ口に運んでいると、ジョンシンがチラチラとヨンファの方を遠慮がちに窺ってくる。


「なに?」
「……身体は……どう?」


いつでも真っ直ぐな目で見てくるジョンシンが、珍しく視線を逸らせてボソッと呟く。
身体の奥にまだ違和感があるのと、今もまだジョンシンの唇や手の感触が、身体中に残されている気がする。
しかし、本当のことを言うわけにもいかず、ヨンファは普通に答えた。


「……大丈夫だけど」
「そうか。……今日は何をして過ごしたんだ?」


ヨンファは言葉に詰まる。
今までそんなことを訊かれたことがないのに、心配してくれているのだろうか。


「ほとんど寝てた」
「……まあ…そうだよな……」


墓穴を掘ったと言わんばかりに、バツの悪そうな顔をしている。


「女じゃないんだから、そんなに気にしなくていい」
「それは違うだろ。女じゃないから心配してるんだ。……その…受け入れるようには出来ていないだろ?」


気遣うような口調で面と向かって言われ、胸の奥がじわりと熱くなってくるのを止められない。
言葉や態度が粗野かつ乱暴で、ふざけたり揶揄ったりする時もあるが、ジョンシンは基本的にはヨンファに優しいところがある。
頼むからこれ以上、自分の都合のいいように勘違いさせないでほしい。
普段どおり軽い口調で言われる方が、余程マシだった。


ヨンファは目を伏せて、ジョンシンの弁当の方に視線を向ける。
何て返答をしていいのか言葉が見つからず、ふと沈黙が落ちる。


ジョンシンは昨夜のことをどう思っているのだろうか。後悔はしていないのだろうか。
恐らく男を抱いたのは初めてで、やっぱり女の方がいいと再認識したのではないか。
いろんなことが頭に浮かんできて、突如、胸に棘が刺さったような痛みに襲われた。
それを悟られないように押し隠して、ヨンファは箸を動かした。










ベッドに入ってもなかなか寝付けず、ヨンファは真っ暗な部屋の中で何度も寝返りを打った。
日中あれだけ睡眠をとったのだから無理はない。
「眠らないといけない」と思えば思うほど睡魔は遠のいていく。神経が高ぶっているのかもしれない。


その時、突然ドアがガチャッと開く音がして、ヨンファはドキリとした。
家には二人しかいないのだから、誰なのかは見なくても分かる。


―――まさか、今日もなのか…?


壁の方を向いているから姿を確認することはできないが、足音がベッドに近付いてくる。
いきなり襲いかかってくるのではと内心ビクビクしながら様子を窺っていると、ベッドがギシッと大きく揺れた。
身体が硬直したように動かないでいると、隣にジョンシンが潜り込んできた。
ヨンファの背中に硬い身体が触れた途端、ビクッと過剰に反応してしまい、寝ていないことがバレてしまった。


「……寝てなかったのか」


当然の権利とばかりに、ヨンファの身体に腕を回し、逞しい胸に強く抱き寄せられる。


「な、なんで…ここに来るんだよ?」
「日曜日までここで寝る」
「え…?」


確かに二人が帰ってくるまでジョンシンの好きなようにさせると約束したが、毎日求めてくるとは想定していなかった。
まだ身体が重いし、立て続けにあんなことをされたら、とてもじゃないが起き上がることなんてできない。


後ろから首筋に温かなジョンシンの唇を感じて、全身が強張ってくる。


「ジョンシナ、今日は…」
「分かってる。何もしやしない。こうしてるだけだから」


そう言うと、ヨンファのうなじや襟元などの肌が露出しているところに口付けをされる。


「…あっ……」
「ごめん、キスだけしていいか?」


身体の向きを変えさせられ頤を捉えられると、熱い唇が重なってきた。
歯列を割って舌先を絡め取られて、甘い吐息が漏れていく。
深くて濃厚な口付けに酔いしれ、やがてジョンシンは名残惜しげにゆっくりと唇を離した。


「おやすみ」


後ろから長い両腕をヨンファの腰に回してきて、手をギュッと握られる。
ジョンシンは一方的に気が済んでこのまま寝ようとしているのだろうが、ヨンファは違った。


こんな状態で眠れるはずがない。
キスだけで、身体の中心が熱を孕みだした自分がひどく浅ましく、居た堪れなくなった。


なんだか、自分一人だけ取り残されたような、そんな寂寥感が突然襲ってきた。
そこに自分たちの温度差があるように思えて、ヨンファは唇を噛み締めた。





ジョンシンに優しくされると、自分も同じように想われているんじゃないかと、錯覚してしまいそうになる。


このまま時間が止まればいい。ずっと一緒にいられたらいい―――。


決して許されることではないのに、一瞬でもそう思ってしまった自分に、ヨンファは可笑しくて涙が出そうになった。





ジョンシンとの約束の日まで、残りあと四日だった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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