CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Manito 22

2018年12月24日
Manito 6






「どうか気を悪くしないで聞いてほしい……」


そう前置きしたヨンファの表情はそれまでとは異なり、わずかに緊張の色を滲ませていた。
どことなく落ち着かないようで、視線は所在なく揺れ、ゆったりとしたスウェットパンツに包まれた両脚を一度伸ばしてから片膝だけ立てる。
その様子を、肩を並べて座り込んでいるジョンシンはただ静かに眺めていた。


「いつかやめないといけないと思ったのは、お前と初めて寝た日だ」
「………っ」


もぞもぞと身じろぐヨンファに気を取られていた隙に、不意打ちでいきなり核心に切り込まれ、思わず耳を疑う。
やや掠れた声音で重々しく告げられた台詞は、ジョンシンにとってあまりにも衝撃的だった。
何を言い出すのかと絶句したジョンシンをどう思ったのか、ヨンファは敢えて感情を排したような口調で言葉を継ぐ。


「魔が差してあんなことになったんだと……、あの時はそうとしか考えられなかった。お前が異性愛者なのは分かっていたから、一時的な気の迷いでそのうち飽きるだろうって高を括っていた。でも……、そうはならなかった」


神妙な面持ちで心情を吐露され、ジョンシンは愕然とした。
つらつらと並べ立てられた驚愕の内容に、心臓が早鐘を打ち始める。


「嫌々……だったって言うのか?じゃあ、俺と付き合ったのは……っ」


感情的にならないように意識して低く問いかけたつもりだったが、絞り出した声は意図せず尖っていた。
そんなジョンシンの内心を読み取ったかのように、「いや……」と言い淀んだヨンファは伏せていた目をゆっくりと上げる。


「違う。逆だ」
「――それは、どういう意味?」


困惑したように眉を顰めながら尋ねたものの、ヨンファは不意に口を噤み、すぐには答えてくれなかった。
待ちきれずに横から顔を覗き込むと、どこか迷っているような素振りで、小さく震える長い睫毛の下で大きな瞳が微かに揺れているのが見て取れる。
「ヨンファ?」と促してみれば、数秒逡巡したあとにようやく視線を合わせてきた。


「俺と初めて会った日のことを覚えているか?」
「ああ……、練習室でだろ。もちろん覚えてる」
「あの時、他にも初対面の練習生がいたのに、どうしてか俺はお前のことがやけに強く印象に残ったんだ」
「――え?」


冒頭の発言の真意が知りたかったのに、予想すらしていなかった言葉に意表を突かれる。
なぜ突然、ここで昔の話を持ち出すのかと怪訝に思った矢先、ヨンファは目を伏せながら口を開いた。


「フィーリングが合うっていうのかな。第一印象で、相手の『人となり』ってだいたい分かるだろ。その後もお前といろいろ話をするうちに、考え方や価値観が似てるなって驚いた。それに、すごく俺を慕ってくれて、実の弟みたいに可愛い奴だと思っていたよ。お前がメンバーとして入ってくれた時も嬉しかった。几帳面で練習熱心な上、いつも明るく皆を笑わせてくれるところも――。そんなお前だから……俺は好きになったんだ。その気持ちは自分でも、もう止めようがなかった」
「………っ」


これまでほとんど語られることのなかった本心を明かされ、ジョンシンは言葉を失った。
あの時点ですでに、ヨンファは自分に気持ちを向けてくれていた――というのだろうか。
衝撃の連続で、我知らず背筋が震える。
ジョンシンの反応は半ば予想していたらしく、落ち着きを取り戻したヨンファの表情にさほど変化は見られなかった。


「お前とこういう関係になって、正直悩んだ。俺たちが一般人ならまた違うのかもしれないが、背負っているものがあまりにも多すぎる。ファン、事務所、家族……。軽率な行為は自分の身を滅ぼすだけじゃなく、当然、周囲にも多大な迷惑をかけてしまう。そうなれば、もう俺たちふたりだけの問題では済まないんだ。それで、できるだけ早く終わらせないといけないと思っていた……」
「―――――」


まるで自分の責任だというように唇を噛み締めているヨンファにどう声をかけていいのか分からず、信じられない思いで目の前のすっと通った細い鼻梁をただ見つめる。
今でも昨日のことのように覚えているが、あの日、突発的にヨンファに迫って、無理矢理に唇を奪ったのはジョンシンの方だった。
酒に酔っていたわけでもないのに、はだけた胸許と赤みを帯びた唇から目が離せなくなり、衝動的に理性が飛んだのだ。


「そもそも、お前の提案に乗るべきじゃなかったのかもしれない。でも、俺には拒めなかった。いや、自ら望んで応じた」
「ヨン…ファ……」


身勝手な振る舞いをしてしまった過去の自分に、そんな深い愛情を抱いてくれていたとは露ほども知らなかった。
単なるメンバーとして、可愛がられているものとばかり思っていたのだ。
ヨンファは自身の気持ちを打ち明けるように、そのまま話し続ける。


「男と寝たことないのに、馬鹿としか言いようがない」
「―――!」


自嘲めいた物言いに虚を衝かれ、ジョンシンは大きく目を瞠った。
なぜならば、思い当たる節があるからだ。
初めて身体を繋げた時、ひどくつらそうなヨンファを気遣うと、同性との経験があるように仄めかされた。
淫らに絡みついてくる奥部がその証だと、カッと頭に血が上ったのと同時に焦燥と苛立ちに駆られ、ジョンシンとは比較にならないほど経験値が高い人と勝手に決めつけていたのだ。


だが、手練れているはずのヨンファが積極的にリードしてくれたのは最初の日だけで、それ以降はジョンシンが求めるたびにじっと身を硬くして、妙にぎこちなかった。
かといって、嫌がるふうでも抵抗するわけでもない。
何か釈然としないものを感じながらも欲望に勝てなかったジョンシンは、彼に溺れるように傾倒していく自分を止めることができなかった。


「そ、んなことって……」


長年の引っかかりがようやくすとんと腑に落ち、ジョンシンは合点がいく思いでヨンファの顔を呆然と見つめる。
頭から冷水を浴びせられたような気分だった。
突如、苦悶の表情をしたヨンファが、ジョンシンの脳裏に鮮やかに浮かび上がる。
そうまでして受け入れてくれたのか……、とたまらなく胸が震える反面、ヨンファへの愛情を認識するまでの己の行動を省みて、苦々しい気持ちが溢れてきた。
知らなかったとはいえ、随分ひどい仕打ちをしたのは紛れもない事実だ。


「なんで、そんな真似を……っ」


苦い記憶は自分に対する憤りへと姿を変え、喉の奥が重く詰まったみたいに息苦しくなったジョンシンは吐き出すように言い放った。
何ともやりきれなくて、過去の出来事が今さらながら重く圧しかかってくる。
もって行き場のない感情に、胸がつかえたような感覚は増すばかりだ。


「俺が勝手にしただけだ。ジョンシナが気に病む必要はない」
「………っ、だからって!」


本人は取り立てて焦る様子もなく、何でもないことのようにさらりと言われ、かえって居たたまれなくなる。
どうしようもないもどかしさに、奥歯を懸命に噛み締めながら短い髪をがしがしと搔き乱していると、まるで制止するように温かな手がふわりとジョンシンの手に重ねられた。


「余計なことを言ってしまったな。もう過去のことだ」
「――ごめん」
「いいんだ。頼むから謝らないでくれ」


ゆっくりと首を横に振りながら、ヨンファは自分よりも高い位置にあるジョンシンの頭にもそっと触れてくる。
こちらの心中を察してくれたのか、そのまま優しく撫でるように髪を梳かれ、「ありがとう……」と言葉を継いだ。


「お前と一緒に過ごす時間はすごく居心地がよくて、これ以上引き延ばすと後戻りできない気がした。だから、今度こそ距離を置いて、プライベートの関係を解消しようと思い立ったんだ」
「――それは、入隊時期が近づいているから?」
「……………」


真顔で確信を持って問うと、ヨンファは急に黙り込んだ。


「だったら、尚さらひとりで自己完結しないで、ふたりで話し合って決めることだろ?ヨンファの一存だけで結論を出されても、俺は納得がいかない」


ジョンシンがきっぱりと言い切った途端、最愛の人の表情がふっと崩れる。
事前に何の説明もなく一方的にシャッターを下ろされても、到底承服できるものではないのだ。


「それに、ひとつだけ大きな誤算がある。よかれと思ってあれこれ考えてくれたんだろうけど、俺はまったく望んでいないってことだ」
「――確かに……独りよがりだったな。この機会を逃したらお前を手放せなくなるって……、焦っていたのかもしれない」


力ない声でぼそりと呟いたヨンファは、どこか覚束ない面持ちをしていた。
そう遠くもない未来の自分たちの在り方を思い描いているのだろうか。
真っすぐな眼差しが不意に揺らぎ、瞬く間に脆くなった貌をわずかに俯かせた。


「物理的な距離が生じれば何とかなると、短絡的に考えていた。浅はかすぎて、自分でも笑える」


ヨンファは形のいい眉を寄せて、見ているこちらの方がつらくなるような寂しげな笑い方をする。
長い睫毛まで微かに震えているのに気づき、ジョンシンは自分の感情が大きく波打ち、胸の底から込み上げるように溢れ出すのを自覚した。
不安に駆られていた日々は裏を返せば、すべてヨンファの精一杯の優しさによってもたらされたものなのだ。
にもかかわらず、どこか痛そうに顔を歪め、いまだに自分を責め続けているのが分かる。
彼が背負っているものを、せめて半分でも肩代わりしたい。
何もかも受け止める覚悟はできているから、心の中をすべて曝け出してほしかった。


「俺たちは、入隊ごときで簡単に切れるような仲なのか」
「………っ」


傍らのヨンファがびくっと肩を揺らし、半ば伏せられた長い睫毛が上がるのと同時に真っ向から視線が絡み合う。
常に良識ある行動を心がけている彼の生真面目な性格から察すると、『別離』という結論に至った理由は分からないでもない。
芸能界に身を置く者として、そういう結末しか思い浮かばなかったのだろう。
だが、ひとりではないのだ。ふたりで一緒に、今後を模索していけばいいだけの話だ。


「……相手の気持ちをずっと繋ぎ止めておくことはできないし、心変わりしないなんて保証もない」
「ヨンファの言っていることはあながち間違っていないけど、俺はそうは思わないな。まだ実際に起きていないことを、先回りして心配したって仕方がない。思い悩んだからって、どうにかなるもんでもないし。一番大事なのは、俺たちの気持ちだろ」
「でも……、こういう立場だからいつもお前のそばにいられないし、他に優先しなければならないこともある。当たり前の恋人のようなことを、俺はしてやれない……」
「ヨンファを選んだ時点で、そんなことはとっくに承知してる。俺から離れないでいてくれたら、それでいいんだ」


気弱な発言をことごとく捩じ伏せたのは、社会常識や倫理観で雁字搦めになっているヨンファの心を少しでも解きほぐしたいという一心だった。
表情を引き締めながら断言したジョンシンが至近距離から見つめれば、ひどく圧倒されたかのように、星空を彷彿とさせる漆黒の双眸が今にもこぼれ落ちそうなほど大きく見開かれる。


「この際だから、ヨンファが抱えてるものをもっと吐き出して」


祈るような想いを込めて訴えると、いつになく思い詰めたような瞳でじっと見返された。
途端に甘美な目眩に襲われそうになり、ジョンシンは平静を保ったまましっかりと受け止める。
ヨンファはしばらく躊躇していたが、やがて蠱惑的な唇がわななきながら開いていく動きに目を奪われそうになった次の瞬間、やや掠れた声が耳に飛び込んできた。


「――お前は、……いつまで俺を好きでいてくれる?」





To be continued





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Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2018/12/24 (Mon) 21:47
haru

haru

n***さん

こんにちは♡

昨日はヨンファからの思いがけないツイートで、TLがすごいことになってましたね。
常にファンのことを考えてくれているところなど、行動の随所に人柄が滲み出ていて、改めて好きだなと思いました。
ヨンファも、素敵なイブを過ごしたことでしょうね。

話を読んで下さってどうもありがとうございます♪
今書いているものが落ち着いてきたら、「真夏の夜の夢」の続きも書こうと思っているので、来年もどうぞよろしくお願いします。
良いお年をお迎えくださいね(*´ω`*)

2018/12/25 (Tue) 13:01

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2018/12/31 (Mon) 07:42

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2018/12/31 (Mon) 09:52
haru

haru

m******さん

こんばんは♡

昨日のヨンファ、テンション上がりましたね♪
相変わらず可愛くて綺麗で、やっぱり好きだな~っとつくづく思いました。

リーマンパロを読み返して下さり、どうもありがとうございます。
今年はm******さんのおっしゃる通りあんまりなスタートでしたが、覗きにきて下さる皆さんのお陰で何とか続けることができました。
どうかと思うような内容ばかりなのに、繰り返し読んでいただけて私の方こそとても感謝しています。
出がらし状態に近づいているかもしれませんが、引き続き絞り出していきますので、来年もどうぞよろしくお願いします。
良いお年をお迎え下さい(*´ω`*)

2018/12/31 (Mon) 20:32
haru

haru

は*さん

こんばんは♡

読んで下さって、どうもありがとうございます♪
かなりゴールに近づいてきたんですが、他の話を挟むかもしれないので、もう少し先になるかな。

今年ラストの日ですね。
リビングにいる次女がガキ使観ながらゲラゲラ笑っているから、自室でパソコンを前にしても一つも集中できんというね…。
29日から休みだったですが、案の定というか、超綺麗好きなDに引っ張ってもらう感じで二人で大掃除をしました。
明日は義実家、明後日は実家に帰ってきます。
来年末はいよいよヨンファが!待ち遠しいですね~♡♡
は*さんも休みの間はしっかりリフレッシュして、どうぞ良いお年をお迎え下さい(*´ω`*)

2018/12/31 (Mon) 20:52