CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Manito 21

2018年12月15日
Manito 0






それは何の前触れもなく、あまりにも突然だった。
思いも寄らない行動に、一瞬、息が止まる。
この状況を、自分に都合よくプラスに解釈していいものか。
驚くほど無防備にそろりと頭を凭せかけてきたヨンファの重みと温もりは、これ以上ないくらいジョンシンの身体にしっくりと馴染んだ。


「―――――」


今、何か言葉を発せば、誰よりも愛おしい存在がまた手の届かないところへ離れていきそうな気がして、安堵の吐息がこぼれそうになるのをぐっとこらえる。
真意は分からないが、心を開こうとしてくれているのだろうか。
先ほどまでの意固地さは鳴りを潜めたようで、ふたりの間に沈黙が落ちるや否や、緊迫した空気が嘘みたいに消え去っていることに気づく。


穏やかな静けさの中、眩しいほどの光に照らされたリビングの壁にふたり肩を寄せ合って言葉もなく凭れていると、徐々に気持ちまで落ち着いてきた。
ほんの束の間ではあるものの、慌ただしい日常から離れ、自分たちだけ異空間に飛ばされたような不思議な感覚に囚われる。
ヨンファは膝の上で組んだ指のあたりを見つめながら、どうしたらいいのか分からないようなどこかぼんやりとした表情でジョンシンの片腕の中に収まっていた。


目の前に広々とした革張りソファが置かれているのに、わずかでも動いたら心地よい距離感が一気に崩れてしまいそうで、どちらも立ち上がろうとする素振りすらなく、フローリングの上に腰を下ろしたままだ。
こんなふうにただ一緒にいるだけで心から安らげる相手は、ヨンファ以外にはいない。
ふたりの間の溝がだんだんと埋められているような雰囲気に背中を押され、ジョンシンはおもむろに口を開いた。


「俺たち、付き合い始めてもう三年だろ。ひとつの節目として、特別なものを贈りたいと思ったんだ」


自分たちの今後の関係についてあまり言及していなかったので、以前からきちんと話し合おうと考えていたのだ。
口早に言い切ってヨンファの反応をちらりと窺うと、強張っていた表情は幾分和らぎ、心持ち伏し目がちな憂いを帯びた横顔ははっとするほど美しい。
その柔らかい印象は、初めて出会った頃とあまり変わらないな……、とかつての練習生時代の日々を懐かしく思い出す。


練習室のドアを開けて中に入ると、遠目からでもすらりとした見目麗しいヨンファがいち早くジョンシンに気づき、澄み切った瞳を細めてよく笑いかけてくれたものだ。
先輩風を吹かせることなく、誰に対しても平等に接する彼には当初から何かと可愛がってもらい、その恩をいまだに感じている。
CNBLUEに途中加入した時も温かく迎えられ、ジョンシンが自信を失い挫折しそうになれば、心の中の不安を根こそぎ取り除いてくれたのもヨンファだった。
自分自身が経験しているからこそ、人の痛みが分かるのだろう。


お前は才能があるから、心配しなくても大丈夫。十分やっていけるよ。
お前の代わりはどこにもいない。俺たちには、お前が必要だ。
温かい言葉に何度も繰り返し励まされて、泣きたいぐらいに嬉しかった。
自分にとても厳しく、遥か先を見据えながら常に高みを目指しているヨンファは聡明かつ理知的であり、ジョンシンにとって憧れの存在だったのだ。
瞬時に状況を把握する洞察力や判断力、ぶれない姿勢に加えて信念を曲げない芯の強さ、そして、誠実な人間性にも惹かれてやまない。
誰よりも綺麗で優しいこの人に、この先もついていこうと思った。


その後、ひょんなことから親密な関係に至ったが、ジョンシンの中でヨンファという存在は日に日に大きくなっていく。
自分にとっての常識や固定観念を覆してしまうほど彼に心を奪われ、このままずっと一緒にいたい……、とごく自然にそう考えるようになっていた。
当然ながら、己が選んだ道を恥じたり悔やんだりしたことは一度もない。
これからも長くバンド活動を続けながら、ともに生きていきたいと思ったからこそ、目に見える形で自分の真剣な気持ちを伝えようとしたのだ。


「だから――、ただの指輪だと思わないでほしい」


そこで言葉を切ったジョンシンは、ヨンファの心を解きほぐすように優しく微笑みかける。
途端に頼りなげな肩がやや揺れたが、さほど驚いていない様子から、案外、手渡した時点でこちらの意図を汲み取っていたのかもしれない。
しばらく俯いていたヨンファはやがてジョンシンの視線に気づき、ゆるゆると顔を向けてきた。


「……お前のは?」
「ん?俺?」


わずかな間のあと、唐突にぽつりと呟いたヨンファにすかさず問い返すと、どことなく言いにくそうにぼそぼそと続ける。


「てっきりペアリングかと……」


言葉少なではあるが、想定外の返答に思わず目を瞠った。
そんなことまで察してくれていたのか……、とジョンシンは一縷の望みを得たかのように嬉しくなり、デニムに包まれた片膝を立てて、軽く髪を掻き乱しながら唇の両端を上げる。


「ああ、うん。実は、お揃いで一緒に作ってもらったんだ。俺のは誕生石がなくて、ヨンファのよりひと回り大きいけど。また嵌めてくるから、ヨンファの指輪、もう一度よく見せて」


現状を打破する突破口をようやく見つけ、気まずそうに黙り込んだヨンファの整った貌に真摯な眼差しを向けた。
触れ合っている箇所から狼狽えたような気配が伝わってきたものの、無理強いをする気はなかったため、今度は強引に手を掴まずにどうするかしばし様子を窺ってみる。
困惑した表情を浮かべたヨンファは一拍、躊躇う素振りを見せたかと思うと、やがておずおずと左手を差し出してきた。
生来の素直さを少しずつ取り戻しているのが分かり、ジョンシンはその華奢な手を自分の方へやんわりと引き寄せる。


「へぇ、サイズがピッタリなところをみると、ちゃんと正確に測れたんだな。身に着けてくれてて嬉しいよ」
「……………」


ほっそりした指に触れた瞬間、おとなしくされるがままのヨンファは落ち着かなげに何度も瞬いた。
顔を綻ばせたジョンシンの台詞にも、まだどこか遠慮がちな様子を見せている。


「どうかした?」
「――お前にはたくさんひどいことをした。……指輪も突き返したし」


ヨンファの手が微かに震えているのを不思議に思って問いかけると、溢れ出ようとする感情を必死で抑え込もうとしてか、言葉を切ってきゅっと唇を強く引き結んだ。
そうは言っても、内心では拒否したし、意図的にビロード張りの小箱をヨンファの作業室に置いたままにしたのはジョンシンの方だ。
一か八かの賭けみたいなものだったが、思いがけずこうして指に嵌めてくれているのだから、今さら過去をほじくり返すつもりはない。


「済んだことはもういいよ。本心じゃないっていうのは分かってたから」


これ以上気に病んでほしくないので、何でもないことのようにさらりと告げた。
だが、すっと視線を逸らしたヨンファはジョンシンの片腕の中からするりと抜け出し、身体ひとつ分距離を置いて座り直すと、両膝を抱えて小さく頭を振る。


「お前がいいって言ってくれても、俺が――、俺が……自分を許せないんだ」


よほど罪の意識を感じているのか、苦渋に満ちた声は明らかに己を責めていた。
ジョンシンの知らないところで、ヨンファはこれまでいくつの優しい嘘を積み重ねてきたのだろうか。
よそよそしい態度に漠然とした不安を抱えていたのは事実だが、それも自分のことを想ってくれた結果だと知れば喜びでしかないのに。
居たたまれなさそうに目を伏せるヨンファを見て、ジョンシンは膝の前で組んでいる手に自分の手を重ね、ぎゅっと強く握り込んだ。


「……俺は最低だ。嫌われても仕方がないことを何度もした。挙句の果てに、一番ひどいやり方でお前の好意を無にして……。今回ばかりは、とことん愛想を尽かされたと思っていた。――いや、そうなって当然なんだ」


何やら考え込みながら、胸の内をすべて絞り出すように自嘲気味に苦く言い放ち、立てた膝の上に額を押し当てる。


「なんで……。そんなわけないだろ。惚れてんのに」


ジョンシンの言葉に、ヨンファは深く息をついて自虐的に小さく呟いた。


「お前は何か勘違いしてるんだ。俺はそんなふうに想われるような――」
「それは、ヨンファが判断することじゃない。決めるのは俺自身だ。それとも、やっぱり俺と別れたい?」


皆まで言わせずピシリと遮ってから、そばに寄り添って項垂れている頭に触れる。
宥めるようにゆっくりと撫でれば、再び触れ合った肩がわずかに揺らぎ、心細げに見上げてくるヨンファと視線がぶつかった。
ジョンシンの問いかけに頷くことも首を横に振ることもせず、ただ唇をきつく噛み締めたまま黙り込んでしまった彼を見て、予想以上に衝撃を与えたのだと気づく。
感情を抑えているつもりだったが、いきなり直球の質問をぶつけてしまった。
ジョンシンも今回の一連の件については、自分で考えていたよりも冷静になりきれていなかったのかもしれない。
   

「いや……ごめん。試すような意地悪な訊き方をした。答えなんか、とうに分かってるのにな」


ジョンシンが穏やかな口調で続けると、俯いたヨンファは力なく首を振る。
たまらなくなってそっと抱き寄せた途端、身体の力まで抜けきったみたいに胸に寄りかかってきた。
そのかけがえのない存在を離さないように、両腕でしっかりと温かく包み込む。


「頼むから、自分を責めないで」
「……………」
「俺さ、ヨンファが考えてるほど弱くないよ。この世界に長くいると、いろいろと揉まれて否が応でも強くなる。それに、普段からヒョニヒョンにちくりちくり言われてるせいか、メンタルも超鍛えられてるし。だから、こんなのは何てことないんだ。これからも四人で音楽をやり続けて、ずっとヨンファのそばにいられたらいい。それが俺の望み」


ジョンシンは慎重に言葉を探しながら、自分の頬を軽くヨンファの頬に擦り寄せた。
肌の温もりや表情から、感情の揺れ動きが緩やかに伝わってくる。
恋に臆病で不器用なこの人がどうしようもなく可愛く思え、自分が守ってあげなければと思わずにいられないのだ。


「何がそんなに不安なのか、洗いざらい全部俺にぶちまけてほしい。ただし、嘘や隠し事は一切なしだ」
「………っ」


途端に、黒目がちの大きな双眸が揺らぎ、儚げな表情のあまりの美しさに魅了されてしまう。
食い入るように見つめていると、ヨンファは戸惑ったように視線を巡らせたのち、眩いばかりの日差しが差し込んでくる窓の方へと目を向けた。
どこか遠いところを見ているような切ない眼差しで――。
やがて、何度か深く息を吸い込んだヨンファは、腹を括ったかのようにぽつぽつと語り始めた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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