CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Manito 20

2018年12月02日
Manito 4






まったく予想だにしていなかった展開に、ジョンシンの動悸が急に速まった気がした。
本当に自分が贈ったものかどうか、もっと近くで確かめたい。
そう思った時には、すでに身体が動いていた。


「――ヨンファ」


低く名を呼びながら歩を進めると、弾かれたように視線を上げたヨンファは、逃げ道を塞がれまいと痛ましいまでに警戒する。
藁にも縋るような思いが露骨に顔に出ていたのか、もしくは、何かを感じ取られてしまったのかもしれない。


「嫌だ……、来るな」


ジョンシンの焦がれてやまない相手は、ほんの少し間合いを詰めただけで苦渋が滲む声を振り絞り、同時に、細い眉根を険しく寄せて上目遣いに睨んできた。
一体、何に対してこれほどまでに怯えているのだろうか。
無視してさらに近づけば、途端にそばに寄らないでくれといった表情でゆっくりと首を横に振りながら数歩後ずさり、そのしなやかな背中が壁にぶつかる羽目になった。
もはや逃げ場がないことを悟ったヨンファは、毛を逆立てる猫さながらに気配を鋭く尖らせる。
驚くほど無防備に己を曝け出すのを怯むことなくじっと見返したまま、ジョンシンは彼の両肩を掴んだ。


「……っ、ちょっ――痛いって」


いつにない強引なジョンシンの行動に、驚きの声を出したヨンファが咎めるように見上げてくる。
どうしようもなく愛しいという感情ばかりが溢れてきて、ジョンシンは自分の中の自制心が音を立てて弾け飛ぶのを感じた。
振り払おうと暴れるため、仕方なく両手首をがっしりと捕えるなり、抗議するように非難がましい目で見られる。
だが、もはやなりふり構っていられなかった。


「放せよっ」


激しく反発されても逃すまいと指先に力を加え、しっかりと握り込んで離さなかった。
誰にも奪われたくないし、手放す気はさらさらない。絶対に取り戻す。
ジョンシンの腕から抜け出そうと大きく身を捩って抗われると、自分でもわけの分からない凶暴な衝動が込み上げてきて、これまで抱いたことのない強い渇望が胸中に湧いた。
拘束された両手をやみくもに動かすヨンファに業を煮やして、身体ごと背後の壁に押しつけて難なく抵抗を封じる。


「――な、んなんだよ……。どうして……こんな真似をするんだ」


ジョンシンの様子が普段と違うと思ったのか、ヨンファは幾分狼狽えたような顔つきで困惑の声を発した。
身体が小刻みに震えているのが掴んだままの手首から伝わってきたものの、力で捩じ伏せているとそのうちもがくのをやめて、観念したように静かになる。
だが、完全に警戒心を解いていないらしく、いまだに身を竦ませているのは分かった。
こんなふうに追い詰めるつもりはなかったのに――。
肩を上下させているヨンファの意に介さずに、ジョンシンは強い力で掴んだ左手を近くまで持ち上げる。


「………っ、聞いてんのか、ジョンシナ……っ」
「―――――」


尖った口調で言われても、一切耳に入ってこなかった。
一点を凝視していたジョンシンに、まだ状況が飲み込めていないヨンファは何なんだと怪訝そうに眉を顰める。
じっと目を凝らすまでもなかった。
薬指に嵌められた鈍い輝きを放っているものは、見紛うことなくジョンシンがヨンファのためにオーダーしたプラチナリングだったのだ。
どこまでも真っすぐで純真な心を持った彼が、自分と付き合っていながら他の相手に心を傾けるなど到底あり得ないとは思っていたが……。
目の前の現実に震えるほどの喜びを感じながら、やはりヨンファの気持ちは自分から離れていないのだと、決定的な証拠になった。


「痛いから、放――、っ」


身じろぎひとつしないのを不審に思ったらしく、ジョンシンの視線の先を追って自分の左手を見たヨンファの肩がびくんと跳ね、黒目がちの瞳は不自然なほど大きく見開かれた。
言葉が途切れたのは、何が起こったのか一瞬で理解したからだろう。
驚いたように瞠目した顔からさっと血の気が引いて、みるみるうちに強張っていくのが目に見えて分かった。


「つけて……くれてたんだ」
「ち、違う……っ。これは……」


ゆっくりと噛み締めるように口にしたジョンシンに、大きくかぶりを振りながら即刻否定する。
慌てて薬指からリングを引き抜こうとする手を上から強く握り込んで阻止すれば、ヨンファはきつく唇を噛み締めたまま決まり悪そうに視線を逸らした。


「外さなくていい。これはヨンファのものだ」
「そうじゃない……。ちょっと試しに――」
「やっぱり……俺の目に狂いはなかったな。想像以上に似合ってるよ」


まだ偽りを重ねようとするヨンファを遮り、俯いた顔を覗き込む。
途端に手を引っ込めようとしたが、ジョンシンの方が一瞬素早く綺麗な指を両手でぎゅっと包み込んだ。


「だから――、違うって言ってるだろ……っ」


まともにこちらを見ようともしないヨンファは必要以上に声を荒げ、首を強く横に振って反論する。
その顔は今まで目にしたことがないほど青褪めているにもかかわらず、頑ななまでに認めようとしない姿にたまらない気持ちになった。
ジョンシンはこれ以上追い詰めないようにと、意識的に語調を和らげる。


「ヨンファは嘘つきだ。俺に、嘘ばっかりついてる」
「………っ」
「今年に入ってすぐ、ヨンファの様子がおかしいことには気づいてたよ。立て続けにドタキャンされてマジで胸クソ悪かったし、心当たりがまったくないから余計に不可解でさ。嫌われようとしてわざとやってんのかって……悩んだりもした」
「……………」


ジョンシンの言葉に、ヨンファは毒気を抜かれたようにおとなしくなった。
咄嗟に取り繕うとしたが失敗し、居たたまれないとばかりに目を伏せて何とも言えない微妙な表情を浮かべるのをじっと見つめながら、咎めるような響きを含ませずに続ける。


「でも、それも……、俺のためだったんだな」
「……………」


確信を持って言い切ると、薄い唇をぐっと噛み締めて再び黙り込んでしまったヨンファは案の定、何も答えようとしなかった。
ただ、気まずそうに俯いて、尚も力なく首を左右に振る。
それらが肯定の証になっていることは一目瞭然で、ジョンシンへと向けられる想いの深さを初めて知ったような気がした。
これほどまでに自分を愛してくれる人は、きっと他にはいない。
そして、ひとりの人間をこんなにも愛おしいと思ったのも初めてだった。


「もういいんだよ。すべて分かっているから」


何か言わずにはいられなくて静かにそう告げると、固く目を閉ざしたヨンファは意固地になって首を振るだけだ。
その時、突如、張り詰めていたものがふっと崩れてしまったのだろうか。
急に身体から力が抜けたみたいにジョンシンの手から離れ、くずおれるようにその場にずるずると座り込む。
今にも壊れそうなほど弱っているヨンファの様子を、ジョンシンは呆然と立ち尽くしたまま高い位置から見下ろした。
長い睫毛をわずかに震わせながらゆっくりと瞼を開け、やがて、何もかも諦めたかのように深々と溜息をつく。
どれほど長くひとりで苦悩を抱えていたのかと、想像しただけで胸が痛くなった。


「……俺は」


不意に、言葉を発したのに気づき、ジョンシンは長身を屈めてヨンファの真正面に膝をつく。
真っすぐに見つめると、頑なに目を合わそうとしなかった彼は観念したようにのろのろと視線を上げた。
思わず吸い込まれそうになる大きな瞳に、自分が映り込んでいるのがはっきりと確認できる。


「お前と付き合う前の関係に戻ろうって決めたんだ。仕事で会うだけなら、気持ちをリセットできると思っていたのに。もうこれ以上、俺の心を掻き乱さないでくれ……」


壁に凭れながらぐったりと身を投げ出したヨンファは苦しげに声を絞り出し、再び膝の上に視線を落とした。
生気のない表情で悄然と項垂れ、いつも澄み切っている眼差しは不安定に揺らいでいる。
込み上げてくる何かをこらえるように、綺麗に整った貌をつらそうに歪めている姿がひどくジョンシンの胸を刺した。


「――ヨンファ」
「頼むから……」


懇願するような響きの声音はか細く、ジョンシンの視線から悲愴な面持ちを隠そうとしてか、立てた膝に肘を乗せて片手で目の上を覆う。
まるで幼い子どものように喜怒哀楽を剥き出しにした、彼の取り繕っていない姿を次々と見せられるうちに、自分でもどうしようもないくらいに愛しさが込み上げてきた。
互いに惹かれ合っているのに、別離を選択するなんてどうかしている。
当然ながら、ヨンファの訴えに耳を貸すつもりは毛頭なかった。
すっくと立ち上がったジョンシンは身体を反転させて、壁に背中を預けるような形で隣り合わせにどっかりと腰を下ろす。


「………っ」


てっきり帰るものと思っていたのか、ヨンファは焦った様子で顔を覆っていた手を外した。
憔悴した表情のまま目は驚愕に見開かれ、戸惑ったような視線がこちらに向けられる。
敢えて距離を詰めればヨンファの肩とぶつかり、途端に心地いい温かさと動揺が伝わってきたが、予想に反して拒まれなかった。
恐らく、ジョンシンの意図がつかめなくてどう対処していいものか、といったところだろう。
そのまま膝を抱え込んで、うろうろと視線を彷徨わせている。
フローリングに座り込んだジョンシンは膝をゆっくり伸ばし、ふうっとひとつ大きく息を吐いた。


「デザインリングはたくさん持っているだろうけど、二十代最後のバースデープレゼントは指輪にしようって、カムバの前に決めたんだ」


脈略なくいきなり話し出したジョンシンに、傍らの肩がぴくりと揺れる。


「ありきたりなものじゃ面白くないし、ヨンファに似合うものを一から制作してもらおうと思ってさ。女性のデザイナーと打ち合わせする時、身に着ける本人のイメージを元にデザインするってことになって、贈る相手はどんな人かって訊かれたよ」


ジョンシンは窓から差し込む日差しに目を眇めながら、当時のことを思い返していた。


「綺麗で頭がよくて優しいけど、怒るとめちゃくちゃ怖いって答えたら、どうもそこまで求められてたわけじゃなかったみたいで、すごい笑われてさ。そしたら、なんか顔に出てたらしくて……。その時、『お幸せそうですね』って言われたんだ。リップサービスなのに、妙に嬉しくなってさ。もちろん『はい』ってノロケたけど」


ひとりでに、そんな言葉が次から次へと口からこぼれ落ちる。
息を呑む気配に目をやると、壁に身を預けているヨンファが不意を突かれたような顔で無防備にこちらを窺っていた。


「驚かせたかったから、渡す時まで絶対に内緒にしておこうと決めて、ヨンファがぐっすり寝てる間にこっそり指のサイズを測ったりしてさ。俺の方がドキドキしたよ」


記憶を辿っているうちに場面のひとつひとつが鮮明に蘇ってきて、ヨンファの心に直接語りかけるようにジョンシンはぽつりぽつりと続ける。


「気づかれないように薬指に紐を巻きつけるのが難しかったけど、全然起きなかった。いつも忙しいから、ああ、疲れてるんだろうな……って」


言葉を重ねていくにつれ、リビングの空気が少しずつ変わってきている気がした。
盗み見るようにヨンファの横顔に視線を投げかけると、居たたまれなさそうに長い睫毛を伏せて虚空の一点を見つめている。
不思議なことに、いつも率先して動いてメンバーを引っ張ってくれるヨンファが、今は頼りなげに小さく見えた。


「リングの内側に埋め込まれているのは、ヨンファの誕生石なんだ。6月22日は何種類かあったけど、バンド名と同じ青色がいいと思って、『カイヤナイト』っていうパワーストーンにしてもらった。聞いた話によると、『努力に応じて未来を輝かせる』って意味があるらしいよ」
「……………」


尖った気配が徐々に薄れ、穏やかさを取り戻したかのようにヨンファの強張っていた肩から力が抜けるのを感じ、ジョンシンは静かな声で尋ねてみる。


「――気に入ってくれた?」


ヨンファはしばらく無言だった。
辛抱強く待っていると、どこか落ち着かないように瞬きを繰り返す。
物言いたげな様子を見せながらも、なかなか言葉にならないのかもしれない。
ややあって、言うべきか言わぬべきかといった逡巡するような間のあと、ようやくこくりと頷きが返ってきた。


「よかった……」


声に出さなくても、ヨンファの態度が軟化しているのが目に見えて分かり、深い安堵感を覚える。
加えて、プレゼントを嫌がっていないことに嬉しさが込み上げてきて、思わず笑みがこぼれていた。
ほんのわずか躊躇したものの、触れ合っていた方の腕をそろりと伸ばし、手のひらでくるむように反対側の肩をそっと抱き寄せる。
瞬間、腕の中の身体が驚いたように小さく跳ねたが、ヨンファはもうジョンシンの手を振りほどこうとはしなかった。
互いの体温が混じり合い、そこから暖かいものが広がってくる。


その時だった。
ごくごく自然に、愛しい人の頭がこつんとジョンシンの肩口に寄りかかってきた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(4)

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2018/12/02 (Sun) 21:50

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2018/12/03 (Mon) 07:34
haru

haru

ま****さん

こんばんは♡

拍手コメントを送っていただいたあとに、こちらにまで書き込んで下さってありがとうございます♪
大変お手数をおかけしましたm(__)m

切ない系の話が好きなので、どうしても苦悩しているヨンファを書きたくなってしまいます( ̄ω ̄;)
読んで下さる方からすると、確かに胸が痛くなる内容かもしれませんね。
ずっとすれ違っていたため重かったと思いますが、ようやく明るい兆しが見えてきました。
あとはジョンシンに任せるということで、私も頭を絞ってみます。
温かいお言葉をどうもありがとうございます♡♡

12月に入りましたね。
慌ただしい時期ですし、今週末からものすごく寒くなるみたいなので、ま****さんもくれぐれもご自愛下さい(*´ω`*)

2018/12/03 (Mon) 21:03
haru

haru

は*さん

こんばんは♡

例のティーザー、狂喜乱舞しまくりですね♪
うちの二人を思い出して下さるなんて恐縮しちゃいます。どうもありがとうございます。
ヨンファとミニョクのツーショットがなかったのは残念ですが、私にとっての二大CPにずーっとニヤニヤデレデレして、自分の顔が溶けるかと思いました。
妄想が木端微塵になるほどの破壊力!リアルに勝るものはないですね。
釜山ズ、めちゃくちゃ嬉しいんですけど、シンヨンに全部持っていかれました。
ヨンファからあの笑顔を引き出せるのは、やっぱりジョンシンだなぁと( ̄m ̄*)

「こくり」と「こつん」に反応して下さって嬉しいです♡♡
引き続き、絞り出してみますねv(。・ω・。)

2018/12/03 (Mon) 21:38