CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 74

2018年11月01日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 6






普段よりも幾分甘やかな響きで半ば確信犯的に頼んでみると、目の前の理知的な眼差しが何度か瞬いた。
年上としてのプライドや意地があるからか、あまり動じた姿を見せまいとするヨンファがひどく狼狽している。
不意打ちを食らったのに加え、ジョンヒョンの声が予想以上に効果てきめんだったのか。
目を大きく瞠って、困ったふうに見つめ返してくるヨンファの頬がうっすら染まり、ふっと視線を落とす。
伏せた長い睫毛が繊細に揺れるのを綺麗だと思いながら、焦れたように耳の中に舌先を忍び込ませると、途端にビクンと大きく肩を揺らし、はっとしたようにジョンヒョンから身を離した。


同性と付き合うのが初めてでやはり物慣れないせいか、ちょっとした反応がいちいち初々しい。
何度もベッドの中で愛し合っているのに、こういう仕草が相手を煽る結果になるということを理解しているのだろうか。
見事なまでに無意識にやってしまうところが、いかにもヨンファらしい。


「返事は?」
「急に、そんなことを言われても……」


真面目な顔で返答を迫るジョンヒョンに気圧されたようで、追い詰められたヨンファは困惑気味に口ごもる。
歯切れが悪い理由は、何となく想像がついた。
至極常識的な恋人にとっては、気恥ずかしくて抵抗があるのだろう。
ただ、受け入れられないことは『No』とはっきり口にするタイプなので、判断までに時間がかかるのは迷っている証拠だ。
そんな確信にも似た思いで、ジョンヒョンはまるで追い打ちをかけるようにもうひと押しした。


「この程度の我儘は許してくれ。ジョンシナには、写真を撮らせてやったじゃないか。……よりによって、ツーショットで」


意識的に語気を強めて言うと、ヨンファは不意を衝かれた面持ちでやや怯んだように息を呑む。
特に、わざと強調した最後の言葉に口惜しさがたっぷりと出てしまったが、今さら構うものか。


不敵な笑みを浮かべる長身の弟分の小賢しいやり口は、あまりにもあからさますぎた。
『写真』という単語を耳にした瞬間、ひどく嫌な予感がしていたら、案の定だ。
酒の席とはいえ、ジョン組長の右腕的存在である最高顧問のハンと若頭のグンソクの前で、よくあんな大胆な真似ができたなと心底神経を疑う。
時に、ちょっと考えられないような身勝手な振る舞いを平然とやってのける。
厚顔無恥のニヤケ野郎は、そういう男だ。
一歩間違えれば大騒ぎになっていたところだが、ジョンシンの飄々とした性格が幸いして外野が口々に面白がっていたのと、横からヨンファ自らが助け舟を出したことによって難を逃れた。
まったくもって、運のいい奴としか言いようがない。


自分の欲求を満たすためだけに、あの場で瞬時に計算されたものだとしたら――。
実に巧妙で、意外とジョンヒョンに負けず劣らずの策士としての才覚があるのかもしれない。
といっても、本当に頭が切れるのか怪しい部分もある。
突発的に野性の勘が働いただけかもしれないし、たまたま偶然が重なっただけか、判断しかねるのも事実だ。
要領がいいというか何というか、さっさと自分の思い通りの展開にもっていったジョンシンはさぞかし笑いが止まらなかっただろう。
ジョンヒョンは面白くない気分で、あの野郎……っ、と忌々しげに内心で呟いた。


そう言えば、ヨンファに付き従って店を出る際も露骨な顰めっ面でガンを飛ばしてきたのだ。
眉間に深く縦皴を刻み、今にも突っかかってきそうな勢いに苛立ちをぐっとこらえたジョンヒョンは、意図的に鉄面皮で撥ね返してやった。
牽制したところで通用しないだろうが、不機嫌モード全開のジョンシンに一矢報いたようにスカッとした。


ジョンヒョンと恋人関係であることを知りながらも、あの男のヨンファに対する執心ぶりは尋常じゃない。
このまますごすごと引き下がるとは到底考えられないので、どうしても心中穏やかでいられないのだ。
締まりのない顔をもっとデレデレさせながら、ヨンファの写真を眺めている図を想像しただけで胸糞が悪くなる。


ジョンヒョンとてヨンファとふたりで撮りたかったのが本音だが、公衆の面前で己の欲求に流されるわけにはいかなかった。
信頼を失いかねないし、恥も外聞もなくいけしゃあしゃあとのたまうような男とは同じ土俵に立ちたくないからだ。
それに、ヨンファに薄っぺらい男だと呆れられたくなかったのもある。
得意のポーカーフェイスを保ったまま再びふつふつと湧いてくる不快感を持て余していると、ヨンファはばつの悪そうな顔で弁解した。


「あれは仕方がない。ホンギたちにも囃し立てられたし、断われるような状況じゃなかった」
「そうかもしれんが、少なくとも、目の前で見せられて気分のいいものじゃなかったな」


やや声のトーンが落ち気味なのは承知の上で、即座に切り返す。


「それは……、俺も悪かったと思っているけど……」
「だったら、まだ金髪のままでいてくれ」


別の角度から牙城を切り崩す可能性も考えていたものの、この雰囲気なら何とかなりそうだと同じ台詞を重ねた。


「ヒョニはこの髪を見ても、違和感がないのか?派手なだけで、ひどいミスマッチだろ」


そう言いながら、ヨンファは目に眩しいくらいの鮮やかな金髪をさも嫌そうにくしゃっと掻き上げる。
凶悪なほど似合っているというのに、本人はまったく自覚がないようだ。
ふたりの考えが大きく食い違っているままでは説得しづらいと判断したジョンヒョンは、思いつく限りの言葉で形容してみた。


「何を言っている。自分じゃピンとこないかもしれんが、ヨンファの白い肌によく映えていて、とても綺麗だ。オレンジ色に照らされたシーツの上だと、もっと美しいだろうな。無論、いつもの艶やかな黒髪もいいが……」


柄にもなく、こんなことをさらりと言ってしまう自分も案外、酒に酔っているのかもしれない。
臆面もなく告げ、これで決まりだな……、とジョンヒョンはスーツのジャケットを脱いで、傍らにあるソファの背凭れにかけた。
さて、ヨンファはどう出てくるだろうか。
期待に胸を膨らませながら腕組みをして泰然と構えていると、細い眉をやや吊り上げて思いっきり胡乱そうな目を向けられる。


「――よくそんな歯の浮くような台詞を、恥ずかしげもなく次々と吐けるな。昔は、あんなに口下手だったのに」
「……………」


しまった――と思った時にはすでに遅く、綺麗な顔に似合わない辛辣な言葉に一刀両断されて、見事に玉砕してしまった。
功を奏すどころか逆に不機嫌になり、静かだが声まで尖っている有様だ。
こんな安直な手が、ヨンファに通用するはずがなかった。
こうなると、実に浅はかだったと言わざるを得ない。
表情にこそ出さなかったが、ジョンヒョンはただちに頭を切り替えて、どうしたものかと思案を巡らし始めた。


「随分、慣れた口ぶりのようだが、いろんなところで言って回っているんじゃないのか?」


真っすぐな瞳が咎めるようにこちらを見据え、ヨンファにしては珍しくちくりと皮肉を込めてきた。
再会してからというもの、清廉潔白であるにもかかわらず懐疑的な声で聞き捨てならないことを言われて、ジョンヒョンはわずかに瞠目する。


「それは、どういう意味だ。俺は思ったことを口にしただけだぞ。何か勘違いしていないか?」


真面目な顔で短く答えると、柳眉を顰めたヨンファに上目遣いで軽く睨まれた。
きつめの眼差しを向けられるだけでどうしようもなく胸が疼き、繊細な造りの美貌が不機嫌に歪むさまは一段とそそられる。


「いいや、絶対に言われ慣れてる。さっきの店でも、若いホストに取り囲まれていたし……」


憮然とした表情でどこか気まずそうに視線を外し、苦々しく呟いたヨンファを見つめながら、ジョンヒョンは落ちてくる前髪を緩慢な動作で掻き上げた。
店内に入ってから間もない、まだVIPルームに案内される前のことだろうか。
顔は記憶にあったものの、名前すら分からないホストたちに媚びたような態度で取り囲まれてしまい、困惑を通り越してかなり辟易していたというのに。
自分の恋人以外に興味はないし、言い寄ってこられても店の従業員としか認識していなかった。
まったく気づかなかったが、その場面をどうやら当の本人に見られていたらしい。
そもそもその時点で、ヨンファがあの場にいるとは露知らず、だったが――。


「俺が、か?心外だな。呼び止められたから話をしただけで、こちらに非はない」
「……でも、満更でもなさそうだった」


端整な眉を寄せたジョンヒョンがきっぱりとした口調で淀みなく言い切ると、ヨンファは目を合わさずに反論した。


「お前がモテるのは今に始まったことじゃないけど、……ものすごく気分が悪かった」


視線の先で、ぼそぼそと続けて呟いたヨンファが少し拗ねたように伏し目がちになる。
あまりの意外さに、虚を衝かれたジョンヒョンは眦が吊り上った双眸を見開いていた。
アルコールの力もあるのか、通常ではあり得ないことが起こり、心がダイレクトに揺さぶられる。
どんな時も理性的で倫理観が強く、滅多に吐かない本音をヨンファがこぼすとはさすがに予想外で、まさに嬉しい誤算だった。
妬いてくれていることに驚きを隠せずにいると、自分の発した言葉の意味に気づいたらしく、目許を赤く染めている。
思いがけずヨンファの可愛い一面が見られて、じわりと嬉しさが込み上げてくるのと同時に自然と頬が緩んだ。


極道の世界に身を置くようになり、夜の街に完全に溶け込んだジョンヒョンが様々な店に出入りするたびに、性別に関係なく秋波を送られるのは別段珍しくもない。
青龍組の幹部だと周知されているため尚さらだろうが、気を引こうと積極的にモーションをかけられても煩わしいだけだ。
かつては非常にドライで、来る者拒まず去る者追わず的なスタンスを貫き、頻繁に変わる相手に執着したことは一度もなかった。
一番欲しいものを手に入れられない、という絶望感からの反動だったに違いない。
もう二度と他の誰かに心を傾けることはないと、恋愛なんてものをする気は端から皆無だった。
ヨンファと再び相まみえるまでは、まるで石化したみたいに心が虚ろな状態に陥っていたのだ。


「ヨンファ――」


愛しい名を呼ぶなり、恋人は静かにすっと視線を向けてくる。
見つめ合った状態なのを確かめてから、ジョンヒョンはゆっくりと口を開いた。


「それは誤解だ。他の連中はまったく眼中にない。俺がヨンファしか見ていないのは、分かっているだろう。昔も、今も」
「………っ」


この際とばかりに揺るぎない声音で気持ちを告げると、ヨンファは毒気を抜かれたような表情を見せる。
今にもこぼれ落ちそうな大きな瞳を数度瞬かせ、なぜか急に黙り込んでしまった。
ジョンヒョンにどれほど愛されているか承知していても、いまだに遠慮があるのか。
いつも変わらず澄み切った双眸はゆらりと揺れ、何か言葉を探しているような間があった。
いくらでも受け止めるから、もっと甘えて、もっと寄りかかってきたらいいのに……。
まるで感情を抑えるかのように赤みを帯びた下唇を軽く噛んでいる様子に、どうしようもなく胸を衝かれる。


たまらなくなって片手で細い腰を抱き寄せると、おとなしくなったヨンファは素直に身を預けてきた。
ジョンヒョンの肩に顎を乗せたまま、すらりとした両腕が縋るように背中に回ってきて、ぎゅっと力が籠められる。
誰よりも愛しいヨンファ。
言葉はなくても、行動のひとつひとつが彼の想いを雄弁に語ってくれる。
プライドが高くて強情なところもすべてひっくるめて、とにかく愛おしくて仕方がないのだ。


「――で、シャワーを浴びるのか?」
「え……」
「すまない。離れ難いんだが、そろそろこっちの方が限界でな」


タイミングが悪いと思ったものの、完全に形を変えたものが先ほどから布を押し上げるように自己主張を始めていて、もはやどうしようもなかった。
弾かれたように顔を上げたヨンファと、吐息が触れ合う距離で視線が絡み合う。


「早くヨンファの中に入りたい」


少し浮かれた思いもあって、口許に笑みを刻みながら声を低めて端的に告げると、意味を悟ったヨンファの瞳が狼狽えたように瞬いた。
ほんのわずかジョンヒョンから身を離し、白い頬を上気させたまま微妙に視線を彷徨わせたのち、上目遣いで見つめ返してくる。


「……身体だけ洗ってくるから、そんなには待たせない」


その言葉にすっかり気をよくしたジョンヒョンは急かすように、軽くノットを緩めていたネクタイをさっと抜き取った。
一刻も早く、可愛い恋人とベッドの中で甘い時間を共有したいと気持ちが逸る。


「あんまり遅いと、バスルームに乗り込むからな」
「!」


ワイシャツのボタンを外して首回りを晒したジョンヒョンがふっと口許を綻ばせて言い募れば、次の瞬間、ヨンファは顔を赤らめてそそくさとバスルームへと向かう。
こうした些細な反応にすら、片っ端から煽られてしまうのだ。
ジョンヒョンはたまらなく幸せな気分に浸りながら、その愛しい後ろ姿を見送った。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2018/11/02 (Fri) 01:25
haru

haru

t*******さん

こんにちは♡

幸せって言ってもらって、とても嬉しいです。ありがとう(*´ω`*)
書くのが楽しいので、思いついたものをお届けしていきますね♪

2018/11/02 (Fri) 12:38

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2018/11/07 (Wed) 15:23
haru

haru

は*さん

こんばんは♡

は*さん、いつも読んで下さってありがとうございます♪
ようやく二人きりになったので、いろんな表情のヨンとバニ、あと、今まで書いたことのないシーンを織り交ぜてみたいと思っています。
可愛いと呟いてもらって嬉しいです♡♡

マニトの続きに取りかかっていたんですが、急に気分が変わって極道の方を書き始めました。
両方とも大好きなCPだけに、どちらにしようかすごく迷います。
今、妄想するのがとても楽しいので、本能の赴くまま形にしていきますね(*´ω`*)

2018/11/07 (Wed) 21:34

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2018/11/08 (Thu) 00:17
haru

haru

ふ*******さん

こんばんは♡

読んで下さってありがとうございます♪
あの美声であれだけ言われたら普通は腰砕けになるはずなのに、生真面目ヨンには通じなかったという…。
玉砕バニとヤキモチヨンのやり取り、ふ*******さんににやけてもらって良かったです(〃ω〃)
私は、画像のバニの瞳と無骨な手だけでいろんなことを想像して鼻血ブーになりそう(笑)
この話はまだまだ続きますが、夫婦のように強い絆で結ばれていく二人を描いていきたいと思っています。

ヨンファのDVDをご覧になったんですね。
ごめんなさい。私、買ってない( ̄ω ̄;)
ライブ直後や、今回の発売に際してTwitterでちょこっと観させてもらいましたが、皆さんが号泣されるお気持ちはよく分かります。
私もあの時はとても話を書ける状態ではないくらい落ちるところまで落ちまして、なかなか浮上できませんでした。
ふ*******さんの感想は、私が常々ヨンファに対して抱いている想いとドンピシャです。
あと、とても誇り高くて、孤高の人だなとも。
うちのヨンと重なったと言って下さり、こんなに嬉しいことはありません。
不謹慎だなんてとんでもない!本当に恐れ多いです。どうもありがとうございます。
ここを訪れて下さる方々のお陰でまた妄想できるようになり、感謝の気持ちでいっぱいです。
少しでも楽しんでもらえることが私の喜びでもあるので、無い知恵を絞りまくって続きを書いていきますね(*´ω`*)

2018/11/08 (Thu) 22:07