CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Manito 12

2018年09月01日
Manito 0






ジョンシンと初めて顔を合わせた日のことは、今でも鮮明に覚えている。
事務所の関係者にスカウトされ、オーディションに合格したのがきっかけで、その当時、ヨンファはすでに練習生となっていた。
カリキュラムに沿ったレッスンを受け、時には厳しいトレーニングを課せられる日々だったが、少しずつ練習生生活に慣れてきた頃、出会いは何の前触れもなくやってきた。


いつものように同郷のジョンヒョンと連れ立ってレッスンスタジオに足を踏み入れるなり、あれ……、とヨンファは目を瞠った。
まだ開始時間前で、笑い声や賑やかな話し声が溢れる広々とした練習室の隅に、見覚えのない面子が数人ほど固まっている。
新たな練習生だろうか……、と何とはなしに視線をやれば、ひと際背が高くて手足の長いひょろっとした高校生くらいの若い男に目が留まった。
輪の中で頭ひとつ分出ているのに加えて、遠目からでも抜きん出た容姿だということだけは分かる。
ヨンファたちも含め、この場にいる全員が練習着と称したスポーティーな格好をしているが、腰の位置が高くてモデル体型だからか、どこか洗練されて見えるのだ。


やけに意志の強そうな凛々しい横顔に見入っていると、どうやら視線を感じたらしい。
不意にちらりとこちらに顔が向いた瞬間、思いっきり目が合ってしまった。
真っすぐに注がれる漆黒の眼差しに、なぜかドキリとしたのを覚えている。
さらさらとした長めの髪と綺麗な二重の瞳が印象的で、甘く整った顔立ちはいかにも女の子受けしそうだと思った。


「君たち、新しく入った練習生?」


考えるより先に、身体が動いていた。
衝動的にその集団に近づいて柔らかな声音で尋ねると、他の中高生らしき面々も揃えたように振り返る。
ヨンファから声をかけたのが余程意外だったのか、彼らは慌てたようにパッと背筋を伸ばして姿勢を正すなり、こちらに向き直った。


「は、はいっ。今日からです」
「あの、よろしくお願いします!」


緊張気味の顔で会釈され、ヨンファは自分も同じ状況だった時のことを思い返しながら、懐かしいような何とも微笑ましい気分になった。


「あー、いいよ。そんなにかしこまらなくても。俺たちもちょっと前に練習生になったばかりだから、立場は同じだ」


口許に笑みを浮かべたヨンファが隣のジョンヒョンとともに名乗ると、カチコチになっていた新顔の練習生たちは少し表情を和らげて、ひとりずつ簡単な自己紹介を始めた。
そして、最後に口を開いたのが、あの男だったのだ。
おもむろに目の前まで歩み寄ってきたかと思えば、ヨンファの顔をまじまじと見つめたあと、長身をわずかに屈めるようにペコリと頭を下げてきた。


「はじめまして。イ・ジョンシンです」


見た目に反して低めの落ち着いた声音の男は180センチ弱のヨンファよりもまだ頭半分くらい上背があり、見上げなければならないほどだ。
驚くほど端正な貌にも圧倒されつつ、やや上目遣いに挨拶をして右手を差し出すと、ふわりと柔らかく笑ってから大きな手でしっかりと握り返された。
少し話をしただけで、とても礼儀正しい上に、明るく親しみやすい性格の持ち主だということが分かった。


ヨンファよりふたつ年下だが、何かしら通じ合うものがあったのだろうか。
その日から、レッスンで顔を合わせるたびに言葉を交わすようになった。
とにかく屈託なくよく笑う男で、春の陽だまりみたいな笑顔を見ていると、こちらまでつられたように笑みがこぼれてしまうのだ。
ジョンシンのそばはとても居心地がよく、何か温かみのあるものが自分の方へと流れ込んでくるような、そんな不思議な感覚に囚われたのを覚えている。


いろんな話をしていくうちに、偶然にも同じ病院で生まれたという驚きの事実が判明したり、共通の好みを発見すると、途端に意気投合して盛り上がった。
厳しい練習生生活の中での限られたひと時がとても楽しくて、ユーモアがありながらも実に真面目で細やかな気遣いをするジョンシンに、ヨンファはますます好感を持つようになった。


最初はどこか遠慮がちで敬語を使っていたジョンシンだったが、ヨンファが上下関係にあまりこだわらないのが分かってから、言葉遣いや態度が少しずつフランクになるのも自然な流れだったように思う。
慕われるのが嬉しくて、兄がひとりいるだけのヨンファがジョンシンを弟のように可愛がるようになったことで、ふたりの間の心理的な距離は急速に縮まっていったのかもしれない。
ただ、思いがけない出会いがヨンファの先々の人生を大きく変えることになるとは、この時は知る由もなかった。


その後、ヨンファがリーダーを務めるバンドグループにジョンシンが途中加入し、韓国でミニアルバムを引っ提げて華々しくデビューを飾ったのちに、日本でも念願のメジャーデビューを果たした。
形は違えど、あの頃からメンバー四人の音楽に対する情熱は尽きることなく、飽くなき探求心はいまだに持ち続けている。
国内外のライブでステージ経験を積みながら、時には挫折を味わった。
様々な試練を乗り越え、精力的に活動していくにつれ仲間意識が強まり、一体感も生まれた。
夢に向かって突き進むという共通の目的やメンバー間に家族同然の強い結びつきがあるからこそ、解散や脱退の危機に直面することなくここまでやってこられたとも言えよう。


これほどまでに四人の結束が固いのは、共同生活を送っていたことが起因している。
ひとつ屋根の下で暮らすとなると、初めの頃はメンバー同士の意見の相違で諍いに発展したケースもあるが、お互いに分かり合えるようになってからは衝突しなくなった。
月日が経つにつれてメンバー間の友情も深まり、中でも、ジョンシンとは飛行機での移動時や宿泊先のホテルなど、行動をともにすることが多かった。
どこまでも自然体で、ハッピーウイルスを振り撒くムードメーカーは、実に献身的に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるため、一緒にいるととても楽なのだ。
この屈託のなさにヨンファがどれだけ癒されているか、本人は知らないだろう。


当初、どうしてそういう気持ちになるのか、自分でもよく分からなかった。
これまで抱いたことのない不思議な感覚がヨンファの中で少しずつ形を成し、気づいた時には不可解な感情が心の中で渦巻いていた。
きっかけは、事務所の合奏室での出来事だったと記憶している。


長い練習生時代から苦楽をともにしてきた間柄だから、メンバー同士が近距離で話をし、互いに触れ合ったりするようなスキンシップは日常茶飯事だ。
特に、ミニョクとジョンシンは同い年だけあって、かなり親しい。
肩を叩き合ったり、背後から抱きついたりなど、練習の合間や休憩時にふざけてじゃれ合っているのは別段珍しくもない、すっかり見慣れた光景だった。


――相変わらず仲がいいな……。


この日も、楽しそうにジョークを飛ばし合っていたふたりだが、ひょんなことからミニョクがムッと表情を一変させた。
何か気に障るような失言をしたのか、わざとオーバーアクション気味に頬を膨らませるミニョクを前に、ジョンシンが珍しく慌てふためいている。
憮然とした顔をひょいと覗き込むように身を屈めて、何とか機嫌を取ろうと無遠慮な手つきで頭を撫でる様子にヨンファは驚愕した。
「ごめんってば~」と甘えたように謝りながら、子供みたいに無邪気な顔で笑っているのを目の当たりにした途端、なぜか胸にちくりと棘が刺さったような痛みを感じたのだ。
心底気を許しているミニョクの前だけで、ヨンファには向けられたことのない表情だった。


仕方がないな……と言わんばかりに苦笑するミニョクを、ジョンシンは目を細めて優しげな眼差しで見つめている。
その親密そうな雰囲気の中に、ふたりにしか分からないあうんの呼吸のようなものが垣間見えてしまい、ふっと疎外感を覚えた。
今までそんなふうに思ったことがなかったので、ひどく困惑した。
ふたりの仲睦まじい姿を見れば見るほど胸が引き絞られるように痛み、息苦しさまで感じる始末だ。
複雑な気分で視線を外したヨンファは、「ちょっと出てくる」と声をかけてくるりと背を向けるなり、足早に合奏室をあとにした。


自分でも意識しないまま、ヨンファの中で不明瞭な気持ちが徐々に自己主張し始め、目に見える形となるのは時間の問題だったに違いない。
それからも、ミニョクとジョンシンがお互いを構い合ったりする場面に居合わせるたび、どうしようもなく胸が苦しくなった。
なぜこんなに気になるのか、この感覚は一体何だろうと混乱するばかりで、なかなか答えが出ないまま日常が目まぐるしく過ぎていく。
そして、ある日、まるで大切なものを奪われたような痛みに似ているな……、と思い至ったのだ。


そう認識してからは、なし崩し的に変化が表れ出した。
ふとした拍子にジョンシンと視線が合えば、不自然に心臓が大きく跳ねる。
他意はなく、何の気なしに肩に触れられただけで過度に意識してしまい、妙に落ち着かない気分になる。
背後で誰かと会話する低音の声が聞こえた途端、その気配を耳が勝手に追いかける。
ジョンシンにとって何の意味も持たないことにいちいち反応してしまう自分に呆れていると、説明のつかなかった奇妙な感情の正体はすとんとヨンファの胸に落ちてきた。


ようやく辿り着いた結論にドクンと鼓動が脈打ち始め、激しく動揺すると同時に絶望感に打ちひしがれた。
男同士なのに、こんな気持ちになるのは間違っている。
自覚したばかりの想いを抹殺しようとしたが、すぐには消えるはずもなく、誰にも知られないように細心の注意を払うしか方法はなかった。


ヨンファは自分でも気づかないうちに、いつの間にかジョンシンに惹かれていたのだ
それは、もはや「恋」といってもいいくらいのレベルで――。


初めてのことにひどく戸惑ったものの、異性に興味がなくなったわけではなかった。
見目麗しい女の子を前にするとつい目を奪われるし、空港などの移動時やイベント等で華やかなファンの子たちに囲まれれば、純粋に嬉しいと思ってしまう。
それを実際に確かめたくて、仕事で知り合った女性と衝動的に付き合ってみたが、結局、長続きせずに自然消滅したのだ。


そして、ジョンシンとの関係が大きく変わったのは、共同生活を解消してひとり暮らしを始めた年の初夏――今からちょうど三年前のあの日だった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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