CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Manito 11

2018年08月22日
Manito 6






7月1日のシンガポール公演を皮切りに、アジアツアーが幕を開けた。
ライブの開催日に合わせてアジア各国へ赴き、終わればまたUターンする。
メンバーそれぞれが仕事に追われる中、ヨンファ自身も単独でのテレビ番組の収録や近々リリースされるソロアルバムに付随することなど、随分先までスケジュールがぎっしりと詰まっていた。
来年の入隊を見越して、事務所の上層部と十分に検討した結果の仕事量だが、やらなければならないことが山積みで、過去に例を見ないほど多忙を極めている。
ひとつこなせば、すぐ次の仕事場へと向かう。
毎日その繰り返しで、瞬時に頭を切り替えて真摯に取り組んでいるものの、さすがに疲労の色は隠せなかった。










寝なければいけないのに、眠れない。
以前から兆候があったとはいえ、それがここ最近は特にひどくて、ベッドに入っても睡魔が訪れてくれないのだ。
しんと静まり返った月明かりが差し込むだけの薄青い闇の中、上掛けが乱れるのも構わずにがばっとベッドの上で半身を起こした途端、ヨンファはくらっと軽い目眩に襲われる。
まただ……、と思った。
頭痛が慢性化しているようでこめかみの辺りがずきずきと痛むのだが、日々の疲労回復が不十分であることと、寝不足が起因しているのは間違いない。


――疲れが取れない……。


緩慢な動作でヘッドボードに凭れかかったヨンファは、ふうっと大きく溜息をついた。
梅雨特有の蒸し暑さもプラスされているからだろうが、身体は極限まで疲弊しきっているのに、神経が高ぶって寝つけない。
しばらくそのままじっとしていると、不意にあの男の端整な顔が脳裏をよぎった。
同時に、喪失感が襲ってきて、寒くもないのに全身がぶるぶると小刻みに震えだす。
原因は、自分でもよく分かっていた。
ジョンシンと別れてから二週間になるのに、思っていた以上にダメージが大きいのだ。


気持ちを切り替えてひたすら仕事に邁進すれば、表向きは何事もなかったかのように日常は淡々と過ぎていく。
かねてより危惧していた、メンバーとしてのジョンシンとの関係もこれまで通り良好なままなので、これといった心配はなかった。
だが、こんなふうに自宅でひとりきりになると、途端に脆くなってしまう。
その影響が表れ始めたのか、今日、作業室でジョンヒョンに余計な心配をかけたばかりだった。
スタッフとの打ち合わせがあるため、そろそろミーティングルームに向かわなければいけないと、パソコン作業を一時中断した時だ。


『ヒョン、五分前』


軽いノックの音とともに開いたドアから、ジョンヒョンがタイミングよく顔を覗かせる。
いつでも動ける体勢でいたヨンファはすぐさま『おう』と返事をしたが、椅子から勢いよく立ち上がった拍子に目眩を感じてふらついてしまったのだ。
慌てて駆け寄ってきたジョンヒョンに支えられながら再び座らされ、脱力したまま背凭れに身を預けたものの、頭がぐらぐらするような症状はすぐには治まらなかった。


『このところやつれてるように見えるけど、ちゃんと食べてる?』


こめかみを手で押さえていると、頭上から身を案じるような声がかかった。


『……それは、お前だってそうだろ』
『俺は、ドラマの役作りで意図的に体重を落としてるだけだって。仕事がハードなのは今に始まったことじゃないけど、ヒョンが倒れたら、俺たちも困る』
『分かってる。心配しなくても、ただの立ち眩みだ』


そう言ってその場を切り抜けたが、ヨンファが本調子でないことは近しい者には分かるようだ。
神妙な面持ちでありながらもそれ以上追及しようとはせず、『いつでも頼ってよ』とさりげなく気遣ってくれるのが実にジョンヒョンらしいなと思った。
正直、疲れが溜まって身体は重いし、食欲も減退している。
しかも、誰もいないガランとした部屋にひとりでいることが耐えられないため、極力作業室に籠って、自宅にはほぼ寝に帰るだけになっているのだ。
手を伸ばせばすぐに触れられる関係でいた頃はそれが当たり前すぎて分からなかったが、五年という月日を経て、あの男の存在が自分の中で大部分を占めていたことに気づいて愕然とした。


『――そこまで言うなら、分かったよ』


ひどく愛想を尽かしたような冷ややかな表情とともに、別れ際に言われた台詞がなぜか頭の中でリフレインして、知らず知らずのうちにジョンシンのことばかり考えている。
せっかくの好意を踏みにじる形で、こちらから一方的に決別を告げておいて、だ。
いまだに捨てられない感情を何とか打ち消そうと、現実逃避するかのようにヨンファは仕事に没頭した。
そうでもしないと、どうしようもない寂しさに見舞われ、ただでさえ弱っている心が壊れてしまいそうになる。
大きさと寝心地が気に入って取り寄せたキングサイズのベッドも、ひとりで寝るにはあまりにも広々としすぎて、寂寥感に拍車をかけるだけだ。
ヨンファは一向に震えの止まらない身体を宥めるように、両腕できつく抱き込んだ。


自分自身で無理矢理に幕を引いたのに感傷的な思考はなかなか消え去ってくれず、この決断は間違っていたのか、早まってしまったのではないかと後悔の念が押し寄せてくる。
一体どうしたいのか、何を望んでいるのかと、懲りもせず自問自答を繰り返し、一歩も前に進めない状況にヨンファは途方に暮れてしまっていた。
ジョンシンのためと思いながら、単に自分が臆病なだけだったのだ。
失ったものの大きさを今頃になって思い知るなんて、ただの愚か者としか言いようがなかった。


青い薄闇の寝室で、ヨンファは心を突き動かされるままに手を伸ばして枕の下を探る。
そこには、結局返しそびれていたビロード張りの小箱があった。
壊れものを扱うような手つきで蓋を開け、取り出したプラチナリングを左手の薬指に嵌めてみる。
途端に、胸の奥に居座っている鉛のような重みがほんのわずか軽くなったような気がして、ヨンファはほうっと息をついた。
たとえようのない安堵感に包まれながら、渇ききった心が不思議と癒されていく。
まるで愛おしむように、指先で何度もウェーブ状のリングに触れてから、そっと軽くキスをした。


別れを切り出す直前に手渡されたものだが、ジョンシンからこの件について何も言われないのをいいことに、ずっと手許に置いている。
少なくともあの瞬間までは、ヨンファのことを想ってくれていたのだ。
それだけは紛れもない事実なのだと、過去の出来事でも嬉しく感じる。
今さら返却を求めてくるような度量の狭い男ではないので、敢えてこちらから返すような無粋な真似はすべきではないと勝手に判断した。
それに、正直なところ、ヨンファはこのリングが気に入ってしまい、できればこのまま自分のものとして持っていたかったのだ。
当然、身に着けたまま外出できないため在宅している時だけに限られるが、この程度の我儘ならジョンシンも許してくれるだろうか。


その他にも、ヨンファの自宅にはあの男が持ち込んでいた私物がいまだに残されていた。
歯ブラシなどの消耗品はこちらで処分すればいいとして、ルームウェアといった着替えが何枚かクローゼットの中に置かれた状態だ。
にもかかわらず、かつて部屋の随所に漂っていた持ち主の気配までは感じ取ることができなかった。
さすがに勝手に片づけるわけにはいかないので、これついては一度本人と話をするべきだと思っている。


「……ジャカルタのあとだな」


ヘッドボードに寄りかかったままぽつりと呟いたヨンファは、疲れきった身体を休めようと、青白い光に包まれたベッドの上にゆっくりと横たわった。
数日後に開催されるライブが終わったら、次のアジアツアーは一ヶ月後だ。
相変わらずスケジュールは埋まっているものの、少しくらいは時間が取れるだろう。


さらりとした肌触りのシーツに頬をつければ、いつになく五感が研ぎ澄まされているようで、ヨンファは半ば無意識に過去の痕跡を探していた。
しかし、この場で数え切れないほどジョンシンと抱き合ったというのに、何も見つけることができない。
ホッと安らげる心地よい温もりも、ふわりと鼻先をくすぐる甘い残り香も――跡形もなく消えてしまった。
あんなふうに誰かを好きになることは、もう二度とないかもしれない。
そう思った瞬間、胸の奥を深く抉られたような鋭い痛みが走った。


「………っ」


咄嗟に身を丸めてやり過ごそうとしたが、一瞬遅く、堰を切ったように熱いものが込み上げてくる。
同時に、視界が大きく滲んだのが分かり、ヨンファは震えだした唇を強く噛み締めながら、漏れそうになる嗚咽を押し殺した。
これでよかったのだと無理矢理に結論づけて、自分の想いを完全に断ち切るように……。


長い目で見れば、この決断は正しかったと思える日がいつか必ず来る。
それは根拠のない確信めいたものだったが、そうやって自分を納得させないと、今にもくずおれそうなのだ。


バンド活動を続けていく限り、ジョンシンとはどんな形でもいいから、この先も繋がっていたい。お互いを支え合う仲間であり続けたい。
だったら、これまでの関係をリセットして、また最初からやり直せばいい。
今すぐには無理でも、来年ヨンファが兵役に就くことは決定事項なので、距離を置くにはちょうどいいタイミングだといえた。
音楽さえあれば、きっと大丈夫だ――。
かつては、ほとんど兄弟のような身近な間柄で、とても親しかった自分たちなら……。


ふと、遠い昔の思い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
ジョンシンと出会ったばかりの当時のことを――、十一年前の情景を手繰り寄せるようにひどく懐かしい記憶を追いかけながら、ヨンファは枕に頬を埋めて静かに目を閉じた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2018/08/22 (Wed) 18:31
haru

haru

ま****さん

こんばんは♡

ヨンファからの思いがけないお手紙で、今日は世界中のヨンペンさんが歓喜に沸いていますね。
入隊しても、心はいつもファンに寄り添ってくれているのだなと嬉しくなりました。
それとは真逆でうちのヨンはこんな感じですが、あとは上昇していくだけなので、何とか形にしてみますね。

二つ目の台風が思いっきりこちらに向かってきてますが、ま****さんの方は大丈夫そうで良かったです。
涼しくなったと喜んでいたら今日は猛暑がぶり返すし、気候に振り回されますね(>ω<)

2018/08/22 (Wed) 21:53

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2018/08/26 (Sun) 22:06
haru

haru

は*さん

こんにちは♡

もうじき8月が終わるというのに、残暑厳しいですね。
私はいつも元気な方なんですが、今朝は身体がものすごく怠くてなかなか起きられなかったので、ビタミン剤を飲んで出てきました。
復活した上に昼間っからCNに萌え禿げて、もうウハウハです。
は*さんはお変わりないですか?
お疲れでしょうから、元気になるものを食べて乗り切って下さいね♪

うちのヨンは、相変わらずこんなんです~。
ホント、早まっちゃった感満載で(笑) は*さんの率直なコメント、すごく好きだなぁ♡♡
元気で明るく見えるヨンの裏側の脆い部分(実際は脆くないかもしれないけど)にどうしても萌えを感じてしまいます。
島銃士のホドンさんの前で語った「あまり自分を愛していない気がする」発言の切ない表情や、ライブでの泣き顔とかが愛しくてたまらなくて。
腐ってますが、いい形でラストを迎えられるようにしますね。
ゴールは目前なのに、私の腕とスピードが一番の問題点…( ̄ω ̄;)

2018/08/27 (Mon) 12:55

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ただただ、切なくて心がつらいです。
未来のため、考えに考えて行動に移したヨンファ。
でも、心が追い付かない彼のことが途轍もなく愛おしくて仕方がありません。

ジョンシンから贈られた、リングの場面は画で浮かんでしまいちょっと泣きそうになりました・・・。

haruさん、素敵なお話をありがとう!!
この先が気になりすぎてどうしようもありません!
ジョンシン、どうするのかな?悶々←

2018/08/28 (Tue) 15:36
haru

haru

hoshiさん

こんばんは♡

hoshiさん、どうもありがとう(´;ω;`)
思いっきりベタだけど、こういうのがすんごく好きでね~。
あんまりやりすぎると逆に女々しくなっちゃうから、私の中ではここら辺がギリギリ限界かな。

大好なシンヨンだけに、二人の感情を上手いこと表現できたらいいんだけど。
入隊を絡めた話はもう書かないかもしれないので、ポンコツ頭を何とか動かしてみるね(´・ω・`)b

2018/08/28 (Tue) 21:38