CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

Forbidden Love 1 

2016年03月09日
Forbidden Love(兄弟パロ) 0






少しずつ意識が覚醒して目を開けると、眩しい朝陽がカーテンの隙間から射し込んでいた。
その光がやけに眩しくて、ヨンファは目を瞬かせる。


枕元の時計がもうじき7時になろうとしているのを見て、慌てて身体を起こし、ベッドから下りる。
普通の大学生ならギリギリまで寝ていられるのだろうが、ヨンファにはそれができない事情があった。





階段を下りてキッチンへ向かうと、すでにミニョクが起きていて、フライパンに卵を落とす音が聞こえる。


「おはよう、ミニョク。寝過ごしてごめん」
「おはよ。こっちは大丈夫だから、新聞と洗濯機よろしく」
「了解」


貿易会社の社長を務めているヨンファたち四人兄弟の父親が、母親を連れてアメリカへ旅立ったのは三ヶ月前。
詳しいことは分からないが、アメリカに新会社を設立するとのことで、この4月から生活拠点を遥か彼方の異国の地に変えたのだ。


この話が持ち上がった当初、長男で大学二年生のヨンファを筆頭に、次男で大学一年生のジョンヒョン、双子で高校三年生の三男ミニョク、四男ジョンシンの四人の息子たちは、両親とともにアメリカに留学という形でついていくか、それとも韓国に残るか決断を迫られた。


家族で話し合った結果、高校生二人が受験生ということから、両親には同行せず、四兄弟だけ韓国に残って生活をすることになった。
両親がアメリカに滞在する期間は今のところ未定で、父親によると半年から一年、場合によってはそれ以上になる可能性もあるらしい。
母親が不在という初めての事態に陥り、四人の息子たちは自分たちで家事全般をこなしながら、学業にも取り組まなければならなくなった。
したがって、普通の学生とは少し違う家庭環境になっていたのだ。


ヨンファの家はいわゆる富裕層だが、両親は息子たちを幼少時代から決して甘やかさなかった。
いずれは父親の会社の後継者となる可能性もあるため、それを踏まえて小さい頃から厳しく育てられてきた。
だから、金銭的には何ら問題もないのに、留守の間、家政婦を雇うことはせず、敢えて自分たちでやるような環境に身を置かせた。


実際、男四人の生活が始まっても、特に困ったことはなかった。
全員の帰宅時間がバラバラであるため、互いに協力し合い、家事を分担するようにしている。
ヨンファたちが中学生になるまで、母親が積極的に家事を手伝わせていたということもあり、簡単な料理ならば作れる。
朝はヨンファとミニョク、夜はヨンファとジョンヒョンというように大まかに決めているが、何か予定が入れば、代わりに時間のある者がやるようにしていた。


また時々、近くに住んでいる親戚の叔母が手料理を差し入れてくれることもあるし、時間がない時は出来合いのものを買って済ませるなどして、何とか上手いこと回っている。
今のところは両親を心配させることなく平穏無事に過ごせてはいるが、一つだけ問題がある。
それは、四男のジョンシンが非協力的で、何もしないということだ。


ソウル特別市でトップを誇る中高一貫の男子校に通っていて、勉強が大変なことは分かるが、学校と塾以外は結構好きに遊び回っている。
本人曰く、気分転換らしいが、どう見てもその範疇を越えているとしか思えない。
元々頭が良いため、授業中に習ったことをその場で理解しているらしく、家でガリ勉をしなくても心配はないようだが、明らかに目に余るものがある。


同じく受験生のミニョクは二番手の難関男子高に通い、ジョンシン同様、通塾をしているのに家事にも協力的だ。
ミニョクが出来すぎなのだろうか。
とにかく、一緒に住んでいるのだから、まったく何もしないのは通用しない。
夜が忙しいなら、せめて朝食の準備をするなど手伝うべきなのに、朝起きるのも遅いから、結局、それがヨンファの負担になってしまう。
ジョンシンは今、ヨンファの頭を一番悩ませている存在なのだ。





洗濯機を回してから新聞を取りに行き、ヨンファがキッチンに戻る途中、ジョンヒョンが二階から下りてきた。


「おはよう」
「ああ、おはよう。ジョンシナは?」
「覗きに行ったけど、まだ寝てる。俺が声かけても起きないんだよな、アイツ」
「また帰りが遅かったのか?」
「日付が変わる直前だったな。ガタガタうるさかったから、注意はしておいたけど」


昨夜、ヨンファは早々にベッドに入り、ジョンシンが帰ってきた時にはすでに寝ていたから、よく知らなかった。


ジョンヒョンは割と大人しい方で、余程のことがない限りあまり声を荒げることがない。
ジョンシンに対しても 『まあ、しょうがないか』 といった感じで、ヨンファみたいに強く言わないのだ。
寛大なのか、それとも諦めて言っても無駄だと思っているのか、我関せず的なところがある。
叩き起こせばいいのにと思うが、できないものはどうしようもない。


だから、必然的に長男の仕事が増えることになる。
ヨンファは大きく溜息をつくと、ジョンシンの部屋のドアをノックした。


「ジョンシナ、早く起きろっ。遅刻するぞ!」


案の定、部屋の主はタオルケットを被って丸くなっていて、無駄に長い足だけが収まりきらず外に出ていた。
本人はピクリとも動かない。


「……ったく。こら、起きろって…」


それを胡乱な目付きで眺め、ヨンファは勢いよくタオルケットを引き剥がした。
目の前に鍛え上げられて引き締まった浅黒い身体が露わになり、ヨンファはギョッとした。


「な、なんでお前、素っ裸で寝てんだよっ」
「……ああ?いいじゃん、この方が気持ちいいんだから」


ヨンファが起こしに来るのをまるで予想していたかのように、今起きたとは思えないはっきりした口調だった。


ヨンファは慌ててジョンシンから視線を逸らせた。
いくら夏とはいえ全裸はないだろう。爽やかな朝の風景とは全くそぐわない光景だ。
目のやり場に困り、ヨンファはできるだけその身体を見ないようにした。


「服くらいちゃんと着ろ。それと、頻繁に起こされる俺の身にもなってみろよ」
「朝からヒステリーだな、ヨンファは」
「呼び捨てにするなって、いつも言ってるだろっ」
「俺より小さいのに?」
「体格は関係ないだろーが」


憤慨するヨンファの態度に対し、ジョンシンはどこ吹く風で、気怠げに茶髪の長い髪をかき上げる。
顔が整っているだけに、その仕種が妙に様になっていてドキリとする。


四兄弟の中でも、ヨンファとジョンシンは父親似で、特に目元が良く似ていた。
瞳が大きく黒々としていて、涙袋もぷっくりとしている。
ジョンシンが中学生の頃までは、本当に素直で良い弟だった。
「ヨンファヒョン」といつもヨンファにベッタリで、そこら辺の女子よりも余程可愛い容姿をしていた。


ところが、高校に入ってから急に大人びてきて、日に日に男らしく変貌してきた。
目つきが鋭くて精悍な顔立ちになり、ヨンファと似ているとはあまり言われなくなった。
髪を伸ばしカラーを入れ、身長もめきめきと伸び、今ではヨンファよりも5センチほど高くなっていた。


それに加えてこの生意気な態度。何かにつけてヨンファを揶揄って面白がっている。
遅れてきた反抗期なのか。それとも、ストレスの捌け口にされているのだろうか。


まだ両親が一緒に住んでいる頃は良かったのだが、二人がアメリカに行った途端、夜遊びを始めるようになった。
それでも成績は良いので学校から何か言われることはないが、自宅に帰ってくるのが遅い日が増えた。
目に余るようなら両親に報告をしなければならないが、現時点では様子を見ながら黙認している。


「昨日も遅かったんだってな。塾が終わったら、真っ直ぐ帰ってこいよ」
「しょうがねぇじゃん。溜まるもんはちゃんと吐き出さないと」
「は?ガキの癖に一端のことを言うなよ。お前は受験生だろうが」


同じ男同士だから、生理的な欲求は分からないでもない。
だからと言って、高校生が外で発散していいということはない。
ヨンファも高校時代に彼女はいたが、品行方正でこんなに私生活は乱れていなかった。


そんなことを思い返していると、いきなり腕を引っ張られて、勢いよくジョンシンの身体の上に倒れ込んだ。


「……うわ!」


声を上げた時には、ヨンファは長い腕に抱き込まれていた。
顔を目の前までずいっと近付けられ、頬に吐息がかかり、鳥肌が立った。


「ヨンファもちゃんと出してる?溜め込むと身体に悪いぞ」


これほど近くでジョンシンの顔を見たのは子供の時以来で、視線を逸らせなくなった。
硬直したように見合っていると、ジョンシンの瞳の色が微かに変わったような気がした。


「大きなお世話だ。俺で遊ぶのもいい加減にしろ」
「あ、分かった?」


おどけた調子で言われて、また瞳が元の色に戻っていたので、錯覚だったのかと思った。


「それより、暑苦しいから離れろよ……」


昔はこういうじゃれ合いをジョンシンとよくやっていたが、今はそれが拷問に近いほどヨンファにとっては耐え難いもので、一刻も早く解放してほしかった。
ところが、ヨンファの意に反してますます腕の力が強くなり、視線を落とすと男性特有の生理現象まで目に入り、これ以上シャレにならなかった。


「おい、いい加減にしろ。離せって」
「久々の兄弟のスキンシップなんだからいいだろ」
「ジョンシナ、早くしろっ。もう時間がないんだ!」
「……分かったよ」


ようやく腕の力を緩められて起き上がる際、褐色の逞しい胸板に手をついてしまい、その張りのある肌の感触にヨンファは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
咄嗟に顔を取り繕ったが、心音を聞かれやしないか気が気じゃなかった。
本人はまったく気付いていないようで、呑気そうに大欠伸をしている。


「ジョンシナも家族の一員として手伝えよ。お前だけ何もしていないんだぞ」
「俺だっていろいろ忙しいんだって」
「あのな、勉強に関することで遅くなるならいいけど、夜遊びは大学生になるまで控えろ。俺ばっかり負担が多くて困る」
「俺が作るよりヨンファの飯の方がうまいし」
「甘えるな。とにかく、もっと早く家に帰ってこい。それと、朝も自分で起きろ」
「……………」


ヨンファの言葉をちゃんと実行に移すかは定かではないが、面白くなさそうな顔をしている。
気に入らないことがあったらすぐ黙る。ジョンシンの悪い癖だ。


「じゃあ、俺たち、食べたら出かけるから。早く下りてこいよ」
「へーへー」


階段を下りながら、ヨンファは朝から脱力感に見舞われていた。
本当に腹が立つ。
ムカムカするのと、先程から激しく脈打っている胸が未だに治まりきらず、ヨンファは唇を噛み締めた。







*********************************************************************







ヨンファが通う国立大学は冠岳山に位置しているが、最寄駅から結構距離があり、バスを利用して学校まで往復している。
大学の講義がすべて終わったあと、ヨンファは学内のカフェテリアで同じ学科の友人たちと一頻り話をして、岐路に着いた。
途中、本屋に寄り道してから、いつも行くスーパーマーケットで夕食の食材を調達して帰宅した。


「ただいま…」


一応声をかけるが返事がない。家の中はシーンと静まり返っていた。
玄関にジョンシンの靴と見覚えのない女物の靴がある。
それを見た途端、ヨンファの胸にチリッとした痛みが走ったが、敢えて気にしないようにした。
ジョンヒョンとミニョクはまだ帰っていなかった。


ヨンファは買ってきたものを冷蔵庫に収めると、自分の部屋へバッグを置きに行こうと階段を上がり始めた。
すると、何やら音が聞こえてきた。
彼女とDVDを観ているのか、CDでも聴いているのだろうか。


一歩一歩、ジョンシンの部屋に近付くにつれて、音に混じって何か呻くような声が微かに耳に入ってきた。
話し声かと思った矢先、すぐそれが間違いであることに気付いた。


「…あっ……んっ……」


それがどういう時に発せられるものか、分からないヨンファではなかった。
ジョンシンの部屋の前まで来ると、切れ切れだった声がはっきりと聞こえた。
胸が突如強い痛みに襲われ、ヨンファはその場に立ち尽くした。


「ジョ……シ…、…ああっ……すご………っ」
「うるさいから、もっと声抑えろよ」


紛れもなく、それはジョンシンの声だった。
居た堪れなくなり、ヨンファは音を立てないようにして、隣の自室に入った。
すると、女の喘ぎ声がより大きくなり、ベッドのギシギシ軋む音まで聞こえてくる。


「んっ……あんっ……気持ちい……もっとぉ……奥まで突いて……っ」
「しょうがねーなー。ほら、腰を高く突き出せよ」


引っ切りなしに聞こえる声から、何をしているのか想像がつく。
どうしようもないほどのどす黒い感情がヨンファを支配し、溢れそうになるのを必死で抑え込む。
全身が震えだし、ヨンファはその場から逃げるようにもう一度外に出た。





二歳年下の実の弟に対し、人には言えない想いを抱きつつあることを、ヨンファは前々から感じていた。
それがいつからなのかは定かではない。
末っ子で甘えん坊だったジョンシンが、次第に自分の身長を追い越して大きく変貌していく姿を、羨望の眼差しで見るようになった頃からかもしれない。


それをはっきりと自覚したのは、夜遊びで遅く帰宅するようになったジョンシンの身体から漂う女物の香水や、シャワーを浴びてきたばかりだと露骨に分かるボディーソープの香りに気付いた時だった。
ヨンファはひどくやりきれない気持ちになり、自分はおかしい、普通じゃないと苦悩するようになった。


倫理や道徳に背いて表に出てきた感情に愕然とし、不埒で汚らわしい自分に吐き気がして、何度も自己嫌悪に陥った。
未だに消えないこの醜い想いは、決して誰にも知られてはならない。
常に何でもないことのように振る舞って自分を押し隠している。
それでも側にいる限り完全に断ち切るのは難しく、先程のようなことがあると、押さえ付けていたものが反発して姿を現そうとする。


兄弟の縁を切ることはできないのだから、一刻も早く何とかしなければならないことは分かっている。
しかし、今のところヨンファには何の手立てもなかった。







*********************************************************************







翌日の夜、ヨンファはジョンシンが帰ってくるのをリビングで待っていた。


「……おかえり」


ヨンファを見ると、ジョンシンは一瞬、気まずそうな顔をした。説教でもされると思っているのだろう。
そのまま無視して二階へ上がろうとしたので、ヨンファはいつになく真剣な声で引き留める。


「待てよ、ジョンシナ。話がある」


ジョンシンから伝わってくる事後感に勝手に傷付きながら、ヨンファはこれでいいんだと自分を納得させた。
面倒くさそうに大きく溜息をついて、ジョンシンはヨンファから離れたソファーに座る。


「話ってなんだよ。今日はそんなに遅くならなかっただろ?」
「時間のことじゃない。……お前、ここに女を連れてくるのは止めろ」


予想が外れたようで、渋い顔をしていたジョンシンは一転、挑戦的な目でじっとこちらを見つめてきた。


「聞いてたのかよ。趣味悪ぃな」
「聞きたくて聞いたんじゃない。一体、どういうつもりだ?ここはお前一人の家じゃないんだぞ。
俺だけだったから良かったものの、ジョンヒョナやミニョクだっていい気はしない」
「ホテルだと金がかかるしなぁ」
「……家をホテル代わりに使うなっ」


飄々として悪びれずに言うジョンシンにだんだんと怒りが込み上げてきた。まったく反省の色すらない。
ヨンファが睨み付けても「おっかねー」とニヤニヤしているだけだ。


「なあ、あの最中の声聞いてどうだった?イイ声だったろ?」
「……本題をすり替えるなよ」


その手には乗らないことにした。
結局、ジョンシンにとっての自分は挑発して揶揄うだけの存在でしかないのだろう。


「つまんねぇな。真面目すぎるんだよ、ヨンファは。女としたことあんだろ?」


これが現役高校生の発言だろうか。
あまりにも見境がなく、呆れてものが言えない。


「俺はお前みたいな節操なしじゃないんでな」
「しょうがねぇだろ。溜まっちまうもんは。あっ、ヨンファにこんなこと言ったら可哀相か。今、相手いないんだもんな?」


女にまったく困っていない自分と比較して満足なのか、ジョンシンは厭味ったらしい笑みを浮かべる。


小学生の頃から容姿端麗で成績優秀のヨンファは、ジョンシンに負けず劣らず、周りから好意を寄せられることが多かった。
その後、共学の中高一貫校に入学して、何人かと付き合い、ジョンシンのことが気になってからも、彼女はいた。
どれもあまり長続きはせず、大学生になってから同じ学部の子と付き合ったが、半年も保たなかった。


両親がアメリカに行ってからは、長男としての責任もあり、今は遊ぶどころか修行僧のような真面目な生活を送っている。
時々友人と飲みに行ったり合コンに誘われることはあるが、特定の相手がいないことはジョンシンにも分かるようだ。


ヨンファに対抗意識を燃やしているのか知らないが、いちいち突っかかってくるジョンシンには辟易する。
自分の何がそんなに気に入らないのか。
ジョンシンとは昔のように仲良くするのは、無理なのかもしれない。
これ以上、不毛な会話に時間を割いても無駄なだけだ。


「……もういい」
「待てよ」


その場にいることが苦痛になり、自分の部屋に行こうとジョンシンの横を通ると、前触れもなくヨンファの手を掴んでくる。
途端に、昨日の女の声や淫らな音が走馬灯のように蘇ってきた。
例えようのないほどの嫌悪感が襲いかかってきて、ヨンファは不快な顔をしたまま思いきり手を振り払った。


「触んなっ」


珍しくヨンファの激高した姿に、ジョンシンが呆然とした表情を浮かべた。
意外な反応に驚いたが、それよりも腹立たしさの方が上回っていた。


「とにかく、二度とここに女を連れてくるなよ。やるなら他でやれ。もし繰り返したら、父さんと母さんにこのことを全部ばらすからな」


自室に入ると、ヨンファはベッドに身体を投げ出した。
こんな自分勝手な人間に惹かれた自分の愚かさに、ほとほと嫌気が差し、ヨンファは思わず失笑していた。
可笑しくて堪らなかった。
そして笑いがおさまると、あとに残ったのは虚しさだけだった。







*********************************************************************







午前中の講義が終わったあと、ヨンファは学生会館の中の食堂で友人とともに昼食を摂っていた。


「合コン?」
「そう。今週の金曜日なんだけど、ヨンファも来れるか?」
「えっと、ちょっと待って」


日替わり定食を食べている同じ学科の友人であるホンギに誘われて、ヨンファはスケジュール帳を見る。


「予定は入ってないから行ける。メンバーは俺たち以外には?」


すると、ホンギの隣にいた同じく友人のジョンフンが興奮を隠しきれない様子で捲し立てる。


「3対3だから、俺ら三人だけ。それでな、相手は何とS女子大生だぞ!」
「ジョンフンの伝手で決まったんだよな」
「そう。俺の従姉妹がそこの3年生でさ、間に入って取り持ってくれたんだよ」
「へぇ。すごいな」


二人とも週末の合コンに心を持っていかれている様子で、いつになくテンションが高い。


「ヨンファもさ、今特定の相手がいないんだろ?いい娘がいたら付き合ってみろって」
「まあ、そうだな……」


ホンギの言うとおり、誰かと交際するのもいいかもしれない。
他に好きな相手ができれば、どうしようもない狂った感情を捨て去り、禁忌を犯すこともなくなるのだ。
それはヨンファにとって、一筋の光になり得るかもしれなかった。







*********************************************************************







合コンはいつも近隣の大学の女子たちすることが多い。今日のS女子大学もそうだ。
ホンギがセッティングしたのは、女性ウケしそうなお洒落な店で、相手は女子大生が三人のはずだった。
ところが、初めに一人ずつ自己紹介をしてから、違うことが判明した。


「えっ、じゃあ、君、高校生なんだ?」
「はい…」


ヨンファは向かいに座った女の子を見て驚いた。
一人だけ高校三年生で、人数が足りないということで急遽、代役を頼まれたらしい。
背がスラーッと高く、ロングヘアの綺麗な子だった。


「へぇ、ユリちゃんの妹のソヒョンちゃんか。確かに顔が似てるよね」
「急用で来れなくなったティファニーの代わりなの。ソヒョンは受験生だから途中で帰るようになるんだけど…」


隣のホンギとその正面のユリが、早速意気投合したかのように話をしている。
そのまた隣を見ると、ジョンフンとテヨンが仲睦まじく盛り上がっていた。
そうすると、ヨンファは目の前の高校生と話をするしかない。
取り敢えず高校生に差し障りのない話題をと思い、ヨンファは自分たちの通っている学校の話をした。


「来年、ヨンファさんの大学を受験するんですよ」
「そうなんだ。こんなとこに来てて大丈夫なの?」


ソウル特別市の中では超難関国立大学と言われているので、少し心配になって訊いてみた。


「たまたま塾が休みだったんです。今日みたいなことって初めてなんですけど、姉に気分転換がてらどう?って言われて仕方なく…」
「一日くらいなら問題ないよ。模試の結果はどう?」
「それがB判定なので、まだまだ手が届かないんですけど」
「Bなら合格する可能性は十分にあるよ。徐々に全員が本気を出してくるから、偏差値はなかなか上がらないと思うけど、毎日やることを決めて積み重ねていけば、良い結果に繋がるんじゃないかな」
「本当ですか?ありがとうございます」


合コンで大学受験の話をしたのは初めてだった。
ソヒョンは今時珍しいくらい真面目で素直な子で、ヨンファは話をしていて楽しかった。


今までヨンファに告白したり言い寄ってきたのは、わりと打算的で自意識過剰な子が多く、表向きはおしとやかなふりをしているが、そのうち中身が見えて付き合うのをやめたことが何度かある。
そういう女性はヨンファは生理的に受け付けなかった。
だから、余計にソヒョンがとてもキラキラと輝いて見えた。





洗面台の前に立って手を洗っていると、背後のドアが開いてホンギが入ってきた。


「よぉ」
「そろそろ時間も遅いから、俺はあの子を家まで送るよ。途中で抜けてもいいだろ?」
「ソヒョンちゃんと良い雰囲気だったな。お持ち帰りすんのか?」
「するわけないだろ。あの子はまだ高校生だぞ」
「合意の上なら年齢なんて関係ないさ」
「俺はお前と違って節操なしじゃないの。とにかく先に帰るから、あとは四人で楽しくやれよ」


ヨンファの言葉にホンギは 『もったいねぇ』 とブツブツ言っている。
再びテーブルに戻ると、ヨンファはソヒョンをタクシーで自宅まで送り届けることをユリに伝えた。
すると、申し訳なさそうにお金を出そうとしたので、ヨンファはそれを断った。


「俺も一緒に帰るから、貰えないよ」
「ごめんなさい。じゃあ、お言葉に甘えるね。ソヒョンのことよろしくお願いします」
「責任を持ってちゃんと自宅まで送り届けるから安心して」


ヨンファがそう言うと、ユリは安堵の表情を浮かべた。





「ヨンファさん、ごめんなさい。せっかくの合コンなのに」
「いいよ。そんなに長くいられるもんじゃないし、君のお陰で早く帰れて助かったよ」


道路脇に立ってタクシーを捕まえようと探していると、そばにいたソヒョンが急によろめいて、ヨンファの方に倒れ込んできた。


「大丈夫?」
「ごめんなさい!」


無理をして高いヒールの靴を履いてきたのだと、気恥ずかしそうにソヒョンが謝ってくる。
その直後、「あっ」と口に手を当てて、ヨンファの胸の方を見て、驚いた顔をしている。
視線を辿っていくと、シャツの襟にうっすらと赤いものが付着していた。


「どうしよう。口紅が……」
「ああ、いいよ。このくらい」
「本当にすみません。弁償させて下さい」
「いいって。大丈夫だから、気にしないで」


ソヒョンがペコリと頭を下げるのを、ヨンファは慌てて止める。
言動の端々から、まったくすれてなくて育ちが良い子なんだということが分かる。


「じゃあ、お母さんならご存知だと思いますが、台所用洗剤を汚れに直接染み込ませて、揉みこむよう洗ってもらって下さい。あとは洗濯機で普通に洗えば落ちると思います」
「あー。うち今、母親がいないから、俺が自分でやってみるよ」
「あっ、私、失礼なことを……」


素直すぎる反応に、ヨンファは笑みがこぼれる。


「父親と一緒に海外に行っているんだ」
「そうなんですか。じゃあ、ヨンファさんお手数ですけど、今、言ったやり方をしてみて下さい」
「了解しました、ソヒョンさん」


何だか可笑しくてヨンファが先に笑うと、それにつられてソヒョンまで笑顔になる。
そして、一緒にタクシーに乗り込み、ソヒョンの家まで送った。


「今日はとても楽しかったです。わざわざ送って下さって、どうもありがとうございました」
「どういたしまして。これからは代役を引き受けないようにね」
「はい。気を付けます。あの…もし良かったら、また会ってもらえませんか?」
「え?」


まさか、そんなことを言われるとは思ってもみなかった。
大した話はしていないが、ソヒョンなら妹みたいで可愛いし、また会ってもいいかなと思った。


「ヨンファさん、なんかお兄さんみたいですごく優しくて。受験や大学のことでまた相談に乗ってもらいたいんです。…って、ずうずうしいですよね。すみません」
「いいよ。連絡先、交換しようか」
「はいっ」


ヨンファの言葉にソヒョンは嬉しそうな顔をして、二人はメアドを交換した。
そして、その場で別れて、ヨンファは再びタクシーに乗り自宅へ向かった。










家に帰り着くと、リビングには三人の弟が揃っていて、一斉に視線を浴びる。
ジョンシンが珍しく早く帰っていて、ヨンファは驚いた。


「おかえり。早かったんだな。合コンどうだった?」
「楽しかったよ。まあ、1軒しか行ってないしな」


「ヒョン、コーヒー飲む?」


ヨンファがソファーに座るのと同時に、ミニョクが立ち上がり、気を利かせてくれる。
「ごめん、もらっていいか?」 とミニョクに甘えると、すぐさま持って来てくれた。


「僕も合コン行ってみたいなぁ」
「大学生になれば、いろいろ声がかかるから、好きなだけ行けるさ」


ジョンシンに視線を向けると、きつい目でこちらを見返してきた。


「ジョンシナ、今日は早いじゃないか」


さり気なく声をかけると、無言のままヨンファの横を通り過ぎ、二階へ上がっていった。


「なんだアイツ。可愛くねー。せっかく褒めてやったのに」
「そんなもんだよ。俺たちともそんなに話さないし」
「最近ずっとイライラしてるもんね」


本当に難しい年頃というか何というか。この頃、確かにジョンシンの機嫌はあまりよくなかった。
憮然とした顔でじっと見つめてきたり、話しかけても無視したり。でも、機嫌のいい時は会話もするし、笑うこともある。
受験生で少し情緒不安定になっているのだろうか。
何を考えているのか今一つ分からないところがあって、ヨンファは適当に受け流すようにしていた。





リビングでしばらく雑談をしたあと、ヨンファはシャワーを浴びようと思い立ち、自分の部屋へ着替えを取りに行った。
クローゼットを開けて何を着ようか物色していると、ノックの音とともにジョンシンが部屋に入ってきた。


「辞書、貸して」
「ああ。どれでも、好きなのを持って行けよ」


ジョンシンがその場に突っ立ったまま、何やら顔を顰めている。


「なんだよ?」
「香水くせー」


指摘されて、ヨンファはシャツの襟を持ち上げて鼻先に近付けてみる。
微かにいい香りがする。ソヒョンの移り香なのかもしれない。


「お前だって、人のこと言えないだろうが」


頻繁にいろんな香水をプンプンさせて帰ってきていたジョンシンには言われたくなかった。


不満そうな顏をしていたジョンシンの眦がピクリと動いた。
ヨンファのシャツの襟辺りを凝視しながら、ゆっくりと近付いてくる。
距離を詰めてきたジョンシンの目が剣呑な光を放っていて、息苦しさを感じたヨンファは固唾を呑む。


「…なんだよ…これ…」
「え?」


低く押し殺した声に指摘されたところを見ると、ソヒョンがヨンファにぶつかった時についた口紅の痕だった。


「合コンの女にされたのか?」


何故そんなことを訊かれるのか分からなくて、ヨンファが眉間に皺を寄せると、ジョンシンは険しい表情をして、突き刺すような目を向けてきた。
本当のことを言うのが面倒で、ヨンファは溜息をつきながら適当にお茶を濁す。


「お前だって人のことを言えた義理じゃないだろう」
「……他にもつけられてるんじゃないのか」


突然、痛いほど両腕を掴まれて、一瞬身動きが取れなくなったが、それを渾身の力で払い除ける。


「だったらどうだってんだよ。お前には関係ない」
「……関係ない?」


一層低音になった声に竦み上がる。ヨンファの態度がジョンシンには気に入らなかったらしい。
射抜くように自分を睨みつけてくる黒い瞳と、視線がぶつかった。
どうしてそんな目で見られないといけないのか、ヨンファには理解できなかった。


シャツの胸元を両手で掴まれたと思ったら、破れる音と共に強い力で前を開けられ、ボタンがいくつか弾け飛ぶ。
ヨンファの白い肌がジョンシンの目の前に晒された。


「なにをする……っ」


驚いてヨンファが見上げると、その瞳は見たこともないほど獰猛な色を湛えていた。





To be continued





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(0)

There are no comments yet.