CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 64

2018年03月14日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 6






視界から遠ざかっていくジョンヒョンたちの後ろ姿を目で追うだけのヨンファとは対照的に、傍らのグンソクは即座に行動を起こしていた。
スーツの内ポケットからおもむろにスマートフォンを取り出すと、メールではなくどこかに電話をかけ始める。


「俺だ。若いもんを『Blueming』に数人寄越してくれ。大至急だ」


漂う緊迫した空気から、何か組の沽券にかかわるような余程のことがあったとしか思えなかった。
会話の内容から察するに、どうやら通話の相手は舎弟のようで、そう命じたグンソクは他にも的確な指示を出している。
何をさせてもそつがないし、すでにある程度の見通しは立てているのだろう。
その辺りをちゃんと心得ているからこそ、敢えてジョンヒョンに委任したのだと分かった。


かなりの切れ者だと、裏社会においてその名を広く轟かせているグンソクは非常に優秀な男だ。
ジョン組長や最高顧問のハンに才覚を見出されて、その当時、二十代後半でありながらドンゴンに代わって若頭に就任したのは極めて異例だった。
幹部級となると、知名度のみならず、身に着ける服装のランクまでも一気に跳ね上がる。
本人もこだわりがあるのか、今日は濃い色味で落ち着いた印象のグレーネイビーだが、いつも洒落たオーダーメイドスーツを造作もなく着こなし、立ち居振る舞いに優雅さが滲み出ている。
こういう状況なだけに若干険しい顔をしつつも、どこか余裕が感じられるので、つくづく不思議な男だと思った。


後ろ髪を引かれる思いでジョンヒョンたちが消えた先を見遣ると、異変に気づいたヒチョルが素早い動きであとを追っている。
店の裏口に繋がっているのか、急にその一角だけ物々しく人が出入りし始め、屈強な体格をした黒ずくめの男たちの姿もあった。
とても堅気には見えないので、南部洞組の組員に違いない。
ラグジュアリーな店内とは一線を画したような奇妙なコントラストは遠目からでも見て取れるが、美酒に酔いしれている客やホストたちは気にも留めない様子で、賑やかに談笑している声が辺りに満ちていた。
その場に立ち尽くして眼前で繰り広げられる一部始終を眺めていたヨンファは、矢継ぎ早の展開にいまだに軽く混乱しているというのに。


「お待たせして、すみません。行きましょうか」
「え……、ああ」


唐突にかけられた声にハッと我に返ると、グンソクが物言いたげに切れ長の双眸を細める。
いつの間にか通話が終わっていたらしく、それこそ穴があくかと思うほど不躾にしげしげと見つめられ、ヨンファは怪訝な顔で見返した。


「――なんだ?」


甘さが滲んだ理知的な風貌には、目の前のヨンファの有様にどう対処すればいいのか、明らかに困惑の色が浮かんでいる。
ある意味、予想通りのリアクションともいえるが、あまり気分のいいものではなかった。


「どうして、こんなところにいらっしゃるんですか。しかも、その髪の色とスーツは?まさか、ホストに転身されたんじゃ……」
「そんなわけあるか。人数が足りないから手伝ってくれって、ホンギに頼まれただけだ。笑えないジョークを言うな」


やや詰問口調で問いただされた挙句、聞き捨てならない台詞に眦を吊り上げたヨンファは、最後まで言わさずに端的に答えた。
瞬時に納得したのか、真っ向から目が合うなり、ふっと苦笑される。
心なしか浮き立っているように見えるのは、ただの思い過ごしだろうか。


「……ですよね。これは失言でした。しかし、ホンギがそんなことを?こちらは何も聞いていないですが」
「個人的なことなのに、なんでいちいち報告する必要があるんだ?」


片眉を上げたグンソクに促されるまま、楽しそうに雑談に興じているボックス席の横を通り過ぎながら、心の中で冗談じゃない……、と反発する。
声のトーンを絞って半ば憮然とした顔で言い返したヨンファに動じることなく、グンソクは涼しい表情で諭すように続けた。


「それはごもっともですが、チルソン組の例もありますし、うちや南部洞組が関わっているのであれば、どんな些細なことでも事前に教えてもらえると助かります。現に、先ほどスンヒに絡まれていたようでしたが、ご無事で何よりです」
「見ていたのか?」


ヨンファの問いかけに軽く頷いて、グンソクはふっと唇の端を上げた。


「ええ、相当気に入られていた様子でしたね」
「笑い事じゃないぞ。あの野郎、しつこいくらいにベタベタ触ってきやがって。気分が悪いったらない」


執拗で粘着質な視線や、おぞましいまでにじっとりした手の感触がリアルに蘇り、再び怒りが込み上げてきた。
思わず本音が口をついてしまい、同情混じりの視線を向けていたグンソクは、一拍置いて整った顔にまたもや苦笑を浮かべる。


「相変わらずのモテっぷりですね」
「語弊のある言い方をするな。男から迫られても、迷惑なだけだ」


意味ありげに言われて、さすがにムッとした。
せっかく頭の隅に追いやっていたのに、眼鏡男のことを思い返しただけでぞわりと全身に鳥肌が立つ。
いい加減、こんなくだらない不毛な会話から逃れたくて横目でじろりと睨むと、困ったように軽く眉を顰めた。


「ああ、そんなふうに見つめないで下さい。ただでさえ、いつもと雰囲気が違って心臓が破裂しそうなんですから」
「また、例の病気でも発症したのか?一生、破裂してろ」


釘を刺すつもりで強い口調で言い切ってやったら、グンソクは少し驚いたような顔をしたあと、喉の奥で小さく笑った。
過去、何度かこの手のジョークを言われた経験があるので、また始まったかと思うだけで動揺することはない。


「――本当に、貴方には負けますよ。そういうところが……」
「ん?なんだ?」
「いえ、こちらの話です」


意味不明なことを言われて胡乱げに訊き返すと、勝手に自己完結されてしまった。
露骨に顔を顰めるヨンファの横を歩きながら、グンソクは平然と額にかかった長めの前髪を無造作に掻き上げている。


「言いかけてやめるなんて、卑怯だぞ」


半ばぼやくように返してみたが、グンソクは口許に薄く笑みを刻むばかりで何も答えなかった。
どことなく楽しげに表情を和らげていて、こちらとしても調子が狂ってしまう。
掴みどころがなく、どこまでが本音なのかリップサービスなのか判別しにくい。
父親を支えてくれている幹部のひとりという意味において信用しているが、いまいち理解できない男だと思った時、いきなり横合いからポンと肩を叩かれた。


「ヨンファ、大丈夫だったか?」


耳慣れた声に話しかけられて振り向くと、気遣うような表情を浮かべたホンギだった。


「常連客の席からなかなか抜けられなくてな。ひとりにして悪かった。気づいたら、なんか騒動になってるし」
「ああ、俺は無事だが……」
「これはどういうことだ、ホンギ。若にこんな真似をさせて」


ヨンファの言いかけた語尾に被さるように、真顔となったグンソクが懐疑的に問う。
ホンギは少しばつの悪そうな面持ちで、慌てて頭を下げた。


「すいません。グンソクさんたちに断りもなく、俺が直接ヨンファに頼んで来てもらったんです。指名率の高いホストが軒並みインフルで全滅なんで、代わりができるイケメンってヨンファくらいしか思いつかなくて」
「いや、承諾したのは俺自身なんだから、ホンギが謝る必要はない」


被害者面をするつもりはさらさらなく、そう言い切ったヨンファはくりくりした瞳の親友と顔を見合わせた。
ホンギは平均身長をやや超えるもののヨンファより小柄で、一見すると小動物タイプなのだが、目力が強いため、睨みを利かせるとガラリと印象が変わる。


「まあ、気持ちは分からんでもないが……、ヒチョルも関与しているのか?」
「いえ、俺の独断なんで。さっき、こっぴどく叱られました」
「だろうな。――ああ、それでか。俺たちがここに来た時、妙に焦った様子が引っかかっていたんだが、なるほどな。次からは俺にも一報を入れてくれ。たまたま仕事で来たからよかったものの、危うく若の晴れ姿を見損ねるところだった」


グンソクの予想外の言い分にくらくらと目眩がして、「は?」と思わず脱力しそうになった。
何馬鹿なことを言ってるんだ……と口を開こうとしたら、「晴れ姿って言い方、おかしいっすよ」と、ホンギがギャハハと笑いだす。


「この金髪、俺のアイデアなんすよ。スーツを見立てたのも俺だし」
「そうなのか?ホンギ、グッジョブだな」
「でしょ、でしょ」


だんだんと雲行きが怪しくなってきたと思っていたら案の定、本題から外れて、ヨンファを肴に異様な盛り上がりを見せ始めた。
こうなると、ソウルの裏社会を牛耳っている二大勢力の幹部同士のやり取りとは到底思えない。
確か張り詰めたような空気が漂っていたはずなのに、緊張感のない笑い混じりの会話を聞いていると、急に頭痛がしてきた。
話にまったくついていけず、指先でこめかみを押さえるヨンファをよそに、目の前の二人は完全に意気投合している。
いつの間にか、自分だけが蚊帳の外状態になっていた。


「耳のピアスはどうなってるんだ。穴を開けたわけじゃないんだろ?」
「これは貼るタイプのやつなんで、開けてないっすよ。絶対、ヨンファに似合うと思って」


二人から揃って視線を向けられて、知らず知らずのうちに溜息がこぼれる。
着せ替え人形じゃないんだから、いい加減、面白がって玩具扱いするのだけはやめてもらいたい。
何だかんだ言って、とどのつまりヨンファをネタにして遊んでいるだけなのだ。
ドッと疲れが出て、もはや突っ込む気力がなくなった代わりに、ヨンファはわざと声を尖らせて呆れ顔を作った。


「グンソク、さっきからくだらないことばっかり言って、酒に酔ったのか?ふざけるのも大概にしろよ。ホンギも、こんなところで油を売ってていいのか?」
「あっ、しまった。ちょっと俺、皆の様子を見てきます。今日はうちの奢りですから、好きなだけ飲んでいって下さい」
「本当か。そりゃ、すまんな」


大盤振る舞いのホンギに、飲む気満々らしいグンソクが珍しく相好を崩す。


「いいっすよ。全部、経費で落とすんで」


けろりと言われて、ちゃっかりしてるな……、とヨンファはいい意味で感心した。
ついでに、先ほどから気になっていたことを尋ねてみる。


「なあ、俺、まだ手伝わないといけないのか?」
「いや、こんな状況だし、十分稼いでもらったから今日は終わっていいぞ。俺もあとで合流するから」
「おう、了解」


にんまりと笑ったホンギはふたりからそそくさと離れ、フロアの奥へ向かっていくのを見送るなり、ホッとヨンファの肩から力が抜けた。


「だから、俺の言った通りだろうが」
「別に疑っていたわけじゃありませんよ。ただ、約一名、おいそれと納得しないかもしれませんが……」


急に声のトーンが変わり、グンソクの視線の先を反射的に目で追うと、十数メートルほど離れた一段高いVIPルームから丸顔の男がものすごい形相でこちらをじーっと眺めているのに気づいた。
煌びやかで幻想的な雰囲気とは明らかに不釣り合いなハンは、気の毒なほど完全に浮いている。
しまった。この男の存在がすっかり頭から飛んでいた。
咄嗟に視線を逸らしたが、いつにもまして厳めしい顔つきが脳裏に焼きついて離れない。夢にまで出てきそうだ。


どうやらずっとガン見されていたようなのだが、グンソクとホンギに気を取られていたため分からなかった。
ヨンファを前にすると、にこやかに丸顔を綻ばせる男がピクリとも動かず、不気味な銅像と化している。
物言いたげな様子に嫌な予感を覚えて、このまま回れ右して戻りたくなった。


「一難去ってまた一難か……」


今日は、とことんついていないらしい。
溜息混じりにぼやいたヨンファを、傍らのグンソクは同情的な眼差しで見つめていた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2018/03/15 (Thu) 17:44
haru

haru

さ**さん

こんばんは♡はじめまして♪
コメント、どうもありがとうございます。

覗きにきて下さって嬉しいです。
更新頻度が低くなっているものの、その分、気持ちだけは毎回しっかりと込めていきたいと思っております。
拙いですが、少しでも楽しんでいただけるように頑張ります。

2018/03/15 (Thu) 21:51

hoshi

haruさん、更新ありがとうございます。
うなぎです←

今回のソギが素敵すぎて、読ませていただきながら、悶絶してしまいました。ステキ、カッコいい❤️です。
ホンギとのやりとりも、絶妙で世界へぐーーーっと引き込まれてしまいました。

ジョンヒョンとジョンシンのことも思い切り気になってしまうのですが。
(この2人、真顔で並ぶとものすごく迫力があると思うんです。なので、そちらのシーンも気になるのですが…。)

楽しい場面でしたが、ヨンファはハンさんとこれから…ですよね?
どうなるのかドキドキしつつまた、お待ちしています。

ありがとうございました😊
あーーー、でもこの画像のソギ。私、この頃の彼に本当に弱いので、ページ開いて叫びそうになりました❤️うなぎ心に火がついちゃった←こら。

2018/03/16 (Fri) 18:58
haru

haru

hoshiさん

こんばんは♡

私の勝手なイメージなんだけど、うなぎのhoshiさんにそう言ってもらって光栄です♪
次、ハン・ソンホが出ます。他にも。
登場人物が多い場面になると、ゴチャゴチャして私の頭の中もまとまらなくて、ちゃんと伝わるか分からないけど書いてみます。
この画像のソギ、超かっこいいですよね♡ 何年前?三、四年前くらいなのかな?
hoshiさんに読んでもらってると思うと、すごく緊張するわ。

2018/03/16 (Fri) 21:29

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2018/03/18 (Sun) 19:50
haru

haru

は*さん

こんにちは♡

ファンミ、お疲れ様でした♪
長いこと四人を見てこられたは*さんだけに、万感の思いでその時間を過ごされたのではないかと思います。
入隊前のラストイベントが終わったといっても、なかなかすぐに実感は湧いてこないかもしれませんね。
ヨンファという大黒柱がそばにいないことで、三人三様それぞれ表現に違いはありますが、感情をストレートに出してくれたジョンシン、バニやミニョクの気持ちを推し量るととても切ないです。
こちらこそ、いつもは*さんの温かい言葉に救われています。ありがとうございます。
私も寂しさは妄想で紛らわせていくので、コミカル展開中の極道ですが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。

2018/03/19 (Mon) 12:08