CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 61

2018年01月20日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 2






誰よりも会いたいと思っていた男の姿を認めた途端、嘘だろう……、と鼓動が大きく跳ね上がるほどの衝撃に襲われた。
ラウンドソファに座ったまま、ヨンファは息をすることさえ忘れて、黒い集団に視線が釘付けになる。
後ろに撫でつけられた艶やかな黒髪。眦の切れ上がった深い色の双眸。すっきりとした高い鼻梁。真一文字に引き結ばれた唇。
視線の先にいるのは、間違いなくジョンヒョンだった。
韓国人離れした彫りの深い容貌や落ち着き払った堂々たる立ち姿は強烈な存在感を放ち、一群の中にいても非常に目を引く。
さらに追い打ちをかけるように、ふと視線を横にずらしたヨンファは危うく声を出しそうになった。


「………っ」


あろうことか、ジョンヒョンのそばに立っている長身はグンソクとジョンシンで、その隣の小太りの男がハンだと判明し、ますます頭を抱えたくなる。
迂闊だった。ホストクラブ『Club Blueming』と青龍組の事務所が同じ江南にあるとはいえ、まさか組員たちがこの店を訪れるとは予想すらしていなかった。
普段の格好ならまだしも、金髪に染められた挙句、自分では絶対に選ぶことのない高級ブランドのモード系スーツに身を包んで、男性客相手に素人がホストの真似ごとをしているのだ。
こんな滑稽な姿を最も見られたくない顔ぶれが勢揃いしているなんて、よりによって……、と臍を噛む思いだった。
唐突すぎて思考が一瞬停止しそうになりながらも、なぜ男しかいないホストクラブに来るのか?行き先はキャバクラじゃないのか?という疑問が生じる。
だが、南部洞組と交友関係にあるのなら、ここで鉢合わせても何ら不思議ではないのかもしれないと思い直し、あまりにもできすぎた偶然を心底呪いたくなった。


想定外の展開に頭の中が混乱してしまい、ヨンファは息を詰めて、背筋がピンと伸びた美丈夫をじっと見つめる。
ただでさえ会うことがままならないのに、この一週間はまったく連絡を取り合っていなかったために声すら聞いておらず、そんな現状に焦りを感じ始めていた矢先だった。
待っているだけでは何も変わらないと、こちらから連絡しようと心が動いたばかりではあったが、こんなところでばったり出くわすなんて計算外もいいところだ。
たった数日のみの助っ人であっても、ジョンヒョンに知られたら火に油を注ぐ結果になるのは目に見えていた。
どうやら今日は、とことんついていないらしい。
動揺のあまり、知らぬ間にグラスを持つ手が微かに震え、これまでにないほどの速さで心臓がバクバクと音を立てて脈打ち始めた。


一週間ぶりに目にしたジョンヒョンは相変わらずゆったりと構えていて、知的な佇まいでヒチョルやグンソクと何やら話し込んでいたかと思うと、終わると同時に今度は数人の若いイケメンホストたちに取り囲まれているのが遠目からでも分かる。
青龍組の若頭補佐を務めている男が夜の街で顔が広いのは当然だと承知していても、どことなく面白くないものを感じて、ヨンファはそこから目が離せなくなった。
笑顔を振り撒きながら嬉々として話しかけているホストたちを前に、ジョンヒョンはいつものポーカーフェイスで受け答えしている。
一体、どんな会話をしているのだろうか。気にならないと言えば嘘になる。
その光景を眺めながら突如、心が波立つように落ち着かなくなった。
知らず知らずのうちに喉の渇きを覚えたヨンファは、濃い目に作られた琥珀色の水割りに視線を落とす。


「どうかした?少し顔色がよくないようだけど」
「あ、いえ……」


傍らの声に、ヨンファはハッと我に返った。
咄嗟に平静を装い、「何でもありません」と曖昧に笑みを浮かべると、スンヒはちょうどそばを通りかかったホストに声をかける。
メニューを手に追加オーダーする様子を横目で見ながら、ヨンファは握っていたグラスの中身を半分ほど胃に流し込んだ。
嫉妬するくらいなら、ジョンヒョンの前でもっと素直になればいいのにな……、と自分に対して半ば自嘲気味に苦笑する。
それが簡単にできていれば、ここ数日間、悶々と過ごす必要すらなかったのだということも分かっていた。
そう、分かっていたにもかかわらず――。


時には人が変わったように激昂し、独占欲や執着心を露わにするジョンヒョンにいまだに慣れなくて、正直戸惑ってしまう。
身体を繋げるまでは、まったく知ることのなかった一面だ。
特にジョンシンが絡むとすぐ不機嫌になり、手がつけられない。
屋敷で一緒に暮らしていた頃は実の弟のように可愛がり、何かと面倒を見ていたはずなのに、今では水と油のようになっている。
仕事の上では恐らく私情は持ち込んでいないだろうが、ヨンファとしては複雑な心境であり、何ともやりきれなかった。


真っ直ぐに向けられる想いが心の奥底に沁みるほど嬉しいのは事実で、日頃冷静であまり動じることのない男だから、自分の前でだけ飾らない本心を見せてくれるたびに胸が甘く疼く。
その反面、すべてを焼き尽くしてしまうのではと錯覚しそうになるくらいの激しい情愛が怖くもあった。
度を越せば、どうしても反発してしまう。
ヨンファは、ジョンヒョンの要求を何でも容易く受け入れられるような従順なタイプではないのだ。
こんな時、同性同士の難しさを嫌というほど痛感する。
ふたりを取り巻く環境は住む世界が違うというだけでなく、目には見えない壁が幾重にも重なって存在していた。
だからこそ、限られた貴重な時間をジョンヒョンと共有できることに喜びを見出している。
他には何も望まないから、これから先もそうでありたいと、ヨンファは願い続けているのだ。
そのためには、意地ばかり張っていないで多少は譲歩するなど、もっと柔軟に考えていかなければならないのかもしれない。


飲まないと間が持てなくて、グラスを傾けながら上目遣いに視線を向けた先で、青龍組一行はインカムを装着した黒服に促されるようにその場から移動し始めた。
どこの席に腰を落ち着けるつもりなのかと、案内されるままついていく四人の様子を、ヨンファは若干首を捻るようにして目で追ってみる。
店内のちょうど中央にある一段高いVIPルームへと向かっているのが分かり、このまま回れ右して帰りたくなった。
シャンデリアが眩い輝きを放つラグジュアリーな空間は、ヨンファたちが座っているボックス席のちょうど後方に位置するため、振り向かない限りこちらからは見えないが、向こうからは周囲に配置してある通常ルームがどうしても視界に入る。
よほど興味がなければ、わざわざ他人の席を眺めることはないとは思うものの、もし見つかってしまったら――と考えただけで憂鬱な気分になってしまった。


ブランデーで喉を潤す手を止めて、ヨンファは心の中で何度目とも知れない溜息をこぼす。
不自然にならないようにちらりと後ろを振り返ると、四人は揃って革張りソファに腰を下ろすところだった。
注意深く周囲を見回している男たちと危うく視線がぶつかりそうになり、ヨンファは慌てて正面を向いて顔を伏せる。
何とか動揺を抑えながら、騒ぎになることだけは避けようと、見て見ぬ振りを決め込んだ。
顔を合わせなければ、案外気づかれずに難を逃れることも可能かもしれない。
ホンギたちがうっかり口を滑らさなければ――の話ではあるが。


「見事な飲みっぷりだね」
「……すみません」


いつから見られていたのか、客を差し置いて遠慮なく飲み干してしまったことを恥じると、空になっていたグラスを横からさっと奪われてしまった。
スンヒはルイ13世のボトルを手に取り、「もう十分ですから」と断るヨンファをよそに、「まあまあ、遠慮しないで」と言いながらミネラルウォーターで割ることなく、酒だけをドボドボとグラスに注ぐ。
やんわりと断ってもどこ吹く風で、やたらと絡んでくるのが鬱陶しいのだが、客だから致し方ないと苛立つ感情を懸命に抑えた。


「なくなれば、また他の酒をオーダーするから」
「――はい」


そばでホンギが聞いていたら絶対に小躍りして大喜びするだろうなと想像がつくほど、金払いは相当いい上客のようだ。
だから、こんな胡散臭い男でも厳正なはずの審査に通って正会員になれたのだろうか。
アルコール度数40度の酒をストレートで嗜むことはあるが、こういう場で思う存分飲む気には到底なれなかった。
角が立たない程度にしておこうと、礼を言ってグラスに口をつけたところで、隣から不躾な視線を向けてくる。


「酒を飲んでるだけなのに、絵になるよね。横顔もまた芸術的な美しさだ」


ひと口だけ飲んでグラスをテーブルに置いたタイミングで、背筋がぞぞっとするような台詞を投げかけてきた。
含みのあるような声音が何とも耳障りで、ひどい不快感に心の中で盛大な溜息をつく。


「眼鏡の度数が合っていないのでは?」


執拗にモーションをかけてくる男から逃れたくて、意図して話の矛先を変えてみた。
途端にプッと噴き出す音が聞こえ、気味の悪い薄笑いを浮かべながら眼鏡の奥の目が怪しげな光を帯びている。


「ヨンって最高だね。そんな切り返しをしてきたホストは初めてだよ」


カジュアルスーツ越しにその裏の素肌まで覗き込もうとするような嫌な目つきで見られ、内心うんざりしつつ「ただの助っ人なので」と、言葉巧みに躱した。
真横から何を言われても丁重に受け流すヨンファにますます興味を持ったのか、スンヒは纏わりつくように構おうとする。
距離まで詰められて不快極まりなかったが、ホンギたちの手前、ここで手酷く拒否して騒ぎになるような事態だけはどうしても避けなければならなかった。


同席しているふたりに目をやると、小柄な男はソファに深々と凭れ、紫煙を燻らせながら隣の体育会系の男と先ほどから長々と話し込んでいて、ヨンファにちょっかいを出してくる男にはまったく目もくれない。
自分の身は、自分で守るしかないということか。
男性客に迫られるのは辟易するものの無難にやり過ごしたいので、隙だけは見せずに極力トラブルには巻き込まれないようにしようと背筋を伸ばした時、チャームとフルーツが運ばれてきた。
早速勧められたが、居心地が悪いせいか食欲はまったく湧かない。
だが、下手に断るとかえって面倒なことになるかもしれないと思い、軽く会釈して小さくカットされたパイナップルを一切れだけ口にした。
酸味を抑えた芳醇な甘さと香りが口いっぱいに広がり、少し冷静になろうと心を落ち着かせる。


「さっきから思ってたんだけど、クロムハーツのピアスがすごく似合ってるね」
「……え」


いきなりヨンファの肩に親しげに触れてきて、甘えた仕草でヨンファの耳許に唇を寄せられ、全身が総毛立つようだった。


「色気はだだ漏れなのに、ストイックな感じがたまらない」


実に愉しげにヨンファの胸許のストールを指先で弾くスンヒに対して、下衆の極みだな……、と胸の内で毒づく。


「そういう冗談はやめてもらえませんか?」


ただならぬ雰囲気を察知して警戒心を強めたヨンファは即座に抗議し、スンヒから身体を退いて逃れた。
込み上げてくる嫌悪感を表情に出さないように努め、できるだけ隣と距離を空けようと横にずれてみるが、離れてもすぐにじり寄ってくるので、端に座っているヨンファはどうすることもできない。
その上、調子に乗って馴れ馴れしくしなだれかかられ、慌てて押し返す始末だ。
やんわり釘を刺しても聞いているのかいないのか、気分を害したふうでもなく、スンヒはグラスの中身をぐいっと一気に呷った。
テーブルに戻されたばかりの空のグラスが酒を待っているのが分かり、ヨンファは仕方なしにバカラ社製のクリスタルガラスのデキャンタに手を伸ばす。
「ロックで」と言われて、アイスペールから大きめの氷を取り出してグラスに入れると、その上からプレミアムコニャックを注いでコースターの上に置いた。


「本当にガードが固いというか、今まで出会ったことのないタイプだから、すごく新鮮だよ」
「そうですか」


異性愛者だと予防線を張ったのに、眼鏡男は意に介さずまるで効き目がない。
つけ入る隙を与えまいとするヨンファの淡々とした返答に、参ったというようにひょいと肩を竦めた。


「まさにクールビューティーだね。これだけ綺麗どころを揃えたレベルの高いホストクラブでも、ヨンの美貌に叶う者なんていないよ」


こちらの気を引こうと、歯の浮くような台詞を恥ずかしげもなく口にしながら、セルフレームの眼鏡越しにねっとりとした無遠慮な目を向けられて困惑する。
セクシャルマイノリティに偏見はないが、この男は別だ。
次々と投げかけてくる気持ちの悪い台詞のオンパレードは全身鳥肌もので、褒め言葉とでも思っているなら、とんでもない勘違い野郎だと表彰してやりたい。
ヨンファはその衝動を必死で抑えて、「それは買い被りかと……」と適当に言葉を濁しておいた。


ホンギ曰く、この店はセレブ御用達ということらしいが、品位に欠けた振る舞いの数々にはとことん辟易する。
話が違うだろうと文句を言ってやりたいところだが、親友には義理もあるため、ここはひたすら我慢するしかないのだ。
ほぼ満席状態の店内はかなりの盛況ぶりで、周囲を見渡してもホストたちはそれぞれ常連客らしきボックス席で談笑しているし、黒服はこまめに動き回って各テーブルに酒を運んでいる。
皆それぞれ笑顔を絶やさずこなしており、ヨンファには到底真似できない芸当だった。
しかも、奥まったスペースにあるここからではヒチョルやホンギの姿を確認できず、ヨンファが困っていることに誰ひとりとして気づく者はいなかった。


一体いつまで居座るつもりなのか、閉店までこの眼鏡の相手をさせられたらたまったもんじゃないなと、微かに眉を顰めながらうんざりしていた時だ。
早くも疲れきってしまい、煌びやかな店内をぼんやりと眺めていると、黒っぽい人影が目に飛び込んできた。
ひと際背の高い男がフロアを横切るようにして、大きな歩幅でこちらに向かってくる。


――まさか、ジョンシナ……か……?


じっと目を凝らさなくても、漂っているオーラからあの男だと直感した。
あそこまで韓国人離れした長身は、そうざらにはいない。
少し距離があったものの、端整な目鼻立ちをしているジョンシンなのは一目瞭然だった。
黒のタートルネックにレザーパンツという全身黒ずくめで、シンプルな格好だからこそ、恵まれた脚の長さと高い腰の位置をより引き立てているように思える。
モデルさながらに颯爽と歩く姿は周囲の視線を自然と集め、他のボックス席に座っているホストたちまでもが客そっちのけで、その男を羨望の眼差しで見つめていた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(2)

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2018/01/25 (Thu) 07:07

haru

は*さん

こんにちは♡
読んで下さってありがとうございます(*´ω`*)
兵役前にまさかこういう事態が勃発するとは思ってもみませんでした。
あちらの国内のことだし真相も分からないため、私はこのまま静観しておきます。
は*さんと同様、ざわざわしちゃって落ち着かないですが、通常運転…するしかないですね。
パロディなら許されるかしらと都合よく解釈して、極道の続きを書いています。
あと、何とか気持ちだけでも奮い立たせたいので、前向きに楽しいことを考えようと、ツイッターで別アカを作りました。
本アカは情報収集する場と化していて、今更「バニ、男前」とか呟くのもちょっと憚られますしね。
一昨年の時も大丈夫だったので、今回もそうに違いないと、一日も早い鎮静化を願っています。
ヨンの笑顔が恋しいですね。

2018/01/25 (Thu) 12:17