CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

ヤキモチSpiral 1

2017年11月19日
Everything シリーズ 4


『アイコトバ』 続編



オンエアーの日が刻一刻と近づくにつれ、ジョン・ヨンファはどこか落ち着かない気分で毎日を過ごしていた。
言うべきか、それとも、敢えて寝た子を起こすのは避けるべきか。
この危機を脱する方法を模索してみたが、恐らくヨンファが出演する番組はすべてチェックされているだろうから、いずれあの男に知られるのは明白だ。
三ヶ月前、同じバンドのメンバー兼恋人であるイ・ジョンヒョンが出演したドラマのキスシーンに臍を曲げ、諍いの原因になってしまったことがあるだけに、ばつが悪いといったらなかった。


今さらジタバタしてみても無駄だということは分かっているものの、できれば穏便に事が済めばいいと望まずにはいられなくて、何とか回避できないかとつい悪足掻きしてしまう。
幾度となく自問自答を繰り返してきたが、いまだに答えは出ていなかった。
いっそのこと、向こうからアクションを起こしてくるまで知らん顔をするという手もある。
誰よりもヨンファの立場を理解してくれているあの男なら、余裕でさらっと流してくれるに違いないし、自分たちの関係は揺るぎないものだと確信しているので、そこまで深刻に考える必要もないのかもしれない。
そんなことを思いながら忙しい日々に身を投じているうちに、この件はすっかりヨンファの頭の中から消え去っていた。










十一月某日。
シャワーを浴び終えたヨンファは薄手のバスローブを羽織り、リビングへと取って返した。
タオルで濡れ髪を拭いながら何げに視線を巡らせて、ローテーブルの上に置いた状態の段ボール箱の存在を思い出す。
ほんの二十分前、マネージャーの車で仕事先から自宅マンションに帰り着き、エントランスを通り抜けるなりフロントでコンシェルジュに荷物を預かっていると呼び止められ、ヨンファが部屋まで持ち帰ったものだった。


ダンボール箱に貼られた送り状には間違いなくヨンファの住所氏名が印字されていて、送り元は世界最大級の通販サイトからだ。
大きさといい、重さといい、まったく心当たりはない。
仕事柄もあり、ネットショッピングは頻繁に利用するが、注文した覚えのないものを目の前にして、ヨンファは妙な胸騒ぎを覚えた。
怪訝に首を捻りながら開けると、何やら怪しげなものが目に飛び込んできて、思わず二度見する。


「――なん、だ……これ……」


発した声は、自分のものとは思えないほど掠れていた。
中に入っていた四角い箱を震える手で持ち上げ、全貌が明らかになった途端、ギョッとしたまま思考が急停止する。
あまりにも衝撃が大きすぎて、度肝を抜かれたヨンファは固まったように動けなくなってしまった。
派手な色の箱に商品名と写真が印刷されているから、一目で中身が分かる。


――豪華10点SMセット
『過激な体位で普段と違う刺激を享受!』
『いつものプレイがもっと過激に!』


ヨンファは宣伝文句を目で追いながら、ポカンと呆気に取られて完全に声を失ってしまった。
しかも、セットの内容にざっと視線を走らせただけで、思いっきり気分が悪くなる。
――口枷、手枷、足枷、十字型枷、首輪、アイマスク、拘束ロープ、バラ鞭、くすぐり羽根、ニップルクリップ。
『豊富なSMグッズで、二人だけの世界と快楽を確立』という記載まであり、どうやらマンネリカップルをターゲットにしているようだった。
こういう趣味嗜好の人間が存在することは知っているが、型にはまったような真面目タイプのヨンファは当然ながら一度も使用したことがないし、興味すらない。


「こんなの頼んでないのに……どういうことだよ……」


悪い夢を見ているような気がした。
突如、降って湧いた事態に、心臓の鼓動がバクバクとものすごい速さで脈打ち始める。
どうして、こんなものが自分宛に送られてきたのだろうか。
まったく身に覚えがなくて、得体の知れない不安感に苛まれながら、ヨンファの頭の中が猛スピードで回り出した。


一体誰が、何のために……。
かつて経験したことのないほどの不可解な出来事に遭遇して、口の中がカラカラに渇いていく。
動揺で思考が纏まらない中、ヨンファは大きく深呼吸を繰り返し、冷静になるように心を落ち着かせた。
何かの間違いではないかと思いたかったが、何度確認しても送付先はここになっている。
問題は、この状況を生んだのが誰の手によるものかということだ。


不意に、目の前のアダルトグッズの中に、嫌というほど見覚えがあるものを見つけた。
昨秋、撮影に臨んだヨンファ主演のドラマが現在オンエアーされているのだが、箱の写真を見る限り、演出として使われた小道具と非常に酷似しているのだ。
引っかかる点はこれのみ。ということは、それを観た人間が揶揄する目的でわざと送ってきたのだろうか。
いつもと変わらないはずの日常が、たった荷物ひとつでガラガラと音を立てて崩れていくのが分かった。
他に理由が思い当たらないだけに、どう考えても悪戯や嫌がらせとしか思えない。
もしかすると、相手役だった女優のファンの仕業ではないかと、そこまで疑ってしまう。


この件が明るみになり、マスコミに嗅ぎつけられればイメージダウンは必至で、その結果、バンド活動存続の危機に陥ってしまうかもしれない。
そんな光景まで目に浮かんでしまう始末だ。
ヨンファが演じた主人公の男に取り憑かれたかのように、一旦妄想し出すと止まらなくなり、考えれば考えるほど思考は悪い方向へと傾いていった。


もし解散にまで追い込まれてしまったら、ジョンヒョンとの関係にも亀裂が入ってしまう可能性があるだろう。
この先も長く四人での活動を続けていきたいという全員の願いがこんな嫌がらせでついえてしまえば、何のために今までやってきたのか分からなくなる。
この時点で、ヨンファはすでに正常な判断ができなくなってしまっていたのだろうか。
もうお終いかもしれないと、絶望に打ちひしがれて深い溜息がこぼれ落ちたその時、ピンポーン、とインターホンが鳴った。
あまりのタイミングの良さにビクンッと全身が大きく震え、恥ずかしいくらいに驚いてしまう。


ぎくしゃくと足を動かして恐る恐る玄関に向かい、ロックを外そうと手を伸ばしたところで、ガチャッという音が響いた。
触れてもいないのに施錠が解除されたことに驚き、思わず息を呑む。
一方的に送られてきた商品といい、知らぬうちに何かに巻き込まれているのではないかと、ゾッとするような恐怖に襲われた。
不意打ちの展開に、心音が不穏なリズムを刻み始める。
それとも、最近仕事で家を空けることが多かったから、まさか空き巣狙いでは!?
顔面が引き攣ったまま身構えると、視線の先でドアが外側から開き、ヨンファより少し上背のある男が入ってきた。


「………っ」


突然、正面に現れた相手を認めてヨンファが目を大きく瞠ると、眉を顰めて胡乱げな視線を向けられる。


「ああ、いたのか。……何だ。その化け物でも見るような顔は」


躊躇する素振りもなく、まるで自分の部屋のように我が物顔で踏み込んできたのは、韓国人離れした彫の深い容貌の恋人だった。
聞き慣れた低い声に安堵の吐息がこぼれ、全身から緊張が抜けると同時に、ヨンファは内心でホッと胸を撫で下ろす。


バンド活動以外では互いの予定を逐次把握していないので、今日一日ジョンヒョンが何をしていたのか知らないが、日頃から服装に無頓着な男はジャージの上下という頭を抱えたくなるような格好をしていた。
相変わらず芸能人としての自覚がないのかと思うほどのマイペースっぷりに驚かされるものの、強烈な存在感を放ち、際立ったルックスであることに変わりはない。
まばらに浮いている無精髭でさえ、かえって精悍な面立ちにワイルドさが加わっている有様で、ヨンファはその姿をまじまじと眺めた。


「……脅かすなよ。泥棒かと思って、マジでビックリしたじゃないか」


脱力感に襲われながら、つい恨み節を口にしてしまう。


「今さらだな。スペアを持ってるんだから、俺だってすぐに察しろよ。そもそも、コンシェルジュ常駐の超高級マンションに住んでおきながら、不審者が侵入するはずがないって思わないか?普通」
「んなこと言ったって……。連絡もせずにいきなり訪ねてきたら、勘違いするだろ」


恋人の整った容姿に見惚れてしまい、照れ隠しに可愛げのない言い方をしてしまった。
そんなヨンファの態度が気に入らなかったのか、ジョンヒョンはムスッと口許を真一文字に引き結び、どこか憮然とした表情を浮かべている。
一見して、あまり機嫌がよくないなと悟った。
さらに、すっと細められた双眸がバスローブ越しに全身に向けられ、肌に纏わりつくような視線に居心地の悪さを感じる。


「ヨンファの格好は準備万端、熱烈歓迎という意味だと思ったんだがな」


すぐ自分の都合のいい方に持っていこうとするジョンヒョンに開いた口が塞がらなかったが、耳に心地いい美声は何かを無理矢理抑え込むように普段より低めで迫力があり、どことなくいつもと様子が違う気がした。


「違うっ。汗を流しただけで、お前が来るなんて思ってなかったし……」
「恋人の家に行くのに、その都度連絡が必要なのか?一緒に住めば、そんな面倒なことをしなくて済むのにな」
「――え?」


思いもよらない台詞に、ヨンファは瞠目する。
一度も考えたことがないわけではないから、目の前の男の口から初めて言われて、ひどく驚いてしまった。
自分たちが芸能人でなければ、そういう選択肢もあったのだろうか。


「でも、ヒョニ……」
「分かってるから、それ以上は言わなくていい」


言いかけた言葉は、途中で遮られてしまった。
ジョンヒョンは玄関でさっさと靴を脱ぐと、ヨンファの横を通ってすたすたとリビングへと歩いていく。
自己完結したのかあっさり引かれてしまい、何と声をかけていいのか分からなくなったヨンファは、ただ広い背中を見つめたまま口を噤んだ。


個人活動が増えるにつれてどうしてもすれ違う頻度が高くなり、寂寥感に苛まれることはある。
毎日顔を見て、ジョンヒョンの存在を身近に感じながら共同生活を送っていた頃とはやはり違う。
だが、いくらふたりがそれを望んでも、実際に一緒に暮らすのは難しいということは分かっていた。


音楽界のバンドグループとして第一線で活躍している現状ではそんなリスクを背負えない上、ジョンヒョンはヨンファとは真逆で、ひとりでいるよりも自宅に多くの友人を招き入れて大勢で騒ぐのを好む。
それぞれ抱えている事情が違うのは当然で、どちらかが我慢を強いられることにでもなれば、今以上に衝突するのは目に見えていた。
苦労の末、同居に至ったとしても、速攻で破局するのではないかという危険性を大いに孕んでいるのだ。
だから、今の形が自分たちにとってベストであり、一般の恋人同士と比べても遜色ないと思っていた。
それでも、考えずにはいられない。
あといくつ歳を重ねれば、その可能性は見えてくるのだろうか――と。


「それはそうと、俺に何か言うことがあるんじゃないか?」


ゆっくりとした歩調であとに続き、キッチンでコーヒーでも淹れようとしたヨンファの思考を一瞬にして吹き飛ばしたのは、ジョンヒョンの一言だった。


「へ?」
「いつ弁解してくるかって、ずっと待ってたんだがな。サン・マル」


何の前触れもなく、いきなりドラマの役名で呼ばれてドキリとした。
心なしか尖った声音に振り向くと、ソファの背凭れに身を預けるように座り込んでいた男と視線がぶつかり、眦の切れ上がった双眸がどこか面白がるような光を湛えているのに気づく。
最悪なことに、ジョンヒョンの正面にあるローテーブルには、先ほどまでヨンファを震え上がらせていたものが堂々と放置されたままだったのだ。
鷹揚な動作で、何でもないことのようにその箱をひょいと手にするが、大して驚いている様子がない。
その瞬間、不可解な点が繋がったような気がして、ヨンファは危うく声を上げそうになった。


――ま、さか……!?


困惑する素振りもなく、器用に箱から中身を取り出しているジョンヒョンに全身が粟立つ。
『豪華10点SMセット』を送りつけてきたのはこの男ではないかと、ヨンファはぞわりとするような感覚が背筋を這い上っていくのを感じた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(4)

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yaoi

お疲れ様です。

帰りの新幹線でいそいそとペーパーを広げて、楽しんだのは私です。あははん。

いやいや、ご一緒させてもらって楽しかったですよ。
久々の新しい書き手さんとの出会い!
うんうん。
またまた楽しませてもらいつつ、自分もひっそりと頑張ろうかと思った次第です。

では、またご一緒しましょうね。

2017/11/19 (Sun) 23:12

haru

yaoiさん

こんにちは♡
福岡ではいろいろ連れて行って下さって、どうもありがとうございました♪
ラーメンとタピオカ豆乳がすごく美味しかったです。
冊子も楽しく読ませていただきました(〃ω〃)
初めて尽くしでしたが、yaoiさんたちのお陰でとても素敵な一日になりまして、元気をいっぱいもらいました。
是非またご一緒させて下さいね(*´ω`*)

2017/11/20 (Mon) 12:16

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2017/11/22 (Wed) 00:58

haru

i*****さん

こんにちは♡
また弾かれる可能性があるんですね(笑) ウケた!
アマゾンで調べて、レビューでも高評価だったので、これにしました。
どんな感じにするか、しっかり練ってお届けしたいと思います(〃ω〃)
コミカル色に切なさを少し滲ませてみたんですが、分かって下さって嬉しいです♪
私たちは許しても、バニがねぇ。ということで、いろいろやってみます。

今続きを書いている不遜、先日のジョンシンが少しは話に反映できていればいいのですが。
ずっと私がイメージしていた通りに逞しくなってくれて、もう嬉しくて倒れそうです(≧ω≦)

モヤモヤはすっかり吹き飛んじゃいました。それも、福岡に行ったお陰ですね♡
のんびりペースではありますが、CNからもらった萌えはすべて話に注ぎ込んでみます。
i*****さんにお会いできて、本当に嬉しかったです。
また一緒に行きましょうね(*´ω`*)

2017/11/22 (Wed) 12:49