CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 55

2017年06月16日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 6






目的地に近づくにつれて、車中から眺めていた街並みはすっかり夜の帳が下り、いつの間にか煌々と輝くネオン街へと変貌を遂げていた。
南部洞組が経営しているホストクラブは、ソウル最大の歓楽街として知られる江南の一角にあるそうで、このエリアはナイトスポットが密集している。
本来は青龍組の勢力範囲のはずだが、友好関係を結んでいることから、案外シマを共有しているのかもしれない。


江南は世界的にも有名な観光地で、昼夜を問わず自国民や海外からの観光客で溢れ返っており、眠らない街とも言われるくらい大賑わいの様相を呈している。
目指す店は東側の裏通りに位置しているようで、ホンギ曰く、ソウルではかなり名の知れたホストクラブらしい。
ただし、会員制ということで、規定の審査に通らなければ入会できないため、おのずと客層がセレブ中心になっているとのことだ。


近くの立体駐車場に車を停め、通りに沿って肩を並べて歩いていると、ホンギが歩調を緩め、「あそこだ」と十メートルほど先を指さす。
周囲には飲食店以外にクラブやキャバクラなどが所狭しとひしめき合っていて、空気感からして違っていた。
やがて、ある雑居ビルの前で立ち止まり、こちらを振り返る。


「この下だから」
「……ああ」


促してくるホンギに頷きながら視線を向けた先に、ヨンファは絶句した。
目の前の地下へと続く階段が全面、豪華な鏡張りになっている。
気後れするヨンファを誘導するように、軽快な足取りで進んでいく親友のあとを慌てて追いかけ、階段をすべて降りきると、地下一階フロアを占める『Club Blueming』という店に辿り着いた。


店先には派手に大きく引き伸ばしたホストの写真が並べてあるわけでもなく、一見してホストクラブとは分からないような落ち着いた佇まいを見せていた。
もっとどぎつい印象を抱いていたが、会員制ともなると過剰に触れ込む必要がないのだろう。


当然のことながら、女性客をターゲットにしたこの手の店に入るのは、ヨンファにとって初めてだった。
正面の扉の奥に何が待っているのかと、未知の世界に多少なりとも躊躇してしまう。
客や従業員たちとトラブルになる事態だけは避けて、何事もなく時間が過ぎてしまえば、数日間手伝うくらい何てことはない。
心の中でそっと息をつき、いい加減腹を括れと自分に言い聞かせながら、どうにか気持ちを落ち着かせた。


エントランスの重厚なドアを開けて、ホンギに続いて足を踏み入れるなり、派手な色彩を放っている店内が視界に入る。
開店前で客が入っていない状態だから閑散としているものの、通路を真っ直ぐに奥へと進むにつれて、全貌が明らかになってきた。
眼前に広がる光景に、ヨンファは思わず目を瞠る。


周囲を見渡せば、フロア全体はかなり広々としていて、高級感の漂うラウンドソファが置かれたいくつものボックス席で構成されていた。
通常ルーム以外に、一段高くなっている中央にはVIPルームらしきスペースまである。
いかにも女性受けしそうな内装は見事なくらい豪華で、天井には美しい輝きを放つシャンデリアや最新LEDが搭載され、眩しいほど煌びやかだ。


そんな店内で、数人のホストと思しき男たちがテーブルを拭いたり、バーカウンターの中で作業するなど、忙しそうに動き回っている。
接客だけでなく、こういう裏方の営業準備も自分たちでやるのかと感心しながら、ヨンファは隅々まで視線を走らせた。


セレブ御用達と言われる高級店に相応しく、ラグジュアリー感溢れる上質な空間を演出し、ゆったりと寛げる大人の遊び場が提供されている。
客の目を引くように、ガラス仕様の保管庫に多種多様な酒がディスプレイされ、その隣にはゴージャスなシャンパンタワーが存在感たっぷりに鎮座していた。


女性はこういった現実を忘れてしまうような、非日常の居場所を求めてやってくるものなのだろうか。
場違いな雰囲気に呑まれてその場に立ち尽くしていると、ホンギの肩越しに見知らぬ人影が近づいてくる。


「おはようございます」


感じよく挨拶してきたのは、ヨンファより目線が上で、二十代半ばくらいの男性だった。
ホストのひとりなのだろうか。
すらっとしたスタイルはピンと背筋が伸びていて、整った顔立ちをしている。


「おはよっす。マネージャー、来てる?」


愛想のいい青年は柔和な表情でヨンファにも会釈をし、ホンギを見て言う。


「はい。先ほどお見えになりました。――ところで、そちらがホンギさんのお知り合いの方ですか?」
「そっ。超イケメンだろ」


ヨンファと視線が合うと、彼はちょっと驚いたように目を見開いてから、にっこりと穏やかに微笑んだ。


「はい、想像以上ですね。マネージャーに伝えてきます」


ホンギと何やら頷き合ったかと思うと、スマートな身のこなしで颯爽と踵を返す。
奥の部屋へと消えていく後ろ姿を見ながら、立ち居振る舞いが優雅で落ち着いていて、想像していたホストとは随分イメージが違うなと思った。


「あっ、ホンギさんだ。おはようございます」
「よぉ、お疲れさん。ちょっと集まってくれるか」


ふたりの存在に気づいた何人かのホストが作業の手を休めて、口々に挨拶しながらわらわらと近寄ってくる。
すると、会話を聞きつけたのか、スタッフルームのような部屋からも若い男らがぞろぞろと出てきて、ヨンファとホンギは瞬く間に、華美で洒落たスーツを身に着けたイケメン集団に取り囲まれていた。


十数人いるホストたちは、確かに高レベルの容姿の持ち主ばかりのように見える。
こんなに大勢いるのなら、何も素人の自分が手伝う必要はないのではないかと疑問に思ってしまった。
ホンギから聞いた通り、南部洞組の事務所で見かけた顔ぶれも混じっていて、興味津々といった様子でヨンファに視線が集まる。


完全アウェー状態の居心地の悪さと派手なホスト軍団に圧倒され、気の利いた言葉さえ出てこない。
いつも以上にビシッと決めているホンギはいいとして、ヨンファは出先から自宅マンションに戻ってラフな服装に着替えたのだ。
下はデニムで、白シャツにグレーのVネックニットを重ね着してジャケットを羽織った格好は場違い感が否めず、明らかに周囲から浮き上がっていた。
なぜかよく分からないが、粘着性のある視線を全身に浴びて、顔が引き攣りそうになる。
やや緊張した面持ちのヨンファに気づくはずもなく、隣の親友は高らかに声を上げた。


「紹介しとくな。彼は、俺の大切な友人なんだ。今日は無理を言って手伝いに来てもらったから、くれぐれも親切丁寧に接するように。頼むな」


ホンギの紹介に「おおーっ」というどよめきが起き、どこから出てきたのか、気がつけばホストの数がさらに増えている。
好奇の眼差しを四方八方から一斉に浴び、まるで品定めされているようで、針のむしろ状態だ。


「――ジョン・ヨンファです。ほとんど役には立たないと思いますが……」


一応名乗ってみると、語尾は盛り上がっている連中の興奮気味の声に、見事に掻き消された。
あちらこちらから続けざまに自己紹介されるので、到底すべてを覚えられるはずもなく、取り敢えず愛想笑いを浮かべて調子を合わせておく。


ざっと見たところ、年齢は二十歳から三十歳くらいまでと思われ、身長は170センチほどの小柄で可愛いタイプもいれば、ヨンファを軽く超す長身でいかにも体育会系といった男もいる。
全員が様々な色合いのタイトなフォルムのスーツに身を包み、ネクタイやスカーフなどの小物を上手く使った着こなしは、どこか洗練された空気を漂わせていた。


中には、芸能人顔負けのルックスをした者もいて、明るめの色にカラーリングして毛先を跳ねさせたスタイリッシュなヘアスタイルをしていると、一般人には見えない。
アクセサリーはピアス、指輪、ブレスレットなど、シルバー系のシンプルなものだけ身に着けていて、品位を落とさないように配慮しているように思えた。
何よりも自分の外見に自信を持っているのが窺い知れるので、人目を引くことは百も承知しているのだろう。
病欠しているホストはこの面子よりももっと顔面偏差値が高いらしいが、一体どんな面構えをしているのか拝んでみたいものだ。


「あの、ちょっと訊いてみるんですけど」


唐突に、正面に立っている長身の男から声をかけられて、そちらに視線を向ける。


「モデルか何か、されているんですか?」
「え?――いえ、何も……」


思いがけない言葉についていけず、瞬くヨンファをよそに、今度は別の男が距離を詰めてきて、真顔で問いかけられた。


「恋人は、当然いますよね?」
「……はい?」


好奇心たっぷりに目を輝かせたホストたちから続けざまに質問をぶつけられ、ぽかんと相手を見返す。
咄嗟にあの男を思い出し、どう答えるべきか躊躇しているヨンファを見て、肩を竦めたホンギがハスキーな声で助け舟を出してくれた。


「こら、人のプライベートを根掘り葉掘り訊くんじゃねぇよ。ヨンファが困ってんじゃん。この際だからはっきり言っておくが、最強の助っ人なんだから、モーションなんか絶対にかけんなよ」


全員を見渡しながら釘を刺すホンギに、「分かりました」と皆一様に頷いている。


――モーション……だと……?


これ以上、面倒なことに巻き込まれたくないので、あまり深入りすまいと、言葉の意味に気づかない振りをしておいた。
触らぬ神に祟りなし。ここには数日しかいない身なのだから、店を出てしまえばこの場にいる大半とは二度と会うことはないだろう。
極力波風を立てずに何事もなくやり過ごそうと、ヨンファは固く心に誓った。


「これだけ美人さんなら、いない方がおかしいか」
「彼女じゃなくて、彼氏なのかな?」
「いちいち詮索するんじゃねぇっての。お前らだって、あれこれ言われたら、気分悪いだろ」


本人を前にして、好き勝手に想像しながらしゃべるホストたちを、呆れ顔の親友が諫めてくれるから助かる。
全員が遠慮のない間柄のようで、場の雰囲気はどこか和やかだ。
楽しそうな様子をそばで眺めながら、不意に眦の吊り上がった精悍な貌が脳裏に浮かんで、ヨンファの胸の奥がキリキリと痛んだ。


ジョンヒョンとはあの日以来、顔を合わせていなかった。
互いの苛立ちをぶつけるように言い合いになってしまい、後味の悪い思いを抱えたまま席に戻り、頑なにジョンヒョンの姿を視界に入れなかったことを思い出す。


翌日も腹の虫は収まらず、とても会う気にはなれなくて、たとえジョンヒョンから連絡があっても絶対に断るつもりでいた。
だが、予想は見事に外れた。
その時点ではまだ、時間が経てばそのうち何か言ってくるだろうと高を括っていたが、結局、今日に至るまで電話もメールもない。
ただの思い上がりだった自分が、ひどく滑稽で惨めで、笑えた。
そんなヨンファを嘲笑するかのように、淡々と時間だけが過ぎていく。


仕事が忙しいのか、それとも他に理由があるのか。
もしかすると、向こうもいまだに怒っているのかもしれない。
以前に比べて、会う頻度が低くなったことはヨンファも気づいていた。
それは、ミニョクがジョンヒョンのマンションに身を寄せていることと関係があるのだろうか。
あの男のすべてを把握しているわけではないから判断しにくいが、今回の件で距離を置かれているのは間違いない。
そう考えると、ヨンファの心は不穏に波立ち、何とも言えない気分になった。


深夜に突然訪ねてくれかもしれないと思い、ベッドの中に入ってもなかなか寝つけないし、いつ連絡があってもいいようにスマートフォンの電源は常に入れた状態にしている。
でも、すっかり耳に馴染んだ着信音は鳴らないのだ。


どうしたらいいのだろうか。
まるでボタンの掛け違いみたいに、気持ちがすれ違ってしまっている。
以前に比べて頻繁に肌を合わせ、あんなに身近に感じていた存在が、急に遠くなったような気がしてならなかった。


考え方に温度差があるのは仕方がないと頭では分かっていても、ジョンヒョンの心が読めないことに焦りを感じてしまう。
あの時の表情を失くした男らしい顔が何度もリフレインし、挙句の果てには愛想を尽かされてしまったのではないかと悪い方向に考えが及び、心が千々に乱れるのを止めることができなかった。


こちらから電話してみようかと、何度もスマートフォンを手に取ってみるものの、何と言って気持ちを伝えたらいいのか分からないのだ。
メールを送ろうかとも考えたが、文字だけだと事務的で素っ気ない感じがして、結局は何も実行に移せないままだった。


直接会って話すのが一番いいのは、よく分かっている。
だが、ミニョクがいるのに、こちらから押しかけるような真似はできないし、そこまでの勇気はなかった。
思いついてもことごとく上手くいかなくて、ただ待つだけの日々なんて本当に極道の愛人みたいだなと、自虐的な気分でそう思う。
心の中の虚しさを打ち消そうと奥歯を噛み締め、ヨンファが頭を切り替えた時だった。


挨拶らしき声とともに、誰かが店内に入ってくる気配がする。
それに気づいたホンギが、「おっせーよ」と文句を言うと、あまり悪びれていない様子で「病み上がりなんだから、勘弁しろよ」と、のんびりとした口調で言葉が返ってきた。
ここには一体何人のホストがいるのかと、ひどく身の置き所のない思いをしながら佇んでいたところ、いきなり横合いから聞き覚えのある声がした。


「あ、れ?……ヨンファ、だよな――!?」


視線を巡らして、遅れてやってきた人物をとらえた瞬間、ヨンファは思いがけなさに目を大きく見開く。


「あっ……!」


ホンギから聞いていたのに、この慣れない状況に動揺していたせいか、すっかり頭から抜け落ちていた。
昔の面影はしっかり残っているものの、しばらく見ないうちに、格段に男振りが上がっていることに驚く。
そこには、高校卒業とともに付き合いが途切れていた、懐かしい元親友の姿があった。





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2017/06/16 (Fri) 20:43

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2017/06/16 (Fri) 22:01

haru

t*******さん

おはようございます♡
そうなんです。新たな人物……バレバレですけど(笑)
あんまり書いたことがない人ですが、思い描いているイメージでやってみます。
話自体はそんなに膨らますつもりはなくて、ちょっと寄り道する感じでしょうか。
楽しみながら形にしてみますね(〃ω〃)

2017/06/17 (Sat) 05:17

haru

は*さん

おはようございます♡
は*さんにそう言ってもらって嬉しいですが、今までこの手の話を書いたことがなかったので、こけないようにしたいです(TωT)
ヨン、受難の巻といった感じでしょうか。
あの人が出てきたので、私にとっては初の試みばかりですが、いろいろやってみます(〃ω〃)

2017/06/17 (Sat) 05:29

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2017/06/17 (Sat) 15:25

haru

j****さん

こんばんは♡
ド素人のヨンがこんなところで果たして務まるのでしょうか(TωT)
あの美貌なので、いろいろ大変かもしれませんね。本当にどうなることやら。
相手からの連絡を待ってないで、自分からかけなさいよ釜山ズ。と思ってしまいますが、こういう焦れったいのがたまらなく好きなんです…。

ペンミのチケットがゲットできて良かったですね♪
前日ともども楽しんできて下さい(*´ω`*)

2017/06/17 (Sat) 21:24