CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 54

2017年06月11日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 10






その日は、間違いなく生涯忘れることのできない厄日といえるだろう。


目的地へと向かう車中で、ヨンファは何とも複雑な気分を抱え、運転席のホンギに気づかれないようにそっと息を吐く。
見知った景色が窓の外を流れるのを目で追いながら、頭の中は普段の冷静さを失っていた。
これから自分の身に起こることを考えただけで、目眩がしそうになる。
つい数時間前まで、まさかこんな事態に巻き込まれるとは思ってもみなかったのだ。


ホンギの頼みごととは、南部洞組が経営しているホストクラブのホスト数人がインフルエンザでダウンして人手が足りないから、代わりに手伝ってくれないかという衝撃的な内容だった。


最初聞いた時は、あまりにも予想外すぎて思わず耳を疑ってしまった。
何かの冗談だと思いたかったが、通話の向こうの切迫した空気に、これは洒落にならない展開だと頭の中で黄信号が灯り、悪いと思いつつ即座に断った。
親友の頼みであれば何を置いても協力してやりたい気持ちはあるものの、ヨンファは学生時代にアルバイトをした経験がなく、これまで医療現場でしか働いたことがないのだ。


そんな自分に、接客なんてできるはずがない。
しかも、ホストクラブとなれば、一般の飲食店とはわけが違う。
ヨンファは女性客を前にして気の利いた台詞がスラスラ言えるタイプでもないし、相手を喜ばすような会話術があるわけでもない。
ドラマやドキュメンタリー番組で見たことのあるホストの姿を思い浮かべながら、自分には絶対に無理だと結論づけた。


ただ断るだけでは気まずくて、臨時休業にしてはどうかと提案してみたが、年中無休だと掲げているため客の信頼を失うことになるから、それはできないと即答された。
しかも、病欠しているホストはソウル中から集めた選りすぐりばかりで、顔面偏差値が相当高いらしい。
人員を補うためにホンギや南部洞組の組員たちがホストとして店に出ているらしいのだが、明らかに売り上げに響いているとのことだ。
それなら、自分が手伝っても同じ結果だと返したところ、『お前は別格に決まってんだろ』と言い切られた。


返答に詰まるヨンファに、『スーツはこっちで用意するし、報酬もはずむから頼めないか?』と心底困っている様子で懇願された。
ホンギには、チルソン組に攫われた時に助けてもらった恩義があるから、あまり無下にはできない。
滅多に耳にすることのない弱りきった声を聞いているうちに、いつしか情にほだされてしまい、ヨンファはその頼みごとを引き受ける羽目になったのだ。


そして、ホンギが迎えに来たのは、電話があってから二時間後。
ヨンファは自宅マンション前に横付けされた黒いレクサスに乗り、今ちょうど江南区のとある場所に向かっている最中だった。
ひどく機嫌よさそうに運転席でハンドルを握っている親友に、ちらっと視線を走らせる。


シルバーグレーのスーツに身を包んでいて、同系色のネクタイに黒シャツを合わせるという派手目なコーディネートは、ホストを意識してのことだろう。
極道を生業にしているにもかかわらずどこか洗練されていて、ファッション雑誌から飛び出してきたような出で立ちだ。
   

突発的に心を揺り動かされて決断してしまったが、安請け合いしたのではないかと、今頃になって後悔の念が押し寄せる。
逃げようにも逃げられない状況に追い込まれながら、いまだに腹を括れないでいることを気づかれたのだろうか。
睨みを利かせると強面になるものの、普通にしていると大きな瞳がトレードマークのやや童顔気味の男は、横顔をさらに柔らかくした。


「急な話でホント悪い。礼はたっぷりさせてもらうからな」
「いや、それはいいんだが……」


報酬を貰うつもりは端から無い。
そんなことよりも、ヨンファは少しでも不安を払拭したいがために、運転席に目を遣りながら切り出してみる。


「――俺には接客力なんて微塵もないけど、それでもいいのか?」


往生際が悪いと自分でも思うが、いつになく気分が落ち着かなくて、何かしゃべらずにはいられなかった。


「変にお世辞を言う必要なんてまったくねぇから、普段通りにしてたらいいんだよ。酒を勧めて客の話に適当に頷いとけば、それでOK」
「そんな簡単なものなのか?サービスが悪いと文句を言われても、対処できないぞ」
「その時は、マネージャーやベテランホストがいるし、何とかなるさ」


何でもないことのようにすっぱりと言い返されてしまい、ヨンファは他の懸念材料も口にしてみる。


「あと、知り合いにばったり出くわすのが、一番まずい」
「うちは会員制だし、セレブ御用達の店として広く知れ渡ってるからな。一般レベルの客は少ないはずだけど、思い当たるような知人でもいるのか?」
「……いや」
「それなら、心配いらねぇよ」


プライベートでセレブ女性の知り合いはいないが、過去、自分の受け持っていた患者だったというケースは考えられる。
可能性としては限りなく低いとは思っても、用心に越したことはない。
すでに大学病院を辞めていると身とはいえ、変な噂でも立てられたら医師としての死活問題に発展する恐れだってあるのだ。


「ただまあ、仮に会ったとしても、だ。それをベラベラ吹聴して回るような下司はいないと思うぞ。ホストの容姿には厳しいけどな」
「厳しい……とは?」


思わず訊き返すと、車を走らせながらホンギは横目でこちらを見てきた。


「ハイソなだけに上昇志向が強いっての?見た目重視なところがあるから、自分の好みに合わないと駄目出ししてくるっつーか」
「そう、なのか?」
「俺以外に、組の若いもんを三人駆り出してるんだけどよ。別にブサメンってわけでもねぇ、平均レベルの面構えなのに、客からクレームつけられたのには驚いた」
「……マジか」


苦笑混じりに漏らした内容に絶句して、微かに眉間に皺が寄る。
面と向かってそんなことを言われたら男としてさぞ凹むだろうなと想像していると、それを跳ね飛ばすようにホンギはけろりと笑った。


「その点、ヨンファは余裕でクリアーしてるからな。愛嬌を振り撒かないといけないとか、難しく考えなくていい。素のままで十分」
「……………」


前方を見据えたまま、さも面白そうに言い切られて、ヨンファは返事に窮した。
人それぞれ好みというものがあるから鵜呑みにはできないし、そんなに簡単に済むとは到底思えない。
溜息をつきながら腕を組んで、ヨンファは胡乱げに運転席に視線を向けた。


「客に無理矢理一気飲みさせられて、急性アルコール中毒であの世に行くとか……そういうオチはないよな?」


ぼそりと口をついて出た呟きに、隣の男が噴き出す。


「ないない。イケメンホストを肴に美味い酒を飲むって感じの店だから、そんな低俗なことをさせる客なんていねぇよ。間が持てなかったら、ヨンファも飲んで楽しめばいいんだよ。滅多にお目にかかれない高級酒ばかりだぞ」
「まあ、そうだな……」


渋々頷くヨンファに、ホンギは唇の端を引き上げて笑った。
正直、気はまったく進まないが、酒の力を借りれば何とか乗り切れるかもしれない。
ホンギの言葉に少しだけ気持ちが軽くなったような気がして、ヨンファは助手席の背凭れに寄りかかったまま、フロントガラスの向こうの夕景が徐々に夜景になりつつあるのを眺めていた。





To be continued





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています♡バナーを押していただけると、励みになります♡♡
スポンサーサイト



haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(10)

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/06/11 (Sun) 13:39

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/06/11 (Sun) 19:01

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/06/11 (Sun) 19:18

haru

t*******さん

こんばんは♡
こっそり大歓迎です♪読んでいただけることが私にとって何よりの糧なので、本当に嬉しいです。
これから先どうなるか、想像してやって下さい(笑)
このネタ、書きたいと思って、ようやく一年越しに実現しました。
今週寝すぎたので、明日からは大丈夫かなと思います(*´ω`*)

2017/06/11 (Sun) 20:52

haru

は*さん

こんばんは♡
19話をアップした時から、いつかはこのネタを書きたいと思い続け、一年も経ってしまいました(TωT)
私もホストクラブに行ったことはないのですが、ドラマはいくつか観たことがあるので、何とか書き切れればなと違う意味でドキドキしています。行ってみたいと思って下さって、とても嬉しいです♪
は*さんの想像と違うかもしれませんが、あれこれやってみます。

ねむねむ週間って表現が可愛いです(笑)
急に暑くなったし、は*さんも働いていらっしゃるから、いろいろとお疲れだと思います。
私はTwitterで何かしら鼻血ネタを拾っているお陰で毎日楽しくて元気なのに、なぜか時たま急激に眠くなる週がありますね。
明日からまた仕事ですが、お互い、乗り切っていきましょう(*´ω`*)

2017/06/11 (Sun) 21:31

haru

ふ*******さん

こんばんは♡
もう少し先まで続きを書いているのですが、直しに時間がかかりそうだったため、導入部分だけアップしました。過去最低文字数なので、お恥ずかしいです(TωT)
ふ*******さんにそう言ってもらえてとても嬉しいです♪まだほんの一部なので、あれれ?ってなったらごめんなさい。
CNの前はFTがお好きだったんですね♡書いている私が一番ホンギを知らないと思うので、恐れ多いです。もったいないお言葉をどうもありがとうございます(〃ω〃)
一年経ってやっとここに辿り着いたので、書きたいと思っていたネタを全部ぶっこんでみます。いろいろと想像してやって下さい(笑)
連日寝すぎたので、しっかりと頭を動かしていきたいです。お心遣いに感謝します(*´ω`*)

2017/06/11 (Sun) 22:17

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/06/12 (Mon) 11:46

haru

つ*さん

こんばんは♡お久しぶりです♪
えっ、自粛しないで下さい~~(TωT)(TωT) 興奮コメント、大歓迎です(〃ω〃)
この展開、一年前から考えていまして、ここにきてやっと書き始めることができました。あの人のいる店です。
「あれ」というのは、アレのことかな?
もし間違いでなければ、リクエストをいただいたので、来年、本格的に書こうと思っています。
つ*さんはFTもお好きですよね♡私、2015年のキングダムのインタビューくらいしか知らないので、イメージが違ってたらごめんなさい。
いろいろとぶっこんで書いてみます(*´ω`*)

2017/06/12 (Mon) 21:13

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/06/12 (Mon) 22:46

haru

j****さん

こんにちは♡
ホストクラブに駆り出されたヨンの巻です(笑)
長い間、このネタが書きたくてたまらなくて、ようやく辿り着きました。こういう店があれば行ってみたいですね(〃ω〃)
私好みの展開をいろいろとぶっこんでみますが、j****さんと萌えどころが違ったらごめんなさい。

「猟奇的な彼女」はTwitterでちょこっと見てます。ハングル語なのでよく分かりませんが、雰囲気だけ(TωT)
カン・ジュニョンの韓服から役柄に至るまで超ドストライクで、めちゃめちゃ格好いいですよね!!
ダルヒャンとどこかで♡同じ朝鮮時代なので、そのお気持ちすごく良く分かります~。
すぐには無理ですが、書きかけの話でいずれ何とかしたいとは思っています(。・ω・。)ゞ

2017/06/13 (Tue) 12:52