CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

シアワセ日和 中編

2017年05月19日
ミニョヨン短編 6






「今日、泊まってもいい?」


何の前触れもなく切り出されて、キッチンで皿を洗っていたヨンファの手が止まる。


「あ、うん……もちろん」


ドキリとしたものの、極力平静を装いながら隣に視線を向けると、ミニョクは眼鏡越しに切れ長の目を細めるようにして、ふんわりと笑った。
夕飯を買ってきてもらったから、洗い物は自分がやるとシンク前に立って作業をしているヨンファの横で、ミニョクは慣れた手つきで直火式エスプレッソメーカーから抽出したコーヒーをマグカップに注いでいる。


時々泊まっていくことがあるため、ミニョクの着替えや身の回りの備品などはひと通り揃っていて、急に言われても別段困ることはなかった。
けれど、泊まるからと言って、その先が期待できるわけではない。
嘘みたいな話だが、キングサイズのベッドにふたりで横たわっても、キスまではするがそれ以上には至らないのだ。
仕事が忙しくてお互いに疲れていたのもあったが、恋人同士が一緒に寝ていて何もないというのは、どう考えてもおかしい気がする。


ずっと引きずっていた気持ちがひょんなことから叶ってしまい、両想いになれただけでも感謝しなければならないのに、人間はとても欲張りにできているようだ。
短期間のうちに状況が激変してしまったから焦る必要はないのに、ひとつ手に入れれば、次が欲しくなる。
そんな浅ましいことを考える自分が嫌で、疚しさからまともにミニョクの顔が見られなくなり、ヨンファはつい俯いてしまった。


まだ付き合い始めたばかりなのに、倦怠期をすっ飛ばして、もはや末期状態だったらどうしよう。
きちんとセックスすることすらなくこのまま終わってしまったらと、最悪のことばかりが頭をよぎる。
もしそれが、現実のものとなってしまったら――。
想像しただけで、胸が締めつけられそうになった。


「コーヒー、向こうに持っていくね」
「うん、サンキュ」


ミニョクはふたり分のマグカップを手に、そのまま脇を通りすぎてリビングの広々とした黒い革張りのソファに移動する。
いつも控えめに一番端のソファに座るから、ヨンファはサイドテーブルを挟んで隣に腰を下ろすしかない。
物を置くには便利だが、この小さな存在が非常に邪魔で仕方がない上に、横幅がかなり余裕のあるソファだから、ミニョクとの間にどうしても距離ができてしまう。


ヨンファはソファに沈み込むように凭れて、手渡されたマグカップを握り締めた。
ひとりの時は十二分に寛げるスペースなのに、ミニョクが隣にいるというだけで、途端に心臓が早鐘を打ち始める。
動揺を悟られまいと、淹れたてのコーヒーを飲みながら何の気なしに大画面のテレビに目を遣るが、面白くもなんともない。


手持ち無沙汰もあり、完全に画面に意識が向いているミニョクをちらっと横目で見る。
ソファにゆったりと腰かけた男は、スラリとした長い脚を無造作に組んでいて、とてもリラックスしている様子だ。
時折、笑いながら話しかけてくるが、番組の内容に興味がないから、おざなりな返事になってしまう。
まったりとコーヒーを飲んでいる、男らしく引き締まった横顔を眺めながら、ヨンファは心の中で小さな溜息をこぼした。


せっかくふたりきりなのに、なかなか甘い雰囲気になりそうにない。
この調子だと、今日もいつもと同じ結果に終わりそうだ。
一体、何がいけないのだろうか。
楽しそうなミニョクの隣で不安ばかりが胸の中に広がり、抑えきれないくらい急速に膨れ上がっていく。
こちらは、それどころではないというのに。


気づいたら、形のいい真一文字に引き結ばれた唇に目がいってしまい、自分は欲求不満なのかと呆れてしまう。
もう少し積極的になってくれたら、こんなに悩まなくても済むのにと、ミニョクに対して腹立たしささえ感じた。
知らず知らずのうちにヨンファは眉根を寄せ、画面に視線を戻す。


このまま番組をだらだらと観たあとは、ミニョクだけシャワーを浴びて、キングサイズのベッドに並んで文字通り寝るだけになるだろう。
今どきの高校生でも、こんなことはないはずだ。
何を考えているのか、ミニョクの気持ちがたまらなく知りたい。
ヨンファはソファの上で、頻りに独りで煩悶していた。


「どうかしたの、ヒョン?」


唐突に話しかけられて、ヨンファはビクッと過剰に反応してしまう。
そんな自分を心の中で叱咤しながら、こちらの思惑を悟られないように平静を装った。


「……へ? 何が?」
「なんか、すごい顔して観てるから」


何気に失礼だなと思いつつも、どうすごいのか気になって、自分の顔に触れてみる。
すると、「ほら、ここがコイル巻き」と、長い指に眉間の辺りをなぞられた。
どうやら無意識のうちに皺が寄っていたらしい。
こんなことをいちいち教えてくれなくてもいいのに。
ヨンファは憮然とした面持ちで、可愛げのない返答をしてしまった。


「悪かったな、変な顔で」
「違うよ。そうじゃなくて、親の仇みたいに画面を睨んでいるから、ホドンさんと何かあったのかと思って」
「はぁ~?」


テレビに視線を向けると、体格のいい刈り上げ頭の男が満面の笑みで、画面いっぱいに映っていた。
バラエティ番組のMCの代表的存在で、帝王とも呼ばれているカン・ホドンとは何度も面識があり、近いうちに番組で共演することが決まっている。
とんだ勘違いをされ、ヨンファは脱力感でその場に倒れそうになった。
「俺の気も知らないで、この馬鹿っ」と罵ってやりたいのをぐっと我慢して、取り敢えず気持ちを落ち着かせる。


「ホドンさんは関係ない。ちょっと考えごとをしてただけだ」


鈍いのか鋭いのかよく分からなくて、内心で狼狽えてしまった。
そこまで露骨に、顔に出ていたのだろうか。
少しピントがずれているものの、どうでもいいことには敏感なくせに、恋人の鬱積した感情に気づかないとは何事かと、無意識のうちに唇を尖らせる。
だが、次の言葉によって、ヨンファの機嫌は一変した。


「またそうやってすぐ膨れる。可愛い顔が台無しだよ」
「え……」


膨れるというのは余計だが、ミニョクの口から思いがけない言葉が飛び出し、ヨンファは大きな瞳をぱちくりさせた。
――可愛い?
さらっと言われた台詞に、顔が熱くなる。
ちょっと嬉しいかも……。いや、ちょっとどころではない。かなり嬉しい。


そこで、ヨンファはハッと気づいた。
もしかしたら、ミニョクは相当奥手なのではなかろうかと。
そう考えてみると、これまで思い悩んでいたことと辻褄が合うし、同性相手ならさらに腰が引けるのも分かる気がする。
それなら、キス止まりでも仕方がないのかと、自分を納得させるだけの理由を強引に当て嵌め、無理矢理に結論づけてみた。


ふたつ年下のニブチン男にはやはりこちらがリードしなければならないのかと、トホホな気分でヨンファはソファに置かれているミニョクの手にそっと自分の手を重ねる。
すると、メタルフレームの奥の瞳がフッと和らいで、その表情から嫌がられていないことは分かった。
指を絡ませるようにギュッと握り込むと、触れ合った箇所から愛しい体温が直接感じられて、心臓の音が高鳴る。


それらに背中を押された形で、ヨンファは飲み終えたマグカップを背後のカウンターに置くと、少しずつ間合いを詰め、妨げになっているサイドテーブルに乗り上げながら、さりげなくミニョクに身を寄せた。
触れたところから伝わってくる温もりが、ひどく心地よい。
もっと感じたくて大胆に凭れかかると、そっと肩を抱き寄せられた。


次に、指先で優しく髪を梳かれ、顔の輪郭を辿るように触れてくる。
たったそれだけのことで、不安な胸中が少し和らいだような気がした。
顎の下を撫でられると、もしかして猫と同等の扱いを受けているのではと思ってしまうが、ヨンファは甘えるような仕草で温かい手に身を委ねる。
好きな相手と身を寄せ合うのは、こんなにも満ち足りたひとときをもたらしてくれるものなのだ。
肩口に頭を預けたまま、ヨンファはくすぐったいような気持ちになる。
だが、次の一言で上昇していた気分に陰りが差した。


「ホドンさんって、なんでこんなに面白いんだろうね、ヒョン」
「……………」


実は、これもヨンファの気に入らないところなのだ。
話しかけたにもかかわらず黙り込んでいるのを不審に思ったのか、ミニョクが心配そうに顔を覗き込んできた。
いい機会だと思い、ヨンファはそろりと身を起こすと、意を決して向き直る。


「――どうかしたの?」
「その呼び方、嫌だ」
「どうして? 何か気に障った?」
「呼び捨てがいい」


ドン引かれるようなことを言ったつもりはないのに、奥手な男は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
そこまで派手に驚くだろうか。
えっと……、と返すミニョクはどこか言い淀んでいる。


「……ヨンファ、って?」
「そう!」


ヨンファが大きく頷くと、ミニョクはひどく弱ったような途方に暮れた顔をした。


「いやぁ、それはちょっと……」
「ちょっと……って、何でだよ。俺たち、付き合ってるんだろ?」
「だからって、いきなり呼び捨てはできないよ」


確認の意味を込めてそう切り返すと、付き合っている自覚があるのは間違いなかったものの、頑なに拒むミニョクに、ヨンファはムッとした。
あまり感情を表に出さない男が微妙に困惑しているのは分かるが、ここで諦めると今後もずっと同じ呼び方をされ続けるのだ。そんなのは、嫌に決まっている。
ヨンファは微かに眉根を寄せた。


「じゃあ、いつになったら呼んでくれる?」
「それは、今すぐには答えられないよ」
「なんで?」


執拗に食い下がってじっと見つめると、ミニョクは心底困ったような顔をした。


「――だって、年上を呼び捨てにはできないから」
「そりゃ、確かにお前よりふたつも多く歳食ってるけど、俺、そんなの気にしないし」
「ヒョンがそうでも、俺が気にするの」
「そうやってすぐヒョン、ヒョンって……。付き合う前なら分かるけど、俺は兄貴じゃない。お前の恋人なのっ」


会話の合間にコーヒーを飲んでいたミニョクが、いきなり噎せた。
小っ恥ずかしいなんてもんじゃない。
自分で言うなんて、あまりのみっともなさに顔から火が出そうになった。
茹でダコのように真っ赤になっているのは、鏡を見なくても分かる。
どこか隠れるところはないかと、ひとりで狼狽えまくっているヨンファの前で、気を取り直したミニョクは急に真面目な顔でじっと見つめてくる。


「そうだね。ごめん、ちょっと遠慮してた」


そう言うなり、ばつの悪い思いで目を伏せて黙り込んでしまったヨンファの手に触れてきた。
ちらっと目線を上げると、ミニョクはわずかに照れが混じった笑みを浮かべ、大切なものを包み込むように、ヨンファより少し大きな節くれだった手のひらがふわりと重ねられる。
惚れ惚れするほど優しい表情で見つめられて、心拍数が上がった。


まるで磁石のS極とN極が自然と引き寄せられるように、ふたりの視線が真っ向から絡み合う。
上目遣いで見返しながら唇を軽く突き出すと、ミニョクが息を詰めるのが分かった。
ヨンファの要求を察して、その瞳がくすぐったそうに眇められるのは、欲しいものを与えてくれるという合図なのだ。
ゆっくりと端正な顔が近づいてきた途端、胸が不規則な鼓動を刻み始める。
吐息が感じられる距離で目を閉じると、柔らかいものが重なってきて、全身に甘い疼きが広がった。


啄むように何度か触れ合ったあと、徐々にキスが濃厚になっていく。
差し入れられた舌に奥まで探られて、求められるがまま応えているうちに意識まで蕩けてしまいそうになった。
角度を変えて戯れるように舌先が絡み合うたび、眼鏡がヨンファの目許や頬を掠める。
それが気になり、唇が少し離れた合間、ヨンファはほうっと甘い吐息を漏らして、ミニョクのメタルフレームに指をかけた。
「眼鏡、邪魔……」と囁きながらおもむろに抜き取ってカウンターに置くと、ミニョクが身を屈め、再び深く唇を合わせてくる。


「ンッ、………っ……」


誘うように唇を開いて迎え入れるヨンファの舌に軽く歯を立ててから強く吸われ、巧みな舌遣いに頭の芯が痺れた。
長く続く口づけに溺れかけているところで、ゆっくりと唇が離れる気配がする。
慌てて目を開けると、優しげな一重の瞳と近すぎる距離で視線がかち合った。


そのまま、終わりの合図のようにそっと鼻先にキスをされ、いつもは大抵ここまでだ。
ヨンファもどこか遠慮して、それ以上求めることはしなかったが、心地よい温もりが退いていく時の喪失感は言葉では言い表せない。
やはりあの日のことが頭にあるからなのか、ここまでと線引きして、先に進もうとはしないのだ。
でも、こんなところでやめてほしくなかった。
ミニョクが名残惜しそうにそろりと動くと、愛しい重みがすっと消え、どうしても物足りなさを覚える。


これだけでは足りない。もっと、もっと触れ合っていたい――。
そう思った瞬間、ヨンファは自分から腕を伸ばし、離れていこうとするミニョクの首に腕を絡みつかせた。
さらに、しがみつくようにギュッと抱きつき、「まだ……」と強請ると、息を呑む気配がしてピタッ動きが止まる。
年下の男はどこか戸惑っているような、複雑そうな表情をした。


無言のままでいることに焦れて、ヨンファが瞬きもせずにじっと視線を送ると、再び顔を寄せてくる。
何だかそれが、催促をされて仕方なくといった義務的な対応にしか見えなかった。
突如、思考は悪い方へと傾き、たとえようのない不信感が胸から喉に込み上げる。


「ミニョ……」
「ん?」
「なあ、俺とセックスするの、嫌…か?」


気づいたら、完全には消えていなかった不安や焦燥感に急き立てられるように、ぽろりと言葉がこぼれていた。
ミニョクの邪気のない柔らかな表情が、わずかに色を変える。


「――え?」
「俺とこんなふうになって、後悔してるんじゃないか?元の関係に戻った方がいい?」
「ちょっ……、ちょっと待ってよ。なぜ、いきなりそういう話になるの?」
「うちに泊まりにきても、テレビを観て、シャワー浴びて寝るだけだろ。そんなの、ただの友達と何ら変わらないし……」


自分の言葉に傷つきながらも、胸の中のもやもやした感情は一度口をついて出てしまえば、堰を切ったように止まらなくなった。


「それ、本気で言ってる?」


静かな声は、穏やかな中に咎めるような響きが含まれていた。
ミニョクの気持ちを疑っているわけではないが、キス以上に発展しないのは紛れもない事実だ。
宙ぶらりんな関係に焦れて、多少はやけっぱちになっていたのかもしれない。
迸るように飛び出した台詞はとどまることなく、もうあとには引けなかった。


「こんなこと、冗談で言えるかよ。お前、優しいから、引きずられたとかほだされたとか、そういう類だろ」


後ろ向きの考えは好きではないが、どうしても自虐的な思考ばかりが浮かんでしまう。
ミニョクに苛立ちをぶつけることで、少しでもこの辛さから逃れたかった。


「俺の気持ちはちゃんと伝えたよね。どうして突然こんなことを言いだすのか、さっぱり意味が分からないよ」


ミニョクは男らしい眉を顰め、さも心外だという顔をした。
一瞬、心が萎えそうになったが、気を取り直してヨンファは続ける。


「そんなの……随分前に言われたきりで、ずっとキスだけだし……」


目を逸らして、胸の奥が軋むような感覚に襲われながら言葉を絞り出したものの、自然と語尾が小さくなる。


「よく聞こえない。もっと大きな声で、俺の目を真っすぐ見て言って」


いつになく硬い表情と強い口調に、ビクンと肩が跳ね上がった。
居たたまれない気持ちで唇を噛んで俯いていると、温かい手のひらに頬を包み込むようにして顔を上げさせられる。
間近で眼鏡をかけていないミニョクとまともに目が合ってしまい、そのまま逸らせなくなった。


「俺とお前の気持ちには、多少のズレが生じてるってことだ」


普段から穏やかな男が真顔になると、こんなにも別人のように雰囲気が変わるものだろうか。
眉間に皴を寄せていることから、気分を害してしまったのだと、身の縮む思いがした。
至近距離から強い視線に気圧されて動けないヨンファに対し、さらに容赦なく追及してくる。


「ズレって何?どういうことか、分かりやすく説明して」


淡々とした声は低く、明らかに怒気を含んでいた。


「――だ、から……男同士だし、抵抗があるのは当然のことで……」
「そんなこと誰が言ったの?」
「……………」
「俺は一切、言った覚えはないよ」


はっきりと断言されて、ヨンファは一瞬返答に詰まる。


「……でも、ベッドの中にいても触れてこないし、いつだって、さっさと寝るじゃないか。したくないんだなってことくらい、俺にだって分かるよ……」


自分で口に出すと余計に虚しさを感じ、胸の底が焼けるように息苦しくなってくる。
中途半端な現状はとても耐え切れなくて、白黒はっきりつけたいと思うのは別段責められることではないだろう。


「違う。そうじゃない。全然違う」
「何が違うんだよ。本当はやめたいんじゃないのか? 自分からは言いにくいから、俺が切り出すのを待ってたとか」


冷静になって考えてみれば、長年の付き合いから、ミニョクがそんな不誠実なことをする人間とは思ってはいない。
はた迷惑な話だが、単なる八つ当たりなのは自分でも分かっている。
本当に好きでいてくれるなら、その確証がほしい。ただ、それだけなのだ。


「せっかく想いが通じたのに、やめたいなんて思うはずがない」
「嘘…だ。いつもキス止まりで、及び腰じゃないか。どうせ男なんか気持ち悪いと思ってるんだろ」


こんな自分は、みっともなくて嫌だった。
女々しくて、情けなくて、消え入りたくなる。
ミニョクには決して見せたくない姿だったが、どうしても、こちらの発言をことごとく否定してもらいたいという淡い期待が多少なりともあったのだ。
そんなことでもないと、心が押し潰されてしまう。


「――そう……。いろいろと気を回していたけど、すべて裏目に出ていたんだね……。そんなに俺が信用できない?」


首を横に振りながら大きく息を吐くミニョクに、ヨンファは必死に言葉を続ける。


「裏目ってなんだよ。別にお前を責めてるんじゃない。俺ら、もともと男がいいわけじゃないんだから、混乱して当然なんだよ。セックスだって、お前からしたらハードルが高いだろうし、その気にならなくてもちっとも不思議じゃ――」
「しっ。ちょっと黙って」


ヨンファの唇にミニョクの人差し指がそっと触れてきて、強引に台詞を遮る。
ソファから立ち上がり、覆い被さるようににじり寄ってきたミニョクに腰ごと抱き込まれて、気づいたら噛みつくような口づけに呼吸を塞がれていた。
その衝撃で、空のマグカップが床に落ちる音が、遠くに聞こえる。


「……っ、ん、……っ」


すかさず舌を搦め捕られたかと思うと、貪るように舌先をきつく吸われ、ヨンファの喉奥から艶のある声が漏れる。
奪われるように荒々しく口内を蹂躙され、身体の芯が甘く痺れるのを感じた。
終わりがないのではないかと思うほどの激しいキスに、次第に意識が朦朧としてくる。
呼吸がままならず、喉が引き攣りそうになったところで、ようやく執拗な唇から解放された。


「これでも、その気になっていないと思う?今、言われたことが事実なら、普通はキスすらできないけどね」


息をついているヨンファの正面でゆっくりと顔を上げたミニョクは、今まで見たことがないくらい、ゾクッとするほど男の色香を放っていた。
先ほどまでの柔らかい雰囲気は瞬く間に消え去り、あまり目にすることのない迫力にたじろいでしまう。
真摯な眼差しが真っ直ぐに向けられ、一瞬にして張り詰めた空気にヨンファは息を呑んだ。


「ヨンファが分かっていないだけで、いつだって欲しいと思ってるよ」
「………っ」

 
初めて名を呼び捨てにされたのと、思いもよらない言葉に撃ち抜かれて、心臓がドクンと脈打つ。
近すぎる距離からじっと見つめられた瞬間、射竦められたように動けなくなった。
見慣れない表情のミニョクを前にして、胸の鼓動が痛いくらいに走り出す。


「俺にぶつけた言葉がすべて間違いだってことを、今からベッドで証明してあげる」


何をしようとしているのか、ヨンファは今さらのように悟った。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2017/05/20 (Sat) 06:17

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2017/05/20 (Sat) 17:53

haru

奏*さん

こんばんは♡
読んで下さって、どうもありがとうございます♪
私もこのCPが大好きです♡
書いているうちに楽しくなってきて、思ったより話が長くなったので、またもや続きにしました。
お互いに気を使ってしまい、ちょっと不器用な感じの二人ですが、いろいろと想像してもらって嬉しいです(*´ω`*)
漢ミニョに目覚めてしまったので、何とかそれを形にしてみます。
どうか最後まで見届けてやって下さい♪

2017/05/20 (Sat) 22:10

haru

i*****さん

こんばんは♡
ヨン子に噴き出しました(笑)
一人で空回りしているヨンは、書いていてものすごく楽しかったです。
3回も繰り返してもらって、めっちゃ感激しています(TωT)
が!!すでに極道モードに入ってしまっているんです。ごめんなさい(TωT)
その次にはアップしようと思っているので、よかったら待ってて下さい。
ミニョヨンは私にとってとても新鮮で、何だかやみつきになりそうな予感がしています。
後編も思いっきり楽しみながら形にしてみますね♪

2017/05/20 (Sat) 22:35

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2017/05/21 (Sun) 01:37

haru

j****さん

おはようございます♡
またもや無自覚ヨンが煽ってしまい、ミニョのなけなしの理性に揺さぶりをかけてしまったようです。
この二人は猛烈に萌えますね♪
これからも時間を見つけてはミニョヨンを書いていきたいと思っています(*´ω`*)

2017/05/21 (Sun) 05:33