CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 52

2017年05月13日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 8






ヨンファはこの最悪のタイミングに、ゾクリとしたものが背中から駆け下りてくるのを感じた。
いつの間にかジョンシンの力が緩んでいることに気づき、慌てて腕の中から抜け出ると、後ろに飛び退く。
眉間に皴を寄せたままこちらを眺めていたジョンヒョンは剣呑な気配を纏い、大股で近づいてきた。
怒気を孕んだ顔つきなのに、沈黙を貫いているのがひどく不気味で、突き刺さるような視線を痛いほどに感じる。


何と言おうかと逡巡していると、無言のままいきなり容赦のない力でぐいっと肘を掴まれた。
無造作に引っ張られて、しなやかな動きでジョンシンとの間に身を滑り込ませる。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
すぐに手は離れたものの、痛いほどの強い力からジョンヒョンの怒りがひしひしと伝わってくる。
弾かれたように顔を上げると、射貫くような眼差しとぶつかり、全身の体温が下がった気がした。


「悪かったな。倒れそうなところを助けてもらって」


ヨンファを見つめていたジョンヒョンは、険のある声音とともに、冷やかな目つきでジョンシンに向き直った。


「別に。アンタに礼を言われる筋合いはないな。当然のことをしたまでだ」


若頭補佐の反応などとっくに見通していたのか、動じたふうもないジョンシンは面白そうに眉を上げて、平然と迎え撃つような態度で返す。
恐ろしく不機嫌な顔をしている兄貴分を前に、どこ吹く風だ。
上等なブラックスーツを身に着けた男がふたり並ぶと何とも言えない異様な迫力が感じられ、その場だけ不穏な空気に包まれていた。


「俺が来なかったら、どうなっていた?」
「さあな。こんなところで、どうもこうもねぇだろ」


互いに一歩も譲らず、どことなく相手の出方を探り合っているようにも見える。
だが、それは次の瞬間、変わっていた。
ジョンシンと対峙していたジョンヒョンは露骨に表情を歪めたかと思うと、長身の胸倉を掴んで威嚇する。


「人のもんに手を出すなと、あれほど言っているだろうが」


低く押し殺したような美声は苛立ちを隠すことなく、弟分に向けられた。
ジョンシンは一貫した態度を崩さず、顔色ひとつ変えない。


「たかが人助けをしただけで、この仕打ちかよ。感謝されこそすれ、恨まれるようなことは何ひとつしていないがな。ちょっと反応が過剰すぎやしねぇか?」


自分の胸許からジョンヒョンの手を引き剥がすと、低い声で挑発的に笑った。
悠然と落ち着き払ったジョンシンは、この状況をどこか愉しんでいるようにも見える。


「……何だと?」


地を這うほどの低音と同時に、瞬く間にジョンヒョンの瞳には周囲を圧するほどの獰猛な光が宿り、ピリッとその場の空気が張り詰めたのが分かった。
もはや一触即発の様相を呈していて、ヨンファは間に割って入るべきか判断に迷う。
一方のジョンシンはやり合うつもりはないようで、眉ひとつ動かさずに、凄みを利かせた双眸を真っ向から受け止めていた。
なかなか怒りが収まらないのか、ジョンヒョンの固く握り締めた拳がわなわなと震えているのが視界に入る。


「よせ、ヒョニ」


ヨンファが後ろから制止したところで、ガチャガチャという瓶の触れ合う音とともに、大量の酒を盆に載せて運ぶスタッフがこちらに向かってきた。
ヨンファたちに気づくと、感じよく会釈をしながら脇をすり抜けて、個室の中へと入っていく。
賑やかな喧騒が漏れ聞こえ、現実に引き戻されたような気分だった。
奇妙な間合いのあと、ジョンシンは肩を竦め、あっさりとジョンヒョンから離れる。


「さて、飲み直すか」


緊迫した状況には不釣り合いなのんびりとした口調で独り言のように呟き、さっさと廊下を歩いていくのを、ヨンファは何とはなしに目で追った。
敢えて相手にならなかったのは、騒動を起こすまいというジョンシンなりの配慮なのだろうなと、すぐに分かった。
安堵して振り返ると、ずっとこちらを見ていたらしいジョンヒョンと目が合う。
急に気まずい雰囲気になり、口の中に苦いものが広がるのを感じていると、ジョンヒョンは渋面のまま口を開いた。


「だから、あれだけ忠告したのに。こうなることは、初めから分かっていたんだ」


溜息混じりの低い声には尖った響きがあり、ヨンファは言うべき台詞が見当たらなかった。


「何かあってからでは遅いんだぞ」
「何かって、そんなことは……」
「本気で言っているのか?ジョンシナの気持ちを知っていながら、あまりにも警戒心がなさすぎる」


ヨンファの言葉を最後まで聞くことなくぴしゃりと遮ると、すべてを見透かすような怜悧な眼差しを向けられる。


「俺なりに、ちゃんと気をつけているつもりだ」
「――これでも、そう言えるか?」


途端に憮然とした面持ちになったジョンヒョンが、伸ばした指先でヨンファのこめかみに触れてきた。
その辿るような動きに、虚を衝かれる。
こんなところまで見られていたのかと、ヨンファは目を大きく見開いた。
ジョンシンの指の感触を消し去るかのように、その部分を執拗なほどなぞられて、居たたまれなくなる。
図星なだけに何も言えずにいると、無骨な指に顎を上げさせられ、ふたりはしばし見つめ合った。


「とにかく、俺の言う通りにしていればいいんだ」


どこか不快そうな顔で、唸るような声音が耳に届いた途端、怒りで頭が沸騰するかと思った。
聞き捨てならない言葉をぶつけられ、ヨンファは顎にかけられた手を振り払い、整った眉を吊り上げる。


「……何だ、それ」


目の前の男に余すところなく身体を暴かれても、対等な関係だと思っていたからこそ、身を任せていたのだ。
まるで女に対して言うような台詞を、こんなふうに投げつけられるなど、屈辱以外の何者でもない。
それは、絶対に言われたくない一言だった。


「俺は、お前の所有物じゃない。今の発言は撤回しろ」


男としての矜持を粉々にする言葉だけは、どうしても許せない。
しかも、上から押さえつけたような物言いがあまりにも不愉快で、硬い口調で言い切ると、ジョンヒョンが眉根を寄せたのが分かった。
真っ直ぐに視線を向けるヨンファを、精悍な貌が静かに見つめ返してくる。
その表情は硬く、ゾッとするほど感情の色が失われていた。


怒りはいまだに燻っていたが、それ以上何も言えなかったのは、ジョンヒョンの瞳に見覚えがあったからだ。
どこか翳りが差しているような仄昏い双眸。
かつて、こんな場面に遭遇したことがある。
あれは忘れもしない、ジョンヒョンが大学受験を終えて間もない頃だ。
ヨンファとは異なるが、三月から同じ大学生になるものと信じて疑わなかったのに、この男が選んだのは、あろうことか父親と同じ極道の世界だった。


『勝手なことをしないでくれっ。俺が好きで決めたことだ!』


脳裏によみがえった声に、過去の出来事が走馬灯のように駆け巡る。
あれほどまでに激昂したジョンヒョンを見るのは、出会ってから初めてだった。
まだ引き返せるかもしれないと思い、一縷の望みを持って父親に掛け合おうとしたヨンファに対して怒りを露わにし、手酷く拒絶されたのだ。
呆然と立ち尽くすヨンファの前で、ジョンヒョンは今みたいに感情の読めない顔をしていた。
眦の吊り上った瞳には深い翳りが浮かんでいて、たとえようのない距離を感じた。
あれから十年経った今でも、あの瞬間を思い返すと、胸を締めつけられるような痛みが走る。


結局、ヨンファは何の言葉も返すことができなかった。
重苦しい空気に支配される中、自分たちの進む道が完全に違えたことを、ふたりはほぼ同時に悟ったのだと思う。
行き場のない哀しみは瞬く間にジョンヒョンに対する憤りへと変わっていき、その日を境にお互いを避け合い、会話らしい会話はほとんどなかった。
用件のある時だけ、なぜか敬語で事務的に話しかけられたが、自分のよく知る男はこの世からいなくなってしまったのだと、ヨンファは割り切ることにしたのだ。
そうでもしなければ、衝撃の大きさにきっと心が耐えられなかっただろう。


そして、ヨンファが屋敷を出てからこの夏、五年ぶりに再会するまでの間、顔を合わすことすらなかった。
あんなにも虚しくてやりきれない日々はない。
わだかまりを抱えたまま女性と付き合ったのがそもそもの間違いだったのかもしれないが、常に心のどこかでジョンヒョンの存在が引っかかり、完全に忘れ去ることはできなかったのだ。


ヨンファは頭の中を占めていた思考を振り切るように深く息を吐くと、真っ直ぐにこちらを見据えたままだったジョンヒョンが表情のない視線を投げて寄越した。


「頼むから、あまり気を揉ませないでくれ」


淡々とした口調には有無を言わせぬような強い響きが感じられて、そのまま唐突にヨンファのそばから離れていく。
まるであの日のように、躊躇いのないしっかりとした足取りで、実にあっさりと――。


足早に立ち去る男が十年前を彷彿させているような気がして、苦く唇を噛み締める。
その場に残されたヨンファは、遠ざかっていく広い背中を見つめながら、胸の奥にひどく後味の悪いものを感じずにはいられなかった。















南部洞組との宴席から一週間後、親友から連絡があった。
その時、ヨンファはある病院の人事担当者と面談し終わり、駐車場に停めていた車に乗り込んだところだった。
聞き慣れた着信音で、画面の表示を見なくても相手が誰だかすぐに分かる。
急いでスマートフォンの通話ボタンをタップすると、何やら尋常ではない様子の声がした。


『ヨンファ、すまん。どうしてもお前に頼みたいことがあるんだ』


開口一番の台詞に、ヨンファは思いっきり面食らった。
ホンギとは長い付き合いになるが、こんなことは初めてだ。
いつも悠長に構えているのに、この男にしては珍しく慌てているのが通話の向こうから伝わってきた。


「――いきなり何だよ。驚くだろ」
『なあ、断わらないって言ってくれよ』
「ちょっと落ち着け。急にそんなことを言われても、内容すら聞いていないのに返事なんかできないぞ」


運転席のシートに背中を預け、半ば呆れながら言うヨンファに対して、『まあ、そうなんだけどよ……』と言葉を濁す。
その口調は、どことなく歯切れが悪かった。
らしくない親友に、何かあったのかと怪訝に首を傾げて、「ホンギ?」と呼びかけてみる。


『今、就活中なんだろ?だったら、二、三日くらい時間取れるよな?』
「まあ、取れないことはないが、一体、どうしたっていうんだ?」


なぜか核心には触れず、奥歯に物が挟まったような言い方で、一方的にヨンファの都合ばかりを尋ねてくるのがあまりにも不自然すぎる。
個人的なことで、トラブルにでも巻き込まれたのだろうか。
何かただごとではないような、嫌な予感がした。


『それが困ったことになっちまってよ。ちょっとさ、手伝ってくんねぇかな?』
「手伝うって、……何を?」
『実はな……』


ホンギの口から語られたのは、ヨンファの予想をはるかに超えた、まさしくとんでもない頼みごとだった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(8)

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2017/05/14 (Sun) 17:13

haru

は*さん

こんばんは♡
いろいろと感じて下さって、ありがとうございます♪
なかなか一度に書けないので小出しになってしまいますが、人物たちの気持ちや萌えポイントなどをお伝えできればいいなと思っています(*´ω`*)
恋愛に関しては私もは*さんと同様ですね。そういう考え方が話に出てしまっているのかもしれません。

ところで、は*さんはバニペンですよね?
私、昨秋よりバニ熱が急上昇して、今回使った画像もストライクゾーンど真ん中なんですが、一月下旬に香港へ行った辺りから少しずつ違和感を覚え始め、そして今(TωT)
刈り上げ頭で大口を開けてハンバーガーらしきものにかぶりついている姿を見て、笑いながら心の中で泣きましたよ(TωT)
ちょうどバニとジョンシンのシーンを書いていた時で、リアルの二人は平和でいいなと(笑)
ジョンシンとミニョクは変わらぬルックスでいつも安心ですが、バニとヨンはリアルの姿では妄想しづらくなってきているので、過去の自分好みのビジュアルで書いています(TωT)

2017/05/14 (Sun) 21:00

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2017/05/14 (Sun) 21:40

haru

は*さん

こんにちは♡
は*さんはヨンペンでもありますよね♪
CNは全員が素敵なので、私もこんなにハマるとは思いませんでした。
たった四人しかいないのに、イケメン揃いだから腐話がどんどん思いつくという…。←不謹慎すぎますね。
リリイベのLIVE映像ですか!咄嗟に思い浮かばないのですが、一度くらいは観たような気がします。
うちのヨンを思い出して下さってありがとうございます♡
年齢は28歳ですが、体型はあの頃と思ってもらえると(なかなかそんなに都合よくイメージしにくいとは思いますが)助かります。
ヨンは昔の画像を見てドハマりしたので、その後、鍛えている身体を見てショックを受けたんですよね(TωT)
バニは確かにイケメンの無駄遣いですが(笑)、大人の男の色香はグループ一滲み出ていると私は思っているので、すごく惹かれます。
でも、トータルで見ると、やっぱりジョンシンなんです(*´ω`*)

2017/05/15 (Mon) 14:38

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2017/05/16 (Tue) 22:29

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2017/05/17 (Wed) 00:29

haru

ふ*******さん

こんにちは♡
読み返して下さって、どうもありがとうございます♪
今回は短めでしたが、いろいろと拾ってもらい本当に嬉しいです(*´ω`*)
ふ*******さんの有難い感想に対してリアクションをしたいものの、ネタバレしそうでなかなか言えなくて(TωT)
話から何かしら伝わればいいなと思います。
そして、最後のご質問ですが、正解です(笑)
私もずっと書きたいと思っていたので、一年近く経っていることに気づいて愕然としました。
想像されるのと違うかもしれませんが、いろいろとやってみますね。

2017/05/17 (Wed) 12:18

haru

j****さん

こんにちは♡
いつもありがとうございます(*´ω`*)
温くてお恥ずかしいですが、一応極道ということで、どうしてもこんな感じになってしまうんです(TωT)
他の話では書けないであろうバニとジョンシンを、悔いなく最後まで形にしたいと思っています。
ついポロッと言いそうになるので、ネタバレ防止のためぼやかした感じでしかお返事できなくてごめんなさい。

それと、シンヨンとグンレラがセットの兄弟パロも年内中には必ず♪
その前に何とかしないといけないものが山積みなので、一つずつ書いていきますね。
こんな泥沼状態なのに格好いいミニョに目覚めてしまい、ミニョヨン熱が急上昇していて自分で自分の首を絞めてます(-ω-;)

2017/05/17 (Wed) 13:22