CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

シアワセ日和 前編

2017年05月07日
ミニョヨン短編 6


『Like a Cat』 続編



「ヒョン、こんなところで寝てたら、風邪を引くよ」


すぐそばから降ってきた温かみのある声で、ふっと目が覚めた。
ゆっくりと重い瞼を開くと、眼鏡をかけた優しい眼差しと視線がぶつかる。


「……ミニョ?」


ここがどこで、今、何時なのか、咄嗟に分からなかった。


「ごめん。一度だけ鳴らしたんだけど、寝てるのかと思って、勝手に入ったんだ」


ぼんやりとした視界に映り込んだ愛しい相手が、柔らかい笑顔でこちらを覗き込んでいる。
徐々に意識がはっきりとしてきて、ヨンファは子供のようにクッションを抱き締めたまま、ソファで丸まっている自分の姿に気づいた。


シャワーを浴びたあと、ソファに横たわってテレビを観ていたら、いつの間にか寝入っていたらしい。
しかも、インターホンの音に気づかないくらい熟睡していたとは。
スペアキーをミニョクに渡していて、正解だった。


「……あ……、お帰り……」


ぼうっとしたまま口をついて出た掠れ声に、ミニョクのクスッとした笑い声が聞こえる。
黒い革張りのソファから身を起こすと、カーテンを開けたままの空はすでに真っ暗になっていた。
テレビを観ていた時は綺麗な夕景が見えていたのに、そんなに眠っていたのかと、そばに置いてあったスマートフォンをタップすると、時刻は午後七時を過ぎている。


「ただいま。遅くなったから、待ちくたびれた?」
「ごめ…ん、何も用意してない……」
「いいよ。ピザをテイクアウトしてきたから、一緒に食べよう」


旧正月に入り、まとまった休みが取れたこともあり、ミニョクは焼肉店を営んでいる実家へと帰っていた。
ヨンファも釜山に帰省していたが、昨日こちらに戻ってきたばかりで、今日は一日リビングでゴロゴロして過ごしたのだ。


「……ありがとう」


気を利かせてくれたことに対して礼を言うと、ミニョクはメタルフレームの眼鏡越しに、一重の切れ長の目をわずかに細めた。
見慣れない姿はどこか大人びた感じがして、ヨンファはいまだにドキドキしてしまう。


普段はコンタクトレンズを装用しているが、仕事に支障がない時や休日は眼鏡に変えることがあり、整った容貌に理知的な雰囲気が加わって、とてもよく似合っていた。
どうしても目が乾燥しやすいため、かつて同様の大変さを経験していたヨンファには、その苦労がよく分かる。
何かと不便を感じていたところ、友人たちの勧めもあって六年前にレーシック手術を受けて以来、裸眼で過ごせるようになったので、今はかなり楽になったけれども。


「じゃ、早速、並べるね」


嬉しそうな笑みを見せるミニョクはコートを脱ぐと、オフホワイトのクルーネックセーターにデニムというラフな格好をしていた。
ヨンファより背が高く、体つきは引き締まっていてスレンダーに見えるが、セーターの奥には目を瞠るほどの盛り上がった筋肉が隠されている。
基本的には物静かで、年下とは思えないほど落ち着いているものの、笑うと途端に愛嬌のある年相応の若者になるのだ。


ソファから腰を上げると、ミニョクがダイニングテーブルで薄い箱を開け、白い容器に入ったものを大皿に移している。
スマートな身のこなしで、テキパキと無駄のない動きをする恋人を視界の端で捉えながら、ヨンファは冷蔵庫からふたり分のビールを取り出した。
至れり尽くせり状態なのが妙にくすぐったくて、面映ゆい。


ミニョクに甘やかされるのは、嬉しいとすら思った。
これが同じ年下でもジョンヒョンやジョンシンだと、つい意地を張ったり強がってしまうのに。
ヨンファを丸ごと包み込んで癒してくれる男は、そばにいてくれるだけで無条件にホッとできて、とても居心地がいいのだ。
やることなすこと、すべてが愛おしい。


ヨンファが取り皿やカトラリーなどを用意している間に、テーブルの上にはピザ、ヤンニョムチキン、サラダ、ミネストローネが並べられていた。
長年の付き合いからヨンファの食べ物の好みをよく知っていて、いろいろと気を回してくれるのが有難い。
痒い所に手が届くとはまさにこのことで、自然と胸の奥が温かくなった。
それらを目にすると急に空腹を感じ、ミニョクが向かいに座るのを待ってから、缶ビールで乾杯する。


「ご両親は、お変わりなかったか?」


そう尋ねてから、ヨンファは手近なピザにかぶりついた。
テイクアウトの割に熱々で、とろとろのチーズが勢いよく伸びる。


「店があるから、そんなに話はできなかったけど、ふたりとも元気そうだったよ。またメンバーで食べに来てって」
「そっか。テジカルビ、旨いもんな。あー、行きてー」


デビューする前はよくご馳走になったものだが、世間の認知度が高まるにつれて、昔のようには気軽に訪れることができなくなっていた。
夢が叶って、好きな音楽で生計を立てられるようになったものの、得るものが大きければ、その分失うものもあるということだろうか。
懐かしく思い出して本音がこぼれた途端、笑うと無くなりそうなほど細くなる瞳が、ヨンファに温かく向けられる。


「閉店ギリギリに変装して行ったら、バレないかもね」
「サングラスにカツラとかか?ものすごく怪しい集団に見えるな」


顔を見合わせて笑いながら、ふたりの間にはどことなく親密な空気が漂っていた。
それは、以前とは明らかに違う。
これまでミニョクとは数えきれないくらい食事をともにしてきたが、想いが通じ合い、恋人同士になってからは、このささやかなひと時が嬉しくてたまらなかった。
心から寛げるのが、自分でもよく実感できる。


ただ、そんな喜ばしい状況でありながら、ヨンファにはひとつだけ気になることがあった。
ひと月以上前にお互いの気持ちを伝え合い、ミニョクと付き合うことになったのだが、あれから一度も身体を重ねていないのだ。


近距離のため、お互いの自宅を行き来する機会に恵まれているにもかかわらず、なかなかそういう雰囲気にならない。
手を繋いだり触れ合ったりなどのスキンシップは十二分に足りていても、いつもキス止まりで、なぜかその先には進んではいけないような何かがあった。
その原因は、ヨンファも薄々感じている。


ミニョクとの出会いは、練習生時代に遡る。
初対面の時から、控えめで礼儀正しいミニョクに対してヨンファは親しみを感じ、仲良くなるのにさほど時間はかからなかった。
それから、武者修行のため日本に滞在し、デビューに至るまで毎日が慌ただしくて、その時点では、まさかふたつも年下の同性に恋をするなどとは思ってもみなかった。


初めての共同生活では年功序列という観点から、料理や洗濯などの家事をジョンシンと手分けして請け負ってくれて、実に何でも器用にこなす男なのだと知った。
綺麗好きで整理整頓が上手いため、身の回りがいつも清潔に保たれているのは非常に気持ちがいい。
今でもヨンファのマンションを訪れた時に、さりげなく散らかしたものを片付けてくれるので、とても助かっているのだ。


ミニョクは穏やかな性格をしていて、素直で優しくてガツガツしていないから、いわゆる「草食系」と呼ばれるタイプには違いない。
また、控えめで常に一歩引いているので、もっと積極的に前に出たらいいのにと、本人に助言したこともあった。
だが、それがミニョクの個性だと気づき、グループの統率を図る陰の立役者だと誰もが認めるようになった。


共同生活を解消して独り暮らしを始めた時は寂寥感に襲われたものの、ミニョクとは自宅が近いことが幸いして、より近しい存在になっていった。
ただ、嬉しい反面、その距離感の扱いに内心で悩んでいた。
それもそのはず、目には見えないところで、いつの間にかミニョクに対して到底まともとは思えない感情を抱くようになっていたからだ。


リーダーで最年長という立場から、ミニョクが自分に対して、尊敬や親愛の情を向けてくれていることには、以前から気づいていた。
表情が様変わりしないから分かりにくいが、屈託なく笑うと一重の瞳がより細くなる男は、いつでもどこでもヨンファを立ててくれて、裏方に徹しようとする。
口数が少ない分、悠然と構えていて、その実、常に頭の中でいろいろなことを考えているのをヨンファは知っていた。


だからと言って、何でもかんでも大人しく受け入れるわけではない。
納得のいかないことは、ヨンファが年上であっても、臆することなく意見してくる。
それも、ミニョクの長所なのだ。
決してこちらの考えを否定するのではなく、受け止めた上で、こういう感じにしたらどうだろう?と、プラスになるような提案をするため、ヨンファのプライドが傷つくこともない。


また、いついかなる事態に遭遇しても声を荒げることはなく、対応能力に長けていて、すべてにおいてポジティブな男だから、惹かれるのも時間の問題だったのかもしれない。
そういう日々が積み重なって、ヨンファは自分の気持ちが後戻りできないところまできているのを自覚した。
でも、それを本人に伝えることなどできるはずもなく、想いを封印しようとずっと胸の奥底に仕舞い込んでいたのだ。


「とにかく、ヒョニヒョンがものすごくルーを溺愛しているんだよね」
「そのようだな。SNSにも頻繁にアップしてるし」
「もう少し大きくなれば、うちの二匹と一緒に遊べるかなって、期待しているんだけど」
「猫同士だから、すぐに打ち解けるんじゃないのか?」


ミニョクの話に相槌を打ちながら答えていても、実際のところ内容はほとんど頭の中に入ってこず、ヨンファはそんなことにばかりに囚われていた。
会話が途切れると、どことなく落ち着かない気分になり、誤魔化すようにミネストローネを口に運ぶ。


押し殺していたはずのミニョクへの気持ちは日に日に高まり、いつしかヨンファの中で不完全燃焼を起こすようになっていた。
それを見破られたのかどうか定かではないが、比例するようにミニョクの態度が徐々によそよそしくなり、避けられているのではないかと悩みもした。
そして、極めつけのとどめは、同じ事務所のチョン・ヘソンとの熱愛報道だ。


ヨンファはひどく打ちひしがれて、自分の気持ちに決着をつけるために、年の瀬の忙しい時期にあのような馬鹿げた行動を思いついた。
初めから期待なんかしていない。
自分ではどうしても諦めきれないからこそ、終わらせるつもりでミニョクに引導を渡してもらおうとしたのだ。
そのくらい、ヨンファは長年の変わらない関係に疲れきって、不安定な感情に追い詰められていたのかもしれない。


それは、決して忘れることのできない、昨年の十二月半ば。
久しぶりにメンバー四人で飲みに行こうと誘い出し、酔わないために事前に柿を食べて、ドリンク剤まで飲んだ。
これが効果てきめんで、いつもよりハイペースで酒を呷っても、さほど酔うことはなかった。


その上で敢えて酔った振りをして、ミニョクに自宅まで送ってもらい、帰ろうとする本人を強引に引き止めた。
何かの拍子に反応してしまったミニョクを煽って、無理矢理に事を進めようとしたのがそもそも間違いだったのかもしれない。
男に抱かれ慣れているように思わせ、吐き出さないと鎮まらない欲望を盾にとって誘ったのだ。
その結果、あのような目を覆いたくなるほどの惨状になり、ヨンファは自己嫌悪に陥った。


それでも、終わらせるという意味では大いに意義があったと自らを奮い立たせ、ミニョクに帰るように言ったのだが、その先に信じられないことが待っていた。
自分のしたことがすべて露呈してしまい、恥ずかしくてブランケットの中に潜っていると、いまだかつて聞いたことのないくらいの大声で呼びかけられた。
そして、絶望の淵に立たされていたヨンファは、ミニョクの口から語られた言葉に、頭の中が真っ白になった。
まさか同じ想いを抱いているとは、想像だにしていなかったのだ。


その二週間後、ミニョクは出演したドラマでの素晴らしい演技力が認められ、優秀演技賞を受賞した。
過去に一度だけ同じドラマで共演したことがあるが、昔から演技の上手さには定評があり、ヨンファも自分のことのように誇らしい気分になった。
忙しい合間に時間を作って、ふたりでささやかなお祝いをしたのは記憶に新しい。


翌日に仕事が控えていたが、多少なりとも期待していたことは否めない。
ところが、ミニョクはデザートのケーキを食べたあとに、「明日も仕事だから」と言い、あっさりと帰ってしまったのだ。
もしかしたら、こちらの思惑に気づかれて、引いてしまったのだろうか。


だいたい、あの泥酔した振りをした日だって、執拗に引き止めるヨンファに対してミニョクは普段見ることのない迷惑そうな表情で、かなり呆れていた。
その上、あんな箇所からの出血を見せられて、平静でいられるはずがない。
確かに好きとは言ってくれたが、それが引っかかっていて、同性と肌を合わすことに嫌悪感が生じるようになった可能性も考えられた。


自分たちは、同性愛者というわけではない。
共同生活を送っていた時に、性欲を持て余すという年齢でもあり、スキャンダルにならないよう細心の注意を払って女性と付き合ってみたことはある。
口に出さなくてもそういう雰囲気は不思議と伝わるもので、ミニョクから馴染みのないオードトワレの香りがするたびに、そうなのかな?と、何となく勘づいたこともあった。


どうしてキス止まりなのだろう……と、ヨンファは二本目の缶ビールに口をつけながら目を伏せる。
こちらから求めると逆に興醒めしてしまうのではないかと思い、ミニョクに悟られないように様子見してきたが、それもだんだん限界が近づいてきた。
今日は、泊まっていくつもりなのだろうか。
せっかく向かい合って食事をしていても、ヨンファの心はどこか晴れなかった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(6)

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2017/05/08 (Mon) 06:10

haru

奏*さん

こんばんは♡はじめまして♪
コメント、どうもありがとうございます。ひっそり、大歓迎です(*´ω`*)
前回、完遂できなかったので、いずれはアップしたいと思っていました。
同性は初めて同士ということで、あれからずっとA止まりだったのですが、それも相手がミニョだからかもしれません。
バニやジョンシンなら、有り得ないスピードですね。
極道の続きに取りかかり始めたので、それが終われば後編を書く予定です。
今後ともどうぞよろしくお願いします♪

2017/05/08 (Mon) 22:27

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2017/05/08 (Mon) 22:45

haru

j****さん

こんばんは♡
ミニョヨンの続きを半分ですが、ようやくアップできました。喜んで下さって嬉しいです(*´ω`*)
この二人は書いていてどこかホッとするので、ヨンの雰囲気がシンヨンや釜山ズとはまた違うかもしれませんね。
ミニョがあまり強引なタイプではないので、その分ヨンの可愛らしさが出せればなと思っています。

j****さんは東方神起のBLもお好きなんですね。
私は読んだことがないのですが、ミンホというとチャンミンが攻めですか。
一見、王道の逆のように感じましたが、ハマると抜けられなさそうですね♪

2017/05/09 (Tue) 20:57

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2017/05/09 (Tue) 22:46

haru

i*****さん

こんばんは♡
待ってて下さって嬉しいです(*´ω`*)
私もi*****さん同様、草食系と見せかけといて、本気の相手には肉食系に豹変するのではと思っています。
ただ、その勢いや流れがバニやジョンシンとは違うかな。
A止まりなのは、まさにおっしゃる通りです!ってバラしていいものかしら(*-ω-)?

いろいろと書き散らしているので、思いつくものを片っ端から形にしていこうと意気込みだけはあるんですが、頭と腕がなかなかついていかないため、やっぱり週一ペースかな(TωT)
グンレラは、いずれまた兄弟パロの番外編として、シンヨンと一緒に出しますね。

SHINeeはCNを知る前ですが、一ヶ月くらいハマりまして、ホヒョンの小説を貪り読んでました。
ツミンって何ぞや?って思ったんですが、2minのことですか!こういう呼び方とは知りませんでした…。
また別の話で脇キャラがマンネリ化したら、登場させるかもしれません♪

2017/05/10 (Wed) 21:23