CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 51

2017年04月30日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 8






恵まれた体躯の持ち主がいきなり目の前に現れ、驚きのあまり、ヨンファは絡み合った視線を外せなくなった。
アルコールが入っているからだろうか。
どこか熱を帯びた眼差しが、急角度で真っ直ぐにヨンファを見下ろしてくる。


飲み過ぎたせいか思うように身じろぐこともできず、ただ目を見開いたまま、間近で静かに覗き込んでくるジョンシンとそのままお見合い状態になってしまった。
この男と会うのは、二ヶ月近く前にヨンファの車を代わりに運転して、マンションまで送り届けてもらった時以来だ。


不意に、別れ際の胸が引き絞られるような切ない表情が脳裏に蘇った。
ジョンシンの想いには決して応えられないのに、それでも一点の曇りもない澄んだ双眸で変わらぬ態度を貫かれ、何とも言えない気持ちになってしまう。
敢えて逃げ道を作ってくれた男の優しさを思い返していて、不自然な間が空いていることに気づいたヨンファは、内心で動揺しながらも、どうにか心を落ち着かせた。


「……庭が綺麗だな、と思ってさ」


ビールを飲みながら皆としゃべり続けていたせいか、発した声はひどく掠れていて、自分でも違和感を覚える。
いくつもの個室から漏れ聞こえる笑い声に搔き消されそうなほど、頼りないものだったかもしれない。


会食の場ということで、ジョンシンは珍しくブラックスーツ姿だった。
下に黒のタートルネックを着ているから文字通り全身黒ずくめで、九頭身のスタイルのせいか、シンプルな格好なのにひどく洗練されて見える。
短めの黒髪や人目を引く顔立ちによく映えていて、がっしりとした肩幅と、見上げるような長身から伸びた長い手足は力強さを感じさせた。
仮に極道から足を洗っても、その手の業界からスカウトされるのではないかと思ってしまう男は、関心がなさそうに外の景色に目を移す。


「興味がねぇ俺には、さっぱりだな。すげー飲みっぷりだったから、てっきり酔いでも醒ましているのかと思った」


思いがけないことを言われて、ヨンファは軽く瞠目した。
話に夢中だったのでまったく気づかなかったが、どうやら見られていたらしい。
退院したばかりのミニョクを除き、アルコールに強い面々と酌み交わしていたため、つい酒量が増え、空瓶が林立しているのが目に留まったのかもしれない。


「――それもある…かな。ひどく酔っているわけではないが」
「……………」


窓の外の風に揺れる樹木を、いまだにざわつくような思いで見つめた。
ジョンシンはしばらく黙って、ヨンファの視線の先に目を遣る。


「結構、強いんだな。あまり顔にも出てねぇし、意外だった」
「大学病院の教授たちがうわばみ揃いでさ。鍛えられたんだよ」


興味深そうに「ふーん」と頷いたジョンシンはこちらを向いて、思いもよらないことを言ってきた。


「じゃあ、今度、飲みに行かねぇ?」


突然の誘いに、ヨンファは胡乱げに年下の男を見上げる。


「ミニョクも一緒ならな」
「――あからさまに警戒すんなよ」
「お前とふたりきりだと、何をされるか分からないだろう?」


ヨンファの言葉が意外だったのか、ジョンシンは一瞬ポカンとした顔をしたのち、ひとつ溜息をついて、まいったなというように微かな笑みを漏らした。


「今日は、やけにはっきりと物を言うんだな」
「何度も同じ手を食うか」
「……ったく、信用ねぇな。まあ、実際、その通りだけどよ」


苦笑混じりに、ジョンシンは軽く肩を竦める。
ヨンファはあまりにも正直すぎるぼやきに可笑しくなって、小さく噴き出した。
話の内容はあまり歓迎したくないものだが、冗談めかして言われると、どこまで本気なのか分からなくなる時がある。
この男が相手だと、どうも調子が狂ってしまうのだ。


「んな、笑うなよ」


何やら愉快げな表情を浮かべたジョンシンは、目を眇めて眩しそうに見つめてくる。
ヨンファが望んでいない感情を抜きにしてくれたら、好かれても悪い気はしないのに。


「マジな相手には、直球勝負だろ」


知らぬ間に強張っていた全身から力を抜いたところで、再び緊張が走る。
揺るぎない低音でさらりと告げてきた男の顔は、真剣そのものだった。
自分の心を曝け出すのは勇気がいることなのに、ジョンシンはいとも簡単にその壁を飛び越えて言葉にする。
どこか穏やかな雰囲気に包まれていたのに、今の台詞で急に空気が変わったような気がした。
やや呆然とした様子で佇むヨンファを見据えていたかと思うと、チラッと庭園に顔を向けて続けざまに言う。


「負け試合って、分かっててもな」


野性味を帯びた横顔は見事に整っていて、高い鼻梁から顎にかけてのラインはどことなく彫像を思わせる。
幾度となく見せられる、真っ直ぐすぎる想い。
躱しても跳ね返しても、それでも尚諦めようとしない男は自信に満ち溢れていて、注がれる一途な眼差しがただ痛かった。


見上げるような長身に、誰もが振り返るほどの端正な容貌。
その気になれば、相手にはまったく困らないはずなのに、なぜ男の自分に固執するのかが分からない。
こちらの心がそう簡単には変わらないのは、ジョンシンだって分かっているだろうに。
まだ若いし、いくらでも恋愛を謳歌できるのだから、他の誰かに目を向けてほしいと願わずにはいられなかった。


その時、ふとヨンファの胸許辺りに視線が移動していることに気づく。
こちらの複雑な心中にはお構いなしなのか、ジョンシンは眉根を寄せて、上から下までヨンファの全身を隈なくじっくりと眺めてきた。
あまり着慣れない格好なだけに、意味ありげに双眸を細められ、困惑してしまう。


「……何?」
「今日のスーツ、前に着てたのより格段にいいな。すっげぇ似合ってる」


いきなり脱力しそうなことを言われて、返す言葉が見つからなかった。
面食らっているヨンファを前に本人はどこ吹く風で、執拗な視線を走らせてくる。


「――は?」


身の置き所がなくて、わざとワンテンポ遅らせて語尾が跳ね上がったような声を出すと、途端にジョンシンは大きく息を吐いた。
苦い顔つきのまま、ぼそりと呟く。


「せっかく褒めてんのに、色気ねぇ台詞、吐くなよ」
「そんなものはなくて結構だ。お前は何でも口に出しすぎる」
「俺のやり方は、正攻法だからな」


ストレートに言われて、「相変わらずだな」と苦笑を浮かべた。
ヨンファの様子につられたのか、ジョンシンまで相好を崩し、唇の端をニッと上げる。
ふたりの笑いを含んだ声に、どことなく空気が和らぎ、ヨンファは肩から余分な力を抜いた。


大抵は眉間に皴を寄せて、憮然とした顔つきをしているが、漆黒の双眸の奥に見え隠れする光はとても温かいのだ。
物言いも不遜でありながら憎めない性格ゆえに、なぜか許されるようなところがあり、驚くほどすんなりと、ヨンファの無防備な心の中に入り込もうとしてくる。


だからと言って、油断は禁物だ。
鋭い爪と牙を隠し持った肉食獣のような一面を持っているジョンシンは、いつ豹変するか分からない危険性を孕んでいるのだ。
少しでも気を抜けば、この男の荒々しいまでの熱にそのまま搦め捕られてしまいそうな恐れがあるため、隙だけは見せないようにしないといけない。
自分が求めている相手は、他にいるのだから。


「なあ……」


躊躇いがちな声音にハッと我に返ると、微妙に表情を硬くしたジョンシンがこちらを見つめていた。


「――さっき、病院を辞めた理由をミニョクから聞いたんだが」
「ああ……。医師免許さえあれば、どうにでもなるからな」
「うちの事務所の近くの病院でも探しているのか?当直がないような」
「……それは、どういう意味だ?」


何かを含む響きが気になりながら、ヨンファは隣に立っている男に目を向ける。


「縁談が白紙になったから、晴れて同居でもするのかと」


続けて発した言葉を耳にした瞬間、ひどく不愉快なものが背筋を走った。
ジョンシンの言いたいことは、訊くまでもなく明白だ。
それでも、訊かずにはいられなかった。


「俺が?……一体、誰とだ?」


低く問うヨンファに、「違うのか?」とまったく悪びれていない様子で問い返され、ますます神経を逆撫でされる。


「勝手に話を作るな。そんな理由で、俺が病院を辞めるとでも思っているのか?馬鹿も休み休み言え」


声を荒げて睨み据えるヨンファを、ジョンシンは顔色ひとつ変えることなく、真正面から受け止めた。
大学病院を辞めたのはあくまでも自分の意思であって、第三者が関わっているはずがない。
ジョンヒョンを誰よりも大切な存在だと思っているが、男女でもあるまいし、そんな夢物語など考えたことすらなかった。
ヨンファの剣幕に対して、ジョンシンはふいっと視線を逸らしてしまう。


「――悪い。俺の思い違いだ」


そのどこか安堵したような表情から、南部洞組の事務所で不機嫌そうにしていた原因が分かった気がした。
確か、ジョンヒョンの破談について話をしていた時ではなかっただろうか。


「この件にヒョニは一切関係ない。それに、今はミニョクが……」


そこで言葉が止まってしまったヨンファの代わりに、驚いた顔のジョンシンが低い声で言った。


「ミニョクがジョンヒョンのところにいるのを知ってたのか?」
「ああ、前もってヒョニから聞いていたんだ」


突如、胸が疼くような痛みを感じ、思わず目を伏せる。
すると、瞠目したまま黙ってヨンファを見ていたジョンシンが、小さく息を吐くのが聞こえた。


「――平気なのか?」


必死に押し殺していた感情の蓋を難なく開け、ずばり言い当てるように切り込まれて、言葉を失う。
反射的に目線を上げると、ジョンシンは真顔でヨンファを見ていた。
この話題には触れられたくなかったのに。
こちらの心情を探ろうとするジョンシンに居心地の悪さを感じ、再び視線を逸らしてしまう。


「短期間と聞いているし、俺が口を挟むべきことじゃないだろう」


そんなふうに、平然と答えられる自分が不思議だった。
分かっているのかいないのか、ジョンシンは容赦なく追い詰めてくる。


「でも、ミニョクは……」
「それ以上、言うな」


そのあとに続く言葉を予測した途端、胸を抉るような鋭い痛みに耐えかねて、反射的に遮っていた。
ジョンシンの顔をまともに直視することができず、ヨンファは窓の外の美しい景観へ向き直る。
一点を注視するヨンファを、傍らの長身が無言で見下ろしているのが気配で分かった。


「何もあるはずがない」


吐き出した声音がやけに低く聞こえ、まるで自分に言い聞かせているようだと朧げに感じる。
眼差しを注がれているのを知りながら、ヨンファは正面に視線を据えたままだった。
せっかく頭の隅から追い出そうとしていたのに、この男が蒸し返したせいで、持って行き場のない重く澱んだ感情が胸の中に広がっていく。
次第にそれは溢れそうになり、ヨンファは奥歯を強く噛み締めることで何とか抑え込んだ。


それっきり口を噤んだヨンファをどう思ったのか、しばらく黙って見つめていたジョンシンが、軽く息をつく。
「あのよ……」と、規格外の長身を折り曲げるようにして、ヨンファの顔を覗き込んできた。


「ジョンヒョンのマンションに、毎日押しかけてやろうか?」


不意に、低めの声音がポツリと呟いた。
意味が分からず、「……え?」と両目を瞬かせたヨンファをよそに、さらに続ける。


「ふたりきりにさせないように」


あまりにも突拍子もないことを言われ、ヨンファはジョンシンの顔をまじまじと見返してしまった。


「ばっ……、何を言ってるんだ」


呆れ声を上げたヨンファに、ジョンシンはさまになっているスーツ姿で腕を組む。


「そもそも退院の話が出た時に、俺のところに来るか?って、ミニョクに訊いたんだけど、ワンルームで狭いし、自分が預かることになってるってジョンヒョンに却下されたんだよ。あの男、結構、義理堅いところがあるからな。それで、アンタがよく許したなと思ってさ。普通、有り得ねぇだろ」


納得しかねるような表情で言い放つ男に、少し溜飲が下がったような気がして、ヨンファは口を開いた。


「組の中で決めたことに部外者の俺がどうこう言う権利はないし、あんなふうに命を投げ捨てる覚悟で助けられたら、誰だって責任を感じる。俺がヒョニの立場だったとしても、同じことをするさ。それに、ヒョニはミニョクの気持ちに気づいていない」


自分の命を投げ打ってくれたミニョクに、できる限りのことをしてやりたいと願うのは当然であり、ジョンヒョンの気持ちは心底理解できる。
ふたりを信じさえすれば何の問題もないのに、自分が勝手に不安を抱いているだけなのだ。


「どうして言い切れるんだ?」
「ただの憶測だ」


ヨンファが力なく笑うと、ジョンシンは眉を顰めて怪訝そうな表情をする。


「そんな顔をするくらいなら、なんで反対しなかったんだ?権利がないとか、んなもん関係ねぇだろ」


ストレートに核心を衝かれて、ヨンファはすぐに返答できなかった。
「俺の前で、洗いざらいぶちまけろよ」と、黒い瞳が促しているように思えたが、自分の醜い感情を晒すわけにはいかない。
この男は、なぜ見て見ぬ振りをしてくれないのだろうか。
動揺する心を鎮めようとしているのに、逆に煽ってくる。
悪びれもせず人の心の中に踏み込んできて、ヨンファの気持ちを搔き乱し、どす黒いものに変えていくのだ。


「――お前が、俺たちのことを応援してくれているとは、知らなかったな」


目に見えない不安に押し潰されそうだからこそ、冷静な態度を貫くしかなかった。
意図して自分の感情を表に出さないヨンファに、ジョンシンが片眉を上げる。
射貫くような視線が痛かったが、平然とした面持ちで跳ね返すと、途端に男は黙り込んで微妙な顔つきになった。
誰よりもジョンシンの気持ちを知っていながら、ヨンファは嫌な言い方をしてしまった自分に気づく。
この男に非はないのに、口では説明できない苛立ちをぶつけずにはいられなかった。


「はぐらかすなよ。応援?んなわけねぇだろ。縁談推進派だったのに、呆気なく流れやがって。俺は、またアンタがろくでもねーことを考えそうで、心配なんだよ」


ひどい台詞をぶつけたのに、こちらの挑発に乗ることもなく、苦々しいものを吐き出すような口調で言い切られて、ヨンファは目を瞠った。
この男には、誤魔化しがきかないのだ。
ヨンファのちょっとした感情の変化を敏感に察知できるのも、それだけ寄せてくれる好意が大きいということなのだろう。


その溢れんばかりの想いが、ヨンファの心にずしんと重く圧し掛かってきた。
煩わしいことに巻き込まれたくないと思いつつ、その反面、ジョンシンに癒されている部分があるのも否定できない。
厄介な感情さえなければ、遠慮のない兄弟のような関係で付き合っていけるのにと、残念でならなかった。
だから、敢えて突き放すような物言いをするしかないのだ。


「関係ないお前に、心配される謂れはないな。それに、ヒョニを侮辱するのはよせ。お前の兄貴分だろう」


気づいたら、ヨンファは拒絶するように吐き捨てていた。
下手に気を使われるのは落ち着かないし、何よりもジョンヒョンとの平穏な日々を壊したくない。
ジョンシンはあからさまに顔を顰めて押し黙っていたが、奇妙な間合いのあと、わずかに尖った声でぼそりと言った。


「アイツのことが……そんなに好きか?」
「………っ」


直球の問いに大きく目を見開いたヨンファの前で、ジョンシンは完全に表情を消していた。
真っ向からぶつかった視線をぎこちなく逸らして、気まずい沈黙に耐えかねていると、頭上から深い溜息が聞こえてくる。


「いくらミニョクのことを何とも思っていなくても、恋人がいながら他の男を泊めるって、アンタに対して少し無神経すぎやしねぇか?」
「それは、考えがあってのことだから……」
「本当にそれでいいのか?」


目を上げると、ジョンシンは感情の読めない顔つきでヨンファを見ていた。
この男はやたらと勘が鋭いから、こちらの気持ちをすべて読まれているのかもしれない。
すぐには返事が見つからず、数秒経ってからヨンファは「……ああ」と、ようやく声を絞り出した。


「俺なら、しねぇな」


神妙な面持ちで呟いてから、ジョンシンが前髪を掻き上げる。


「誤解を与えたり、不安にさせるようなことは絶対にしない。アンタを悲しませたくないから」


低い声に苦い響きを感じて、急に息苦しくなった。
ミニョクの想いを知ったあの日から、ヨンファの胸には、目に見えない小さな棘が刺さっているような感覚に見舞われている。
自分とジョンヒョンは幸せでも、その裏で犠牲になっている者たちが存在することを、どうしても無視できなかった。


噛み締めるように放たれた言葉はこちらまで切なくなりそうで、やけに胸が痛い。
怖いくらいの真摯さが滲んでいるジョンシンの眼差しが、ヨンファの波立つ心を打ち砕こうとする。
いつの間にか、囚われたように身動きができなくなっている自分に気づき、ヨンファは狼狽えた。
ここでほだされては駄目なのだ。
努めて平静を保ちつつ、ヨンファはジョンシンの目を見て答えた。


「馬鹿だな。そんな取り越し苦労。俺の方が長く生きているのに、どうして年下のお前がそこまで心配するんだ?」
「歳なんか関係ねぇだろ」


自嘲するように、ジョンシンが溜息混じりに吐き捨てた。
ことごとく躱していくヨンファに対して、どこか苛立っているように見える。
気持ちはとても有難いと思っているが、変に期待させるようなことを言えば、もっとジョンシンを傷つける羽目になる。それだけは、どうしても避けたかった。
短く息を吐いて、どうにか笑みを浮かべながら、ヨンファは目の前の長身を見上げる。


「俺は大丈夫だから、お前も普通にしてろよ。そういう嫌がらせみたいなことは、しなくていいから」


軽く返してみたが、まだどこか納得しかねる顔つきをしたジョンシンの視線は、鋭いままだった。
その凄みのある目に、心の奥まで見透かされたような気がして咄嗟に目を逸らしたくなったが、どうにか辛抱する。
粗野でありながら、こんなふうにさりげない優しさを感じさせられるたびに、なぜか心が温かくなるのだ。
ジョンシンはヨンファを見下ろして、気遣うような言葉を与えてくれる。


「――あんまり抑え込むなよ」


そう言うなり、すっと伸びてきた長い指先にこめかみの辺りをそっと撫でられて、ビクンッと肩が揺れた。
行為の最中やじゃれ合っている時に、ジョンヒョンが愛おしげに唇を押しあててくるので、つい過敏に反応してしまったようだ。
ほんの一瞬なのに、触れられた箇所に奇妙な熱が残っているような感覚に襲われて、唇が震える。


今さらのように近すぎる距離に身を竦ませて、反射的に後ずさった瞬間、ヨンファはフラッとよろけてしまった。
知らぬ間に、アルコールで足許が覚束なくなっていたのかもしれない。


「………っ」


後ろに倒れると思ったのに、気づくと、長い腕に抱き留められていた。
煙草の匂いを間近に感じ、「すまない」と言って顔を上げると、思い詰めたような漆黒の双眸と目が合う。
切なげな色が滲んでいて、なぜか心臓がギシリと音を立てて軋む。


触れ合っているところから、何か行き場のない熱のようなものが伝わってきて、ドキリとした。
馴染みのない感触に肌が粟立ち、再び出口のない息苦しさに囚われたような錯覚に陥る。
下手に動いたら、辛うじて保っている均衡が崩れそうな、そんな危うさを感じた。


無意識のうちに唇を噛み締めたヨンファの考えを、すぐに察したらしい。
どこか困惑したように、ジョンシンがこちらを凝視しているのが分かった。
こんなところを誰かに見られたら、誤解される。
すぐに離れなくてはと思うのに、痛いくらいの強い力で腰を抱き寄せられていては逃れることができない。


「放、せ……っ」


怖いほど真剣な眼差しに怯んで身を捩ると、逃すまいとますます力が込められた。
吐息が触れそうなほどの距離に胸の奥がざわついて、激しい勢いに呑まれそうになる。


「ヨン…ファ、――」


ジョンシンが言いかけた時、背後から足音がした。
ドクンと、心臓が大きく脈打つ。
慌てて振り返って、ヨンファはこの状況が非常にまずいことを瞬時に悟った。


「―――!」


いつから見られていたのだろうか。
そこには、ひどく険しい顔をしたジョンヒョンが立っていた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(8)

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2017/05/01 (Mon) 21:40

haru

i*****さん

こんばんは♡
この画像のジョンシン、素敵ですよね。
外の景色に目を向けているジョンシンというイメージで選んだんですが(ヨンから見ている感じ)、i*****さんの妄想力には恐れ入りました。なるほど、そういう風に見て下さったんですね♪

直球なのは、ヨンが大人な上にゲイではないし、駆け引きが通じない相手だからというところかな。
あと、ジョンシンが真っ直ぐな性格というのもあります。
i*****さんの誘導につられて、ついポロッと言いそうになるので、ちょっと言葉を選んでます(笑)
ヨンは男としての矜持もあるし、同性を好きになってしまった葛藤は心の中に持ち続けていると思うので、完全には流されないといった感じでしょうか。ニュアンスはすごく伝わってます♡

ここでかって場面で、ぶった切らせてもらいました(*-ω-)
バニのリアクションが、ですね…。
普段は寡黙なんですが、ヨンのことになると別人になるので、私も予測不可能です。←嘘をつけ。
敵対している組織の人間なら、チャカを出してるかも。
ひたすら「萌えを探して三千里」の精神で、何かしら模索しながら進めていこうと思います。
今、脱線中なので、それが終わったら続きに取りかかりますね♪

2017/05/02 (Tue) 22:51

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2017/05/03 (Wed) 18:47

haru

は*さん

こんばんは♡
ニアミスがたまらなく好きなんです。
ヨンとジョンシンのシーンは書いていて楽しいので、そう言ってもらえて嬉しいです(*´ω`*)
お互いに求めているものに温度差があるから、なかなか気持ちが交わらないといいますか…。
コミカルなやり取りの背後に見え隠れする、危うい感じが出せればなと思っています。

バニがどう出るかですよね。
ヨンが絡むと人が変わるので、どうなるのかな?…って、白々しすぎる(-ω-;)
確かに、隙を見せないようにと言いながら、隙だらけかも。は*さん、鋭いです(笑)
バニとジョンシンがいろんな意味で百戦錬磨男なので、ヨンは何かと大変でしょうね。
次の次に、続きをアップする予定です♪

2017/05/03 (Wed) 21:20

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2017/05/05 (Fri) 01:06

haru

j****さん

こんばんは♡
私自身は自分好みの萌え禿げ展開で、不謹慎にも楽しいの一言ですが、j****さんにとってはハラハラなのですね。
バニとジョンシンは一応仲のいい兄弟のような関係という設定なので、仕事やプライベートで一緒に行動することは多いと思います。ただ、ヨンのことが絡むと、互いに譲らないといいますか、日頃から牽制し合って火花は散らしてそうですね。
二人を安っぽい男にはしたくないので、できるだけそうならないように書きたいところですが、ちゃんと表現できるかな(TωT)

まだラストに至るには時間がかかりますが、ヨンには最後まで真っ直ぐな生き方を貫いてほしいなと思っています。
グンとレラは私の中ではデキてはいなくて、いいライバル関係のような感じなのですが、読んで下さる皆さんのご想像にお任せしようかと、何となくぼやかしているつもりです♪

2017/05/05 (Fri) 21:29

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2017/05/09 (Tue) 12:10

haru

M*****さん

こんばんは♡
先日に引き続き、この度も温かいコメントをどうもありがとうございます(*´ω`*)
シンヨン以外の話も読んで下さり、とても嬉しいです。
極道を連日夜中までですか!ものすごく感激しております(TωT)
44話で泣いて下さったんですね。本当に有難いです。
私は話を書く際に音楽を聴くことが多いのですが、この時はワンオクの「Taking Off」をヘビロテしまくりで、切ない曲調だったので、イメージが膨らんでああいう感じに仕上がりました。
私もシンペンなので、書いていてとても辛かったです(TωT)

ヨンとバニは確かに容姿の変動が激しいですね(笑)
私が書くヨンは昔のスリムな頃をイメージしていまして(←イシンも含まれています♡)、バニはすごく鍛えていた頃です。
ヨンは一体何を目指しているのか、ミュージシャンなのだから、筋肉をつけるのはやめてもらいたいですよね(TωT) せっかく綺麗な顔をしているのに…。M*****さんも同じ考えで嬉しいです。

そして、2話の例のシーンですが、私の中では封印してしまいたい代物なんです(TωT)
なぜスンにしたのか?それは、ヨンと身長が同じくらいという安易な理由でした。FTのことをよく知らないまま書き始めてしまったので、穴があったら入りたいです(TωT) ジョンシンはジェジとの方が仲がいいですものね。
あと、ジョンシンがヨンと再会するまで、いかに遊び人だったかを強調するために遠慮せず書いたものですから、ああいう結果に…。BLが苦手だと、嫌悪感もあると思います。
それ以降、その手のシーンはできるだけ抑え気味に書くように心掛けているのですが、どぎつかったらごめんなさい(TωT)

さて、いよいよライブが始まりますが、神席、すごいですね!
そんなに近くだとジョンシンのいろんなところが見れて、私なら確実鼻血が出そうです。
私は生CNは見たことがなくて、お金をかけずに日々楽しんでいるのですが、今回もPC前で寂しくレポを読みながら行った気になってみせます!
M*****さん、ジョンシンに穴が空くほどガン見して、楽しんでいらっしゃって下さいね♡♡

2017/05/09 (Tue) 21:52