CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

蒼き運命 -アオキサダメ- 49

2017年04月08日
蒼き運命 -アオキサダメ-(極道パロ) 8






「ヨンファ、くれぐれも失礼のないようにな」
「――分かっているよ」


シートに凭れたまま、窓の外を流れる夜の街の景色を眺めていたヨンファは、心の中でひっそりと溜息をついた。
ガラスに映っている自分を見ると、どこかいつもより硬い表情になっているのが分かる。


冬の足音が聞こえてくる季節となった十一月半ば、ヨンファは父親である青龍組組長とともに、ソン・スンヒョンの運転する黒塗りのベンツの後部座席に座っていた。
助手席には、最高顧問のハン・ソンホも同乗している。


他に、かつて若頭をしていたイ・ドンゴンや、チルソン組のアジトに潜入してヨンファを救出した組員たちも別の二台に分かれて乗り、中区にある南部洞組の事務所に向かっているところだった。
そして、今回の件について、ヨンファの口から直接、謝辞を述べることになっている。


親友であるイ・ホンギの父親にあたる南部洞組のイ組長と対面するのは、ヨンファが高校生の時以来だ。
そもそも跡目を継ぐことを拒否したのだから、本来ならばこういう場に出ることはないのだが、今日ばかりは致し方ない。
何よりも仁義を重んじて筋を通すのがこの世界の暗黙の掟であり、礼儀を尽くすことは必要不可欠なのだ。


窓から視線を逸らして脚を組み直す際、ふと自分が身に着けているブリティッシュスーツに目を落とす。
数日前、店に赴き、直接受け取ったばかりなのだが、仕上がりは想像以上で、申し分なかった。


あれは、ヨンファが怪我を負って間もない時だ。
唐突にかかってきた父親からの電話で、この日のためにスーツを用意しておくように言われた。
既に何着か持っていたため、軽く受け流していたところ、翌日、代理でヨンファのマンションを訪れたハンに半ば強制的に車に乗せられて、ふたりが向かった先はスタイリッシュなショップが集まっていることで有名な清潭洞だった。
どうやら青龍組御用達のようで、高級車がずらりと並び、セレブや芸能人が多く出没すると言われている清潭洞ブランド通りのそばにある、オーダースーツ専門店へと連れて行かれたのだ。


あらかじめ事情を説明していたのだろうか。
五十代くらいの品のある店主らしき男に愛想よく出迎えられ、すぐさま店の奥へと案内された。
どうせ費用は父親持ちなのだからと、ヨンファは数多くある現物の生地を見ながら、ネイビーシャドーストライプのドーメルのスーツを仕立ててもらうことにして、採寸された上にデザインを決めた。


今、ヨンファが身に着けているスーツは、その時のものだ。
ビルドアップショルダー、短めの着丈、フロントカットのカーブが急角度なのがブリティッシュスーツの特徴で、「クラシカルな中に知的な若さがあるスタイルだから、さぞかしお似合いでしょう」と店主からも強く勧められた。
実際に着てみると、ウエストは細めのシルエットでありながら、オーダーならではの窮屈さをまったく感じさせず、重厚なシルクのような光沢感と、身体にフィットした軽やかな着心地を実感することができる。


「これ、高かったんじゃない?スーツくらい持っていたのに……」
「私の息子として同行させるのに、安物では困る」


ヨンファがひとりごちると、すかさず隣の父親から一刀両断された。
昔から、自分の考えが一番正しいと思っていて、それを人に押しつけるきらいがある。
一般の感覚からすると、決してグレードの低いものを購入したわけではないのに、父親にとっては安い部類に入るのだろう。
そんな言い方をされたら身も蓋もないが、五年ぶりに再会して以来、何かと世話になっていることは事実なので、今ひとつ頭が上がらない。


大学病院の勤務医は仕事の量に比例せず、給与が低い傾向にあるのは紛れもない事実だ。
なぜならば、大学医学部の付属という役割であるため、医師を育てる機能を持ち、高度な研究開発にも力を入れていかなければならないが故に、運営していくのに多額の資金を必要とするからだ。
ただ、若い医師にとっては、豊富な症例を経験し研鑚を積めるというメリットもあり、一人前になる上での教育機関のようなところがある。
しかし、それも辞めてしまっては過去の話だ。


スーツを引き立たせるためにどうかと店主から提案され、他にサックスブルーのドレスシャツ、スーツと同系色のレジメンのシルクネクタイ、ストレートチップの黒の革靴に至るまですべて揃えることになった。
そういった経緯もあり、父親の前でそれ以上何も言えないでいると、そんなヨンファを慮ってか、目の前に座っているハンがこちらを振り返り、満足そうに頷く。


「若、よくお似合いですよ」
「お世辞はいいぞ、ハン」
「滅相もない!いつにもましてお綺麗で……」
「キャバクラの女も、そんなふうに口説いているのか?少なくとも、男に対して言う台詞じゃないな」


子供の頃から容姿について言及されることが多く、慣れているとはいえ、もういい加減うんざりする。
半ば八つ当たり気味に、きつい口調でバッサリと切り捨てたヨンファに、ハンはたじたじの様子だった。
「すみません」とガックリと肩を落としている丸顔の男を見て、「そんなにハンを苛めてやるな」と父親が苦笑する。


「せっかく母親に風貌が似ているのに、お前は昔から顔のことを言われるのを嫌うな」
「……女じゃないんだから、嬉しいわけないよ」
「今回のことでもハンは裏で実によく動いてくれた。遠慮がないのは分かるが、もう少し労ってやりなさい」


それはヨンファとて、十分に承知している。
部屋住み時代から何かと親身になってくれて、いまだに結婚もせず父親の側近として手腕を振るっている男は、組にとってはなくてはならない存在だ。
屋敷を出て疎遠になっていたヨンファに気づかれないように、密かに舎弟に様子を探らせていたことも、最近、父親から聞いて知ったばかりだった。
自分にしてみれば身内同然だから、つい物言いも辛辣になってしまう。


「ハン、悪かったよ。いつも、いろいろと助かってる。――ありがとう」


その瞬間、肉づきのいい肩が大きく跳ねたかと思うと、身体を無理矢理捩じってヨンファの方を向いた。
丸顔が瞬きもせず、じっとこちらを見つめてくる。
その迫力に思わず怯んでしまったが、ハンは何かをこらえるようにぐっと口を真一文字に引き結び、太い眉毛は八の字になっていた。


「若……。もったいないお言葉です」


噛み締めるように発した言葉は微かに語尾が震えていて、肉に埋もれそうな細い目には光るものが見える。
一時期、糖尿病で痩せていたはずなのに、体重が明らかに戻っているなと思いつつ、この男はとても人情に厚く、涙脆いところがあったのを思い出した。
「良かったですね、顧問」と、再び前方を向いたハンに運転席のスンヒョンがハンドルを操作しながら声をかけている。


これは、キャバクラで飲みまくっているに違いない。
ヨンファはそう確信し、また父親のいないところで追究してやろうと、新たな楽しみを見つけた子供のような気分だった。















しばらくして、車はソウル特別市最大の繁華街と言われる明洞の一角にあるビルの前に到着した。
すると、ずらりと並び立っていた黒ずくめの屈強な組員らが、こちらに気づいて一斉に頭を下げる。
駐車場になっている一階にスンヒョンが車を停めると、後続車も次々に敷地内へと入ってきた。


「お疲れ様です」


数人の舎弟らしき男たちがまるでホテルのドアマンのように、さっとドアを開けて出迎えてくれる。
全員が車から降りると、父親のそばにはハンが付き添い、南部洞組の組員らと二言三言、言葉を交わし、案内されるがまま奥へと進んでいく。
至るところから視線が自分に注がれているのを感じ、ヨンファは思わず気後れしてしまった。


「若、行きましょう」
「ああ……」


背後から促されて振り返ると、若頭のチャン・グンソクが満を持してといった面持ちでスッと前に出てくる。
普段よりも言葉数が少なく、わずかに神経を尖らせているのが気配から察せられた。
姿勢を正して気を引き締めると、ヨンファに付き従うように後ろからついてきていた彫りの深い貌と、一瞬だけ視線が絡み合う。


ジョンヒョンは仕立てのいいブラックスーツを着こなし、相変わらず全身から男の色香を滲ませてはいるものの、纏う空気はふたりきりの時とは明らかに違っていた。
非の打ちどころがないほどまったく隙がなくて、鋭い目つきで周囲に神経を張り巡らせているのが分かる。
ヨンファを守るように背後に立つ男から視線を外して前を向くと、グンソクのあとに続いた。


ダークスーツに身を包んだ集団の中にいると違和感があるのは否めないが、ヨンファはこの独特の雰囲気に不思議と溶け込んでいた。


「ご案内します」


ひとりの南部洞組の舎弟とともに、駐車場の横にあるエレベーターへと向かう。
セキュリティはかなり厳重で、あらゆるところに監視カメラが設置してあるのが見て取れた。


男がカードキーをかざすとドアが開き、全員が中に乗り込むと、次に階数ボタンの下にあるテンキーを何度も押している。
暗証番号を入力した途端に動き始め、どうやらセキュリティレベルの高い階には、許可された人間しか降りられないように制御されているらしい。
目的の階に到着すると、男に誘導されるがままエレベーターを降りる。


静かな広い廊下を歩いているところで、すでに別の舎弟が左手にある部屋の前で待機していた。
一礼して「こちらです」と言いながら、重厚感のあるドアを開けて案内される。
中へ足を踏み入れると、五十㎡ほどの広々とした応接室だった。
黒い革張りのシングルソファが多数、部屋をぐるりと囲むように配置され、真ん中には天板が大理石のローテーブルがいくつも置かれている。
デザイン性と機能性を兼ね備えたモダンなフォルムで、応接室をスタイリッシュに見せていた。


広い壁面には大きな絵画が掛けられ、飾り棚には値段がつけられないような壺などの骨董品がさりげなく置いてある。
高級感が漂いながらも落ち着いた雰囲気を醸し出していて、組の中にセンスのいい人間がいるのか、いかにも組事務所という印象は受けなかった。


南部洞組の舎弟に、上座にあたる窓側のずらりと連なっているソファを勧められ、一番奥に組長である父親が腰を下ろし、その隣にヨンファ、最高顧問のハン、若頭のグンソク、若頭補佐のジョンヒョンと続き、ドンゴン、ミニョク、ジョンシン、スンヒョンの並びで座った。


周りを見渡しているところでノックの音が響き、若い男が飲み物を運んできた。
ふわっと立ち込める芳醇ないい香りとともに、ローテーブルにそれぞれコーヒーカップを置き、一礼して下がっていく。
父親が口許に持っていくのが見え、ヨンファも他の組員たちと同様にコーヒーに口をつける。
豊かな風味が口いっぱいに広がり、心地よい余韻が続いていると、気持ちが少し落ち着くような気がした。


イ組長とは昔、ホンギの家へ遊びに行った時など、何度か面識はある。
父親からもきつく言われていたため、その都度、挨拶だけはきちんとしていたが、まさかこういった形で再会することになるとは思ってもみなかった。
ヨンファが幾分緊張した面持ちで居住まいを正していると、ドアが開いてスリーピーススーツ姿の男が現れた。


「どうもお待たせしました」


渋みのある落ち着いた低音に、ジョン組長以下全員がソファから立ち上がって、深く頭を下げる。
恰幅のいいイ組長を先頭に、数人の男たちがぞろぞろと入ってきた。
十年ぶりに顔を合わせた南部洞組のトップは当時と同様に眼鏡をかけ、若干、額が広くなってはいるが、柔和な表情を浮かべながらも凄みが増したように感じられた。
年齢は父親とあまり差がなかったと記憶しているから、五十代後半だろう。


「わざわざご足労いただいて、恐縮です。どうぞ楽にして下さい」


イ組長が一番奥正面のソファに腰を下ろすと、組員らはこちらと向かい合うように座った。
ヨンファは揃った面子をひとりずつ確認していく。
左端から若頭のキム・ヒチョル、その隣には若頭補佐のホンギ、眼光の鋭い四十代半ばくらいの舎弟頭と続き、あとはチルソン組のアジトで見た舎弟らの姿もあり、末席までずらりと居並んでいる。
ソウルの裏社会における二大勢力の面々が一堂に会し、ヨンファはこの威圧感のある空気に呑まれそうになった。


「この度は、うちの愚息がいろいろとご迷惑をおかけしました」


父親が頭を下げると、イ組長は「いやいや、とんでもない」と手で制した。
緊迫感に包まれた応接室で全員が見守る中、青龍組と南部洞組の組長同士が挨拶を交わし合う。
ふたりは別々の組にいながらも、舎弟時代から親交があったと聞き及んでいる。
兄弟盃を交わしたことで信頼関係はより強固なものになり、ヨンファとホンギが親友同士というのもあって、家族同然の間柄といっても過言ではないだろう。


「うちにとっても旨味がありましたからな。まさに渡りに船で、感謝しとるところですよ。なあ、ヒチョル」
「はい、今まで散々シマを荒らされて、相当な被害が出ていたので、迷惑料をがっぽり徴収してやりましたよ。意外とすんなりいって、いささか拍子抜けしましたが」


イ組長から話を振られると、ヒチョルは実に愉しげに余裕の笑みを浮かべた。
「本当に思わぬ収穫でしたよ」と満足そうな男は、今日はサングラスをかけておらず、やや眦の上がった切れ長の瞳を細めている。
少し長めの髪が洗練された美貌をより引き立てていて、氷のような冷酷さと妖しげな雰囲気を持つ男だ。
この顔で睨みを利かせると相当な威圧感があったなと、ふと震え上がっていたチルソン組の連中を思い出す。


「それは、お前がかなり圧力をかけたからだろう」


口許を緩ませるイ組長に、ヒチョルはチラッと斜め前に意味ありげな眼差しを向けた。


「俺はまだ可愛いもんですよ。ジョンヒョンの方が余程やり手だ。涼しい顔をしながら容赦なく相手の痛いところをついて、有無を言わせなかったですから」
「いえ、それほどでも」


控えめに答えたジョンヒョンにほくそ笑むと、その隣の男にも視線を投げかける。


「グンソク、いい弟分を持ったな」
「お陰様でな。楽をさせてもらっている」


グンソクが珍しく笑みをこぼしながら、ヒチョルを見つめている。
異なる組織の組員同士でありながら、ふたりの間にはお互いを認め合っているような雰囲気が感じられた。
ヨンファは肩の力が少し抜けたような気がして、心の中でそっと息をつく。
その時だった。


「ヨンファくんと会うのは、高校生の時以来でしたかな」


突然、話の矛先を変えられ、その場にいる全員の視線が集まった。
優しそうな双眸が眼鏡越しにヨンファを捉えると、イ組長は遠い記憶を手繰り寄せるような表情を浮かべる。


ホンギとは高校二、三年生のクラスが同じで、たまたま席が隣だったのもあり、親しくなるのに時間はかからなかったが、その時点では、お互いの家業が同じことをふたりはまだ知らなかった。
気づいたのは、初めてホンギの家を訪れた時だった。
どう見ても一般家庭とは思えないセキュリティ完備の豪邸に加えて、たまたま出くわした黒ずくめの男を見て、すぐさまピンときたのだ。
ヨンファの受験勉強が忙しくなるまでは、よくお互いの家を行き来していたものだと、懐かしく思い出される。


「はい、ご無沙汰しております。その節はお世話になりました。――また、ご挨拶が遅れましたが、この度は私事で多大なご迷惑をおかけしまして、申し訳ありません」


柔らかな眼差しを向けてくるイ組長へ会釈をして、まずはチルソン組のアジトから救出してもらったことと、すぐに挨拶に伺わなかった非礼を詫びる。
あとで聞いた話だが、父親や組の幹部たちは即日、ここを訪れて頭を下げてくれたようだ。
いくら右腕を負傷し、ミニョクが退院して全員が揃った時に同行するように言われたからとはいえ、今まで何もしていなかった自分をヨンファは恥じていた。


「まあ、そう堅苦しい挨拶は抜きにして。今回のことは災難としか言いようがない。ジョン組長のご子息で、しかもホンギの親しい友人とあっては、うちとしても皆、黙っておれん性分の者ばかりでしてな。本当に無事で良かった」
「どうもありがとうございます。皆さんのご厚意に感謝しています」


ヨンファはイ組長に礼を述べて、深々と頭を下げた。


「当時から聡明な印象を持っていたが、ますますご立派になられましたな。医師になられたそうで、ジョンさんもさぞかし鼻が高いでしょう」
「いやいや、ホンギくんのように跡目を継ぐ決意をしてくれると良かったんですが、この通りですよ。いまだに親を喜ばすような浮いた話も聞きませんし、困ったものです」


本音が垣間見えた最後の言葉に、心臓が小さく跳ねた。
ヨンファは辛うじて顔には出さないように、どうにか平常心を保つ。
普段、父親とはほとんど顔を合わす機会がなく、干渉されることもないから、跡目の件のみならず、結婚についても諦めているものとばかり思っていた。


だが、父親とは別の道を選んでしまった上に、今のままでは跡継ぎすら残せない可能性が高い。
友人の忘れ形見を引き取って育て上げた、実の息子のように目を掛けているジョンヒョンがヨンファと恋仲だと知ったら、どういう反応をするだろうか。
同い年の息子を持つ組長同士の話に耳を傾けながら、ヨンファの胸中は複雑だった。


今まで生きてきた中で、これほどまでに心を揺さぶられた相手はいなかった。
それは、これから先も変わることはないと確信している。
自分にそう言い聞かせながら、すぐ近くに座っている男のことを想う。


「大学病院にお勤めだと、引く手あまたでしょう」
「――いえ、実は辞職しましたので、今は求職中の身なんです」


周囲の者が一様に驚愕した表情をして、あちらこちらで息を呑む気配がした。


「えっ、辞めたのか?ヨンファ、マジで!?」


テーブルを挟んで、ヨンファの前に座っているホンギが驚いた様子で訊いてきたのに対し、「そうなんだ」と頷く。


「大変な激務と聞きますから、いろいろと事情がおありでしょう。気骨のあるところはお父さん譲りとお見受けするので、先々が楽しみですな」


イ組長の淡々としていながらもどこか温かみのある言葉が、ヨンファの胸に沁み渡る。
さすがに南部洞組を纏め上げる頂点に立つべき人で、青龍組と友好関係を結んだ理由が分かったような気がした。


「せっかくの大学病院勤務だったのに。結婚が遠のいたんじゃねぇのか?」
「さあ、どうかな。そういうホンギは?」
「俺はまだ家庭に縛られたくないからな。親父とお袋を見てると、つくづく独身がいいって思うぜ。ミナの縁談にしてもそうだし、何かパーッと明るい話題でもあると楽しいのによ」


相変わらずホンギは何者にも囚われない自由奔放な生き方をしていて、羨ましいなと思った矢先に「縁談」という言葉が耳に入り、ドキリとした。


「ホンギ、発言を慎みなさい」
「その件でも、すみませんでしたな」
「いやいや。こちらが強引に話を進めたので、ジョンヒョンに申し訳ないことをしましたよ」


歯に衣着せぬ物言いをするホンギに釘を刺したイ組長に、なぜか父親が詫びている。
一体どういうことなのだろうか。


「ご期待に添えず、申し訳ありません」


すると、今度は聞き慣れた艶のある美声が、耳に流れ込んできた。
何の話をしているのか、言葉の意味をはかりかねていると、「あの話はなくなったんだよ」と、目の前のホンギがボソッと教えてくれる。
平静を装って相槌を打ちながら、ヨンファは内心の動揺を押し隠せないでいた。


縁談の話が立ち消えになったのは、両組の絆をより深めようとしていただけに、双方にとっては残念なことこの上ないだろう。
ヨンファは胸の奥底に押し込んで、できるだけ考えないようにしていたのだが、不謹慎にも心のどこかで安堵している自分がいた。


それで、ジョンヒョンは釜山に行こうと誘ってくれたのだろうか。
もしそうであるならば、純粋に喜んでいいのか。
誰からも祝福されることのない許されない恋であっても、ヨンファは間違った選択をしたとは思っていない。
長い年月を経て、せっかく通じ合った気持ちをなかったことにするなんて、到底できるはずはないのだ。


「アイツ、一見、天然ぽいけど、結構気が強いから、ジョンヒョンもやめて正解だったぞ。確実、尻に敷かれるところだったな。……うちの親父みたいに」


多少は気を使ったつもりなのか、最後の台詞だけは小声だったが、しっかりと本人には聞こえていたようだ。


「ホンギ!儂のことならまだしも、ミナが聞いたら怒るぞ」
「いいんだよ、親父。うちのもんは皆、知ってるんだからよ」


イ組長親子の会話にあちこちから笑いが起こり、その場の空気が一気に和らいだ。
極力見ないように努めていたのだが、どうしても気になって、ヨンファはちらりと視線を横に流す。
自分の実妹の素を暴露するホンギに、ジョンヒョンは苦笑いを浮かべて上手いこと躱していた。
先ほどの、ヨンファの結婚を望んでいるような父親の台詞に対しても、落ち着き払ったまま顔色ひとつ変えなかったに違いない。


そんなことを考えていると、不意にジョンヒョンの向こうから、射貫くような鋭い視線を感じた。
じっとこちらを窺うように細められた黒い双眸とかち合い、ヨンファは息を呑む。
何か気に入らないことでもあったのだろうか。
周囲の者とは一線を引き、ジョンシンはどこか面白くなさそうな顔つきをしている。
訳が分からずにいると、不愉快げに歪められたきつい眼差しはブレることなく、真っ直ぐにヨンファだけを見つめていた。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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2017/04/08 (Sat) 02:09

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2017/04/08 (Sat) 08:44

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2017/04/08 (Sat) 21:49

haru

i*****さん

おはようございます♡
ストーリーとは直接関係ないのに、メンズスーツが大好きなもので、完全に自分の趣味に走ってしまいました。少しでもイメージがお伝えできていれば嬉しいです♪
この度、スーツを新調されたのですね。今は細身のデザインが主流なので、初めてのスーツとなるとフレッシュでたまりませんね♡♡
MEN'S EXを購読し、スーツにこだわりを持っている男が身近におりまして(Dですが)、無駄な知識が増えてしまいます。
007のダニエル・クレイグが着ているスーツが最高に素敵で、グレードの高いものは一見してすぐに分かりますね。今回のヨンは、そういう感じで書いてみました。
この画像の四人は黒ずくめで、とても決まっていますよね。我が子の卒業式に着るブラウスか!制服のリボンか!と思ってしまうものは私的にはアウトですが、それ以外は大好きです。

墓参りは一つのけじめのような、i*****さんの指摘して下さった意味合いを多分に含んでいると思います。
これからの展開はおおまかに考えていても、書きながら細かい部分に修正が入るかもしれません。実際に書いてみないと分からないところがあるので、私も楽しみつつ進めていきます。
大分落ち着かれてきたようで良かったですね(*´ω`*)
ドンと向かっていきたいのですが、最近ペースが乱れがちなので、注意散漫にならないようにしたいです。

2017/04/09 (Sun) 04:56

haru

は*さん

おはようございます♡
この黒ずくめの四人の画像は、最高に格好いいですよね(〃ω〃) 見た瞬間、倒れました。
一つ残念なのは、バニが隠れていることです(TωT)

極道は一応シリアス路線なのですが、あまり重い展開ばかりだと私が面白くないので、ついこういうおちゃらけたシーンを入れたくなります。そんな風に思って下さると嬉しいです♪
ざわざわする展開ばかりですが、萌えを掻き集めながら進めていきます。

2017/04/09 (Sun) 05:09

haru

j****さん

おはようございます♡
この画像の四人を参考にして書いてみたのですが、少しでも雰囲気がお伝えできればと思います♪
グンとヒチョルのシーンを少しだけ入れてみました。この二人に結構萌えるんです。ヒチョルはスリムな頃をイメージしています。

ごくせんの1と2は大好きで、全部観ました。テツ、いい味出してますよね♡思い出して下さって嬉しいです。

j****さんがおっしゃるように、何とかいい方向に持っていきたいですね。微妙な匙加減に悪戦苦闘しそうですが、頑張ってみます。

お話、書き上がったんですね。良かったら、また送って下さい(〃ω〃)

2017/04/09 (Sun) 05:29

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2017/04/10 (Mon) 21:54

haru

j****さん

こんにちは♡

先程、メールを送信したので、確認してみて下さい(*´ω`*)

2017/04/11 (Tue) 12:30