CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

BLUE MOON 1

2016年12月30日
BLUE MOON(ヴァンパイア パロ) 14
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満月の夜には何かが起こると、物心がついた頃より、祖母からよく聞かされていた。
ヨーロッパでは、人々の感情を掻き乱す「狂気の象徴」とも言われ、月の光によって気がおかしくなったという言い伝えがある。
小学生の時、その根拠について尋ねると、満月の時は月の引力が最も強く、その結果、人間の血液を脳へ押し上げて、トランス状態や興奮状態を引き起こしてしまうからだと教えられた。
それで「狂気」なのかと、ジョン・ヨンファは子供ながらに思わず納得してしまったほどだ。
また、出生率が高くなったり出血量が増えるのは、人間の血液や体液をも引っ張り、神経が活性化するからではないかと言われている。


旧暦の一月十五日は、一年で最も明るくて大きな丸い月が見られることから「テボルム」と呼ばれ、どこの家庭でも盛大にお祝いをする。一年の無病息災と豊作を祈る大切な日なのだ。
皮膚病にならず歯が丈夫になるからと言われ、朝はナッツやクルミなどの固いものや堅果類をわざと音を立てて食べ、五穀飯や干し野菜のナムル、冷たいお茶を口にすると、耳の聞こえがよくなり、一年の間は良いことが起こるとされている。


この時、ヨンファはいつも祖母から冒頭の話を持ち出され、内心辟易しながらも相槌を打ち、ただの迷信だと話半分に聞いていた。
まったく興味がなければ、誰しもそうだろう。
ヨンファが中学生になると、さすがに学業が忙しくて、話題の中心はもっぱら大学受験や将来のことへと変わり、祖母もそういう話は一切しなくなった。


その数年後、大学受験に合格し、晴れて独り暮らしを許可されたヨンファは実家を離れ、Y大学近くの高層アパートに引っ越した。
近い将来、卒業して一流企業に就職することを見据え、日々勉学に励みながら時には気の置けない友人たちと遊びに行くといった、ごく普通の大学生活を満喫していた。
そして、ヨンファが二十歳を迎えたばかりの、ある日のことだった。


日曜日で特に予定もなかったため、ヨンファは終日アパートに缶詰め状態で、前期試験の勉強をしていた。
シャワーを浴び、そろそろ寝ようかと明かりを消したところで、カーテンの向こうが異様に明るいことに気づく。
ヨンファはなぜか胸騒ぎを覚えて、何かに誘われるようにベランダへ出てみた。
すると、目の前に満月が現れて、その迫力に少しばかり驚いてしまう。
昔、祖母に言われていたあの話を懐かしく思い出し、ヨンファは手摺りに凭れかかって眺めることにした。


今まであまり気に留めたことはなかったが、ひと際大きな満月は吸い込まれそうなほど美しく、街中が月明かりに照らされて、まるで神秘的な世界のようだ。
手を伸ばせば、触れることができるのではないかと錯覚するくらい、いつもより月が身近に感じられた。
心を奪われたようにじっと視線を投げかけていると、次第に睡魔が襲ってくる。
もっと見ていたい気持ちもあったが、ヨンファは欠伸を噛み殺しながら、閉じそうな瞼に促されて踵を返すと、ベッドへと潜り込んだ。


完全に寝入ってから、どのくらい時間が経っただろうか。
ヨンファは不思議な夢を見ていた。


辺り一面が闇に包まれる中、その中央にある寝室らしき部屋が明かりでぼうっと浮かび上がっている。
周囲を蚊帳で覆われているため鮮明ではないが、中にふたりの男性の姿が見えた。
年齢は二十代後半くらいだろうか。
優雅な風情が漂う美しい韓服に身を包み、長い髪を結い上げて頭頂に髷を作り、髪がほつれないように額にはマンゴンを巻いている。
明らかに現代ではなく、朝鮮王朝時代だ。
日頃、歴史ドラマを観ているわけでもないのに、どういう関連性で突然こんな夢を見る羽目になったのか分からない。


布団の上に横たわっている青年は瞳を閉じていることから、どうやら眠っているように見えた。
遠目からでも、肌が透きとおるほど白く、女性と見紛うくらい整った顔立ちをしているのが分かる。
男性にしては線が細く、非常に儚げで、この世の者とは思えないといっても過言ではない。
もうひとりの男は床に胡坐をかいて座り、青年のほっそりした手を握り締めている。
そのふたりの様子から、てっきり寝込んでいる友人を看病しているのだろうと結論づけたのだが、次の瞬間、ヨンファは思わず息を呑んだ。


男の頬から静かに、ひと筋の涙が伝い落ちていく。
青年は寝ているのではなかった。
よく見ると、細身の身体には短剣が深々と埋まっていて、韓服が真紅に染まっている。
それさえなければ、本当に眠りについていると思うほど美しく安らいだ表情をしていて、今にも息を吹き返しそうだった。


二度と目覚めることはないと分かっているはずなのに、男は青年に対して、しきりに何か話しかけている。
当然、返答はなく、男はたまらなくなったように腰を上げ、横たわった青年の白い頬に自分の頬を押しあて、痩身の身体を温めるように強く抱き締めた。
その切ない光景に、ヨンファの胸の奥は引き絞られるように痛くなる。
余程、大切な相手だったのだろうか。
どうすればこの男の哀しみを少しでも和らげることができるのかと思った瞬間、その言葉が突然、耳の中に入り込んできた。


「容和……」


決して聞き間違いではない。容姿に見合った低音の美声は、自分と同じ名前を呼んだのだ。
あまりの偶然に驚愕し、何だか無性に息苦しくなった。
絶望に打ちひしがれた様子の男はこれ以上ないほど苦悶の表情を浮かべ、ゆっくりと顔を上げると、青年の唇にそっと口づける。
それを目の当たりにしたヨンファは少し動揺したが、不思議と嫌悪感はなく、純粋に美しい映画のワンシーンのようだと思った。


夢は蚊帳の中を覗き込むように、だんだんとふたりへと近づいていく。
遠目からでも見て取れたが、その男はかなり精悍な顔立ちをしていた。
知性を感じさせる落ち着いた風貌で、一心不乱に青年を見つめ続ける真摯な眼差しから、恋人同士だったのだと推察できる。
何らかの理由で命を落とし、今生の別れとなってしまったのだろう。
なぜ、普段の自分の生活とはまったく接点のない、こんな大昔を舞台にした夢を見てしまっているのか疑問に感じたところで、ヨンファは背筋が凍りつきそうになった。


――そ…んな……まさか。……嘘…だろう……?


繊細な面立ちの青年に視線を移すと、あろうことか自分と同じ顔をしていた。
髪や服装は違えど、双子ではないかと思うほど瓜二つなのだ。
そして、そばに寄り添っている男は繰り返し、青年の名を呼び続ける。
「容和」と。


――こんな……っ、こんなことって……!


身の毛もよだつような得体の知れない恐怖を感じ、これ以上、夢を見ることに耐えられなくなったヨンファはギュッと固く目を瞑り、残像を頭から追い出す。
すると、徐々に意識がはっきりとしてきて、唐突にパッと目が覚めた。


「はぁ……はぁ……」


全身にはうっすらと汗をかいており、かつて経験したことのないくらい心臓が早鐘を打ち鳴らしている。


――今、見たのは、一体何なんだ……。


夢とはいえ内容がリアルで、覚醒した今でも忘れることなく、あのふたりの姿はしっかりと目に焼きついている。
あまりにも奇妙すぎて、ヨンファの顔は引きつり、ガタガタと身体の震えが止まらない。
なぜ突然、こんなものを見てしまったのだろうか。
満月を眺めていたのが原因で、何かが作用してしまったとは考えられないだろうか。


不意に、ヨンファの頭の中に「予知夢」という言葉が思い浮かんだ。
自分に対するメッセージが込められているというのは、あまりにも現実離れしすぎている。
それに、今までこういう経験をしたことは一度もなかったし、これといって霊感が強いわけでもない。
暗闇と静寂に包まれた部屋の中で、ヨンファはしばらくの間、ベッドに仰向けのまま身動きひとつできなかった。


初めて見る夢なのに、急にあの男とどこかで出会ったことのあるような気がしてきたのだ。
他人の空似か?それとも、一度でも面識のある相手なのか?
心の奥底を締めつけるような痛みに、戸惑いを覚えずにはいられない。
あの冴え冴えとした双眸を、ひどく懐かしいと感じてしまうのはなぜだろう。
何かとてつもなく大事なことを忘れてはいないだろうか。
ヨンファの心の中は、ひどくざわめいた。


――もし、何かの暗示だとしたら?……いや、そんな馬鹿げたことがあるはずがない。


言い知れぬ不安に襲われて、ヨンファはベッドから身を起こし、頭を横に振る。
何度も大きく深呼吸して、気持ちを落ち着かそうとしていると、開けっ放しの窓から生ぬるく淀んだ風が入ってきて、身体に纏わりついてきた。
カーテンがゆらゆらと揺れて、どこからか何かに監視されているような違和感を覚える。
ヨンファはゆっくりとした動作で窓に近づくと、震える手を叱咤して、思い切りカーテンを開けた。


目の前には驚くほど大きな満月があるだけで、網戸を開けて周りを見渡しても特に変化はない。
当然だ。ここは八階なのだから、誰かがベランダに侵入してくるなんて到底有りえない。
月明かりが差し込む部屋は幻想的というよりも怪奇的に見え、どこかいつもとは違う雰囲気を醸し出していた。
子供の頃から綺麗だと思い続けていた満月を、薄気味悪いと感じたのは初めてだ。
ヨンファは慌てたように窓とカーテンを閉めると、代わりにエアコンをつけて、再びベッドに入って頭からタオルケットを被った。










それから、一ヶ月後のことだった。
大学は夏休みに入っていて、その日の夜、ヨンファは友人たちと鍾路へ繰り出していた。
リーズナブルな割に味が良いと評判の居酒屋で飲み食いし、二軒目はお決まりコースのように自然とカラオケへと足が向く。
アルコールが気分を程よくハイにさせ、時間を忘れて気の合う連中と浮かれて騒ぎまくるのは、今しかできない学生の特権のようなものだ。
楽しい余韻を残したまま地下鉄の終電に乗り込み、アパートの最寄駅で降りたヨンファは途中でコンビニに寄り、徒歩で帰路に就くところだった。


今までネオンが煌びやかな繁華街にいたため気づかなかったが、いつもより明るく照らされた足元を見て、今日は満月なのだと思い知る。
あの夜から完全に頭から追い出し、極力考えないようにしていたのだが、頭の中は夢の出来事に占領され、酔いはすっかり醒めてしまっていた。


煌々とした月光によって、どこか異世界のような、知らない街に来たような錯覚に陥り、背中がゾクリとする。
ヨンファの靴音だけがやけに大きく響き渡る中、突然、背後から突き刺さるほどの視線を全身に浴びた。
奇妙な夢を見たのを境に、自分の周辺で何かが起こり始めている。
目には見えないが、常に異様な気配が身体に纏わりついている気がしてならないのだ。
それも、なぜか夜限定で、昼間は特に感じることはなかった。


足を止めて後ろを振り返ると、気づかぬうちに数人の男たちが足早でこちらに向かって歩いてくる。
いろんな色に髪を染めて、見るからに柄の悪そうなチンピラ集団だ。
獲物を見定めるような嫌な目つきをしていて、その不快さにヨンファは眉を顰めた。
誰かに恨まれることをした覚えはない。となると、目的は金目のものか?
一介の大学生を狙っても、大した金にはならないはずなのにと疑問に思いながら、ヨンファは駆け出した。
すると、背後から男たちが追ってくる。


中高生時代はバスケ部に所属していたため、走るのは得意な方だ。
全速力で追っ手を振り切ると、視線の先にアパートが見えてきて、安堵の表情を浮かべてヨンファがエントランスに飛び込もうとした時だ。
ドアを開けて中に入る寸前だったのに、いつの間にか周りの景色が変わっていた。


――嘘……だろ……?


ヨンファは自分の目が信じられなかった。
有りえないことに、目の前からアパートがごっそり消えていて、コンビニを出た直後の場所に戻っているのだ。
まるでDVDを巻き戻したように。
到底理解しがたい現実に、ただ呆然とした。
不意に鋭い視線を感じて夜空を見上げると、相変わらず満月がじっとこちらを見つめている。
背後からまたチンピラたちが追いかけてきて、ヨンファは再び逃げなければならなかった。


間違いなくアパートは目前なのに、走っても走っても辿り着けない。
どうやっても、自分の部屋へ帰ることができず、同じところを繰り返し走り回っていた。
しかも、奇妙なことにチンピラたちの靴音は一切聞こえないのだ。


明らかに、何かがおかしい。
ヨンファは違和感を覚えた。
見慣れた風景のはずなのに、人の気配がまったくしない。
どこか無機質で不自然で、異次元の世界に迷い込んだとしか思えない。
この世に自分とこの連中しか存在していないような、言葉では言い表せない恐怖と絶望感に押し潰されそうだった。


次第に疲れが出てきたヨンファは走るスピードが落ちてきて、膝がガクンとなったのを見計らったようなタイミングで、複数の手が纏わりついてくる。
その氷のような冷たさにゾゾッと寒気がして、気づいたら周りを取り囲まれていた。
チンピラたちはヨンファの首筋辺りを怪しげな目つきで見つめ、舌舐めずりしながら、我先にと距離を詰めてくる。
その中で一番大柄なリーダーらしき男が、ヨンファの腕を掴んで無理矢理顔を近づけてきた。


「やめろっ、放せ……っ!」


抵抗する暇もなかった。
男は異様なほどの興奮状態にあるのか鼻息は荒く、唸るような声を上げながら口を大きく開ける。
そこに牙のような鋭い歯が光っているのを目にして、ヨンファは全身が凍りついた。


――こいつら人間じゃない……!?


驚きのあまり、声をあげることすらできず、硬直したように動けなくなる。
牙を剥き出しにした姿は、人間の血液を吸うあの怪物としか考えられない。
信じがたい光景を目の当たりにして、とても正気を保つことなどできなかった。
自分の喉目がけて牙が食らいつき、切り裂かれるさまを想像して、頭の中が真っ白になる。
底知れぬ恐怖に意識を失いそうになり、思わず目を瞑った時だった。


「その汚らわしい手をすぐに退けよ」


不穏な声とともに、どこからか肌に絡みつくような強烈な視線を感じた。
突如、あの夢を見たあと以上のねっとりとした生温かい風がゴーゴーと吹きすさび、真っ向から全身に受けたヨンファは尋常ではないと思わず身構える。
チンピラ集団は声の主が誰か分かったのか、一斉にヨンファの周りから離れると、逃げるように走り出した。


――何かが来る……っ!


漠然とそう感じた瞬間、気配も音もなく、視線の先にひとりの男が現れた。
誰もいなかったはずの場所に、時空を超えてワープしてきたみたいに佇み、感慨深げにヨンファを見つめている。
夏なのに、全身を覆い尽くすような黒のロングコートに身を包んだ男は、ひどく違和感があり、不気味に思えてならなかった。
貫禄を滲ませた姿から、年齢は恐らく四十代だと思われる。
髪は後ろに撫でつけられており、眉の太さと口髭が男の端整な貌に渋みを増していて、その広い肩幅から、がっしりした体格であることを物語っていた。


「アンデッドどもの動きを追っていて、正解だったな。ついに見つけたぞ、容和。どんなに会いたかったか」


威圧するような張りのある声が、辺りに響き渡る。
自信に満ち溢れた威風堂々たる姿は、まるで朝鮮王朝の特権階級である両班のようだ。
どこか温かみを感じさせる黒々とした双眸はヨンファを捉えたまま、優雅な微笑みを浮かべている。


「俺はアンタなんか知らない。……誰かと勘違いしてるんじゃないのか?」


自分のことを以前から知っている口ぶりだが、いくら目を凝らしても、やはり見覚えのない顔だった。


「これは驚いた。随分と威勢がよくなったものだな。しかし、四百年経っても、その美貌が損なわれていなくて安堵した。相変わらず美しい」


――四百年……?今、確かにそう聞こえた……。


ヨンファが絶句していると、決意を秘めたように眼光が鋭くなり、正面からヨンファを見据えた。


「今度こそ私のものにする。あの者には、絶対に渡さない」


何を言っているのか、まったく意味不明だ。
あの者とは、誰のことを指しているのだろうか。
二十歳を過ぎてから、自分が何かとんでもないことに巻き込まれているのは理解できたが、だからと言ってこのまま流されたくはない。
しばらく見つめ合っていたが、ヨンファの背後にチラッと走らせた男の目線が突然、凄みを増す。


「お前たち、逃げても無駄だぞ」
「ひっ、ひぃぃぃぃ」


振り向くと、とうの昔に姿を消したと思っていた男たちは、まだ目と鼻の先にいた。
淀んだ空気に満ちたこの空間は、やはり先ほどまでいた世界とは明らかに違う。
同じなのは街並みと、夜空に浮かんでいる満月だけだ。


「アンデッドの分際で、よくも私の容和に触れたな。永遠の彼方へ消えよ」


男がカッと大きく双眸を見開くと、逃げ惑うチンピラたちは紅蓮の炎に包まれて、断末魔の叫びを上げながらバタバタとその場に倒れていく。
一瞬にして黒焦げになったと同時に、烈火とともに跡形もなく消えていた。
ショッキングなものを見せられて竦み上がっていると、生ぬるい空気がヨンファを包み込む。


「容和、さぁ、私の元へ戻ってくるんだ」


ゆったりとした足取りで近づいてくる男の双眸が、血で染まったような赤い色をしていた。
妖しげな光を放ち、咄嗟に目を逸らせたはずなのに、意思とは逆に再び視線が絡み合う。
見つめているうちに、どうしてか引き込まれそうになってしまう。
足を踏ん張ってみるが、まるで催眠術にかかったように身体が言うことをきかない。
エネルギーを吸い取られているみたいに全身から力が抜け、ヨンファはよろよろと前に進みながら、差し出された両腕の中に囚われそうになった。
その時――。


「奴の瞳を見るなっ!」


叫び声とともに、ヨンファは誰かの腕に抱き留められ、いつの間にか離れた場所に座り込んでいた。
まるで瞬間移動したみたいな秒速の出来事に呆然としていると、助けてくれた男はゆらりと立ち上がり、前へと歩いていく。
全身黒ずくめの後ろ姿は身長が高めで、手足がスラリと長く、均整のとれた体躯をしている。


突然、地鳴りとともに熱風が吹き荒れ、ただならぬ様子に慌てて顔を上げると、口髭の男が宙に浮いていた。
両手をサッと横に広げると、全身から真紅のオーラが漲り、周囲に充満していく。
すると、正面で対峙するように立っている、もうひとり別の男の身体から乳白色をした眩しいほどの光が迸った。
両手を前に突き出すと、手のひらからおびただしい数の光の矢が口髭の男に向けて放たれるが、相手に到達する前にことごとく跳ね返されている。


「くそぉ……っ」


苦戦している味方を、軽く腕を組んだまま見据える黒ずくめの男は、落ち着き払っていて身じろぎすらしない。
その全身からは蒼い光が立ち昇り、とてつもないオーラがまるで龍のように天空まで伸びていき、ヨンファは息を呑んだ。
口髭の男は易々と相手の攻撃を封じ、対する男は攻めあぐねて肩で大きく息をしている。
勝負はついたかに見えた。


「よせ、フニ。無駄に体力を使うな。お前の手に負える相手じゃない」


低音の美声は、どこまでも冷静だった。
眩いばかりの光を撒き散らしながら右手を掲げると、蒼い龍が舞い降りながら膨れ上がり、瞬く間に杭のような形に変化していく。
轟音とともに巨大な蒼い光が標的に照準を合わせて打ち込まれる寸前、その姿は完全に消えてなくなっていた。


「おのれ……っ。卑怯だぞっ、ドンゴン!」
「殺ったと思ったのに、逃げたか。あの瞳術さえなければなぁ」


煌めきを放っていた光は、怒りを露わにした男の身体に吸収されていく。
辺りは静寂を取り戻し、ヨンファは立ち上がったものの、緊張の糸が切れたように力が抜けてよろめいた。


「おっと、大丈夫かい?」


咄嗟に手を伸ばしてくれたのは、いち早く気づいたフニと呼ばれた、人好きのする笑みを浮かべた男だ。


「すみ…ません……」
「いいって。俺とヨンファの仲じゃん」
「――えっ…と……?」
「って、覚えてるわけないか」


優しそうな面立ちが、ヨンファを見つめて相好を崩す。
自分にはまったく事情が呑み込めないが、どうやらこの男とも面識があるらしい。
それは、消えてしまった男が言っていた「四百年」という数字と、何か関係があるのだろうか。


「こいつは、『容和』じゃない」
「まだそんなことを言ってんのか。いい加減認めろって、ヒョニ」


フニという男が呆れ顔で肩を竦めているが、どことなく愛嬌があって、悪い奴ではなさそうな気がする。
それとは反対に、もうひとりの男には好意的な印象をまったく持てなかった。
感情がないのかと思うほど冷酷な感じがして、間違いなくヨンファの苦手なタイプだ。


どんな面構えをしているのか拝んでやろうと視線を向けて、その男と初めてまともに目が合う。
いまだにオーラが燻り続けているようで、カッと見開いたままの眦の切れ上がった双眸は、アメジストを思わせる色味を帯びていた。
今まで見たことがない美しい瞳の色に度肝を抜かれたが、ヨンファは嘘だと思いたかった。


身体に衝撃が走り抜け、まるで凍りついたように動けなくなる。
ヨンファは、目の前の男を知っていた。
忘れるはずがない。
身に着けている服もヘアスタイルもまったく異なるが、夢に出てきたあの男だった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

Comment(14)

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2016/12/30 (Fri) 21:53

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2016/12/30 (Fri) 22:36

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2016/12/30 (Fri) 23:54

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2016/12/31 (Sat) 15:27

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2016/12/31 (Sat) 19:29

haru

j****さん

こんばんは♡
お忙しい最中に読んで下さり、コメントもどうもありがとうございます♪
とっても難産の予感がするので、極道と不遜をメインに進めつつ、頭の中でしっかり煮込んでから形にしていければと思っています。頑張ります(TωT)

ジョンシンのドラマ、面白そうですね!
Twitterでちょこっと観た程度ですが、どんな役も素敵です(〃ω〃)

では、良いお年をお迎え下さい♡♡

2016/12/31 (Sat) 22:05

haru

ま****さん

こんばんは♡
お忙しい時期なのに気づいて読んで下さり、コメントまでいただいて、どうもありがとうございます♪
私も今日は朝から嫁業務で大掃除日でした(笑)

初めてのヴァンパイアものなので、心臓がバクバクです(TωT)
極道と不遜を早いところ前に進めて、こちらの続きにも取りかかりたいと思います。

どうぞ良いお年をお迎え下さい♡♡

2016/12/31 (Sat) 22:17

haru

つ*さん

こんばんは♡
お忙しい最中、読んで下さり、コメントもどうもありがとうございます♪
初めてのヴァンパイアもので、歴史、ファンタジー、SFとごちゃ混ぜな感じです(TωT)
どんなになるか私もドキドキでして、書きながら雷光斬や真空波を思い出してしまいました(笑)
こんなものにいつも動画や画像をと言って下さり、もう嬉しすぎます(´;ω;`)
話を広げると他の方々にも登場してもらうことになるので、ひとまず極道と不遜を前に進めながら、こちらの話も考えていきたいと思っています。

いつも読みに来て下さり、本当にありがとうございました(〃ω〃)
来年も頑張りますので、引き続きよろしくお願いします。
どうぞ良いお年をお迎え下さい♡♡

2016/12/31 (Sat) 22:35

haru

i*****さん

こんばんは♡
慌ただしい時期に読んで下さり、コメントまでいただいて、どうもありがとうございます♪
私は不安…いやいや、初めてのヴァンパイアものということで、無い知恵を絞りまくりまして、こんな感じにしました。萌えツボが同じi*****さんにそう言ってもらって、もう感謝しかありません(´;ω;`)

私も「オレンジマーマレード」は観たことがなくて、あらすじをちょこっと読んだのと画像を参考にしました。
シフという役名で、ヴァンパイアを演じたみたいですね。
イ・ジュンギっていう方もこういうドラマに出ていたんですか。この手の話って多いですよね。
下手なので独りよがりな描写にならないようにしたいところですが、イメージしにくかったり、話の内容が分かりずらかったらごめんなさい!かなりの難産が予想されるので、極道と不遜をメインで進めながら、こちらの話も考えていきたいと思っています。

こんなブログを見つけて下さり、こちらこそi*****さんとお知り合いになれて、本当に嬉しいです。
いつもパワーを与えていただき、ありがとうございます(*´ω`*)
来年も引き続き、宜しくお願いします。
どうぞ良いお年をお迎え下さい♡♡

2016/12/31 (Sat) 23:10

haru

ふ*******さん

こんばんは♡
お忙しいところ読んで下さり、コメントまでいただき、どうもありがとうございます♪
ふ*******さんのリクエストのお陰で、初めてヴァンパイアものを書くことができました。
腕がないので、心臓バクバク&冷や汗ものですが、極道と不遜をメインで進めながら、いろいろと考えていきたいと思っています。何とか滑らないように頑張ります(TωT)

今年は、私こそふ*******さんに見つけていただいて、お知り合いになれたことを心より感謝しております。
いつも温かいお言葉をかけて下さり、本当にどうもありがとうございました(*´ω`*)
引き続き、来年も宜しくお願いします。
どうぞ良いお年をお迎え下さいね♡♡

2016/12/31 (Sat) 23:26

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2017/01/01 (Sun) 01:50

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2017/01/01 (Sun) 22:53

haru

토*さん

明けましておめでとうございます(*´ω`*)
早速、見つけて下さって、どうもありがとうございます♡♡
お忙しいところ読んで下さり、コメントまでいただいて、とても嬉しいです♪

昨年の夏にいただいていたリクエストを今頃書きました( ̄ω ̄;)
ジョンシンも出したいな♡くらいに思っていたんですが(←すみませんっ)、新しいドラマの韓服姿を見て、完全にスイッチが入りました(。・ω・。)ゞ 射貫くような鋭い眼差しが、もう格好良すぎてヤバいです♡♡
極道と不遜をできるだけ前に進めて、じっくりとこの話に取り組みたいと思います。

今年も頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします♪


2017/01/01 (Sun) 23:24

haru

は*さん

明けましておめでとうございます(*´ω`*)
元旦のお忙しい中、読んで下さって、コメントまでいただき、どうもありがとうございます♪
初めて書くタイプの話なのでド緊張でアップしまして、心臓バクバクです。
バニの涙のシーンの画像を観て思いついたんですが、そう言ってもらって嬉しいです♡♡
極道のような複雑な話はもう書かないかもと思っていたんですが、腰を据えて取り組みたくなりました。

人生ゲーム、懐かしいですね♪
娘らが小学生の時は紅白を見ながらやっていましたが、今は二人ともガキ使に夢中になっていて、出番がなくなってしまいました。年末年始、主婦は何かと用事が多いですよね( ̄ω ̄;)

昨年はは*さんとお知り合いになれて、こちらとDMの両方で交流させていただいて、ご縁に感謝しております!
いつも温かいお心で支えて下さって、本当にありがとうございます(≧ω≦)
どうかと思うようなものばかりですが、今年も頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします♪

2017/01/02 (Mon) 00:24